夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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久しぶりに自分で書いた小説読むとちょっと楽しかったりしますよね。
なんせ自分の好きな設定盛り込んだ小説なので。
編集しながらにやにやしちゃって、たまたま部屋に来ていた親に「きも」って言われました。泣いた(・∀・)


第三項

「おはよ」

 

がちゃりと閉じていた扉が開き、ひんやりとした風が吹き込んでくる。

布の上に丸くなって寝ていた八生は体を起こす。

時刻は午前6時。善が会いに来る時間としてはかなり早いが、八生は善を見るなり飛び起きる。

 

「おはようございます!」

「気合入りまくりだね」

 

元気にあいさつする八生に善はいつも通り言葉を返す。

というのもだ。今日は試験前日であり、昨日”準備しといてね”と予め言われていたのだ。

すぐに自身の傍に転がる鞄を持ち上げる八生は準備万端と言いたげな様子であった。

 

「荷物それだけ?5時間とはいえ一応予備のピストルと水分補給用の水くらいは持ってた方がいいよ」

「ちゃんと持ちました!」

 

鞄を揺らしながら言う八生に善は「そか、なら早速移動を始めようか」と言って善は外に出る。

八生も頷き、同じように外に出る。

 

「にしても試験前日から移動って相当遠いんですか?」

「遠いなんてもんじゃないね。徒歩だと一ヶ月くらいかかるんじゃない?」

「え、そんなに!?間に合わないじゃないですか!」

「だからE地区なんだよ」

「へ?」

 

善の返答に八生はキョトンとする。善は指を円を描くようにクルリと回す。

 

「べっつに訓練するだけならB地区でも全然よかったにはよかったよ?でも態々E地区に来たのは理由がある」

 

そして道を歩き、とある建物に入る。

建物はやはりE地区らしくいたるところがキラキラ煌いているが善はそれらには目もくれずとある階段を降りる。

するとそこには長い乗り物が一つ

電車だ。機体を覆う金属は見るからに頑丈そうで、タイヤの代わりについているのは、宙に浮かぶ為の推進装置。窓は付いておらず、代わりに操縦席らしき場所には、複数のモニターとキーボードが取り付けられている。

そしてその中央には操縦桿やペダルなどが設置されている。

 

「他の地区行きの交通機関がある数少ない地区だからだ」

「そうなんですね。それにしても細長いんですね?」

 

電車というわりには横幅が無い電車だ。

八生が知っている電車の半分くらい細さだろうか。

 

「そりゃね。地区外の下を通るわけだから、上には不死者が居る可能性がある。

あんまり穴を広げ過ぎたら不死者の重みで潰れた時怖いだろ。だから極力穴を細くして、それに適応するために電車本体も細いんだ」

「なるほど」

「因みにクソ程金がかかるし、ここ予約制っていうね」

「え!?」

「まぁ他地区へ安全に行ける事なんて滅多にないから仕方ないけど」

「ち、因みに予約はしっかりしてくれたんですよね!?お金はその……出世払いしますから!」

「必死じゃん大丈夫だよ」

「ああ、ちゃんとしておいてくれ__」

「あ、予約はしてないよ」

「ちょっとぉ!?」

「でも殲滅隊だからタダかつ優先的に乗れます」

 

どこかドヤッとした顔をしながら善が車掌と少し話。

直ぐに入って良いと言われる。

 

「ひやひやさせないでくださいよ」

「八生ちゃんってホントリアクションデカくて面白いわ。暇潰しに丁度いい」

「人を玩具にするのやめてもらっていいですか??」

 

とんとんと諫めるように八生の頭を撫でる善に八生は頬をヒクつかせながら怒るが本人はどこ吹く風

そのまま善は中に入っていくので八生も後を追うように中に入る。

電車の中は矢張り狭く、通常の電車のように椅子があるのだが、対面には椅子はなく、片方のみの作りになっていた。

 

「電車は早いけど、それでも一日半くらいかかるからね」

「だからこんな早い時間にってことですか。でもご飯どうするんです?」

「この鞄に入れてるから安心していいよ。トイレは電車後方」

 

人がドンドン乗り込んでいくのを見ながら足を延ばす。

いくら狭いとはいえ、足を延ばせる程度の長さはあった。

 

「ところで」

「ん?」

「帰りって善さん迎えに来てくれるんですか?」

 

八生が善に尋ねる。

尋ねられた善は欠伸をしながら八生をみる。

 

「いや、迎えにいくきないんだけど…え、行った方がいい?」

「私お金持ってませんし。帰れるかなって」

 

未だに無一文である八生が不安になって言うと善は「ああ、そんなこと」と納得したように言う。

 

「そこに関しては大丈夫。合格した瞬間から殲滅隊になるから特権使えるようになるよ」

「そうなんですか。でも不合格になったら?」

 

不合格になってしまった場合、その特権は使えないだろう。

そうなれば八生は帰ってくることが出来ない。どうやって帰ればいいのかと善に尋ねるが善は「あー」と言葉を伸ばす。

 

「まー…心配はないでしょ。八生ちゃんはしっかり受かる。そんな簡単に不合格になられたら困るし」

「いや、そりゃ受かるつもりでいきますけど……」

「言霊ってあるから、タラレバとはいえネガティブなこと言わない方がいいよ」

「…そう、ですね」

「あと一つ。誰かの代わりに犠牲になることは助けることとは言わない。

不合格になりそうな人庇って落ちるなよ」

「と、当然ですよ!」

「ならいいけど」

 

八生は不安を振り払うためにも仮眠を取ろうと目をつぶる。

目をつぶり眠り込む八生。隣にいる善は微妙な顔をすると溜息を吐き出す。

「……なんでどいつもこいつも死に急ぐんだか」善はぼそりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な夜道。砂利が敷き詰められているソコを空に浮かぶ人工的な月が照らす。

その先には階段と、大きな館。

何処か不気味に立ち尽くす館に、少々の恐怖感を煽られる。

感じた恐怖を飲み下し、八生は導かれるように館への階段を登っていく。

コンクリートで造られた階段はところどころ欠けて罅が入っており、一段一段踏むたびにジャリッという音が響く。

 

「此処が、試験会場……」

 

階段を登り切り、先程より近くなった館を見上げる。

予想より二回りも大きな館。

館の前には、これまた大きな門が設置されている。

年季が入っているのか錆びや、汚れが目立つ門に触れ、押し開く。

キーッという金属の軋む音を聞きながら中に入れば、目の前には一つの看板が立っていた。

【奥にお進みください】と書かれた看板

案内に従い八生は館から少し逸れた道に入れば開けた場所に出る。

 

(人いっぱい………)

 

そこには、同じく殲滅隊の試験を受けるであろう受験者たちが集まっていた。

見渡せばその殆どが男子であり、見た所女子は見受けられない。

 

(それにしてもかなりの人数……でも合格する人は殆どいないんだよね…。

いや、弱気になるな、心で負けたら受かるモノも受からなくなっちゃう)

 

両頬を叩いて気合を入れる。

その時、キーンというハウリングが響く。

音の方を見るとそこには、黒髪を一つにまとめ、赤縁の眼鏡をかけた細身の黒スーツの女性がマイクを持って立っていた。全員の視線が吸い寄せられるように彼女に向くと、彼女はピンっと背筋を伸ばして、綺麗にお辞儀を一つする。

 

「ただ今を持って受付時間を終了いたします」

 

無表情の女性の口からは抑揚のない声がマイクに乗って八生含めた受験者たちの耳へ届く。

 

「では、これより不死者殲滅隊・戦闘部隊の試験を開始いたします。

(わたくし)この試験を取り仕切らせていただく笹山千歳(ささやまちとせ)と申します。以後お見知りおきを」

 

再びお辞儀をする彼女

 

「それでは今から試験の内容を説明させていただきます」

 

千歳はいうなり館を見る。

 

「皆様には今からあの館の中に入っていただきます。

もう知っている方も多いでしょうが、あの館には不死者が複数体放たれています。

しかしあの館に居る不死者の”蔦”は抜いてありますのでご安心ください」

 

不死者はホワアンヘルと呼ばれるウイルスの感染者たちの成れの果て。

そんな彼等と同じく、人間もウイルスに感染する可能性があるという説明は善より事前にされていた。

どのようにして感染するかというと、不死者なら必ず持っている蔦や、花が”体内に入れば”ウイルスに感染するのだ。花無しの不死者の場合”蔦”が感染経路であるため、その蔦が抜かれているなら、まず感染することは無いだろう。

 

「皆様にはその館で5時間過ごしていただき、5時間後にこちらに戻ってきていただきます。それだけが合格の条件となっております」

 

千歳が言った瞬間。ギィィという軋んだ音と共に館への扉が一人でに開かれる。

 

「皆様、館の中へお進みください」

 

催促され、館の中に入る。同時に扉が一人でに閉まり始める。

扉が閉まり切る寸前、千歳は無表情のまま告げる。

 

「それでは皆様…………ご武運を」

 

彼女のその言葉を最後に、扉は音を立てて閉じられた。

完全に閉じられる際に館が僅かに揺れる。

その衝撃により、ばらばらと屑が天井から降ってくる。

 

「っ!」

 

否、屑だけではない。”黒い塊”もまた降ってきた。

驚いた八生は反射的に飛び退けば、黒い塊はうにゃりと動き出す。それは不死者であった。

 

(どこから!?)

 

不死者が居るのは知っていたが、こんなに直ぐに来るなんて思って居らず驚く。

そして天井を見て、目を見開いた。他の参加者も気付いたらしい。

天井には、カエルのような見た目の不死者が大量に張り付き、蠢いて居てた。

そんな不死者の背中にある、目玉が一斉に八生達受験者の方を見たと思えば一匹、また一匹と落ちるように襲い掛かって来る。

 

「うわっ!なんだこいつ気持ち悪い!!」

「俺こういうの無理なんだけど!!」

「っ、数が多すぎる……!」

 

素早く、銃で不死者の目玉を打ち抜くが、数が多い。打った傍からうじゃうじゃと這い出てくる。

ぬめり気のある不死者の体液が滲みだしているせいで足元が滑り動きずらい。

更にこの場は洋館の玄関口と言うには非常に狭く、開始早々だからか人も多い。

満足に動くことも出来ず、下手に武器を振るえば人間に当たってしまうかもしれない状況だ。

 

(一旦この場から離れないと……!)

 

何とか人と不死者の波を掻き分け人集りから抜け出す八生。

そのまま細い通路を抜け館の奥に走る。

途中三つの分かれ道があり、左の道を進む。

そのまま通路を抜ければ玄関からは想像もつかない程に広いエントランスホールに出る。

そこには他の部屋に続く扉の他、大量の傷や、凹み、乾いて赤黒くなった血が張り付いており、ホールの奥には、更に奥へ続く廊下と階段が置いてある。踊り場には窓が三枚並んでいて、その奥には大きな木が見える。

上を見上げれば天井は高く、二階の床から伸びた無数の鎖が天井を這っている。

横にある階段、見た所この館の構造は6階建てなのだろうと予想がついた。

 

(確かにこの広さなら、不死者に遭遇せずに終わることも出来るかも……まぁ、玄関でもう遭遇しちゃったんだけど)

 

苦笑いをすると、手を置いていた壁、通路の壁に目が行った。

玄関に繋がる廊下の壁はがさがさとしており、黒くなっている。

 

(焦げ跡……?)

 

少し指で痕をなぞるとぞわりとした感覚が体を駆け巡り、弾かれたように手を引っ込める。

触れていた手を抱きしめ、焦げた跡を見つめる。

 

(なんで……不死者は花無しのはずでしょ…?)

 

試験に使われる不死者は”花無し”だ。つまり異能を使う不死者はいない。

ぐるりと見回すが館の内装を見る限り火が付きそうなものも特に見られない、あるのは電球くらい。不思議に思い首をかしげる八生

 

「っ」

 

突然横腹に衝撃が走る。

そのまま体は吹き飛ばされるが、上手く受け身を取って転がる。

顔を上げれば、そこには黒い鱗を体中に張り付けた不死者の姿

 

「っ、いつの間に…」

「※励縺コ谿※励縺コ谿」

 

不死者がすぐそばまで来ていることに気づけなかった自身の不甲斐なさに歯噛みする八生

不死者は奇声を上げ、八生に突撃してくるが、それを寸前で躱す。

追いかける様にUターンした不死者は直ぐに前足を振り上げ八生の居た場所に正確に振り卸す。ダンっという音と共に館が微かに揺れ、硬い鱗を纏っているからか床に僅かに罅が入っていた。あんなものまともに食らったら死にかねない。

まずは腕を落とそうと画策する八生。

ピストルを構え、打つ。だが皮膚は非常に硬く銃弾は通ることなく弾かれる。

 

(堅い。全然傷つかない…予備のピストルと手持ちの弾は有限。無駄打ちは出来ない。策を考えないと)

 

必死に頭を回すが、その間も迫りくる凄まじい攻撃の嵐に防ぐ事しか出来ない。

 

(どうにかしないと………)

 

頭を必死に回す。彼女の脳裏に一つの作戦が降りてくるが正直勝率は低い。

だがこのまま戦ってもきりがない。八生は一か八かの賭けに出ることを決める。

八生目掛けて伸びてくる手を躱し元来た道へ向かって真っすぐ走る。

扉を雑に開け、その先に広がる細い廊下

廊下を全力疾走すれば、八生を追いかけて不死者が廊下に飛び込んでくる。

だが細い廊下では鱗が邪魔なのかつっかえている。

通常なら諦めて体を抜くように動く。だが花無しは規則的な行動をとらないが故に、どんな行動をとって来るか分からない。

 

(でもこの狭い廊下に連れて来ちゃえば、どれだけ不規則な行動をとろうが行動に制限がかかる以上好き勝手動けない)

 

八生は走っていた足を止めると再び低姿勢のまま道を引き返す。

不死者は未だに前に進もうとうごめいている。

八生はそのままの失速することなく低姿勢で不死者に向かって駆けると、スライディングをし地面を滑る。

不死者の足と足の間を地面を滑ることで潜り抜けると、素早く体制を戻す。

この不死者は常に八生に”背中”を見せようとしなかった。

見た所、体の前には目玉は無かった。なら、背中に生えているということになる。

そして予想通り不死者の背中には目玉が一つ。

不死者は八生を追いかけるように自身の顔を股下にもっていき、八生がやったように自身の股下を通り抜けようとして歪な姿勢となっている。

そんな不死者の背中に八生は一切の躊躇いもなく引き金を引く。

 

渇いた音と共に、不死者の背中に付いた目玉は破裂する。びたんっと尻尾が上から下に振り下ろされ、不死者の体が小刻みに震える。

目玉は壊した。時期に不死者は死ぬだろう。

 

(なんとか倒せた!)

 

八生がほっと安堵の息を吐いた…その時だった。

 

 

「う翫繝ッ繧ち九繝キ繧」

「ぇ」

 

 

『あ、そうそう稀に死ぬまで時間がかかる生命力が無駄に高い不死者とかいるから』

 

 

ふと顔を上げれば目の前に迫る尻尾が見える。

薙ぎ払うように右から降られた堅い鱗のついた尻尾は八生の横っ面を捕らえていて。

 

 

最後まで気を付けたほうが良いよ

 

 

ガンッという鈍い音が耳元で響いたと同時に、八生の意識はプツリと途切れた。




(最近失踪ネタにも飽きてきて失踪しそうになっている(?)雑草→)(´・ω・)
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