雑草、結構色々ブラフ張りました。
あまりよろしくない頭を懸命に回して必死にブラフを張りはりしました。
えー、引っかかってくれたでしょうか。引っかからなかったでしょうか。
まぁどっちでもいいや。とりま本編へどうぞ!
「こんなところで何やってんの?」
本部の外。
別に何かあるわけでもなく、強いて言うならば本部とD地区を行き来することのできる機体を呼ぶボタンが設置してある程度だ。
当然利用者なんて殆んどおらず、人気はない。
そんな暗闇に、ポツンっと佇んでいる背中を見つけ、外に出てきた善は声をかけた。
「清掃活動も撤退処理もせずに堂々とサボり決め込むなんて良い度胸してんね」
「…善くん」
此方を振り返ったのは、護であった。彼は、疲れたように笑みを浮かべる。
「すみません。天緒くんが死んじゃったのがショックで……自分がしっかりしてたら死ななくて済んだのに…」
「なるほど、落ち込んでるわけだ」
「…………はい」
悲しそうな表情を浮かべる護に、善は目を細める。
「でもサボって良い理由にはならないでしょ?」
「……あはは、相変わらず淡白ですね、善くんは……後でちゃんと働きますよ。だから…今は感傷に浸らせてください」
苦笑いを浮かべる護。だが善は「感傷なんてそれこそ後回しでよくない?」と至極当然と言いたげに笑う。
「死人を思うのは全部終わった後だよ。死人の為に一々手を止めてたら組織が成り立たない。常識でしょ?6年此処に居てそんなことにすら気づかないなんて…頭に花でも詰まってんの?」
「____!」
善の言葉に護は目を見開くと、そのままギロっと善の事を睨み付ける。
その反応を見て善は「おー、こっわ」なんてケラケラと笑う。
「まぁ、同期との楽しい楽しい世間話はこれくらいにして__なんで殺しちゃったの?」
ゾッとするほど美しい紫の瞳が護を捉えた。
善の言葉の意味が一瞬理解することが出来ず、護は固まる。
「……は?」
「天緒君の死体さ、回収したんだけど。不死者に食い荒らされたり、骨折れてたりしてかなーり損傷酷かったんだ」
「知ってる…自分は、見てたんだから。殺したって、見殺したって……助けることが出来なかったってコトでしょ……分かってますよ、自分だって。でも、自分にはどうすることも………っ、自分が、もっと」
泣きそうな顔で唇を噛みしめ後悔する護に善は「そういうのいいからさ。黙って最後まで聞けよ」と懺悔の言葉を遮った。
口を閉じる護に善はまたけろりと笑みを浮かべ、話を続ける。
「その死体、ぱっと見は不死者に殺されたように見えるけどさ。なぁんか気になってね。楓くんに頼んで検診を先にして貰ったんだ」
善は少し前のことを思い出す。
『……死体が気になるとか、ついにそっちに目覚めっちゃったの?』
『茶化さないでくれるかなぁ?普通に気になっただけだよ』
善はなんとなく連行した
善の返答に楓は残念そうな表情を浮かべる。
『残念です。私としては死体の良さを語り合える人が居てくれた方が楽しいんですけど』
『會君とか、紫空君辺りとでも語り合っててよ』
『そうですね。そうしますか……彼等は優しい人ですから、きっと聞いてくれますよね。
所で同じく優しい人な雪村くんもどうでしょう』
『冗談はその性癖だけにしてください』
『手厳しいですね………っと、結果はこれです』
そうして楓は取れたデータを善に送る。
リングで受け取ったデータを観覧し善は『……なるほどね、やっぱりか』と言葉を漏らし、隣で見ていた
検診を実際に行った楓は一つ軽く頷いた。
『天満くんの勘、相変わらずよく当たりますね。辰巳天緒、彼の死因は』
「心臓に刺さった一発の弾丸、だったらしいよ」
「!」
その言葉に目を見開く護
「銃弾事態は不死者に食い荒らされて見つからなかったけど、心臓部分に銃弾が刺さった痕があったらしいから確定だってさ」
それをひらひらと手を揺らす善
「君はさっき、彼が死んだところを見たと言ってたけど?」
「……だから自分が殺したって?」
「そう」
コクリと頷く善
「善くんも知ってますよね。自分の武器、ボウガンですよ?昔からずっと……銃なんて扱えないし…使った事もない」
「………」
その言葉に善は黙る、が
「どうでもいいよ、そんなこと」
容赦なく切り捨てる。
「重要なのは、君が殺したかどうかってことなんだから」
「…………もう一つ質問、いいですか」
「なに?」
「なんで真っ先に自分の所に来たんですか。分かったのは天緒くんの死因だけ。なのにどうして君は自分の所に来たんですか」
「今から死ぬんだから、聞いたところで意味ないだろ」
「……殺す気ですか?自分の事を。確実な証拠もないのに」
「うん」
善が頷いた瞬間、一発のライフル弾が飛び込む。それを善は鋏で弾く。
絶え間ない発砲音と金属の音が響く。火花が上がり、辺りを照らす。
「うわ、ビックリした……いきなり撃ってこないでよ。酷いなぁ」
「ホント嘘吐きですよね、善くんって……昔からそうだ。そういう所がずっと嫌いでした」
そういって護は再び銃弾を発砲する。放たれた弾は一直線に善へと向かう。
「ありゃ」
その弾はリングに当たり、爆発するが善は無傷
顔を歪めた護だが、すぐに冷静になり次の一手を繰り出す。
先程と同じ様に構え、引き金を引く。その一連の動作に迷いはない。
だが、その行動は全て読まれていたのか、善の姿は既にそこにはなかった。
護が放った三発の弾丸は空を切り地面を抉って爆発する。護は舌打ちをしながら善を探すが、どこにもいない。
「はい終了」
「っ…」
ひんやりと首元に添えられた金属のひんやりとした温度。善は背後に立っていた。
そうして、ぎらりと光る鋏の片方を護に突き付けて立っていた。その瞬間、護は僅かに足を震わせる。
「善くん……本当に自分を、殺すんですか?」
「…殺すよ」
「っ、いや、だ…死にたくない、です」
「……そう…それならまず武器を捨てて。情報を話して。そしたら見逃してあげてもいいよ」
だが護は口を固く閉じて話そうとしない。
それに善は「何も言わないなら殺しちゃうけど」といえば護はびくりと肩を撥ねさせる。そしてごくりと唾を呑み込み。
「…守って、くれますか」
「…は?」
微かに顔を引き攣らせ、身を震わせながら彼は善に聞く。
善は突然の言葉に困惑する。だが善の返事を聞く前に護は目を固く瞑って、口を開く。
「夜縁についてですが」
瞬間護の陰から何かが飛び出した。
それは護の首目掛けて飛んできていて。善は一瞬驚くもすぐに切り裂く。
護はゆっくりと目を開いて、地面に堕ちて溶けたそれを見て「相変わらず、反射神経が人間離れしてますね」と呟き、銃を投げ捨てた。
ガシャンッという音と共に銃が地面に落ちた。それを確認し、善は護に目を向ける。
「……情報を吐いたり裏切るような行動をとれば殺すと脅されてました」
「…そ。これで脅威はなくなった。話してくれるよね?」
「…はい」
今度ははっきりと頷く護
「今回の襲撃、夜縁が居たらしいけど……会ってたの?」
「あってました」
「なんで?」
「情報を、渡す為です」
「なんの情報?」
「……殲滅本部の位置」
「!!」
不死者殲滅隊はD地区やS地区にあるが、両者の場所は正確に分からないようになっている。
なんせ、隠れ地区なのだから。だからこそ、D地区という情報を知っていたとしてもその正確な位置までは分からないようになっているのだが。
「場所、ばらしたの?」
「いえ、言えてません。話そうとしたところで爆発しました」
「爆発?」
そこで彼は自身のマントを脱ぐ。本来腕があるべき場所には、枯れ木が胴体に巻き付けられているだけであった。
それだけじゃない、足や腹にも包帯が巻かれている。
「片腕飛んでってんじゃん」
「その間に撤退命令が出ました」
「へぇ…でも、ノコノコ戻ってくるなんて馬鹿だね。それともそういう指示でもされてた?」
「…これのお陰で周囲の不死者や隊員を引き寄せる羽目になりました。それに…腹や足も巻き込まれて…出血がひどくて…戻らざる負えなくなりました。あと…」
護は言いづらそうに目を彷徨わせる。
「なに」
「……ネックレスが、なくて」
「……」
護が常に首から下げているネックレス。
それは彼の幼馴染である望のものだった。見てみれば確かにその首には何もかかっていない。
その言葉に善は少し目を瞑ると、ポケットに手を入れ、取り出す。
それは護が首からよく下げていたネックレスだった。
ネックレスを見た瞬間護は目を見開く。
「これっ」
「落ちてたよー」
「……っ、とったんですか」
「だーかーらー、落ちてたんだって。耳聞こえてないの?」
「……」
護はネックレスをひったくる様に取り返すと、善を強く睨みつける。
だが善は肩を竦めつつ内心舌打ちを零していた。
(なにが落ちてたから拾った、だよ。
アイツ絶対わかってて取っただろ。余計なことするなよ、あのバカ)
このネックレスを笑顔で渡してきた人物の顔を思い出して善は内心悪態をつく。
そうして、少し深呼吸をすると「さてと話を続けようか」と話を戻した。
「夜縁にあったんでしょ。特徴とか能力とか知ってる?」
「あったのは巫女の姿した夜縁と…白とピンクのツートンにピアスを付けた夜縁、そっちは影を操ってました」
「影ね…他になにか相手にしたとかされたとか、思い当たることない?」
「……事前に一つ情報を渡してました。
開発部隊でやってる研究の内容です。
それを教えて一度本部に帰してくれるなら次会う時に本部の位置を教えるという交渉をしてました」
「なるほどね……次で最後、なんで不死者に加担しちゃったの?死にたくなかったから?」
「……はい」
「あそ、情報提供ありがとう……じゃぁ、死んでくれ」
「!!」
声と共に鋏が薙がれる。
護が咄嗟に横に避けるが、刃は護の首こそ斬らなかったが左肩を大きく切り裂く。
「な、なんでっ」
「なんで?なんでってなにが?」
「見逃すって…!」
「別に見逃すって断言してないじゃん」
「っ!!」
その言葉を聞いて、護は目を見開く。顔を青くさせ、キッと善を睨む。
「……やっぱり善くんはそういう人ですよね。
知り合いだろうとなんだろうと平気で人を殺せる人間で、幾ら人が死のうが気にしなくて、どれだけ親しかろうと顔色一つ変えずに拷問できる化け物!
だから、平気な顔して望のことだって無下にできた!人の皮を被った化け物が!!!」
その言葉を聞きながら善は表情を変えず護を見る。
「っ、なんか言えよ!!!」
「……」
「はぁっ、はぁっ」
護の言葉に反応せず善はただ黙って護を見つめる。それが余計に護の怒りを煽るが、善はそれでも無表情のままだ。そして、ようやく善が口を開く。
それはいつも通りの声ではなく、硬い抑揚のない声で…まるで感情がないかのように無機質だった。
「君がどう思っていようと関係ない。君はここで死ぬ。それだけ…動かなけりゃ痛くないように殺してやる。だから抵抗しないでくれる?」
「っ、ふざけるなふざけるなふざけるな!!!自分は、死なない!絶対に、死んでたまるか!」
叫び走り出そうとするが地面に投げ捨てた銃に足を引っかけてしまい、そのまま地面に転がる。
___もう、護は泣き虫なんだから!ほら!一緒に行ってあげるからついてきなさい!
「望と、約束したんだっ…!!!」
___護!顔色悪いわよ!どうせ昨日も寝ずに本読んでたんでしょ!ちゃんと寝ないとだめだっていつも言ってるでしょ!!
「望の分まで、生きるって!」
____護……生きて
「其の為に天緒くんだって殺して…っ、今更死ねるかよ!!!!」
そういって這って逃げようとする護
途中で銃を掴み、素早く振り返って善を打とうとするが、その前に善が護の腕を蹴る。それにより、掴んでいた銃は地面に再び転がった。
戦うすべすら失った護はズルズルと後ずさる。
「…いやだ。い、やだぁ!!」
等々善は護の前で立ち止まる。
善の手に握られたハサミが扉の前に引っかけられたランプの僅かな光に反射してギラギラと光る。
「……」
護は、息をつめて、涙で目を濡らし、恐怖で引き攣った顔で善を見る。
「確かに…自分がやったことは……悪いことだったと思います」
「…」
「でも……っ、守れるのは自分だけの状況下で…話せば自分が殺される状態で、一体どうしろっていうんですか……っ!!!」
「…」
「黙って死ねって……そういうこと、ですか…?」
「…」
なにもいわない善に彼はぐっと呑み込んで、そして
「善、くん……誰も助けてくれないこの世界で、ただ生きるために足掻くことが罪だと言うなら……自分は…一体どうすればよかったんですか…?どうすれば…」
_______護
「…………のぞ、む…?」
声が聞こえた。脳ではない。耳がそれを感じた。
見る。音は目の前。あの断罪者の影から…。
見上げるとそこにいたのは善ではなく、愛しい望だった。
「ああ…」
涙がにじむ。恐怖から一転し、安堵したように頬を緩め影に手を伸ばす。
「いま……そっちに……」
______いくから
すぱりと空気が切り裂かれる音とともに視界がズレて……暗く塗りつぶされたのだった。
「…」
背中から心臓を貫通され、息絶えた護
その死体を善は感情の薄い瞳でただ眺める。
「はぁ……」
善は物言わぬ死体から視線をずらし、何もない暗闇を見上げる。
「なんでこう、うまくいかないかなぁ」
思わずため息が漏れた。
「妙な点がある」
ふと
「妙って…なにがだよ」
「なんで夜縁と接触できたのか」
「どういうことだよ」
「わからない?」
「僕たちを襲ったのは遠征が全体に知らされる"前"だ。
僕は早々に彼に当たりをつけ、盗聴器を仕掛けてた。
その中に夜縁と合ってる様子も、ソレらしい会話を誰かと交わしている様子もなかった。勿論行動もね。
なのに、あの日タイミングよく夜縁が現れた。ご丁寧に電波妨害までして」
「……つまり、あの人は遠征のことを事前に知っていた…?」
「そう。誰かが教えた」
「上の人間で裏切ったやつがいるってことか?」
「あくまで可能性の話だよ。でも、まぁ仮に流した人物がいるとしたら」
「そいつは相当性格が悪いね」
「善さん。お疲れさまでした」
善の背後からそんな声が掛けられる。
弾かれるように振り返れば扉に凭れ掛かる様にして朔が立っていた。
「護が真坂の裏切り者だったとは、びっくりですね」
「なんか用?」
「相変わらず俺には塩ですね」
「だって護くんにZ地区の情報流したの君でしょ?」
「違いますよ。俺、善さんの言うことは聞きますから。善さんに駄目だって言われれば言いません」
「信じると思うー?」
「なら
朔がにこりと笑みを浮かべて言う。善もまた口元に笑みを浮かべながら朔を見つめ、軈て面倒くさそうに溜息を吐くと「ならもう寝なよ」と言って、護の死体を掴んだ。
死体を移動させようとしているのだ。そんな善の様子を見つめながら朔はゆるりと目を細める。
「善さん。一つ聞きたいことがあるんです」
「んー?」
善は振り返ることなく聞き返す。
「護は死ぬことこそ地獄だと思うから救われなかった。なら、生きていることが地獄だという人間は簡単に救えると思いません?」
朔の言葉に善は手を止める。そうして朔の方を振り返った。
笑みはなく、無表情で。だがその瞳は、鋭い。
「誰に何を吹き込んだ」
「質問に質問で返さないでくださいよ」
「隊長命令だ。答えろ」
「善さんを嫌いたいけど嫌えない人」
朔の言葉は人名ではなかった。だがその言葉だけで善には誰を指しているのかわかった。
表情が変わる善を見て朔は笑みを深める。
「でもそう思いません?
一般的に自殺という行為は忌むべきことです。
命を大切に、生きたくても生きられない人もいる、悲しむ人がいる。だから自殺はダメだって…。
命を掃いて捨てるようなこの環境でも、それは常識として刷り込まれてる。
…でも希望も目標もなく生きることに絶望している人間に生きることを強要するのは酷だと思いません?」
「……人には生まれながらに役目がある。それを果たさずに自ら死を選ぶのはただの逃げで、その人のために動いてくれた人間の思いを踏みにじるだけの行為だ。
死んでほしくないんじゃない。生きる義務があるから生かすんだ」
善は朔の横を通り抜けて本部の中へと駆け出す。善の姿を見て、朔は目を細める。
「相変わらず自分に言い聞かせるのがお好きなようで」
朔は護の死体へと近づく。
「馬鹿ですね護は
自分で考えようとせず、いっつも誰かの言葉に乗せられて利用されて……そんなんだから碌な死に方しないんですよ」
朔は護の頬を撫でる。
「まぁでも、君もある意味被害者なのかもしれませんけどね。
何でもかんでも決めてくれる世話焼きな幼馴染が傍にいれば、そりゃ何も考えられなくなるのは当然ですから。
とはいえ……結局君の自業自得ですが」
そうして朔は顔を上げ
「そう思いません?」
そう独り言のように呟き、明るく笑った朔は護の遺体の脚を掴み本部へと引き摺って行くのだった。
ーーーーーー
「ハコビ、G地区にいって」
善は本部を走り抜け、地下へ駆け降りるなり、迷わず告げれば、ハコビは答えるように鳴いて善の望んだG地区へ飛ばしてくれる。
短く「ありがと」というと扉を躊躇いなく開いて外へと飛び出す。そこは何もない草原
一見するととても平和に映るその景色は善にとってあまり良い思い出のある場所ではなかった。
だが、そんな悠長なことをいっている余裕もないのだ。善は記憶を頼りに走り出す。
どれほど走っただろう。今まで変わることのない景色に変化が出始める。視力でぼやけ始めるほど遠い道の先。そこに米粒程度の家が見えた。
「……」
気づけば善はその家ノ前に辿り着いていた。小屋は年季が入っており随分と老朽化していた。
善は特にぼろくなった扉を見る。錆だらけのドアノブがついていて、扉の金具などもさびているのが見て分かった。
これだけ錆びていれば、簡単には開かないだろうな、なんて思ってドアノブを軽く捻ってみれば、ノブは簡単に回る。
そうして、キーっと嫌な音を響かせながらゆっくりと扉が開き、そして
「………あーあ、無駄死にだぁ」
ポタポタと恐らく排泄物であろうものを足から垂らして、老朽化したクローゼットのなかに収まっている女に目をやり、善は無機質な声で呟いた。
クローゼットの服を吊り下げる鉄棒に湿気てカビになっている服の袖を数枚繋ぎあわせロープ状にしたもので首を吊っている。何処か微笑みを浮かべて死んでいる彼女の姿を見て最初に脳内に出た言葉がそれだった。
もっと他にあるだろうと思うが、なにも思い付かない。どんな感想も浮かばなかった。
善にとって、彼女……亜怜はその程度の存在だったのだから。
でも、亜怜を庇って死んだ充幸の死があまりにも報われないと、そう思ったのは確かだ。
一先ず、このまま放置するわけにもいかないだろうと亜怜の首に手を伸ばし、ロープを引き抜く。
____善ちゃん
服をほどく際、脳裏に声が響く。
それは過去の記憶
善の眉根にくっと皺が寄る。
「……どいつもこいつも…ほぉんと悪趣味で嫌になる」
よりにもよって服をロープにして死んだ女と、この事態をわかっていて引き起こした男へ向け、善は呪詛を溢すのだった。
「皇亜怜は死亡しました」
「そうか…」
とある部屋の一室に手、善は首領である大賢に亜怜の死亡を報告をする。
報告を受けた大賢は目を伏せる。
「とても残念だ」
「そうですね」
「ああ……それで、これは?」
「支援のとある隊員が渡してきました」
大賢の前に置かれた机には一つの機械が置かれていた。薄い画面には白い点が点滅していて、何かの発信機だということだけはわかる。
大賢は機械を手に取り首を傾げる。
「これはなんの発信機だ?ここは…かなり北の方をさしているようだが」
「本人が死亡しているので正確には分かりませんが……夜縁の一体と交戦したと聞いているので、夜縁に付いた発信機かと」
「なに?」
その言葉に大賢は目を見開く。
「確定ではないですが、可能性は高いでしょうね。偶に動いてますし」
「……そうか、そうか」
善の言葉を受け、大賢は笑みを浮かべる。
それを隠すように片手で口元を覆うが、口元は大きく開き、全く隠しきれていない。
「ふ、ふふふっ、亜怜、彼女は最高の仕事をしてくれた。これで、これで漸く憎き夜縁を殺し、人類の明るい未来へ進める!」
「そうですね」
「……報告ご苦労だった。天満くん。下がりなさい」
そう言われ、善は大人しく部屋を出て行った。
一人となった部屋の中、大賢は一人顔を覆って笑い出す。
「ああ、長かった!長かったよ!だが漸くだ。漸く私の研究が完成する。天人計画を成功させるのは、私だ!」
貪欲な声が部屋に響き渡った。
虫生望は大犬護を護りたかった。
大犬護は虫生望との未来を望んでいた。
そんな彼らの行動はただの独善に過ぎなかった。