夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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今回でこの章は完結!!!いやぁ早い!
次はいよいよ最終章!終りが見えてきました!悲しい悲しすぎるよ!!!
思わずよるとばで2分半のアニメーションつくるくらいには悲しい!合計1300とかそれくらいイラスト描いてせっせと動かして文字入れしてエフェクトかけてとそれはもう全力で動画作っちゃうくらいには悲しいよ!(´;ω;`)

(なお他にも大量に課題がある中で1000枚以上のイラストを描いたため雑草は無事死亡した\(^o^)/
なんなら百枚はアニメーションの都合で没になったし(泣))



第四項

「見つけました」

 

とある建物の陰から飛び出すのは善と日向(ひなた)

二人はそのまま外に飛び出すと、雷華は雷を打ってくるが武器を片付けることで身軽となった二人はふいっと体を逸らして躱す。

そうして、鋏を一本だけ取り出すと、勢いよく投げつける。

雷華はその攻撃を軽く避けるが次の瞬間鋏がブーメランのように戻ってくることで、雷華の両足に突き刺さる。

同時に彼女の顔目掛けて死角から先程と同じ煙の弾丸が飛んでくることで視界が曇った。

 

「またですか!?」

 

叫ぶ雷華を背に、二人はさっさと先ほどの研究施設に飛び込む。

最上階から二個したの階に窓から飛び込む。

窓の外から見れば、相変わらず雷華が辺りを探している気配がある。

時折、地震のように建物が揺れ、ばらばらと砂埃が降って来る。

 

「場所が近いからか妙に振動くるなぁ」

「そんな事より、ここからどうやってうまいことコッチに誘導するか…下手に警戒されても困るから露骨に姿見せるわけにもいかないし」

「大声で話すとか?」

「この爆音の中で?」

「無理だねぇ、はぁぁ日向(ひゅうが)め、肝心な所丸投げしてきてさぁ」

 

「それくらい自分で考えろ」と冷たく言い放ってきた日向(ひゅうが)を思い出してうげっと顔を顰める日向(ひなた)

 

「一先ず、適当に行動を起こすか」

 

そういって、善が体勢を低くしつつ、少し移動した……その時

 

「!」

 

バキバキバキっと恐らく雷がこの建物にぶつかったのだろう。

物凄い揺れと共に、爆音が響き、天井が砕け、そして、ガタッという音と共に天上が瓦解して善の頭上へと降り注いだ。

 

「っ」

 

日向(ひなた)は目を見開き、咄嗟に善の腕を掴むと自身の方に引っ張って抱き込む。

引っ張られたおかげで善は無傷だった。

だがまさか庇われるとは思っていなかったのだろう。きょとりとした顔で固まっていた。

しかし、善以上にキョトンとしたのは庇った本人である日向(ひなた)自身であった。

ポカンとした顔のまま善を見下ろし「なんで俺…日向(ひゅうが)じゃないのに」と呟いている。

その間に、善はいそいそと日向(ひなた)の腕から抜け出せば、日向(ひなた)もハッとしたように顔を上げ、そしてへらりと笑う。

 

「あー、そういえば天満くんって触られんの嫌だーって言ってたもんね!ごめんごめん。あはは、俺何やってんだろ」

「……助けてくれてありがとう」

 

礼を言う善に日向(ひなた)は苦笑いを浮かべる。

 

「その割には嫌そうな顔」

「やな匂いするし」

 

そう、自身の腕を匂って顔を顰める善に、日向(ひなた)は笑う。

 

「性の匂いがぁとか言ってたけど…俺毎日お風呂入ってるよ?」

「…服に匂い移ってる……あといろんな奴の香水の匂い。移るのが嫌だから君らに触られたくないんだよね」

 

顔を顰める善。だが善の言葉に日向(ひなた)の心臓がどくりと嫌な音を立てた。

 

「……は?いやいや、俺は兎も角日向(ひゅうが)は違うでしょ!

だってほら、君も見ての通りアイツ堅物でさ、超真面目だから誘われても全部袖にするっていうか!」

「……」

 

何かに怯えるように早口になる日向(ひなた)

善は目を細めて怪しげに見つめる。

 

「それに、この間だって!」

「あのさ、今君らの遊びに付き合ってる暇ないんだけど」

「遊びってなんだよ!俺は遊んでなんかっ」

「……本気で言ってる?」

「本気って、なんの」

「だって」

 

更に言葉を続けようとする日向(ひなた)の言葉を遮る様に善が口を挟んだ。

告げた言葉は善にとっては至極真っ当なことで、それでいて残酷な言葉だった。

 

 

 

 

 

 

「雪村日向(ひゅうが)って…”君”でしょ?」

 

 

 

 

 

 

善の言葉に日向(ひなた)の顔が凍りつく。

だがややあって「俺は日向(ひなた)だけど?」とぎこちない笑みを浮かべていう。その言葉に善は意味が分からないと首を傾げる。

 

「なら、なんで初めて会った時に日向(ひゅうが)だって名乗ったの?嘘だったわけ?」

「名乗るって何、俺はずっと日向(ひなた)だったよ」

 

言いながら日向(ひなた)の顔からはどんどん笑顔が無くなっていく。

 

「君さ、もしかしてどっちがどっちなのか…分かってないの?」

「は?なわけないし!ありえないでしょそんなの。だって、俺はずっと日向(ひなた)だったよ?

日向(ひゅうが)だったことなんて一回もない……当たり前でしょ?俺は日向(ひなた)日向(ひなた)なんだ。

可愛い子が好きで、掴みどころなくて、ヘラヘラしてるわりに、他人に対しては淡白な、そういう人間なんだよ?」

 

どこか自分に言い聞かせるような、そんな様子に善は少し考え込むような動作をする。

その間にも、ヒナタは何所か錯乱しているのだろう、少し蹲りながらブツブツと言葉を続ける。

 

「俺はヒナタ、今”は”日向(ひなた)なんだ。

明日も、明後日もきっと日向(ひなた)で…って何言ってんだ俺、俺はヒナタなんだからずっと日向(ひなた)に決まってるじゃん、そもそも俺は、日向(ひゅうが)じゃなくて

日向(ひゅうが)は真面目で、でも日向(ひなた)は違って、俺は日向(ひなた)で……俺は……お、れ…俺は、俺は、うん、俺は日向(ひなた)、ひな」

 

頭を押さえだす日向(ひなた)の手に、善は少し焦った様に目をうろうろさせた後、唇を一に結んで、傍に座り、手を伸ばす。善の手が、日向(ひなた)の手と重なる。

 

日向(ひゅうが)君」

 

善が声をかける。

日向(ひなた)は少し肩を跳ねさせ、顔を上げる。

揺れる瞳に善の姿が映り込むのが見る。

そのまま善は言葉を続ける。

 

「なんで、その…そんな事になってるのかは知らないけどさ。

君は、日向(ひゅうが)君だよ、日向(ひなた)君じゃない」

「……なんで、言い切れんの?」

「どれだけ相手を真似ようとしてもどうしても別の人間だから違いは出るし、完全一致何てできっこない」

「高々一週間の付き合いの癖にわかんの?」

「分かる」

 

きっぱりと言い切る善には面喰ったように瞬く。

 

「分かるよ、絶対分かる。

だから、あー……名前、分からなくなちゃったら………その時は…分かる様に名前呼んであげる」

 

しゃがみ込んで、軽く頭を撫でる善に日向(ひなた)……否、日向(ひゅうが)は瞬きを繰り返し、少し目を下げる。

 

「なにいってんの…君とは今日限りでチーム解散じゃん」

「チーム解散しても顔合わせる機会くらいあるでしょ」

 

そんな会話をしていると、突然大量の雷が窓を突き抜けて飛んでくる。雷華だった。

 

「あーあー、流石に話し込んでたらバレるよな」

「まぁでも、これで作戦続行できそうだ」

 

雷を躱しながら二人が軽口を叩く。

そんな中、が「ねぇ」と声をかけてくる。

 

「なに?」

「さっきの話、ちゃんと覚えててよ」

 

その声に善が答える前に、ガンッという音と共に、天井から突き破って雷華が降って来る。

それを見て、二人は頷くと同時に武器を振り上げる。

ガンッという音と共に床に罅が入り、雷華が降ってきた際の衝撃も相まって床が崩れ、三人は揃って下の階に落ちて行く。

 

そうして、三つほど下に落ちた所で、着地する。

そこは酷く暗い場所…階ごとの水が溜まっているからか床が水に沈み、じゃばじゃばと音を立てる。

水の深さは大体膝より少し上くらいだ。

善が鋏の片方を壁に刺して足場にしつつ、攻撃をかわしていく。

日向(ひゅうが)もまた、鋏を足場に攻撃をかわしつつ攻撃を仕掛ける。

しかしあっさりと躱される、しかし、体を捻って、突き出された腕を踏み、飛ぶ。

 

(俊敏ですけど目で追えない程ではない……やはり人間…貧弱な生き物ですわね)

 

そんな話をしつつも二人は目玉を狙い続けるが、いとも簡単に躱され、直ぐに雷を打たれる。

少しづつ肩や腕に掠り、傷が出来て血が滲むがそんなこと気にする様子もなく二人は動き続ける。

何度か雷華が蹴り、体全体からの放電

水を伝って電気をくらい、顔をしかめる善

やがて、二人共息が荒くなり始め、顔を顰め少し汗が頬を伝う。

ちらりと壁の状態を確認する日向(ひゅうが)

だがそれに気づかなかった雷華は「まぁまぁまぁ」と明るい声を上げる。

 

「疲労が見え始めていましてよ。そろそろ限界なのかしら。

仕方がないですわね、だって貴方達は人間ですもの。

わたくしとは違って体力というものがありますものね。

ああ、なんて可哀想なのかしら!

でも安心なさって?今大人しくしてくだされば一思いに痛い思いもさせずに殺して差し上げますから」

 

ニコッと微笑む雷華、だが

 

「よくしゃべるお嬢様だね……っと、きたな」

 

善が言いながら、善を踏み台に二つ上の階に上がる。

そんな彼女のすぐ近くに日向(ひゅうが)もまた降りたてば彼らの先程いた場所、窓を突き破って入ってくる音が響く。

扉を開けばすぐそこに木が転がっていた。根元から引っこ抜かれた濡れた枯れ木だ。

そうして、此方を見上げる雷華を見下ろして笑う。

 

「目玉の強度は頑丈らしいけどさ、君の四肢って存外簡単に壊れるよね……それこそ、普通の人間と大差ない」

「…それが、どうしましたの?そんな木ごときで、わたくしをどうにか出来るとでも??」

「この木を何だと思ってるの?栄養素が不足したこの地で懸命に何百年と生きたすごい木だよ?君なんて一発だ」

 

そう言って彼らは木を蹴り落とす。

太い木が数本雷華の上へと降り注いだ。

 

(この程度、一瞬で破壊できますわ)

 

そうして雷華は手のひらに雷を発生させた。

 

この空間は実験場。丈夫な作りであり、あまり壊れたあとがない。そうしてそこには長年溜まり続けた雨水があった。

その水の中、雷を連続して流し続ければどうなるか。

水は電気分解を起こす。水素と酸素で満たされた空間

そこへ火種があったなら………。

 

 

「自爆してどーぞ」

 

 

雷華の雷が枯れ木の一本にぶつかり……燃え、そして_____爆発した。

 

ドンッ!!という爆音と共に、炎が上がり、二階上に居た二人もまた爆風によって飛ばされそうになる。

しかしそれをなんとか堪えつつ、煙が立ち込める中、目を凝らす。

暫くすれば徐々に晴れていき、そこには黒焦げになった床、そして四肢が吹飛んだ雷華の姿

 

「あっああ!このっ、この!!!!」

 

達磨になった状態で叫ぶ雷華だったが、四肢が無いことで雷を発生させることができないのだろう。

と、そこで散々雷を受けたうえにダメ押しのように爆発されたことによりとうとう壁が崩れ、下に居た不死者が一気に流れ込んでくる。

下にいる雷華のことなどお構いなしに踏みつけ揉み合った。

 

「で、出来損ないの…!!傀儡風情がぁ!!

わたくしの体を踏むなんて身の程を知りなさい!!?今すぐ退け!!!」

 

ヒステリックに叫ぶ雷華……と、そんな彼女の視界が開く。

そうして、彼女が見たのは

 

「!!」

 

_____飛んでくる刀の切っ先

 

ふっと雷華の体から圧迫感がなくなったと思った瞬間、ガンっと目玉に刀が突き刺さったのがわかった。

周囲の不死者を切り飛ばし、善は雷華に突き立てた鋏を掬い上げるように雷華ごと宙に打ち上げ

同時に、後頭部にもまた衝撃が走った。

 

「どれだけ頑丈でも」

「両方からやられたらヤバいでしょ?」

 

そうして不死者を踏み台に、善もまた飛び上がると日向(ひゅうが)と共に二人が武器の柄を蹴り飛ばした。

口を打ち込むように鋏と刃が前後から激しく食い込んだ。

 

「やめろぉぉぉぉおおおお!!!!!!」

 

藻掻いて絶叫する雷華

どろりと夜縁の両目から血が流れる。

 

「もういっちょ!」

 

そうしてもう一度蹴りが放たれる。

それにより、目玉に直接鋏を刺していた目玉は破壊されその勢いのまま、後頭部から切っ先が飛び出していた、が。

 

「っ」

「死にたくない!死にたくないぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!」

 

日向(ひゅうが)の方、後頭部に刺した方が微妙に核からズレたらしく、うまく破壊しきることができず、その間に片腕が完全に回復し、雷をぶつけられる。

 

「ぐっ」

 

それにより、日向(ひゅうが)が吹き飛ばされ、不死者の餌食になりかけるが、寸前で善が腕を掴んでそのまま足場にしていた鋏の上に着地する。

雷華は悲鳴を上げて開いた穴から外へと飛び出す。

善に抱えられた日向(ひゅうが)は「いってぇ」とぶつけられた腹を抑える。

 

「これ火傷してるやつ…帰ったら火傷直し塗ってもらお…にしても逃げちゃったよ、どうしよ」

「まぁ大丈夫でしょ」

 

そういって善は雷華が出て行った方を見る。

 

日向(ひなた)くんがしっかり仕留めるよ」

 

 

 

 

 

 

「わたくしはまだ、やりたいことがおおくあって、ま?縺…まだ死ぬッ縺ォ縺¢上繧…!なん、で!わた…や……あ、次こそ……◎薙縺。谺…!!!」

「”次”などお前にはない」

「!」

 

見ればそこにはライフルを構えた日向(ひなた)の姿

その姿に顔を引き攣らせそうになる雷華だったが震える手を押さえつけ冷静に見る。

 

(大丈夫ですわ。見ている限り、彼は先程の殿方ほど動きは俊敏でないし、武器を見るに近接が苦手、

銃弾など雷で落とせば脅威ではございません)

 

そうして、ふらつきながらも片腕で雷を起こそうとして

 

「ぇ」

 

出す前に……すぐ目の前に舞う銀色の髪

そうして、ほぼ目玉にあてがわれたと表現しても間違っていないと言えるほどゼロ距離で此方を覗き込む銃口

 

「じゃぁな」

「ああ……※代縺ゥ蜉ヲ窶s輔縺カ辷♀薙繧&阪ッ頑縺」

 

その声と銃声が重なり、雷華の目玉はたやすくはじけ飛んだ。

 

「お前達、大丈夫か」

「この通りピンピンしてるよ」

「俺は雷喰らって体痺れてるけどね」

 

不死者を殺して外に出れば、雷華の死骸とそれを見下ろす日向(ひなた)の姿

日向(ひゅうが)の声に反応した彼はその姿を見て眉根を寄せると「大丈夫か」と駆け寄ってくる。

 

「なんとかね」

「ならいいが…一先ず僕が背負う。さっさとここを抜ける。夜縁を殺したと言うのに、こんな雑魚に殺されては目も当てられない」

「同感」

「天満も帰る方向でそれでいいな」

「……」

 

善は後ろを振り返り建物を見上げ

 

「帰る」

 

そう答えた。

日向(ひゅうが)日向(ひなた)が背負っている隣で鋏の片方をぶんっと振る。

 

「雷の熱とか足場とかにしてたから刃、片方刃こぼれしちゃったな…」

「何をやってるんだ、お前は」

「……これ、使っていいよ」

「は?」

「いいの?じゃ遠慮なく」

 

差し出された刀を受け取る善

 

「どうせ武器作り直してもらうから、壊しちゃってもいいし」

「は…日向(ひなた)?」

「あ、そうなの?それなら安心して振れるわ」

 

日向(ひなた)が状況についていけない中、善はくるっと刃を回す。

 

「よし、行きますか」

「あ、ああ」

 

何かに引っかかりながらも頷く日向(ひなた)

 

 

そうして三人は見事、Z地区を攻略し、初めて生還を果たしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Z地区攻略の噂は様々な所に飛び交った。

憶測推測も中には混じっていたが一番は彼ら三人を称賛する声だろう。

それが理由なのか腫れ物扱いを受けていた三人は現在少々厄介な立場に立たされていた。

 

今日もまた部屋の扉が開かれる。入ってきたのは銀髪の少年

対するこの部屋の主である銀髪の少年もまた入ってきた少年を見ていた。

同じ顔の少年がお互いの顔をじっと見つめる光景

やがて部屋に入ってきた少年が口を開く。

「おはよう日向(ひなた)」と。

途端に無言だった少年はまるでスイッチが切り替わったように表情が明るいものへと変化し先程の無言が嘘だったように「おはよう日向(ひゅうが)」とヘラヘラとした笑みで挨拶をしてきた。

 

「あ、聞いてよ!昨日さ帰ってきたら俺等のこと影でヒソヒソ話してた連中が謝ってきてさ〜

皆都合いいよね。今まで俺らに散々突っかかってきた奴らも、皆掌ひっくり返して媚うってくんの!日向(ひゅうが)もそんな感じだったんじゃねぇの?」

 

水を得た魚のようにべらべらと話し出す彼の姿を見て「ああ、やっぱり」と呟く。

 

「……」

「どうしたんだよ?」

 

首を傾げる日向(ひなた)だったが、すぐに持ち直すように笑みを浮かべる。そう”いつも通り”に。

 

「つーかさ、いつになったらチーム解散するわけ?そりゃ天満くんいると仕事楽でいいけどさぁ

お前も言ってたじゃん、二人の方が気が楽だって。それとも、気に入っちゃった___」

「話があるんだ」

 

日向(ひゅうが)が静かな声でいう。

なにやら真剣な話の気配を感じ「なんだよー、真面目な顔して!俺難しい話苦手なんですけど」と笑うが、日向(ひゅうが)は「ふざけずに聞いてほしいんだよ。お前には」という

 

「何、なんか雰囲気変わった?普段の堅物オーラどうしたよ?あ、キャラ変とか?あはは、君には似合わないよ。それとも真面目キャラ止めちゃうとか?」

「そうだよ」

「………え」

 

日向(ひゅうが)の言葉に固まる日向(ひなた)

笑みを浮かべてはいるが、動揺しているのがわかる。

 

「な、なんでいきなり」

「分かってた。分かってたけど目を背け続けてた。

誰も僕たちの違いが分からないし、僕たちももうあやふやになってたから区別何て必要ないって。

入れ替わっても誰も気づいてくれないから、自分が本当にそうなのか、分からなくなって…設定を演じる時間が長くなって、自我が設定に飲み込まれて行くみたいでさ。

考えるのも疲れて、もうどうでもいい、って思ってた。可笑しいよな。本当はこんなことするために始めたわけじゃなかったのに」

「な、何言って……」

「でもさ、天満は僕等が分からなくなっても絶対に名前呼んで教えてくれるって言ってくれたんだよ」

「わけ分かんねぇこというなよ日向(ひゅうが)!」

「お前はずっと、意味わかんないことばっか言う僕に付き合ってくれてたんだろ?」

「!」

 

目を見開き固まる日向(ひなた)。それが何よりも答えだった。

日向(ひゅうが)はぐにゃりと顔を歪め頭を下げる。

 

「迷惑ばっかかけてごめん。

散々振り回して、やりたくもない設定押し付け続けて…付き合わせてごめん。

でも、もうそれも、今日で終わりだから」

「…ぇ?」

「僕……僕、天満には僕として接する。設定の幸村日向(ひゅうが)じゃなくて。だから」

 

俯く日向(ひゅうが)日向(ひなた)は呆然と見上げる。

 

「わかった!」

 

暫しの沈黙、日向(ひなた)が笑みを浮かべて頷く。

その声に日向(ひゅうが)が顔を上げる。

 

「君が決めたなら仕方ないな!うん!

でもさ、父さんと母さんにはどう説明すんの?

もうすぐ帰省じゃん?君が…日向(ひゅうが)がキャラ変したらきっと驚くだろうし、怒っちゃうかもよ?父さんと母さん厳しいじゃん?

あ、それともその時は俺が日向(ひゅうが)の振りしてあげよっか?

その間日向(ひなた)の振りしといてくれよ?適当なとこで家出ていいからさ!じゃないとほら、お互い困るし」

「帰らない」

「………は?」

 

その言葉に再び固まる日向(ひなた)

 

「父さんと母さんには悪いけど、僕は家に帰らない。

親不孝なことやってることくらいは分かってる。でも僕はもう、日向(ひゅうが)を演じる気はないんだ。

勿論、日向(ひなた)を演じる気も。だからお前ももう、日向(ひなた)を演じなくていいんだよ。

お前は……お前でいい。自分の気持ちのまま生きてほしい…」

 

日向(ひゅうが)が言えば日向(ひなた)は更に目を見開いた後、笑みを浮かべる。

 

「そっか……俺は俺のまま、ね」

 

笑みを浮かべる。

 

「そうだな。そうしようか」

 

頷く日向(ひなた)日向(ひゅうが)は「ごめん。ありがとう」と感謝を述べる。

そんな彼に、日向(ひなた)は笑って手を差し出す。

 

「改めて、これからよろしく日向(ひゅうが)

「!、ああ、よろしく日向(ひなた)

 

そういって二人は握手をした後、笑みを浮かべ日向(ひゅうが)は部屋を出て行く。

一人きりになった部屋の中、日向(ひなた)の顔には既に笑みはなく、残ったのは冷えた表情だけ

 

「ホント、最後の最後まで勝手だなお前は……たかが一週間ちょっとの相手に本気になるとか馬鹿だろ。

僕自身で向き合いたい?それが出来なかったからああなってたんじゃねぇの?

なのに、それも忘れて気障みたいな台詞吐いて……ホント馬鹿じゃん」

 

ギリっと奥歯を嚙み締め日向(ひなた)が言う。

両手で顔を覆って、苦し気に表情を歪める。指の隙間から覗く瞳は不安げにゆらゆらと揺れていた。

 

「バカだろ、絶対、だって……なんで、あんなやつに……どうして………わけわかんねぇよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「天満くん」

日向(ひゅうが)君。どうしたの?」

「匂い、どう?」

「は?匂い?」

 

静かな廊下にて日向(ひゅうが)は善に声をかけていた。

どこか気恥しそうな様子で日向(ひゅうが)は首を傾げる善の前に両手を差し出す。

だが意味が分からないのか益々不思議そうな顔をする善にぼそぼそと小さない声で「だ、だから変な匂い、もうしないかって……」と聞いた。

 

「ほら、人間の皮膚って、一ヶ月くらいで変わるらしいから……ひっぺがすのは、無理だけど、皮膚変わったなら、大丈夫かなって」

「え、あれ真に受けてたの?」

 

日向(ひゅうが)の説明に彼が何を言っていたのかその意味を理解したところで、逆に驚愕するのは善の方であった。

 

「いや、結構前から匂い消えてたよ?」

「え」

「嗅覚がいいって言っても人よりいいぐらいだから流石に三日以上たったらわかんないよ。

てか皮膚云々の話は別に本気で言ってた訳じゃないし……日向(ひゅうが)くんって素で真面目なんだね」

「……あっそ」

(拗ねた…)

「なら行くぞ」

 

日向(ひゅうが)はガッと善の手首を掴む。突然掴まれ、善は少し驚いたように目を瞬かせて日向(ひゅうが)を見上げる。

 

「どこに?」

「飯だよ飯。お前いっつも一人でさっさと食べちゃうだろ。

日向(ひなた)が席とっておいてくれてるから、一緒に食べるぞ。その…チームメイトなんだからいいだろ」

「…一緒に食べていいの?」

「僕が誘ってんだから言いに決まってるだろ。訳わかんないこと言ってないで早く行くぞ」

 

日向(ひなた)が拗ねたら面倒なんだから」と怒りながら日向(ひゅうが)がズンズンと大股で歩き出す。

引っ張られるようにしてその後をついていく善

軈て、その背と、自身の手を引っ張ってくれる手を見て、ほんの少し笑みを浮かべ「うん」と頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

 

急激に意識が浮上して善は顔を上げる。

目の前には酒瓶があって、そこには成長した二人の姿

善は軽く目を擦って首を傾げる。

 

「あ、起きた」

「おっきくなってる…」

「は?」

「え?」

 

善の言葉にキョトンとする二人

だが善はすぐに「あー、違う。昔の夢見て…」という。その言葉に二人は合点がいったようで「なるほどね」と頷いた。

 

「昔なぁ……お前らが死ぬほど仲悪かった記憶しかねぇわ」

 

日向(ひゅうが)がしみじみと言う。

その言葉に日向(ひなた)は苦笑いを浮かべた。

あまりにも心当たりがありすぎたのだ。

 

「あれね…」

「死ぬほど仲悪かったっていうか、一方的に嫌われてたっていうか……あれ、なんであんなに嫌われてたの?」

「子供だったんだよ」

「俺を取られて寂しかったんじゃねぇの?」

「黙れ馬鹿」

「い"っ」

 

日向(ひなた)がげしっと日向(ひゅうが)を蹴る。

でもそれはちゃんと加減されたもので、彼らの間では普通のじゃれ合いであった。

それを知っている善は「ほんと仲いいよなぁ」と思った。

 

「昔は昔…今は仲いいんだからいいでしょ」

 

日向(ひなた)は何処か気まずそうな顔で酒を煽る。

 

「まーね、友達だと思ってるよー」

 

善はふわっと欠伸をしながら机にうつ伏せる。

 

「…うん。そうだね」

 

日向(ひなた)は何処か複雑そうな顔をする。

と、日向(ひゅうが)が善の頭に手を乗せた。

 

「ん?」

「善は…昔も今も真面目だよな、ほんと」

「たしかに」

「そ?」

「…困るくらいにな」

 

日向(ひゅうが)もまた同じように何処か複雑そうな困った笑みを浮かべる。

双子が揃いも揃って似たような顔をするものだからきっと端から見れば見分けなんてつかないのだろう。善を除いて。

日向(ひなた)は善の小指に自身の小指を絡ませる。

 

「なにやってんの…………?」

「おまじないみたいなものだから、きにしないで」

 

日向(ひなた)はふっと笑みを浮かべる。

 

「おまじないねぇ、俺ともやっとくか?」

「お前はやらなくていいんだよ」

「はぁ?日向(ひなた)に聞いてねぇし!」

「やめろ。善が穢れるだろ」

「けがれっ、お前なぁ!!ほんと善と扱い違いすぎるだろ!」

「当然でしょ。アホな日向(ひゅうが)と賢い善、どっちを贔屓するかなんて目に見えてるじゃん」

「はー?昔はさんざん善のこと馬鹿だなんだっつってただろ!なぁ善!」

「それをいうなら日向(ひゅうが)だってアホとかちびとか散々言ってたよね?善」

 

そんな子供じみた言い合いの末に二人は善に答えを求める…が

 

「…」

 

善はすでに夢の世界へ飛び立っていた。

それを見て二人は顔を見合わせたあと、ふっと笑みを零す。

 

「おやすみ善」

 

どちらの声ともわからない声が、静かな室内に優しく響いた。




終わってしまったぁァァァ悲しいぃぃぃぃあああああっ!!!!!
てか短っ!マジみじか!!!

因みにですね。雪村兄弟は現代でも定期的に入れ替わってるらしいですよ。都合がいい時があるらしい。まぁヨイには秒で見抜かれてるんですけどね。そのたびに二人共ちょっと嬉しそうな顔してるんですよ。かわいいねぇ。さて、と。





スゥゥゥ、次回最終章!やぁぁぁぁぁっ!!!!
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