夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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第一項目から始まる戦闘。雑草の脳みそがオーバーヒート起こしそうだZE☆
それではどうぞ!


第二節 第一項

「さっきからよう揺れるなぁ………ほんで?僕を殺すんかいな?一切戦うたこともあれへんくせに啖呵きって来るなんて凄い自信やん。勝てる思てるん?」

 

ところ変わってリビングのような部屋

そこには絡と善の姿があった。絡は目を細め、目の前に立つ善を楽しそうに見る。

善は表情を崩すことなく、微笑を口元に浮かべたまま口を開いた。

 

「君の強さは知らないけど、まぁ最終的には勝てると思ってるしね」

「その余裕綽々って顔、すぐ苦痛で歪めたる」

 

そういうと同時に影を発生させ棘を出す絡。善もまた鋏を抜いて迎撃する。

高速の斬撃で下からでた影を斬り落として詰め寄る。

だが、壊された影はまるで上限を知らないように砕かれた所から生えて襲い掛かると同時に鞭のようにうねる蔦と同様、左足を振り上げた。

善は蹴りで生えて来たものを蹴り壊すと鋏をブーメランのように回転して飛ばし蔦を一掃すると、取り戻すようにリングの収納ボタンを押して鋏を引き戻す。

それがぶつかる寸前まで迫った所で振り返ることなく影で食い止めつつ、善が接近してくるのを見ながら、足元からは大量の針の筵とまでに影が生えてくる。

だがそれは取り戻したもう片方の鋏で下を抉る様に切り裂いて回避。直後、目の前に絡の足が迫る。

鋏で防ぎ、追撃は諦め下がれば物凄い速度で影が迫って来る。

それを捌いて行くが、すぐに壁際に追い込まれる。

 

「ふっ!」

 

善は後ろ回し蹴りを壁に繰り出し、壁を蹴り砕く。

 

「能力は万能な魔法じゃない。これだけの大規模転移となれば必ず条件がある。

この能力は扉じゃなけりゃワープはない…だろ?」

 

そして、躊躇なく開けた穴から隣の部屋へと飛び出す。

 

「さっきからバコバコ壊しとったんは自分かいな」

 

にやぁと口角を上げ、善を追いかけ穴から隣の部屋と躍り出る絡

そこは病院の空間。それもかなり広い場所だった。

 

(ラッキー、狭いと鋏使いにくいんだよね) 

「んー……自分結構強いんやな。あの巨乳のおねえさんより強いんちゃう?」

「巨乳……ああ…まぁ一応?」

「なんやその曖昧な感じ、せやけど残念やな。僕女の子以外に興味あらへんのや。

強くてかわいい美人さんやったら殺さんでもええんやけどなぁ」

「はぁそう…興味ない、なっ」

 

善が全力で飛び出して絡に斬りかかる。

絡はそれ以上の速さで影を操り、襲い掛かる。 

先程同様に斬られては再生する終わりが見えない鬩ぎ合いが始まった。

 

「そらそっちが不利って理解してるはずやろ?」

「まぁ、ねっ」

 

善が後ろに跳び下がりながら鋏を投げ、その鋏を止めようと影を出した直後、善は高く飛躍していた。

そうして鋏を踏みつけ、さらに飛躍すると落下速度を利用しながら回転しつつ鋏を回収し、両刃で削る様に棘を粉砕し、一点狙いで鋭く突き出す。

絡は迫る刃を仰け反って躱しながら、その身体を貫こうと影を伸ばす。

しかし、影は途中で止まる。

何故か、善の位置的に建物の照明で影が出し切れなかったのだ。

その間に善は体を捻り、残された棘を足で粉砕しながら鋏を振る。

それを影で逸らし、横蹴りを放つ絡。その足を防ぐように無理な体制から足の裏で止める善

ガンッという衝撃で、二人は少し吹き飛び、距離を取る。

そうしてすぐに影を飛ばしてくる絡、だが

 

「は?!」

 

突如影に連動する様に、絡の周囲から炎が噴き出した。

絡はいきなりの炎と爆発に大きく後ろに跳び下がる。

 

「……なんや今の」

「なんだろーね?」

 

善は鋏を握り直し、すぐさま攻めかかる。

絡は影を出すが、先ほどの動揺から抜け切れていないのか少し速度が鈍い。

その間に善は豪快に破壊して迫る。すると目の前から爆発が巻き起こる。

 

「!?」

 

警戒に留めていたせいか絡は逃げる間もなく、爆発に巻き込まれる。

善は距離を取り、常に軽いステップで場所を変えながら奇襲に備える。

 

(ちょっと確認がてら普段やらない手法使ってみたけど…どこまで通じるかなぁ)

 

あまり期待はしていないが、やはり少しでもダメ―ジがあるかないかは今後の戦闘プランに大きく影響する。煙の中から姿を現す絡

服をボロボロにし、皮膚も破れているが目玉は無事そうだ。

 

「…めっちゃちっさい手榴弾かいな。人間はおもろいもの作るんやな」

「たまに試作品くれるんだよね」

「へぇ、そうなんや」

 

絡はおしゃべりを止めて善へと襲い掛かった。

猛スピードで迫りくる影を紙一重で躱し、時に鋏で斬り落とし、足で壊す。

そして、隙が出来た瞬間、善は鋏を高速投擲する。

それに合わせる様に影を出し、鋏を壊してしまおうとするが、また何もない空間から爆発が起き、その間に鋏は絡の顔を僅かに削ぐ。

 

「ぐっ……!」

 

後ろに跳び下がる絡に、善は詰め寄る。

絡は蹴りと同時に影を出そうとするが、その影を砕き、そこを足場にすると、振り上げられた絡の脚に乗って鋏で突きを放とうとしたが、再生した影が襲い掛かる。

それに舌打ちしながら後ろに跳び下がる。

 

そして素早く身を翻し、鋏を振り回しながら影と絡を牽制し、その隙間を縫うように、まるで何かを転がすように手を動かす。それを見た瞬間、警戒する絡、だが

 

(フェイント……!)

 

善に意識を戻すと、その時にはすでに善は移動していた。

位置は丁度絡の背後

善が一定の間合いに入った瞬間影を出して対処する。

だが善は既に空へと飛んでおり、ばらばらと、目視できる手榴弾をばら撒いた。

 

「はっ……!?」

 

驚きを露にする絡。だがその表情ごと大爆発に巻き込まれる。

オマケとばかりに影を踏み台にして逃げる善は「炎の光で影の防御は出来ない。蔦出しても燃えるだろうし、これで大分消耗してくれりゃ楽なんだけど」なんて思いながら現在進行形で燃えている絡を見る。

その時、違う部屋の壁が影により破壊され、壁が飛んでくる。

 

「ああ、壁壊して逃げたんだ」

「…とんでもないことやってくれたな。ほんま」

 

絡の身体はところどころ血が流れ、火傷を負っていた。

ボロボロと皮膚が崩れ落ちていくが、それでも目玉は守り切ったらしい。だが充血し、口調こそ穏やかだか、その顔には明らかに苛立っている。

その証拠に、先ほどまではなかった大量の蔦が尻尾のように六つに分かれて揺れ、崩れた頬からは禍々しい花が生え、先ほどまで閉じられていた両頬にある四つの黒い紋様。それは完全に開眼していた。

 

(耐久値は普通よりちょっと頑丈、程度か。それにしても六つ。多いな。まぁ顔に集中してるからそこまで苦ではないけど)

「ちょーっとカチーンってきてもうたわ。そやさかい……腸引き裂いて食いちぎったるから覚悟せぇよ」

 

善は二振りの刃を高速で動かし、絡は小さい影ではなく、長い影を出す。

善は首を傾げるだけで躱すも、斬り飛ばした影はぐにゃりと方向を変え、反対側から迫ってきた。

 

「…っ」

 

躱そうとしたが細かい影が迫って来たことで、躱し切れず、足を掠める。

だが直ぐに善は高速の斬撃を全方位に繰り出して、影の群れを細かく斬り刻みながら後ろに跳び下がる。

しかし、絡は逃がさないとばかりに善に詰め寄り、背中の蔦で物凄い速度で攻撃を始める。

同時に影で取り囲んで逃げ道を塞ごうとする。

善は鋏を一旦しまうと蔦を蹴り上げ、影を掴んで体を起こす。

影から棘が出て、善の手を貫くが気にせず、光の当たっている位置に逃げるが、そこへ突進するように飛んでくる絡の前に手を出し、鋏を出せば、突然現れた刃が絡の首に刺さる。

それを上に上げようとして、影が下から生え、それを身を捻って躱す。

身近での攻防。直後、蔦の二つが突然下へ向かい、地面を殴った。

それにより、善の足場が崩れる。

 

「そっちだってガンガン壊してんじゃん」

「僕はええんよ」

 

下はない。かなり落ち、辿り着いた場所は駅だった。

クソ、と舌打ちし、体制を立て直そうとするが空中じゃ上手く動けそうにない。

その上、このまま下に叩き付けられたら不味い。

 

「まだまだ行くで」

 

しかし、絡が待ってくれるはずもなく、再び高速ですぐ目の前まで迫ってきていた。

善は顔を顰めるも鋏を出し、冷静に薙いで斬撃を繰り出すと、絡の体を蹴って横の壁に飛ぶと、鋏を刺して落下の勢いを落とすとそのまま落ちる。

 

そこはベッドルーム。天蓋のベッドの上に落ちれば、そこを追うように絡が蔦で反発し、空中を高速で縦横無尽に移動しながら突撃してくる。

ベッドの傍に置いてあったランプが飛び、からんっと地面に転がる。

すると一瞬絡の影が消える。

善はその隙を見逃さず、削ぐように鋏で背中から蔦を切ると懐に入り込む。

そして、ザクッと目玉に鋏が炸裂し、目玉が一つだけ潰れる。

 

「っ」

「!」

 

善は絡を蹴って、後ろに高速で跳び下がる。

その直後、善がいた場所に影が勢いよく突き刺さる。

善は地面に着地し、それに続くように絡も地面に下り立つ。

 

「いややわ。ほんま」

 

ダラダラと血を右頬の目から流しながらピクピクと米神を引き攣らせながら絡はいう。残っている眼は血走っており、ぎろりと善を睨みつけた。

 

「そういうなよ。こっちも仕事なんだ」

 

少し刃毀れしてきている刃を見ながら善が肩を竦めた。

 

お互い睨み合う。先に仕掛けたのは絡だった。恐ろしいほどの影の針が襲い掛かって来る。

床だけではない、障害物全てから針が伸びてくる。

無傷とはいかず血を出しながらも善はそれを冷静に捌いていく。

そうして、段々慣れて来たのだろう、その勢いを圧倒し始める。

 

(有り得へん速度で適応してくる。

この短時間……それもこの激しさの中で次の手ぇ読んで動いてるんか?!化け物が……どんな脳みそしとんねん!)

 

ギリリと刃を嚙み締め無限の影を刺そうとするが善は器用に絡の体を盾にするような動きで逃げ切る。

背後にも影を出しつつ応戦し、振り返ろうとするが、それよりさきに善が怒涛の速度で影を削っていく。

 

「っ!!」

 

そして振り返ると同時に絡の両腕を切断し、肩を抉り、後は顔面だけとなる。

それでも抵抗しようとするが

 

「同じ手は食わない」

「!」

 

ザシュっとあたり一帯にあった影が一瞬で切り潰される。

 

(どんな範囲してるんや!!でも、まだや!まだ、これを躱せばぶっさして殺せる!)

 

そうして目の前に迫った切っ先をかわそうとして

 

「は…?」

 

口半分が、何故か切れた。

すぐに針を体内から大量に出して自分がハリネズミのようになる形で善を串刺しにしようとするが、その頃にはさっさと範囲外に逃げられていた。

 

「あ、やっぱりなんか企んでたか。危な。つっこんでたら死んでたわ」

(…なんで、確かに躱したのに。なのに、なんで切られた…?)

「やっぱ厄介だなぁ……よし、作戦を変えよう」

 

混乱する絡を他所に善は笑みを浮かべ、そして白くて長い指をピンッと立てると、すっと絡にむける。

警戒する絡。だが善は何かする様子はなく、ただ一言。

 

「雑種の匂いがずっとするんだけど、なんで?」

 

そう尋ねた。

 

「………は?」

 

善の行動。なによりその言葉の意味が分からず、ぽかんとする絡

だが、そんな彼には気にせず善は言葉を続ける。

 

「君の匂いだよ。君……実は夜縁じゃないだろ」

「はぁ?」

 

善の言葉に心底呆れたとばかりに顔を歪める絡

 

「何言いだすかと思えば、下らん。僕はずっと夜縁や。

姉貴と一緒に人間どものせいで夜縁となってもうた」

「可哀そうな奴」

「は?」

 

善は笑みを浮かべたまま、言葉を続ける。

 

「夜縁の繁栄方法はもう交配しか残ってないんだよ。

何故なら約100年以上前の戦いで夜縁は確実に3人にまで減り、1体は捕獲された。その捕獲対象ももう死んでるしね。

子供だっていうならともかく、それ以外の関係性なんて築けるわけないんだよ。

つまり君は、夜縁じゃない……ただの花咲きだ」

「そんなわけないやろ!?あほな事抜かすな!!ありえへんわ!」

「そんなことないさ。だって花咲きには自我も感情も記憶さえ無い…異能を持っただけのお人形だ。

人型かつそこそこ強い能力を持っているなら、そいつに記憶を植え付けて夜縁に見立ててしまえばいい」

「……自分、よっぽど苦しんで死にたいみたいやな」

「おお、怖い怖い。さて、第二ラウンドと洒落こもうか」

「!」

 

善が鋏を掴んで連続で突き出しながら絡に迫って、鋏を振り下ろす。

絡は紙一重で躱しながら、鋏の刃を右腕で塞ぎ陰で刺そうとする

鋏を止める為、自身の口から出た影と腕で止めるが、もうそれは通じない、いとも簡単に全て削ぎ落され、そのまま下から新たに影を生み出すが、ひょいっと飛んで躱される。そして着地、すぐさま攻撃しようとする…が、その前に善は眼の前に立っていた。

 

(はやっ)

(こいつは恐らく背後に影を出すことは出来ない。

ただし、背後にあるモノの影を自分が踏んでいる場合だけは例外…つまり振り返れなきゃ背中はがら空きというわけだけど…反応速度は人間と同じっぽいしわざわざ背後に回らなくても速度でゴリ押しゃいいでしょ)

 

そうして目にもとまらぬ速度で絡の目玉を切り裂く。

残る目玉は四つ

しかし絡は悲鳴を上げる事無く、顔を歪めて影を伸ばしてくる。

その様子を見て、善は目を細める。

 

「やっぱりね」

「はっ?」

「痛みないでしょ。君」

「!!」

 

その言葉に目を見開いた絡。だがしかし直ぐに黙れとでもいうように腕を動かし、無理矢理にでも絡は振り返る。

また飛んでくる影

それをバックステップで躱しつつ善は続ける。

 

「それに食癖持ってないんじゃない?

さっきだって、ただそこに動く人間がいたからっていう理由で食べてるって言ってたでしょ。

それこそ花咲の特徴だよ。アイツ等は無意識に人間を殺す。そのための手段として食べようとするから」

「っ、黙れ黙れ黙れ黙れ!!!僕は夜縁や!!!自分らみたいな畜生とは違う!!!!!」

 

突然荒れた様に叫びだす絡

 

「記憶の捏造…っていうのは難しいんだよ。ねぇ、君は小さい頃の自分を思い出せるわけ?」

「思い出せるに決まってるやろ!?姉貴と二人で暮らしとってん!親はおれへんかったけどそれでも楽しかった!学校におったら友達もおって、家に帰ったら姉貴がおる!それだけでよかってん!なのに………なのにあいつ等が!あいつ等がぁぁ!!!」

 

そう叫ぶ絡の顔のひび割れがドンドン増え、顔の半分が黒くなり始める。

紅い瞳がのぞく。影も勢いを増し、恐ろしく強くなっている。

それを冷静に捌きながら善は尚も質問を投げる。

 

「なら自分の好きな食べ物言えるの?」

「!」

「嫌いなものは?一番記憶に残ってるお姉さんとの思い出は?友達のこと思い出せる?学校で楽しかった思い出は?」

「っ!!!!」

「思い出せないでしょ。

そりゃそうだ。捏造の必要なんてなんとなく幸せそうな人間時代。落差の激しい実験体となった劣悪な記憶。自らの手で奪ってしまった幸せ……あとは感情のプログラムとかも少しすれば、人間を自動的に憎む殺戮人形が成り立つんだから詳細な記憶なんて必要ないもんね」

「煩い……やめぇ……それ以上喋んな」

「君に姉なんていないし、学校の友達ってのも本当にいたの?もしかして本当はいないんじゃない?だって君はそれらを証明することができない。

君の記憶は最初から最後まで全部捏造だから…ねぇお人形くん?」

「黙れやぁああ!!!!」

 

叫び声と共に、絡の体が弾ける。

わざと自身の蔦を手で掴んで引きちぎると体すらズタズタに裂いて、そこから大量の影が溢れ出し、地面の影と共に善に襲いかかる。

だが、その全ては鋏で切られる。そのままいとも簡単に内側に入り込んだ善は僅かにニヤリと口角を上げるとそのまま目玉を貫く。

だがそれに気を向けることはなく、更に攻撃を仕掛けるが、善はそれを全て避けきると絡の首に鋏を突き付ける。

ごぷっと口から血を吐きだす絡の顔に手を突っ込み、一気に破壊を試みるが、一つを潰したところで逃げられる。

 

(あかん!このままじゃ負けてまう!!一旦引くしかっ)

 

背を向けて逃げ出そうとする絡……だが

 

「はっ」

 

がすっと両足に衝撃が走る。

鋏だ。鋏を投げて絡の両足を切断したのだ。

その間に詰め寄って来る善。尻餅をつきながらもなんとか防ぐ絡

大量の影に善は少し後退する。

 

「はぁ……はぁ」

 

荒く息を繰り返す絡

 

(まだ……まだ大丈夫。目玉はあと弐つある。

最悪片方潰されるの覚悟して姉貴のとこ行くしかあらへん。

距離はそない離れてへん。

泣きつくとかみっともないことしたかあれへんけど、此奴一人で抑えるんは無理や。姉貴と一緒なら勝てる。絶対殺したる。

こいつだけは殺したる……まずはこの扉を通って姉貴のとこに…)

 

 

___本当に?

 

 

ノイズが頭に走り、幼い子供の声が此方に問いかけてくる。

その間にも善は影を切り裂き、此方に進もうとしてくるので、視界に収めながらも後退して進む。

 

(ホンマに決まってるやん。

姉貴やで?そら姉貴は気分屋やけど根本は優しいんや。怒るかもわかれへんけど絶対助けてくれる。昔かてそうやって助け合うて生きてきてん。勿論夜縁になってからもずっと)

 

___本当に?

 

目の前に迫って来る善の刀を弾き、背後に回り込まれないように躱し、影を伸ばし続ける絡

その内心は酷く荒れていて、冷や汗が止まらない。

 

 

(何疑うてるん?こんな奴の言うこと信じるんか?実の家族のことより?

心配せんでも姉貴はマジの家族や。こいつが訳わかれへんこと言うて惑わしてくるだけ………それだけやから……っ)

 

___本当に?

 

(やからっ)

 

 

 

 

 

 

___だって、あの化け物は

 

 

 

 

 

 

次の瞬間絡の脳内にとある記憶が再生される。

それは、自身を見下ろす女

そして傍には縦に真っ二つとなり、片方同士がくっついて糸で巻かれている両親の姿

右が父親の右半身、左が母親の左半身となっていて

それが上から吊るされ、地面には使われなかった半身と血だまりが落ちている。

 

「_____」

 

それを思い出した瞬間、絡は絶句する。

同時にパンッという音と共に影が折れ、同時に絡は自身の意思なく足から崩れ落ちた。

 

「ぁ……れ」

 

自身が崩れ落ちた足に力が入らない。

影も出せない、そして自身の体に合った花も、ドンドン枯れて萎んで、地面に花弁を散らせていく。

 

(なんで?なんで……かげ、でないん…?)

 

その間にかつかつという音と共に目の前に映るブーツ。

その爪先が絡の肩を押す。

そして ばたんっと絡は地面に仰向けに倒れ込む。

 

「うん、思い出せたようでよかったよ」

「な…に……た…だ」

「………ああ…”何したんだ”って?なにもしてないよ。ただの実験」

「じっけん…………?」

「思うに不死者の生体って等価交換に近しいものなんじゃないかなってずっと思ってたんだ」

 

善は絡の顔を覗き込みながら言う。

 

「花無しはさ、多分人間の頃の記憶残ってるし感情も多少あると思うんだよね。

だって体が頑丈になって、少し攻撃力が上がるくらいだからさ。

でも残ってるって言っても薄っすらだろうし、コミュニケーションとるのは不可能。脳みそも前に解体されたやつ見たんだけど蔦が生え撒くって穴だらけでさ

だから馬鹿になって誰彼構わず攻撃しちゃうんだろうね。

 

花咲きは異能があって回復力も高い。代わりに完璧な殺戮人形状態じゃん。

夜縁とかはさ、異能も使えるし人間の頃のことも覚えてるしちゃんと喋れる。

かわりに”食癖”っていう”絶対幸せになれない呪い”を抱えてる。

 

そういう法則でもあるのかなって何体も不死者みて思ったんだ。

君は”ただの”花咲きだ。

能力で記憶を捏造されてるだけで、君には本当の感情も人間の記憶もない。

でも君、今人間だったころの本当の記憶思い出しちゃったでしょ?退化してるんじゃない?花無しに。

だから影も使えないし、退化途中だから体に力も入らない」

「そ…薙ェ縺…ある…け、縺ェ縺ん」

 

まるでノイズでも入るかのように意味の分からない単語が彼の口から吐き出される。

その言葉は聞き取れないはずなのに、善は彼を見下ろし目を細める。

そうして最後の目玉に鋏の切っ先を向ける。

 

「何か言いたい事、ある?」

 

そう、完全に自我が消えようとしている絡を見下ろし、善が尋ねる。

絡は、ぐったりとした様子で。だがその目は哀愁を滲ませて弱弱しく口を開く。

 

「ォ縺ョ縺ソ繧ャ繝ゥ繝、繧〒帙縺ク蟷ー縺l代縺↑峨繧・遏」

 

そうして善は鋏を振り上げる。

鈍く光るそれを見て、笑みを浮かべる絡

 

(それでも僕は姉貴たちと過ごした時間が大好きだった。人間だった頃より、ずっと)

 

どこか満足したような笑みを、口に乗せるとほぼ同時に視界がブラックアウトし、すぐ近くでぐちゃりと何かが潰れた音が響くのだった。

 

 

 

 

 

 

「………疲れた」

 

ぼたぼたと血で固まった髪を掻きながらため息を吐く善は、その髪を雑に手首につけていた髪ゴムで髪を結ぶ。

ボサボサにくくられた髪だが、気にすることなく善は地面に落ちた破れた上着に袖を通し、自身の耳に手を当てる。

 

「あと少しだ。あと少しで…」

 

譫言のように何度も呟いて、扉を開け、奥へと進むのだった。




今回は善の戦闘シーン!
不死者の生態はどんどんわかるよどこまでも~

交配の話は二章の時点で言っていたので、察しがいい人なら気づいたことでしょう。
ということでライカやムクロもまた花咲きですね。あらやだ悲しい。
正式な夜縁組の反応が一々冷め気味だったのはこういう理由です。まぁあいつ等あまり家族間に情とか持ってない感じだったけど。

夜縁組で一番好きだった絡が死んじゃって雑草は悲しいよっ!
まぁ敵側だからね。うん。仕方ないということで。昇天っ!

あと相手の弱点に気づきながらもゴリ押しで押し切ろうとする善ちゃん。そういうところが脳筋だって言われるんやで…
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