「気が重い…」
「だからって凭れ掛って来るな」
「だってー」
W地区。機械チックで、巨大な歯車の時計塔や、機関車などがあるこの町はZ地区へと繋がる場所だった。
そんな街を眺めて、
彼らの憂鬱の原因は彼等に渡された任務の内容にある。
「Z地区の任務って…今まで生還者はゼロ。入ったら二度と出てこれない魔都。
そんなのに新人三人で行くとか死にに行くようなもんじゃん。これで気が重くならない方が変だって。
てか、俺等がチーム組まされた理由これじゃん。
タイミングもそうだしさ。この任務にかこつけて切り捨てるつもりしかないじゃん」
善は試験会場を燃やしたことをはじめ、支援部隊長である亜怜を殴るという暴行やそのほか任務での勝手な行動。普段の態度などと問題行動を数多く起こしているが、実は雪村兄弟も”問題児”という点においては同じだった。
善に比べればそこまでデカいことをやっているわけではないが、それでもチリが積もればなんとやら。彼ら三人はチームを組まされ……そして今日、切り捨てられるのだろう。
「一瞬Z地区いってからすぐに引き返していいかな…」
「資料の奪取までが任務内容だ」
「用意周到だこと」
肩を竦める
そうして彼は視線を
彼が見ているのは町の広場の中央
「なんで天満くんはいつも通りなの?てか何気に子供に人気あるの何なの?」
「いや、あれは同い年の子供だと勘違いされて囲まれているだけだろ」
広場の中央にはなにやら白い袋を持った善がいて、そんな彼の周りにはこの町の子供が集まって楽しそうにしている。
善も片手で袋を持ち直すと、子供の頭を撫でたりしているようだ。
因みに無表情。
「てかもう、Z地区天満くん一人にやらせればよくない?
不死者退治大好きじゃん。俺等は家帰るなりして仕事サボってさ。上に噓報告して免除してもらった方が良いって」
「………」
「冗談。そんな目で見るなよ」
「いいから行くぞ」
「はいはい」
二人は善の所へ行く。
「天満。油売ってないで行くぞ」
「…油は持ってないけど」
「ふざけてるのか?」
「?」
「…はぁ、ただでさえ気が重いのに………もういい、行くぞ」
首を傾げて不思議そうな顔をする善を連れ、Z地区行きの電車の前に向かう。
「これがZ地区行きの列車か」
「地獄行きの間違いでしょ」
中々一歩を踏み出さない二人だったが、善は平然とした顔で電車に乗り込むと、電車の中をキョロキョロと見回し「おー」と小さく感嘆の声を上げ、ストンっと乗車席に座った。
「だから、なんであんな普通なの…」
「今だけはあの豪胆さを見習いたいな」
なんていいつつ、結局彼等も電車に乗る。
そうしてリングを翳せば扉が閉まり、ゆっくりと電車が動き出す。
善は荷物を横に置くと、電車の窓に手を掛けるとじっと外の景色を眺めている。
「なにあれ子供じゃん」
「見た目だけでなく精神年齢も幼いのか」
思わずといったように
「子供だけど…12だし」
「え、嘘でしょ同じ年!?」
「年下じゃないのか」
驚いたような反応をする二人に善は何度も目を瞬かせる。
そんな善を見て
「でも存外世の12歳ってこんな餓鬼っぽい物なのかも」
善の心に1ヒット
「こんなに馬鹿そうなのか?12歳は」
善の心に2ヒット
「さぁ?そうなんじゃない?俺らからすれば子供っぽいけど」
善の心に3ヒット
ゴスゴスと善の心に言葉の刃が突き刺さった。
瀕死に成りながらも善は言う。
「……結構12にしては大人びてるって言われたし」
善は殲滅隊に入る前によく言われた言葉であった。
「「どこが?」」
しかし思いっきりカウンターを食らってしまった。
「……どこがって…」
そうして善は言い返そうとして…。
「どこ?」
「いや俺らに聞かないでよ」
「…そういうとこだ。馬鹿」
「……ばか」
「で?さっきから気になってたんだけど、それなに?」
会話を変える様に
「Z地区行くって言ったら同期がくれた」
「餞別?」
「冥土の土産だろ」
そんな
「あ、今日は雨が降っていない日だな」
「雨降るの?」
「結構な頻度でZ地区は降るよ。
でも今日は降ってなくてよかったかもね。ただでさえ低い生存率をさらに下げたくないし」
そんな会話をしているとやがて電車が止まる。そうなってしまえばここはZ地区だ。
「あ、降りる前にこれ着なきゃ」
そういって取り出したのはフードのついたパーカーだった。
「なんで?」
善が首を傾げれば
「Z地区には花粉が多く舞っている。その花粉の成分はホワアンヘルの原材料となった花とされており、人体に悪影響を及ぼす。発病や、最悪死を招く。Z地区が危険区域と言われている理由の一つだ」
「だからこれで防ごうってこと」
フードをつければ顔の前で透明な布が揺れる。
「あ、なんか風出てる」
布の下に手を当てれば風が吹き出しているのがわかる。
「下から花粉が入ってこないようにしてるの」
「ふーん?」
ぴょんぴょんと飛んでいるが軽い布のくせに透明な布が捲れることはない。
(ぜーんぜん捲れない。どういう技術使ってんだろ………?)
「遊んでないで降りるぞ」
「ん」
そうしてフードをしっかり被って降りれば、そこには馬鹿みたいにデカい門があるだけであった。
「これ、開けるの?」
「無理だ。この門は錆びついていて絶対に開かない」
「ハコビも使えないし……ってなると登るしかないよねー、あー、面倒臭ぁい」
それを門へ向け、発射した。
デカい爆発音とともにセットされていた弾が飛び出し、高い壁の上へと着弾する。
着弾した瞬間弾の先端が割れて、中から返しが出てくると壁に突き刺さった。
ランチャーの銃口と弾はロープで繋がっている。
思いっきり引っ張って取れないことを確認すると
暫く登っていけば、ようやく頂上が見えてきた。
巨大な石の上、かなりの分厚さで下を見下ろせば、落ちれば一たまりもないほどの絶壁
そうして何といっても
「不死者多……」
今まで見たことがないほどの不死者が蠢いていた。
地面が見えないどころか、上に乗っかってニ、三段に積みあがっている不死者の姿もあった。
量が異常すぎる。その上、建物らしきものも、不死者の海に呑まれていることは当然といえ、年季の入りようがひどく、どこもかしこも腐敗していた。
「流石、何百年も不死者で溢れかえっている未開の地って感じ」
「未開なの?」
「まぁこの不死者の量じゃねぇ。入れる奴ほぼ居ないでしょ」
「……何年もかけて上からちょっとずつ削れば数は減るでしょ」
「あの遠くの門、壊れてるだろ。
あそこから不死者が流れ込んでくる。
何故か不死者はZ地区に集まって来る習性があるようだしな。
あの門を塞げばいいんだろうが、この不死者の量じゃどうにもならない」
「……」
「で、俺等の任務は資料の奪取
資料があるのは研究施設で、ちょっと高いあの建物が研究施設と考えるのが妥当かな」
指さした先、そこには他の建物に比べると幾分か高い建物があった。
「で、問題はどうやって潜入するかだ」
「この不死者どうにかしないと向こうにはちょっとね。花無しとはいえ、蔦邪魔だし」
「見たところ、花咲きも結構混じってる」
「なんで不死者って共食いしないんだよー」
これからどうするか相談する二人を横目に善は袋の中身を漁る。
そうして、丸い塊を一つ取り出し、躊躇なく放り投げる。
放られた塊は円を描いて宙を舞い……思いっきり爆発した。
しかもただ爆発するのではなく、中から何か煙が出始める。
「え?」
「は?」
その光景に目を瞬かせる二人
そうしてバッと勢いよく善の方を見る。
「今何を投げた」
「なんかすごい煙出てるけど……」
「試作品の爆弾?」
首を傾げながらも善はポイポイと爆弾を投げる。
色んな場所で爆発し、煙が出たり火が出たり、なんかよく分からない音が出たりとすごい爆発の仕方をしているそれらを前に二人は啞然とする。
「いやいやいや、色々言いたいことあるけど、まず試作品って?」
「同期に、科学部隊の隊員と幼馴染だっていう奴がいて
その人経由で科学部隊で作った試作段階の爆弾とか実験品とかあるから試しに使ってほしいって。一応不死者対策で作られた奴だから、多少効果あるかなって」
「それ実戦で使うの危なくない?大丈夫??」
「……確かに効果はあるみたいだが…」
下を見れば、倒れている不死者やらもがき苦しんでいる不死者、バッチリ死んでいる不死者、何故かフラダンスを踊る不死者がいる。
「いや、フラダンス踊ってる奴何なの!?絶対おふざけの賜物でしょ!アレ!!」
「モデルポーズしてる奴いるぞ。良かったな
「何が!?」
そんなことを言っている間にもどんどんと不死者達が戦闘不能になっているのがわかる。
まるで地獄絵図のような光景だ。
そんな中、
そういえば、善がさっきから全く喋っていないことに。
善を見れば、彼はいつの間にか袋から出したらしい鯛焼きを齧っていた。
「お前は本当にマイペースだな」
「吞気に鯛焼き齧るとか正気を疑うよね……っと、かなり無力化出来たんじゃない?」
呆れつつも下を見れば、確かにかなり無力化出来ているらしかった。
「まぁ、奥の方とか全然不死者いるけどね」
「うだうだやっていても状況は変わらないだろ」
「そうだね。ほら天満くんそれ早く食べちゃって。
「ん」
急かされ、さっさと鯛焼きを食べきると同時に
それに続き善も「んじゃ後方支援頼んだ」と言うと、ぴょんっと後ろ向きに飛び降りた。
着地と同時。二人は武器を取り出し、思いきり叩き付ける。
その一撃で不死者は衝撃で吹き飛び、潰れる。
「って、天満くんそれ何!?」
ふと
「科学部隊の人に改造された」
「……君、科学部隊と仲いいの?」
「隊長の人とは多少交流はあるよ」
「前にヤニ切れで廊下で死に掛けてたから、煙草取って来てあげた」と、廊下で善の足首を両手で掴み「もう無理です、煙草が無いと死にます」とぐでぇんっとなっていた楓の姿を思い出して言えば
「まぁあそこの部隊って大半が研究中毒だから噂とか興味ない人多いもんね……でも新しいもの本番で使って足引っ張るのだけはやめてね。心中する気はないから」
「わかってる」
そんな話をしながら、二人はドカドカと不死者を殺していく。
不死者や崩れかけの建物を利用して飛び回りながら、蔦をよけ、それを武器に巻き付けると、梃子の力を使って他の不死者ごと叩き潰し、巻き添えにして殺していく。
(花無しは目玉が飛び出してることがおおいから、簡単に死んでくれるけど、数が多いのが厄介だ。でもまぁ、花咲きを気にしなくていいのは楽だな)
少し頭上を見れば、二人から少し離れた場所、出来上がった不死者の死体の上に立ち、ライフルで花咲きを遠距離射撃で殺していく
善はさっさと資料を取りに行くかと少し高く飛躍する。
そうして、不死者目掛けて鋏の片方をぶん投げ、それを足場にしてまた飛ぶ。
飛ぶ瞬間にリングのボタンを押して、鋏を一旦収納し、再び出現させ、また同じことを繰り返す、というような形で強引に足場を作って先へと進んでいく。
「とんでもないこと考えんなー」
それを少し離れた場所から見ていた
と、同時に
先に施設に辿り着いた善は、ガンっと勢いよく建物の窓枠に飛びついた。
「……17」
滑らないように手足を建物に引っかけて中を覗けば、満帆とまではいかないモノの不死者がやはり徘徊しているらしかった。数は見えている限り17体
花咲きではないので、これなら余裕だろうと、中に入り素早く殺していく。
「っ、けほけほ」
殺し終ると同時に咳が出る。
無理もない。ここは何百年と放置された建物なのだから埃は凄いに決まっているし、見ればパラパラと天井から砂埃と溜まった雨水が降ってくるうえ、床は壊れて穴だらけ…壁もまたひび割れがひどい状況だ。
コンクリートのような硬い素材で作られた己が立っている床ですら、少し凹んでいる。
割れた窓枠から外を見れば、離れた場所から此方に向かってきている
「右いく、左ヨロシク」
〈え〉
相手の返事は特に待たず、端的に用件を知らせるとリングを切る
そうして善は右に続く廊下に足を進める。
中は予想以上にひどい状況であった。
そこかしこに黒い何かが落ち、骨のような少し黄色掛かった白いものや、ボロボロの布、
黒く変色した液体などが飛び散っている。
天上床壁、どこをみてもへばりついているのだから相当だ。
不死者こそあまりいないが、匂いは酷く善にとってはかなり苦痛だ。
(きもちわる……っ)
思わず顔を顰め、鼻を抑える。
奥へ行けば行くほど匂いは酷く、黒いものの存在も多くなっていく。
と、そこで扉があり、横にはプレートが
「実験・火3?」
首を傾げる。
どういうことか分からず、一先ず開けるかとドアノブを回すが、ノブは錆びている上に、金属部分が解けているのか開かない。
仕方がないので大胆にも壊して中に入るが
「うわ、浸水してるし」
扉を壊せば、じゃばっと水が流れ込んでくる。
靴を水びだしにしながらも中を覗けば、そこは拷問部屋らしき部屋、それに
「透明なガラス……?いや、シリコン系?」
この施設の壁の上から、なにやら分厚い透明な板のようなものが張りめぐらされている。
それが剥がれているであろう場所は、壁が剥き出しになっているからか、焦げてはいるが、その他は綺麗なままだ。
(水でカビは生えてるけど数百年たってるわりにかなり綺麗…不死者が入ってきた痕跡もないし。実験施設ってだけあって、その辺頑丈に作ってるのか)
部屋の中心には黒い塊がへばりついていたり、透明な壁に、手で擦ったあとらしき黒い液体が付いている。
部屋を出て、横を見れば、実験・物理や実験・水、電気などがある。
何が起きたのか、いまいちよく知りはしないがこの状況だけで十分想像がついてしまって気分が悪くなり、善は少し顔を顰める。
そうして暫く回るが資料室らしきものは見当たらない、が
「!」
リングに発信の音が響き、見れば「資料見つけた」という短いメールの文が来ていた。
そうやら左側に資料室があったらしい。
速足で来た道を戻れば、丁度
「一人で動くなと言っているだろ」
「関係ないし。今日で関係解消でしょ」
「………」
善の一言で黙る
「あ、館内地図」
ふと見れば、壁には館内らしい地図があった。
「…ただの紙っぽいのに全然ボロボロじゃない。普通に字が読める」
「恐らく
今ほど技術が発展していない時代のものだからか多少劣化はしてるが……この程度なら問題ないだろう」
掠れた地図の文字を読む。建物は四階建て、各階の部屋のことが細かく書かれていた。
どうやら2つ下の階に資料室があるらしい。
ここに行けばいいのだろう。
そうして階段を2つ降り、地図通り向かえば、すぐ曲がり角の部屋に
「あ、来た来た」
ひらひらと紙を持って振る
「文字が掠れてあんまり読めるのないし、荷物多いと邪魔になるから数枚読めそうな奴だけもって帰ろうと思うんだけど、一人でやるの怠いから手伝って?」
引き出しを開ければ埃と共に、紙が飛び出してくる。
だが、
「これ読める」
その中から善が一枚を取り出す。
「研究の資料か」
「んー、なになに……」
【研究体の血肉を切り取って作った新たなホワアンヘルが開発された。
様々な改変を持って、同じような研究体が出来ることが増えた。
体の強度にもよるが、失敗率は低く、高確率で実験体Оを作り上げることができるようになった。
だがしかし、実験体Оもまだ完璧とは言い難い。
他の実験体たちと同じく、やはり目玉を潰してしまえば死亡してしまうのだ。
これでは天人計画完遂には程通い。
捨て駒として利用する分には申し分ないが、この計画の最終目的は不死を作り上げることだ。
其の為、不死者の実験を再び続けることとなった】
「天人計画とやらは知らないが、ホワアンヘルといえば不死者の素となるウイルスか」
「うわ、あれ自然発生したものじゃないんだ……てことは人間は自分たちで開発したもので自滅したってこと?」
うわっと顔を顰める
だが善だけは、淡々と他の資料を探す。
「ノート発見」
棚の上に会った古びたノートを持ちだす
殆どのページが千切れたり、乱雑に殴り書きされているが
【87回目、失敗。またもや失敗した。
研究体Оを作るためのホワアンヘルは量産が非常に難し__政策には半年以上を費___。
上も無駄に使用するのは止めろと_____しまった。
残りのスト____も少なく、研究体Oの数も減って来た。仕方がな______】
「研究の記録日記って感じだな」
「読めない箇所はあるけど、いくらかは読めるね」
【正しく奇跡が起こった……と言っていいだろう。
一帯の研究体Oを、研___員の一人がうっかり専用部屋に一ヶ月以上放置してしまっていたらしい。
研究者は_____それは首____失態で____逃___た。
理由と__は、その___に変化が見ら___った、というからだ。
放置された研究体は塞ぎ込み、怯えていた。まるで、人間のように。
それだ___別にどう__よかっ_____。
暗闇を見た瞬間、恐怖を____回復力を見せるようになっ____。
研究体Oだけでなく、研究体たちはどうやら日の光を前にすると弱まる傾向にあるため
暗闇の中に居続ければ強くな____見解____だ__。
研究者が____拷問___結果、同じ症状___出た其の為、恐らく研究体Oは精神状態___環境下____変動する___ない。
さらに、体質までも変動するようだ。と___この実験の結果次___天人計画を完遂する方法もあ___ない
そう___ば、俺は___はで____】
そうしてノートを捲れば、四つ折りになった紙が三枚ほど出てくる。
「……この実験の結果っぽいけど…みる?」
「遠慮しておく」
「……みる」
「マジ?肝座ってんね」
善がおられた紙を広げ、資料を見る。
それはそれで、断片的にしか見えなかったが、特に目に付いた文字は”家族だった研究体同士を殺し合わせた”や”研究体に他の研究体の肉を食べさせた””一年以上拷問にかけた””自身の臓器を取り出して、口に詰め込み咀嚼させた”など非人道的な行為の数々がつづられていた。
その最後には”これも人類の為、その礎となれて彼等も嬉しいことだろう”と綴られている。
そうして、その他にもノートを捲り、最後のページにはこう締めくくられていた。
【とある研究員の男が、不死体Θたちをつれて脱走した】と。
「…読み終わった?」
「うん」
「ならもう帰ろうよ。荷物はこれだけでいいでしょ」
「このノートと四枚の資料だけでか?」
「鞄とか持ってないし、邪魔になったら嫌じゃん。それに、どうせ上は成果なんて端から求めて無いでしょ。
俺等が死ぬだろうって思ってるから大した期待もしてないだろうし、ならこれだけ持って帰れば十分じゃね?」
「それもそうだな。僕としても、いつまでもここに居たくはない。天満もいいよな?」
「…もう少し残る」
「「は?」」
善の言葉に二人は驚愕する。
何を言っているんだと言いたげな顔で、だが善は資料に目を通し続ける。
「二人は先に帰って」
「……それ本気で言っているのか?」
「冗談言ってるように見えるなら相当な節穴だね」
「死ぬかもしれないんだぞ」
「その時はその時でしょ」
その言葉に
「天満くんは実力あるし置いてっても大丈夫っちゃ大丈夫でしょ、俺等の仕事はこれ提出するだけだし」
「それもそうだな」
そうして先ほどの善を心配した言葉はどこへいったのか。
いつも通り、二人で帰ろうとして
「でも状況が状況だしさ、一旦帰らない?ほら、一応俺ら仕事で来てるし!」
「…は?」
それは”
だからこそ
その視線に
「!」
突然飛んできた”光を纏った何か”によって善の体が横に吹き飛ばされた。
そのまま壁を突き破り、不死者の海に落ちていく。
「はっ…」
突然の事態に目を白黒させる
「あらあら、交わされちゃいましたわ」
かつんっと靴の音が響く。
昏い闇がゆらりと揺れ、闇の奥から顔を出した其の人に、二人は警戒をあらわにする
「ごきげんよう」
長い金髪をゆるく巻き、御嬢様のような華美な装飾のなされていない、上品な長い目のドレスを身に着けた女。額には、角のようなものがあり、目は紅く角膜は黒い。
「お、美人」
「まぁ、お口が上手ですのね」
「ふふ、人にあったのは久しぶり…その上、あった殿方がこんなに素敵な方だなんて……嬉しいですわ」
「そっか、そんな綺麗なお姉さんに相談なんだけど、ちょっと俺等の事見逃してくれない?」
「別に構いませんよ」
にこやかに肯定する女
「マジ?」
「なんのつもりだ」
「わたくし、
だからずっと退屈で…貴方方がここにずっとここにいて、わたくしの話に付き合ってくださるというなら、構いませんわ」
「ずっとって、ずっと?」
「ええ、わたくしがこの地を離れるその日まで、ずーっとです、いい考えでしょう?」
にこっと微笑んだ女に、顔を引きつらせる
やがて、
「それは無理な相談だな」
「あら、どうして?」
「ここで殺すから」
たんっと軽やかな音と同時に、壁の穴から飛び込んでくる影
それは外へと弾き飛ばされていた善であり、軽い身のこなしで飛び込んでくると勢いよく鋏を振る。
その鋏は的確に目玉を付いた……筈だが
「硬っ」
「ふふふ」
刃は目玉を貫くことなく弾かれる。
同時に、ばちっと光……雷が発生する。
「少し油断してしまいましたが、ふふ、死んでなかったんですね」
「悪運強いんだ」
蹴りを放たれ、それを躱すと此方からも蹴り返そうとするが物凄い雷が発生し、後方に下がる。
「さて、この状況どうするよ」
「塀を登り切る時間はなさそうだな」
「勿論です。逃がす気なんて毛頭ありませんもの」
「なら殺す一択でしょ」
その言葉と同時に物凄い雷があたり一面に発生する。
同時に三人は外に飛び出す。すぐ下には不死者の死骸が積み上がっていた。
「これ一人でやったのか」
「うん」
「えっぐ」
死骸の周りにも生きた不死者がよじ登ろうとするのを殺しつつ、上から降って来る雷の塊を躱す。
「申し遅れました。わたくし
笑みを浮かべる彼女の手足からは花びらが雷と共に舞い落ちてくる。
まわりの不死者ごと蹴散らしてくるので足場だけは確保しながらも、三人は逃げ惑う。
雷華の攻撃は大雑把だが、一撃でも貰えば致命傷だ。
どうにかして攻撃を当てたい所ではあるが現状打つ手はない。
雷華はふわりと浮き上がると、一気に急降下してくる。
そのままこちらに向かってくると思いきや、急ブレーキをかけて方向転換をする。狙いは
近接が得意な善や
それに気づいた
バチィッという激しい音と共に電撃が流れ、感電したかのように全身が痺れる。
その間に、不死者が寄って来る。
すると見事に命中したようで、首の骨を折った音が聞こえた。
その間に
しかし、相手もただでは死なないらしく、雷を纏わせた爪を振りかざしてきた。
それを防御するが、やはり中々攻撃が通用しない。
雷華はふと不敵な笑みを浮かべると再び上空へと飛び上がり、雷を身に纏わせ始める。
不味いと思った時には遅かった。
彼女は両手を広げると無数の雷球を作り出し、此方に向けて撃ち出してきたのだ。
弾丸は真っ直ぐ飛んでいき、雷華の肩を撃ち抜くが、大したダメージにはなっていない……が
そもそも
弾は煙を纏った弾丸だった。直撃した雷華の視界を一時的とはいえ塞ぐには十分だ。
雷華が雷を纏った腕で煙を振り払う。晴れた視界。だが、そこには既に三人の姿はなかった。
「何処に行きましたの?…………いいえ、どこに隠れていようが構いませんわ」
雷華はそう呟くなり雷を巻き散らかした。
「うーっわ、無差別放雷してるよ」
「ああ、そうみたいだな」
姿を消した三人は現在、とある建物の屋上に潜んでいた。
この場所なら不死者が居ないため、一時身を隠すのに適していると判断したのだ。
「にしても、戦闘狂の天満くんがまさか一時撤退を申し出て来るなんてねー、俺ちょーびっくり」
「戦闘狂じゃないし」
善は心外とばかりに顔を顰め乍らいう。
「それに、このまま下手に攻撃を続けていても疲労でこっちが負ける。なら策考えてからの方が良いでしょ」
「意外と冷静キャラ?」
「
「ふざけてないってば」
ふぅ、と
「で、何か策はあるのか」
「…あの目玉、かなり硬かった。夜縁の目玉って皆あんな硬いのか…それともあいつだけなのか…まぁそういうわけで、一人で切るのは難しいと思う」
「お前がひ弱なだけじゃなくてか?」
「……」
「うおっ!?」
善が地面に人差し指を当て、軽く力を入れた瞬間、バキッと地面に亀裂が入る。
「……ひ弱という訳ではないみたいだな」
「いや人差し指でこれって……馬鹿力にもほどがあるでしょ…」
「まぁそういうわけで、アレの動きを止めないと話にならないね」
「なるほどねぇ…で?頭のいい
「一応。ただ、これに関しては環境が揃うかどうかが鍵になって来るが」
「どんな作戦?」
そう聞く善に
【世界観メモ16】
防護パーカー
Z地区では人体に悪影響を及ぼす花粉が舞っており、それを防ぐためのパーカー
重量はかなり軽い。所謂ベルトパーカー
フードには透明な布がついており、顔を守ってくれる仕様。
なお、なぜベルトパーカーなのかというと、雑草の好みだからである。
パーカーは絵で書きにくいけどいいぞぉ!
【世界観メモ17】
腐朽紙
その名の通り腐ったり朽ちたりしない紙
数百年前の物でもその効果を発揮するのだから相当である。
雑草の独り言
最近Vチューバーのキャラデザ作ることになって、その際にベルトパーカーというものを知りました。ハマりました。
なにあれ可愛い。あの、首元ネックウォーマーみたいになってるやつがお気に入りです。
今まで彼らの衣装って軍服チックというか、そっちよりだったので、今回Z地区に入る際はラフな格好になって貰いました。かわよ。