思った以上に早いですねぇ。まぁあんまり書く場面ないですからね。仕方ないね(=_=)
時間は少し巻き戻り数十分前
「来てしまった……」
充幸は顔を覆って呟く。彼女の前には一人でに駅へと戻って来る無人の列車
それはZ地区へ向かう列車だった。
それに乗り込んだ彼女は内心後ろめたさを感じながらも先頭へとやってくると、リングをタッチパネルに当てる、が
「あ、あれ動かない……可笑しいですね。これで動くって」
「それ、Z地区に行くって申請だしたリングじゃないと動かないですよ」
「え?」
突然入って来た第三者の声に驚いて振り返る。そこには笑顔でこちらをみる
「ひ、
「任務帰りです。思ったより早く終わったのでZ地区に様子を見に行こうかと。元々そういう話でしたし………それで充幸さんは?」
「あ、わ、私はその……」
バツが悪そうに視線を彷徨わせる充幸に
・・・・
「心配で来たと」
「すみません…」
「ここで亜怜さんたちの帰りを待つ…ということはできませんか?」
「…本当にすみません」
ガタンっと動き出した電車の中、充幸は手で顔を覆う。
そんな彼女を見て
「あちらは非常に危険な場所です。それに今のZ地区は少々厄介なことになっていまして」
「厄介……?」
「電波妨害を受けている可能性が高いんです」
「え?」
充幸は
「遠征メンバーと連絡が取れない。中の状況が分からないですが異常事態になっている事だけは分かります。そしてここ最近夜縁が大人しい…」
「そ、それって」
「夜縁が居る可能性が高い」
充幸は目を見開く。
「Z地区から出ることは簡単にできる事ではないので本当に夜縁が居た場合電波を遮断されている状況はかなり不味い。
先程善と他に戦力のあるメンバー数名を呼びました。それと本部にいる開発部隊のほうへ連絡を飛ばしましたので、W地区の電車から電波を正常にする機器を持ってきてくれると思います」
状況を簡潔に説明しながらも
(裏切者が他にいる可能性が浮上した。
ウチは良くも悪くもチーム組んで動くことが殆どだから、まず不死者と話す機会なんてまずない。
そもそも盗聴器からは不審な会話はなかった。
なのにZ地区の情報が流れてる。Z地区への遠征はあの奇襲のあと全体に伝えられた。
知ってるわけがない。なのにタイミングよく夜縁が来ている。偶然とは考えにくい。なら副隊長・隊長クラスの人間が裏切った…?
或いはぽろっと零した?いや考えられない。あの人たちの性格を考えると絶対に言わないだろうし、裏切ることもない。なのに漏れている)
(………断罪部隊も100%の証拠が出てからじゃないと罰せられない。
それは僕等も同じ。いや、断罪じゃない人間が断罪すると処分が下りかねない。
そのリスクを負いたくないから証拠掴んで上を黙らせたうえで秘密裏に処理しちゃいたかったんだけど…どういう訳か行動が早すぎる。
とはいえ、電波妨害の制度があまり高くないのがせめてもの救いか。
かなり乱れてるけど、ギリギリ聞こえるし、多分こっちも問題なく動作する。
面倒なのは夜縁に連れ去られることだけど……それはない)
「
無言になった
「いえ、今後について考えていただけです」
「そう、ですか…」
小刻みに震える充幸は祈る様に両手を握りしめる。
「大丈夫ですよ。亜怜さんは強いんですから」
「知ってます!しって、ますけど…でもっ……やっぱり……わたし…っ」
「…心配しても、今はどうすることもできません。少し力を抜いたほうが良いです」
「……ッ」
だが充幸は肩の力を抜こうとすればするほど強張っていく。
心配という気持ちは簡単に止めることなど出来ない。
死ぬ可能性があるのなら余計だ。
「そういえば亜怜さん。死ぬんじゃないかって一時期支援部隊が慌てていたことありましたよね」
「え?」
「ほら、一年ほど前に。亜怜さんが”助けて”って突然支援の隊員に連絡を飛ばしてきて」
「……あ、ああ!!あれですか!いつも凛々しい亜怜さんが突然そんな連絡してくるものですから皆さん大慌てで…」
「でも実は料理に失敗したっていうだけの話だったんですよね」
「そうなんです。普段料理を失敗しない方なんですけど、何故かお菓子を作る時だけ失敗するんですよね。懐かしい…でもどうしてソレを?一部しか知らないことですけど…」
「風が教えてくれまして」
「ふふ、なんですかソレ」
充幸は思わず笑みを零す。その顔を見て
「よかった。少し肩から力が抜けたみたいで」
その言葉に充幸は何処か複雑そうに微笑んだ。
と、そこでふと
「ん?」
そこはZ地区の門。しかし
「あの青色の発煙弾……」
「発煙弾?」
充幸もまた気づいたのか顔を上げる。
「可笑しいですね。発煙弾を使うなんて聞いてないんですけど。
東の人ですかね?でも東って単独主義。発煙弾なんて……」
「…………この緊急事態、発煙弾があがるなんて…よっぽどのことがあったんじゃ」
軈て電車が止まる。それと同時に充幸は電車から飛び出す。
「あの、この門どうやったら」
「落ち着いてください充幸さん。これでハコビを呼べば中に入れますから」
そうして、
「とっ……」
出て来た場所は壊れたボロイ小屋。
「ゆゆゆ、幸村隊長!?」
「驚かせてごめんね」
「あ、い、いえ!」
「あの!亜怜さんはどこに!?」
「え、な、なんで充幸さんが」
「いいから!亜怜さんは!?」
「さ、さっき発煙弾が見えたから様子見に言ってくるって西のほうに…」
「!」
その言葉を聞くなり充幸は小屋を飛び出していく。
その光景を見送った
「相変わらずここは不死者塗れだね」
目線を下げればそこには、うじゃうじゃとのさばる不死者の群れが。その傍には血だまりや人だったと思われる肉塊なども転がっている。
しかし、
「む、向こうの隊長さん?!」
「ああ、貴方は確か……神楽城さん、ですよね?大会に出てた」
そこには茉莉の隣でスナイプをする萌の姿。そんな彼の姿を見て
「うわぁぁぁ認知されてるぅぅ!ひぇぇ!殺さないで!いやぁぁぁ!!」
「……あれ、初対面……ですよね。確か」
「か、彼方さんがサディストだって!!!ひぃぃ鞭うたれても泣くことしかできないですぅぅ!!」
「彼方……ああ、由宇さんか…。別に僕はサディストでもないし、そういう趣味もないですよ?」
「ひぃぃ、キラキラ王子様スマイルが黒く見えるぅぅぅ!!」
ぎゃぁぎゃぁ騒ぐ萌に
「うーん、これは仲良くなるのは難しそう…かな?」
「あの」
「ん?」
そこで声をかけてくる茉莉
「一つ質問よろしいでしょうか」
「なんでしょう」
「さっきの女、なんでここにいたんですか?僕の記憶が正しければ、そちらの支援の副隊長でしょう?
先程支援の隊長が居たならば副隊長は待機の筈。隊長副隊長で出てくるのは断罪部隊のみだと聞いていますが?」
「ああ、彼女は自分の隊長が心配で来ちゃったらしいです。心配ですか?」
「いえ、疑問に思っただけですよ。それとも他人を心配するほど優しい人間に見えますか?」
「僕からは何とも」
日向は再び下を見る。
「飛鳥!へるぷー!」
「はァ!?なに足引っ張ってんだテメェ殺すぞ!?」
飛鳥は返り血に塗れながらも不死者を殺しまわっている。
彼の綺麗な薄い金髪もほぼ赤黒い液体に塗れて見る影もない。そんな彼は同じく血にまみれた和真の近くの不死者を一掃しに行っている所だ。
(こっちは問題なさそうだな。ならさっさと処理をしにいくとしようか)
内心でこれからの事を考え、
・・・・・
「亜怜さんっ、亜怜さん、どこっ」
充幸は息を切らしながら走る。辺りの不死者は見るからに少ない。
これなら、と充幸は残っている不死者を殺しながら進む。
(にしても、こんなに少ないなんておかしい。誰かが一掃して回っているとか……?)
分からないことが多すぎるが、今彼女に出来ることは亜怜を探す事だけだ。
そうして足を縺れさせつつ走る、と。
「今日はよく女の子と会う日やな」
「!」
少し遠い場所から一人の不死者がいた。それは明かに人の言葉を話す不死者で
(夜縁!)
充幸は直ぐに警戒を強め、剣を絡に向ける。しかし、彼女の中には強い恐れがあり、カタカタと微かに刃が揺れている。脚も、少し震えている。
それでも懸命に表に出さないように取り繕うことで必死だ。
だが、絡にはそれがわかっているとでもいうように笑みを浮かべる。
「かわええな。ガクガク震えて俺が怖いん?」
にこっと笑みを浮かべた絡
「怖い訳、無いでしょう」
「強がっちゃって……声震えてんで?」
まるで散歩でもするような気軽さで警戒心も無く絡が近寄って来る。
一歩下がりそうになる足を押さえつけ相手から視線をずらさぬように必死に相手を見睨み付ける…………だが、それだけ
「俺の事、殺さんでええの?」
「っ」
また一歩一歩と近寄って来る。相手はただ歩いているだけ。充幸の切っ先が当たる距離まで相手が来る。
「ほら、俺の顔に弱点あるで。刺してみ?」
これを振れば、当たる。分かっている。なのに、充幸は動けなかった。
そんな彼女の様子を見て、絡は心底面白いとばかりに笑う。
「従順なペットってええよなぁ」
絡は笑みを浮かべ、ゆったりと充幸の頬に触れる。
そうして、まるで犬の頭でも撫でるかのように頭を撫でる。
「かわいいかわいい。ええ子は好きや。今回は見逃してあげましょ」
絡は手を放し、充幸の横を通りすぎる。すれ違いざまに、彼は言う。
「そうそう、巨乳のオネエサン。はよ行かな挽肉なってまうで」
「!!!」
その言葉に、充幸の体中を恐怖が駆け抜ける。
挽肉、という言葉で嫌でも連想されたのは”死”
充幸は慌てて絡が来た方に走り出す。後ろからは笑い声だけが聞こえていた。
早く早く
心で何度も叫びながら一生懸命足を動かす。
そうして、段々不死者の群れが見え始める。そんな彼らは、ゾロゾロと一か所に向かって集まりだしていた。彼女がその場所へ向かえば、そこには見覚えのある顔
「亜怜さん!!!」
腹から血を流し、横たわっている亜怜がそこにはいた。
彼女の体を一体の不死者が喰らいかかっており彼女の脚は既に不死者の口の中に入っている。
上手く嚙み切れないのか、パクパクと口を動かしており
違う不死者もまた、亜怜をぎょろぎょろとした目で覗き込み、その悍ましい手で彼女の首に手をかけて体を浮かびあがらせると、頭から齧ろうとしていた。
「っ、どけぇぇぇぇ!!!!」
悲鳴にも近い怒号を響かせ、充幸は速度を上げると齧ろうとする不死者の目玉に刃を突き刺した。それにより不死者は悲鳴を上げて死ぬ。そのまま、足を噛んでいる不死者を斬り殺す。
「はぁ、はぁっ、亜怜さん!」
泣きそうになりながら充幸は亜怜を見る。
ピクリとも動かない。脈を図れば息はしている。そのことにホッとする充幸だったが
「※代縺勧∝縲k代縺シ辟」
「!」
不死者の一体が充幸に掴み掛る。咄嗟に蹴り上げて斬り殺すが、また不死者が襲い掛かって来る。
「っ」
鋭い蔦が飛んできて、それで肩を僅かに抉られて悲鳴を上げるが、直ぐに押し殺して叩き切る。
しかし、今度は別の方向からも蔦が伸びてくる。
充幸はそれに反応が遅れるが、ギリギリ刃で受け止める。だが、他の不死者からもまた攻撃が来る。
「あ”っ!?」
体が吹き飛ばされ、地面に転がる。顔を上げた先にもまた不死者
踏みつぶそうとする不死者を転がって躱し立て直すが、そんななか、亜怜に襲い掛かる不死者を見て冷や汗が溢れる。直ぐに亜怜の近くの不死者を殺し、息も絶え絶えに辺りを囲む不死者を見据える。
「亜怜さんは…殺させないっ!」
たった一人だったとしても、充幸は亜怜を守るのだ。そう強い気持ちで、沢山の不死者と対峙する。
『この子、貰ってもいいかしら』
『すみません、コレはもう買い手が』
『お金は……これくらいでどうかしら』
『!、す、直ぐに契約書をお持ちいたします』
『ええ………私は亜怜。よろしくね?』
___初めて頭を撫でてくれたから
「あ”ぁっ!」
血が舞う。貫かれたのは、脇腹、体制を崩した瞬間、足に蔦が巻き付き、地面に叩き付けられ視界が揺れる。息が詰まって、上手く呼吸ができない。
「ま、だっ……」
涎を流しながら、充幸は立ち上がる。
『大丈夫よ、泣きたければ泣けばいいの』
『でも、っ……五月蠅いって』
『そんな酷いこと言わないわ。それに感情を押し殺すと言うのは悲しいことなの』
『うんっ……』
____初めて、抱きしめてくれたから
「っ、ぁ」
腕が片方千切れる。
頭からも、片目からも、片腕からも、腹からも、口、鼻、その全てから血を流しながらも充幸は立っていた。欠けた刀を構えて、亜怜を背に庇って。
「負け、な…い…っ、負けない、負けてたまるか!!お、前らなんかにっ!私のっ」
横から薙ぎ払われる。それでも充幸は直ぐに亜怜の前へ立ち塞がる。その目は、未だに死んでいない。
「私の……た、ぃせつなひとをっ、殺されて………たまるかァ!!」
そうして、また切りかかる充幸
『ほら、髪を結んであげようね。今日はどんな髪がいいかしら』
『亜怜さんと、一緒がいい!』
『ふふ、じゃぁそうしましょうか』
____微笑みかけてくれた、から
「っ………は、はぁ……ぅ、ぁ」
ひゅーひゅーという音が響く。充幸は不死者に掴み上げられている。
そんな不死者の腕を切り落とせば、地面に落下する。べしゃっという音と共に、地面に落とされる。
もう、起き上がる気力はない。這ってでも、彼女は亜怜の元に向かう。
『充幸、今日は貴方の好きなオムライスよ』
『………ありがとうございます。嬉しいです』
『ふふ、いいのよ』
____貴方が、私を誰かに”重ねていた"としても
「ぁ、れん……さん」
だいすきなんです。
ぜんぶぜんぶ。だいすきなんです。
覆いかぶさるように充幸は亜怜の上に乗ると笑みを浮かべる。血の涙が溢れてポタポタと亜怜の顔を汚す。
「…貴方との毎日は」
充幸の背後に不死者が迫る。
「幸福で…充ちてました」
直後、充幸の頭に不死者が食い掛り…………ぐちゃっという音と共に、充幸の上半身と下半身は千切れ、内容物がぶちまけられた。
誰にも知られる事無く、彼女は死んだ。
血だまりには、彼女の手首についていた。ちんけなビーズの腕輪が千切れて転がる。
中心についていた花のビーズが血の池に転がった。
残ったのは大量の不死者と、気絶した亜怜のみ。ならば、残る不死者たちの標的など決まっているようなものだ。
だが
「え、なんか死んでるんだけど…」
声と共に大量の不死者が一瞬で切り刻まれる。そうして、すとんっと地面に降り立ったのは
「どういう状況?これ」
要請を聞いて駆けつけてきた天満善であった。
くるりと鋏の刃を回す善は一瞬にして不死者を一掃してみせた。
そうして、状況を理解しようと周りを見回す。不死者の死骸と地面に転がったビーズ、そして気絶した亜怜
「……あー、成程成程。充幸ちゃんが庇って死んだのね」
善は地面に転がったビーズを拾いあげる。
「もうちょい早く来れればよかったんだけど……まぁタラレバ言ったって意味ないか」
独り言をぼそりと言うと善はポケットにビーズを入れる。そうしてリングでマップを開く。
「えーっと、西の連中が来てるのは……赤の方か」
かったるそうに首の後ろをひっかきながら善は亜怜を肩に担いで歩き出そうとして
「わ!?」
突如ケタタマシイ着信音が響き渡る。その音のデカさに善の肩が跳ねる。
「は?なんで着信音が…電波妨害受けてるんじゃなかったっけ?」
首を傾げながらも善はデバイスの電源を入れる。そこには【作戦終了】の四文字が掛かれていた。
同時刻
「っ…!!!」
涙を流しながら地面にうずくまっている護の姿
その傍らには天緒が倒れていて、その傍にはあの不死者
そして護の腕は。
「……」
千切れていた。
彼は涙を流し、身を震わせていた。
ーーーーーーーーー
「作戦終了の合図が出たぞ!切り上げろテメェ等!」
アスカが声を上げれば、不死者を殺しながらも彼らはゾロゾロともと来た場所へ向かっていく。
それを上から眺めていたマツリたちもまた撤退の準備をする、が
「なんでこんな一斉にメールが?」
一斉に鳴り響いたメール音。多少誤差はあれど、ほぼ同タイミングだ。
「電波受信の妨害されてたっぽい!」
上に飛んできたのはカズマであった。
「電波妨害?」
「そ!ほら!」
見せられたのはカズマのデバイス。そこには沢山の通話マーク
「音ならなかったし、ぜーんぜん気付かなかった!」
「……あ、僕の方にも着てましたね。でもどうして」
「ももももしかしたら夜縁がいたのかも!?」
怯え乍ら萌がいう。
「夜縁が?」
「応援を呼べないように……もしくは、誰かが電波妨害するようなことをやったのかもしれません。ほら、あの謎の発煙弾の正体も分かってない訳ですし……」
「…………まぁそこの審議はおいておいて僕等も撤退しましょう。このメールが来たと言うことは東の作戦は終了、西の目的を果たさなければ」
「西に手伝ってもらって不死者の死体の回収と生け捕りだー!」
そうして彼等もまた小屋を飛び降りて行った。
・・・・・
「遺体は気を付けて運べ、不死者の死骸は一部回収できりゃそれでいい」
そこは本部であり、地下からの運搬作業をしている最中だった。
指示を出すのは雪村
その近くには楓もおり「どうせなら全部回収しましょう」と
「……皆、かなり死にましたね」
「夜縁がいたらしいですから。そう考えれば、まだマシな被害といえる」
「マシじゃないですよ。資料、結局一つも無かったんですから。うちの目標は最初から破綻していた」
今回の西の目的は資料の奪取だった。しかし
『建物内、全部調べたんすけど……なかったっす。資料なんかどこにも……全部誰かに回収されたっぽいっす』
會がいってきたのだ。
西は最初からあるはずもない物の為に命を削っていた、ということになる。
「誰か、って誰でしょうね」
「十中八九夜縁でしょう」
「あ、やっぱりそう思います?私もそうだと思うんですよね」
「…結局不死者の肉が回収できたこと以外には死体が無駄に量産されただけですよ」
「…」
「………この不毛な争い、いつまで続くんですかね」
運ばれて行く死体を眺めながら
「終わるまでですよ」
「終わりなんてあるんですかね。いたちごっこをしている気がしてならない」
「まぁ気持ちは分からなくもないですけどね。でもそうだとしたら、どうするんですか?諦めます?」
「………諦めるわけないでしょう。そうすれば、今までの時間や消費されて行った命の価値が無くなる」
何処かを見据えて
「私は死体が溢れてくれた方が正直嬉しいですが、だからといって私も死体になりたいわけではないので、是非とも人類には諦めないでいただきたいですね」
「…大分最低なこと言ってますよ。それ」
「知ってますよ。でも、ここでやってくには綺麗な人間じゃいられない。それくらい経験上理解しているのでは?」
「………」
「大丈夫ですよ、物事には必ず終わりが来る。そういうものです。不変も永遠も存在しないんですよ」
「すみません隊長、副隊長!少しこっちに来てもらっていいですか!」
此方を呼ぶ声が響き、彼らは「ああ」と頷いて声の方に向かった。
そうして、時間は過ぎていく。
「今回の不死者もなんか気持ち悪くてヤだった!」
「ちっ、ヘドロかけてくんじゃねぇよ、クソ不死者が……くっせぇし」
「……」
任務を終えた紡、誠、律は泥まみれになりながら階段を上がる。
今回の不死者はヘドロを吐いて攻撃してくるタイプだったのだ。
数回攻撃を受けてしまったせいで彼らは見事に泥まみれであった。
疲れたしさっさと風呂へ入ろうと歩く彼らは、ふと足を止める。
「なんだこの混雑」
「さぁ?」
地下の扉を開け、ロビーに入った所でかなりの人でごった返していた。
食堂なら兎も角ロビーがここまで人で溢れることなどそうそうない。
「………そういえば遠征今日だっけか」
「ああ、それでか」
「うわわ!グロイの見えた!!」
「ひぇ」っと悲鳴を上げる紡。誠は運ばれて行く怪我人や遺体を見る。
「やっぱ被害エグイな」
「…しかたない」
「ううう、僕グロイの苦手ぇ……早く部屋行こうよ」
この場からさっさと抜け出したくて紡はグイグイと誠たちの袖を引っ張る。
「充幸ちゃん。なんでっ」
「………ぇ?」
ふと聞こえた声に足が止まる。声の主の場所は分からない。この混雑の中で発生源何て聞こえるわけがない。
だが誰かの読んだ名前。それは友人のものだった。
「どうかしたか紡」
「……………先、部屋戻ってて」
紡はそう言い残すと、人ごみの中に向かって行った。
「お、おい紡!どうしたよ!」
誠の声が後ろから響くが、紡は気にすることなく人ごみの中に飛び込む。
(これだけ人がいるんだもん。”みゆき”なんて名前、珍しくない。別人の可能性だって……)
そう思いつつも紡の脳内ではガンガンと警報が響いていて
早る心臓をぎゅっと押さえつけ、彼は自分の所の副隊長を見つける。
「あ、あの!」
腕を掴めば
「あ?ああ……筑波か、悪いな今忙しいんだ。話なら後にしてくれ」
「すぐ終わるから!聞きたい事があって!」
グイッと引き留める様に腕を引けば、
「聞きたい事?」
ドクドクと紡の心臓が強く鼓動を打つ中、紡は口を開く。
「そう!あの……ミユちゃん……皇充幸ちゃんって」
今回の章はかなり短くて二節で終わりです。
なんなら次の章も一節で終わりという。
ああ、どんどん終わりへ向かっている~
この作品雑草が中3の頃から描いていて。なんなら数人のキャラクターは幼稚園の時に作った子とかもいて
更に言うとこの話、雑草の価値観と雑草の性癖と雑草の実話(!?)で作っているからか、とてつもなく思い入れがあるんで、すんごく寂しい今日この頃
でも完結まで書くしかないので頑張ります(*´▽`*)