夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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今回で漸く第二節終わるぞー!!!いえぇぇぇぇぇぇい!!
因みに書き溜めしているんで皆さんにとっては一日たっているでしょうが雑草は前回の話を書いた直後にこれを書いているので、現在もまだめっちゃお腹が空いてます。
オムライス、くいてぇぇぇぇえええええええええええええええっ\(゜ロ\)(/ロ゜)/


第四項

くしゅんっと善のくしゃみが断罪部隊、部隊室に響く。

 

「風邪っすか?」

 

ずずっと軽く鼻をこすれば仕事をしていた會がこちらを見ることなく聞いてくる。

その質問に対し善はゆるりと口角を上げる。

 

「いんや…誰かが噂してるんじゃないかなぁ、ほら人気者だから」

「確かに、アンタの悪評で噂は尽きないっすよね」

 

彼は矢張り書類から目を逸らすことなく淡々と言ってのける。

心底どうでもよさそうだ。対する善も慣れたのか特に反応を返すことはなく、クルクルと飲んでいたグラスに入った氷を人差し指でつついた。

カラカラと氷が音を立てる中、がちゃっと部隊室の扉が勢いよく開く。

 

「あ、ありましたぁ!!!」

 

飛び込んできたのは叶恋だった。

彼女は髪をぼさぼさにしたまま、ぜーはーと肩で息をし、手に持ったものを掲げる。

そのカードは断罪部隊のみが持つことを許されているカードキーであった。

彼女は数日前にカードを無くしてしまったようで、半泣きになりながら探し回っていたのだが、どうやら漸く見つかったらしい。

 

「おお、よかったっすね」

「そのカード、貴重品だから無くしたとなれば最悪再発行不可で他部隊に移動とか有り得たしね」

「ほんっとに危なかったよぉ!!はぁぁぁ、日向(ひなた)隊長が見つけてくれなかったら…!よかったぁ、ほんとよかったぁ」

 

このカード、たまたま日向(ひなた)が拾ってくれていたようで、態々届けてくれたのだ。

その時の彼の背には後光が差していた…と叶恋は語る。

そんな彼女は心底ほっとしたらしく、すりすりとカードに頬擦りをする。

そんな叶恋を前に善はにっこりと笑みを浮かべた。

 

「なんとか断罪部隊移動の窮地を脱した叶恋ちゃんに悲報です」

「はい?」

「もうすぐ遠征じゃん?」

「え、ああ、はい。あと一週間とちょっと…ですっけぇ?」

「そうそう。ということで遠征組は暫く任務量ががっさり減るので、こっちに仕事回されちゃいましたー」

「へ?」

「つまり、こっからさらに皆の隊長善さんは忙しくなることが決定したんだなぁ」

「……え」

 

善の言葉に固まる叶恋

 

「そ、それってつまり…叶恋ちゃんたちが必死になって仕事終わらせようとしてるのに…遠征でさらに追加されたってコト…?」

「そういうことになるねぇ。可笑しいなぁ、本来日向(ひゅうが)に流れるはずの仕事なのになぁ。

試験会場燃やしたの、未だに根に持ってんのかな。

嫌だ嫌だ。ネチッコイ奴ってきら〜い」

「………」

 

瞬間、叶恋はガクッと床に座り込んで項垂れた。

当然だ。彼女は善の休日欲しさに毎日毎日頑張っていたのに、それが無駄になってしまったのだから。

「叶恋ちゃんの努力が、泡となって消えていく…」なんて泣き言を漏らしてしまうのも当然と言えた。

そんな彼女に善は近寄る。

 

「ということで…ほれ」

 

善は自身のリングを開くと、そのままスケジュール表を見せた。

そのスケジュール表を見た叶恋は思わず目を見開いた。

 

「……へ?」

「上に交渉して休みを一日だけもぎ取ってきましたー

あぁ、安心してね。任務が回って来ても絶対やらないって宣言してきたから嫌がらせみたいに急遽任務を入れられることもないだろうし」

「!!」

 

そこには確かに、今日から四日後に一日だけ休みという文字が刻まれていて

 

「てことで叶恋ちゃんの休み、こっちの日付に変更しとくから開けといてね」

「よ、よぃさぁぁぁん…!!!」

 

プルプルと涙を目に溜めながら叶恋は感極まったように善に抱きついた。

 

「ほんっと善さん大好き!!一生好きぃ!!!」

 

ぎゅむぅぅぅっと音が鳴りそうなほどに抱きしめてくる叶恋に善は苦笑いを浮かべる。

 

「はいはい現金だなぁ…てか叶恋ちゃん洗髪剤変えたよね」

「そう!さっすが善さん!!変えちゃったの!いい匂いでしょ?」

「甘ったるくて苦手だから今すぐ離れてほしいんだけど」

「な、なんてこというんですかぁ!?酷いですよぉ善さぁん!」

 

グワングワンっと善の肩を揺らす叶恋

善は頭をぐわんぐわんと揺らすと、次に會の方に向かう。

 

「會君も匂い嗅いでみて!!いい匂いだよね!?」

「はいはい、いい匂いいい匂い」

「投げやりじゃん!!」

 

振り払う會に叶恋はぷくーっと頬を膨らませ、分かりやすく”不機嫌”を現した顔をするが、會は片手で膨れた頬を掴み空気を抜くと、そのままポンポンっと軽く頭を撫でて立ち上がる。その際、背もたれに掛けていた上着を取った。

 

「どこいくの?」

「遠征の準備っす」

 

さっさと部屋を出て行く。叶恋は會が出て行く先を見つめる。

 

「遠征の準備…叶恋ちゃんもやっておかないとだよね…」

「まぁ、行先はあのZ地区だしねー

死にたくないならちゃーんと準備やっとくんだよ?例えば遺書の準備とか」

「うわ、不謹慎なこと言わないでくださいよぉ…」

 

引いたような表情で叶恋は善を見……會が居た椅子に腰を下ろす。

そうして、体を捻じって背もたれに両手を付き、机の上に転がったペンをクルクルと指先で弄る。そんな叶恋を善は見る。

 

「で?」

「へ?」

「どこ行きたいの?結局行先聞いてないんだけど」

「あ、それは…」

 

ソファーに凭れ掛かりながら聞いてくる善

聞かれた叶恋は少しだけ視線を彷徨わせたのち顔を上げる。

 

「施設に…行きたいです」

「…………………は?」

 

叶恋の言葉に善は目を見開き、叶恋を見た。

声は静かだ。だがその顔は珍しく困惑しているらしい。意味が理解できない、と言いたげな顔で叶恋の方を見た。

 

「…なんで?理由は?」

 

そうして数秒置いて、叶恋が施設に行きたいといった、その理由を問いただす。叶恋は数秒考える。

 

「前に……施設の出の子と話した…から」

「その子が施設の話したの?」

「………まぁ」

 

何処か曖昧に頷いた叶恋。彼女の脳内には少し前の記憶が蘇る。

交流会が終了した後の…勅使河原(てしがわら)(りつ)との会話であった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

「別にこの大会で役に立たなかったとしても、松田は俺より価値があるんだから問題ないだろ」

「……へ?」

 

それは、暗号をすぐに解読することが出来ず、うなだれて居た叶恋に向けた一言だ。

唐突過ぎる言葉に叶恋は律を呆然とした様子で見つめた。

彼の口から出てきた”価値”とは何なのか理解できなかったからだ。

 

「俺はゴミ同然だ」

 

続けるように律が言う。

 

「施設はゴミ箱。そこに入れられたやつは全員ゴミ。俺は施設育ちだからゴミだ」

「…そ、そんなことないよぉ…というかそれ、もしかして誰かに言われたのぉ?」

 

「酷い…」と言いながら、叶恋はただ律を見つめる。だが律は顔を横に振ってそれを否定する。

 

「直接は言われてない。でももとより施設に入る奴は親とか親戚とか、周囲の人間にいらないってハンコ押された奴が来る場所だ。親が死んで仕方なく入れられようが育てられなくて泣く泣く入れられようが一緒だ。

引き取ってくれる奴がいないならいらない人間だ。

施設なんかに入れば最後、マトモな学は身に付かない。碌に社会貢献も出来ず、気づけば不死者殲滅隊みたいな代わりがいくらでも利く職場に行きつく」

「そ、れは………そもそも人間をゴミだなんてぇ」

「施設育ちに人権は無い」

「え?」

氷雨(ひさめ)…あの能天気だってそうだ。どういう施設で育ったかは知らない。

アイツがどういう意思で此処に来たのかも知らない。だが俺の認識ではアイツも俺と同類だと思ってる」

 

そういって、はぁっと律は溜息を吐く。それをみて叶恋は口を開く。

 

「確かに、この職場は入れ替わり激しいよぉ?

何処の部隊だって人数が不足したら適当な所から人を呼んで補充して…なんだかんだドンドン代わりが用意される組織だと思うけどぉ……。

勅使河原くんの代わりは、居ないと思うよぉ…?」

 

しどろもどろになりながら叶恋がいえば律は表情を変えることなく「なんでそう思う」と聞き返す。

 

「…だ、だって、こうやって叶恋ちゃんと話してくれているのは勅使河原くんだもん。

仕事の代わりは出来ても勅使河原律っていう人間のの代わりは他にはいないよぉ。だから…そんな悲しいこといわないで」

 

叶恋はどこか寂しそうな表情を浮かべて言う。そんな彼女の顔を見て、律は「松田は優しいんだな」といって、立ち上がる。

 

「だが俺は、その手の優しさを信用しない」

「へ?」

 

律が叶恋を見下ろしていう。

 

「きっとこれを言ったのが俺じゃ無かったとしても、お前は今と全く同じことを言って相手を慰めた。俺だからそれを言ったんじゃない」

 

「屁理屈だと思うだろうが、そういうことだ」とだけ言い残して、律はそのまま立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

その時の事を思い出し、叶恋は数秒目を瞑り、そっと顔を上げる。

 

「理解したいって…そう思って」

「理解したい…ね。理解した所でどうするの?気の利いた慰めでも掛ける?別にその子はそんなの望んでないと思うけど。いや、寧ろ傷つくかもね」

「べ、別にぃ、慰めたいとかぁ……そういうことじゃなくてぇ…」

 

善の容赦ない指摘に叶恋は眉を下げる。

彼女の中に明確な理由なんてない。ただ漠然と”理解したい”という感情が湧いて出た。

それだけだ。そのあとのことなんて、叶恋は考えていなかったのだ。だが善は叶恋から眼を逸らすことなく続ける。

 

「…それにさ、その子が誰かは知らないけど、他の部隊だろ?他部隊との関りなんてほぼないんだし、理解した所で仕方ないでしょ。

いいじゃん。そんなの理解しなくても。知らなくていい世界ってあるもんだよ。

そんなことに時間使うよりもっと他の事に使おうよ。ほら、この前叶恋ちゃんが行きたがってた場所あるじゃん。あそこ連れてってあげるよ」

 

善が場所を変更するようにいう。だが叶恋はキュッと唇を嚙み締め首を横に振る。

そんな叶恋を見て、善は微妙な顔をする。

 

「………行っても意味ないって」

「………」

「………ただの時間の無駄だよ。やめときな」

「………」

「…………」

 

長い長い沈黙が落ちた。

やがて「はぁぁぁぁぁ」という善のため息が流れ、沈黙が切れる。

 

「そんなに行きたいの?」

「…………はい」

「どうしても?」

「……はい」

「楽しいことなんかないよ?行っても損するだけ。そんな事の為に貴重な休み潰す気?」

「それでも…行きたい。善さんには悪いって思ってますよぉ…折角のお休みを潰すことになっちゃうんだからぁ…でも、叶恋ちゃんは…」

「……はぁぁぁぁ」

 

叶恋がもごもごとしながら言えば、再び善が大きなため息を吐く。

そうして、ガシガシと頭を掻き「仕方ないな、約束したしね」と心底嫌そうな顔をしつつも頷く。

 

「ほんと?!いいの!?」

「ダメだっつっても折れないじゃん…言っとくけど行ってからの苦情は聞かないから」

「うん、うんっ、分かってますよぉ!」

「……その子、どこの施設の出か聞いた?」

 

嫌そうな表情のまま、善が聞けば叶恋は「聞いてない」という。

 

「……そんな気はした。まぁいいや。要するに叶恋ちゃんは施設の実態が知りたいってコトでしょ?なら今から上げる三つの候補の中から選んで」

 

善はソファーの上で胡坐をかきながら、指を三本立てた。

 

「”せい”か”いく”か”しょ”……どこがいい」

 

突然並べられた言葉に叶恋は訳がわからず困惑する。

 

「え?えっと…どういう」

「いいから、ほら。”せい”か”いく”か”しょ”早く選ぶ」

「………えっと、じゃぁ”せい”で」

「よりにもよってそこチョイス…」

 

善は再び嫌そうに顔を顰める。そうしてやがて溜息を吐くと「最後にもう一回聞くけど、本当に施設行きたい?」と聞けば叶恋はハッキリ頷く。

 

「そう、なら”せい”にいこうか………ただ、回るのは一か所だけね。あんな場所、何か所も回る気ないから」

「わ、わかりましたぁ!」

 

喜ぶ叶恋。ソファーにだらしなく凭れ掛かりながら善をちらりと彼女の方を見てから目を閉じる。

 

(他人の苦しみなんてただの負担でしかないのに、なんで労働して、休暇まで潰してでも知りたがるんだか…。

人間なんて面倒な生き物なのに…自分の求めている答えに行き着いてくれなかったら少なからず反感の感情を抱くし、知っているからこそ理解してほしいと心のどこかで思ってしまう。

自分のことだってあるのに、なんで他人の苦しみまで理解しようとするんだか……ただの興味か、あるいは一種の優しさか……)

 

善は目を開ける。その瞳には何処か憂を帯びていた。




施設のことについてですが!!!別に現実世界の施設についていったんじゃなくて、この世界の施設について書いただけです!!本当に怒らないでくださいお願いします((土下座

あと、オムライス美味しかったです。ふわトロでした。オムライスを作ってくれた母は天才です。(・ω<)ノ
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