「ここか…」
「ぽいね」
亜怜の持っていた機械を頼りに辿り着いた発信元は何もない空間。発信機を持つ善は無の空間を見つめ目を細め、何もない空間に手を伸ばす。
その手は途中でピタリと止まった。
「能力で隠されてるだけみたい」
「嫌な感じするし、もぬけってわけでもなさそうだね」
善と
彼等のさらに背後には開発部隊の姿
彼等は地面にZ地区で使ったあの輪っかを置くと「転送機、設置完了しました」と、楓がいった。
「動きの制限が起きない程度に物資詰め込んどけ。
完了次第、すぐに突撃する。
「わかってるよ」
「へいへい」
頷く
「っ、怖いよぉ」
「なんで、こんなことに…」
未だに現実を受け入れられていないのだろう。
泣きながら物資の用意をする支援部隊の人々
(隊長も副隊長もいない今、統率をとれる人間もいないのに、その状態でこんな戦場に駆り出されているんです。こうなるのも無理はありませんね)
ちらりと彼らを見た楓はふぅっとタバコの煙を吐き出す。
誠は泣いている彼らを少し気にしながらも必要な物資を懐やポケットに入れていく。
「おい、そんなに入れてたら邪魔になんだろ」
げんなりと誠は話しながら見る先。そこには服のポケットというポケットをパンパンにふくらました紡の姿があった。明らかに動きに支障をきたしかねない紡に誠が難色を示す。
すると紡は「そっか!」といい、ポケットから取り出した小瓶の中から数本を
「むぐっ!」
口の中に突っ込んだ。
「は!?ちょっ、おまっ、なにやってんだよ!」
「んがんがんが!がががが!んがががごがごーご!」
「なにいってんのかわかんねぇよ…」
「口の中なら動きの邪魔にならないだそうだ」
「なんでお前は翻訳できるんだよ……」
紡の言葉を真顔で翻訳する律に誠は少し引いたような顔をする。
「馬鹿らしい」と呟きつつ物資詰めに戻る………が
「…………」
ふと、手にぶつかった小瓶に視線を落とした。
「きたか」
廃墟に足を踏み込む。
中はだだっ広く。工場でもやっていたのだろう。沢山の壊れた機器が転がっていた。
天井も非常に高く、長い階段が何本も見られた。
だがそれだけではない。空気が重く、冷たい。そして
「もう少し時間がかかると思っていたが、こんなに早く来るとは驚きだ」
部屋の中心部には宗教の服をまとった男が一人。長い銀の髪を揺らしながら立っていた。
「それにしても、大勢で押し寄せるのは少し非常識が過ぎるんじゃないか?」
「其れに関しては申し訳ないと思って居るよ。でも何分うちの首領の命令でね」
「そうかい。だがこんなに一変の御客が来ては、流石の私も対応しかねる………だから」
パチンっと
瞬間頭上から巨大な不死者が一体落ちてくる。
すぐ対応しようと後ろに飛んだ、瞬間不死者が柏手を一つ打つ
瞬間、隣に現れる扉
がんっと勢いよく開いたと思えば、体が扉に吸い込まれるように引っ張られた。
「君達は非常に面白いことをやっているらしいからね。こちらもそれを真似てみたんだ。
不死者の核を弄り”命令に従順になる生物を生み出す”実験なんて、ほんと人間は実験熱心な事だな」
不死者の中身を弄る、それはハコビに施されたそれだ。
それと同じことを彼はこのトロールのような不死者に施したのだ。
結果、彼らは全員バラバラになった。
その内の一人である誠はガンッと勢いよく床に転がった。
床………否、石畳の上に。
いたた、と体を押さえながら顔を上げればそこは神社のような場所。奥には石階段がいろんな場所から伸びているのが分かる。
鳥居や灯が連なっていて明らかに先程の工場とは別の場所だということがよくわかった。
(他の奴らは……完全に逸れたか)
辺りには誰もいないことに顔を顰める誠
と、悲鳴が響いた。ハッとしたように顔を上げ、悲鳴のする方向に向かうため階段を駆け上がる。
そこには拝殿があって、その扉を勢いよく開ける。
「は?」
だがそこは同じようでまた違う場所だった。また響く悲鳴。そちらへ向かうがそこにあったのもまた拝殿。開けばまた違う場所
「くそっ、迷路かよ!」
舌を打ち、只管悲鳴のする方向にばかり走りだしつつリングを起動させる。
「おいお前等!無事か!?今どこだ!!!」
声をかけるがリングはうんともすんともいわない。
(そういや、Z地区でも電波妨害されたっつー情報回って来てた。それされてんのか、クソが。
恐らくっつーかまず間違いなく俺同様全員がわけ分かんねぇ空間に突っ込まれてる……連絡手段は絶たれてる。ばらしたまま一人一人嬲り殺すっつー算段か。なら誰かが来るまでここで待機して…)
しかし絶え間なく響く悲鳴に、ぎりっと奥歯を噛む。
(待機、できるわけねぇだろ!)
思いっきり顔を顰め乍ら、相手の思うツボだと分かっていても誠は悲鳴の発生源を目指して走るのだった。
一方、そこは真っ暗な病室
その部屋は妙に縦に長く。壁には梯子のようなものがついていた。
「んー、リングは使えそうにないね」
「そうだな…」
溜息を吐く
「つかお前よ。もっと他に掴む場所あっただろうが…なに人の首掴んでんだよ、クソいてぇ」
「いやぁ咄嗟にね。でもおかげで逸れなくて済んだだろ?」
「……ちっ」
苛立ったように舌打ちをするが無視する
「よりによって病院とはな。趣味悪ぃ……それにこの悲鳴」
反響する様に様々な所から響く悲鳴
声は梯子の上から響いていた。
上がってみればそこには病院の扉。開ければ奥は知らない空間に繋がっていた。
扉の奥に入ることなく、
「
「十中八九囮だね。さっきから悲鳴が一定のリズムすぎるし、なにより声に掠れや波が薄すぎる。
反響のせいで分かりにくいけど、少し近付いたはずなのに音量が一切変わってない」
くるっと
「それよりこっちの方から嫌な気配を感じるんだよね」
「てことは」
「多分こっちが本命かな」
目を向けたのは点滴やサイドテーブル、そしてベッドが置いてある壁だった。
「大方、悲鳴に釣られて迷路を駆けまわらせ体力を消耗させつつ、ある程度消耗したところで本命が襲う……って流れじゃないかな」
そういってベッドに靴で上るとガンっ。
細い脚から放たれた一撃は凄まじく、ばらばらと瓦解する。
「隊員の奴らが見りゃビビるだろうな」
「何年も不死者と戦ってれば自然と力くらい身につくでしょ」
「ははっ、確かに」
そうして壊れた壁の奥に目を向け。
「ビンゴ、いやハズレかな?」
奥には
部屋を見て
「多数戦闘は
「運が悪かったとしか言いようがないでしょ。ま、犬死増やすよりはましだけど」
戦闘を開始するのだった。
「うげ、発信機イカレたんだけど……はぁ、厄介なことになったなぁ」
溜息を吐きながら手に持った発信機を投げ捨て、ゆらりと辺りを見る善
「それにしても、不死者特有の匂いするなぁっと思って来てみたら、きっもいのが群がってる部屋に突っ込まれることになるとか思ってもみなかったわ」
広い子供部屋はおどろおどろしいぬいぐるみを模した不死者の群れで溢れていた。
その群れに、一瞬で飛び込む。先頭にいた数匹の頭部を引き裂き、その後ろにいた不死者たちもまた、回転しながら頭を潰し、両断し、引き裂いて殺した。
この時間、戦闘開始から僅か10秒にも満たない。
たったそれだけで約半数の不死者が死んだ。
不死者が体から棘をだす。
それに巻き込まれ何体かが串刺しになる中、善はしっかり躱し、蹴りで破壊するとそのまま鋏を先にぶん投げ殺し、引き抜きがてら周りを切り刻んでいく。
「ん…」
ぴくっと鼻が僅かに動いた。
そして上に飛ぶと宙で身を翻し、天井に足を付くと、そのまま跳ね返る様に飛びだし、地面に落下しながら鋏を振る。
瞬間不死者ごと地面がひび割れ半壊する。
そのまま吸い込まれそうになるが、善は崩れた部分を掴んで耐えつつ下を見る。
そこには「はァ?!」と軽く叫びながら追加された不死者を刻む
「やぁ駄犬ちゃん奇遇だね。馬鹿みたいに切り回る事しか能がないんだから追加分の不死者くらい平気で蹴散らしといてよ」
「てっめェ……俺に押し付けんじゃねェよ。つかどんな力で破壊してんだ。瓦礫に潰されたらどうすんだクソ餓鬼!」
「え、駄犬ちゃんが死んだら指さして笑うだけだけど?」
「死ね」
軽口をたたきつつひょいっと上に上がっていく善。飛鳥はキレながら後ろを振り返る。
「テメェのとこの隊長どうなってんだよォ」
「……」
「屑なんすよ」
無言で不死者を削っていく律と、心底嫌そうな顔で吐き捨てる會
その二人の様子に盛大に溜息を吐いた飛鳥は「さっさと殺してあのクソ餓鬼も殺す」と内心で決定事項を決め、さっさと殺していくのだった。
同時刻。
他の場所でもことは起きていた。
「あ、あれぇ、開けても開けてもきりがないよー!!皆ぁ!どこなのぉぉぉ!!!」
叫んで教会の中を駆けまわる紡
「な、なんで戦闘できるからって駆り出されないといけないんですかぁ…僕じゃなくてそれこそ彼方さんが来ればよかったのにぃ、だ、だれかぁ…」
工場の中を泣き言を漏らしながら歩く
「なんとか合流できてよかったです…しかし、厄介なことに巻き込まれましたね」
「全クでスネ」
「……」
同じく工場の中を三人一組で歩く
そして
「ほら次向こう行こうぜー!!どたどたー!!」
「え、ええっ!?!」
「あ、やっぱこっち!ばびゅーん!」
「うえぇぇ!?」
元気よく走り回る
彼らが駆け回っている場所はギラギラの照明のある寂れた駅
レールの上を駆け、ホームを抜け、改札を飛んで扉を開けて回るがどこもかしこもゴールに付きそうにない。
「ちょっ!ま、待って待ってぇ!!!ここ夜縁の根城ですよぉ!?し、慎重になった方が良いと思うんですけどぉ!」
「えぇ!?なんだって!?」
「だ、だからぁ!止ま___へぶっ!?」
声を上げる叶恋。だが急に和真が止まった事で和真の背に顔面をぶつけてしまう。
うう、とくぐもった声を上げつつ、顔を離して真っ赤になった鼻を摩る。
「な、なにするんで__むぐ!!」
抗議の声を上げようとする叶恋。その口を和真の大きな手が塞いだ。
「……」
そうして和真はぐるっと辺りを見回して、一点を見て目を細め、一点に向かって銃弾をぶち込んだ。
その場所には壁があり、ぶつけた瞬間壁に亀裂が走り壁が砕ける。その奥にいたのは……。
「おっ!」
「え」
「っ!」
夜縁の一人。
その姿を見た瞬間武器を出す二人
対する婁邪はぎゅっと自身の長い服の袖を掴む。そうして、早速切りかかろうとした時、婁邪が叫んだ。
「ぼ、ぼくをころしたらおかあさんとおとうさんがおこるんだから!!!」
「……は?」
突然の駄々っ子のような発言にポカンとする叶恋と和真。
そんな二人を前にがくがくと震えながら尚も婁邪は叫ぶ。
「それにボクとーってもっ、つ、つよいんだから!!
いたいおもいしちゃうのはそっちなんだから!!いっ、いいの!?」
「……」
その言葉に叶恋は「あ、あの」と和真の袖を僅かに引く。
和真は「んー?」と軽く耳を傾けるので、こそっと叶恋がいった。
「害意は薄そうですしぃ………そのぉ、血の匂いもしませんしぃ?もしかしたらぁ本当に害のない類かも知れません」
叶恋は迷っていた。目の前にいる不死者を攻撃していいのかどうかを。
(お母さんお父さんってことは、この子はあの夜縁の子供ってコトで………まだ悪いことは何もしてないかもぉ……なら…)
「叶恋のそれって同情か?」
「え」
その言葉に叶恋は和真を見る。和真は「あ、図星っぽい」とへらっと笑う。
「ウンウン。子供は生まれ元を選べないんだから、可哀そうだって思っちゃったんだよなぁ。生まれたばかりの子供に罪はないって、でもさでもさ。そうじゃないんだよ」
ニコニコヘラヘラ和真は笑う。
「俺等殲滅隊の目的は朝の奪還と夜縁の殲滅。どんな理由があっても殺さなきゃじゃん?」
「っ!」
「まぁでも、そうだな。
叶恋は断罪部隊だっけ?ならいっこ分かりやすい罪を見つけてやるよ!」
にこーっと明るい笑みのまま告げる。
「アレは生まれたこと自体が罪なんだ」
「!」
「生まれただけで罪なんて、そんなの酷いっていう奴もいるだろうけど、それは”害”のない生物に向けて言われる言葉であって、害のある生物と判断されている時点でそんな言葉、適用されないんだぜ?だからあれは罪人。なら断罪部隊の人間は裁かないじゃん」
そう純真無垢な笑顔で促される。
____夜縁は存在が害だ。どれだけ同情を誘うことを言われたとしても、迷わず殺せ
夜縁の報告が上がってすぐ、善が断罪のメンバーに向けて言った言葉だ。
息苦しさを感じながら叶恋はモーニングスターを握る。
(善さんと同じこと言ってる筈なのに……全然違う。心の底からそう思ってるんだ。一切疑うことなく、純粋に、本気で生まれたことが悪いって、生きてることが悪だって考えてる)
「どうした?なんか呼吸音変だな?かひゅーかひゅーつってるけど」
「……なんでも、ないです」
そう言いながらカコは一つ深呼吸する。
(あんまり、納得したくない。でも、夜縁は殺さないといけない。
ここで躊躇したら死んじゃった皆が報われない。今も頑張ってる皆を否定することになっちゃう)
「!!」
「…ごめんねぇ」
そう呟き叶恋は勢いよくモーニングスターを叩き込んだ。意思に迷いはアレど、行動に迷いはなかった。
振られた鉄球は的確に婁邪がいた場所を抉る。それを転がる様にして逃げる婁邪
だが、その位置を想定していた和真は銃弾を撃ち込む。
それにより頭にかぶっていた灯の上部が割れた…………直後
「!?!」
叶恋は頭を押さえ、和真は顔を少し顰める。だが追撃の手を止める事無く銃弾を撃ち込む。
「っ」
「あ”!」
銃弾が婁邪の腹を貫いた。
それに連動する様に自分たちの体にも痛みが出る。叶恋は腹を抑え、膝を付き、和真もまた横腹を抑える。
(これ、もしかして…)
(あの夜縁の能力…)
________感覚共有
自身と相手の感覚を共有する。それが婁邪の能力なのだろう。くっと顔を顰める二人。
痛みで体が鈍り、一瞬の隙が出来る。
「い、いまのうちに!」
「っ、まて!」
逃げようとする婁邪を逃がさないとばかりに叶恋はモーニングスターの鉄球を投げれば、その鉄球は婁邪の足を潰す。
「ひっ」
「い”あ”!」
短い悲鳴を上げる婁邪と脚に激痛が走り、呻く叶恋。だがその行動空しく婁邪は転がるようにして扉の奥へと逃げていった。
「……あ、あれ…ちょっと痛み、マシになったかも」
「…た、たしかにぃ…?あ、もしかして距離が離れたからかもぉ!」
未だに鈍く痛む足を抑えながら叶恋は立ち上がる。
「っ、はぁ、兎に角追いかけましょう!」
そう言って扉を開けようとする叶恋。だがその腕を和真が掴む。
「そっちの扉、今は空けない方が良いぞ。其の奥、ガンガン不死者の声が聞こえる。もう転移先変更してるだろうしな」
「!」
「お互い、この激痛収まりきってない状態で行ったら仲良くお釈迦だな!それとも俺と心中でもしてみるか!?」
「い、いやですよぉ!!」
「うん、俺も絶対やだ!!」
そうにこーっと笑う和真
ケラケラ笑いつつも、内心では婁邪のことを考えていた。
(にしても面倒臭いの出て来ちまったな。どーしよ。茉莉とか萌とか来てるし、作用範囲外から射撃してもらうか?でも、効果の距離分かんないし、この建物の中じゃ射撃は難しいか。ま、合った時に考えればいいや!!!)
沿う結論を出した和真は
「じゃ、行くぞ!」
「へ?」
二カっと笑みを浮かべ、叶恋の手を掴み。
「不死者殺すぞーーー!!!」
「えええええっ!さっきと言ってること違くないですかぁ!?」
勢いよく扉を開け、大量の不死者の群れに飛び込むのだった。
二節は終了!戦闘開始しましたね!
ここから雑草によるクソ文才能力が発揮されるターンとなりました。頑張れぇ?オイラ!
個人的に善、雪村双子、飛鳥の4人がキャラとしてお気に入りなんですけど
別枠で紡と和真も好きです。この二人いると色々和むから。
ほんわかするよね。ほんと。
殺伐とした空気でも安定のマイペース保ってくれるんで個人的に滅茶苦茶好きなキャラです。見た目も可愛いんですよね。
ここで裏話!
和真は実は”後天性中性体質者”で男の子ではなく手術で中性になった子なんですよ。
更に言うと元は女の子でした。
本人は幼少期からずっと自分を中性(幼少期は女の子の体とあまり見分けがつかないケースが多い)だと思い込んでいたのですが
或る日目が覚めると激痛に襲われ、布団が血まみれになって絶叫したそうな。
その地の正体は生理だったのですが、本人はずっと自分を中性だと思い込んでいたため重い病気になったのかと両親に泣きついたところ手術を受けることになったらしいですよ。
なので普段は全く気が利ないくせに女の子が生理で苦しんでいると我先にと助けに入ってくれるそうな(*'ω'*)