「あれ、朔くん?」
「ああ、
その頃、東の研究所に来ていた朔は環に出くわしていた。
何故彼がここにいるのかわからず環は首を傾げる。朔はにこりと人好きする笑みを浮かべた。
「すみません。総統の命令でして」
「え、ああ、そういえばうちのボスもそっち行ってたっけ。
それ関連かなー、ホントはもてなしにお茶の一つでも上げたいんだけど、今こっちはこっちで忙しくてさ、案内もできそうにないんだ。マジごめんね?」
デカい輪っか。
近くにはハコビがころころと動き回っており、その輪に物をいれると、ハコビが飛び跳ね箱が消えていく。
ああやって、現地に荷物を届けて援護しているのだ。
時折ボロボロの人が入って来ては、運ばれているのが分かる。
「転送作業ですよね。お疲れ様です。
寧ろこんな忙しい時に来てしまってすみません。
あ、あと案内ですけど、なんとなく場所はわかっていますから。科学部隊の研究部屋。この奥の階段右ですよね?」
「あ、うん。そうだよー」
「それじゃぁ、お邪魔しますね」
そういうと紫空は立ち去っていた。
そんな朔の後ろを見て環は首を傾げる。
「相変わらずマジしっかりしてるなぁ………それにしても科学の研究室なんて来たことないはずなのに、よく迷わず行けるなぁ……東も似たような作りなんかな?」
その背を見て環はぼやくのだった。
「あれれれー?おっきゃくさんがきたでやんす?」
がちゃりと朔が入ればそこにいたのは
「ああ、やっぱり彼方がここ守ってたですか………お久しぶりですね」
「およよ!?くーたーんっ!えっ、ひっさしぶりー!」
声を上げて駆け寄って来る彼方
そのまま抱き着いてこようとするのを朔はひらりと交わす。
「久しぶりですね。いつぶりでしょうか」
「忘れるなんて酷いでやんす!オイラに罪をかぶせて、施設脱走した日以来でやんすよ!お陰でオイラ、滅茶苦茶に折檻されたでやんす!」
「……ああ、そういえばそうだっけ」
「でも恨んでないでやんすよっ、オイラもしーたんを見習ってこうやって抜け出せたんでやんすから!
勿論知らない奴に罪はおっかぶせたけど、あの施設、この間不死者の襲撃でほぼ全滅したから問題ないでやんすね!」
にこーっと笑う彼に「そうですか」と朔は興味なさそうに呟く。
「で?くーたんはなんでこんなとこにきたでやんすか?」
「ここのデータ破壊するため」
そうにこっと笑えば、彼は「データ?」と首を傾げる。
「とぼけなくていいですよ。貴方も関与してることは知ってるんで。俺はそのデータを破壊しないといけないんですよ」
「そうなんでやんすか…いいでやんすよ!案内するでやんす!ほら、こっちの部屋にあるでやんす!」
そういって右奥の部屋に行こうとする彼方………だが
「っ、いきなりなんでやんすか?」
「そっちが部屋じゃないことくらい知ってます。データベースはこっちの部屋、でしょ?」
「……」
「それに、壊すのはデータ。別にデータベースだけじゃないです。例えば、人間の脳みそは正しくデータベースですから」
「……つまり、殺すってことでやんすか?」
「そういうことですね」
「へぇぇぇ、殺す……ねぇ?」
そういうと、彼は目を見開き、頬に手を当てる。
「さいっこうでやんすね!それ!!!」
そういって頬を染め、華が咲くように笑う彼方
「えへ、えへへへへっ!!!いつか現れると思ってたんでやんす!人を殺せば人に恨まれる!
そうなれば、きっと誰か殺しに来ると思ってたんでやんすが、報復が理由じゃないのは吃驚でヤンすしちょっと残念でヤンすが、この際どうでもいい!!!
くーたんが…くーたんが殺しに来てくれるなんて思ってなかったっ!今心臓ドッキドキでやんすよ!
えへっ、最高でやんす、大好きでやんす!!!」
そういうと二丁の銃を取り出し、笑う彼方。
「でもただ殺されるのは良くないでやんす。血を誘う命の奪い合い、その果てにある死!
それこそが最高で何より美しいものでやんす!!
えへ、えへへへ、へへへっ!!さぁくーたん!一緒に、一緒に殺し愛しよ!」
そう言って早速火を噴く銃。銃声が響いた。
それをチェンソーの刃で綺麗に打ち落としていく朔
そのまま接近し間合いに彼方を捕らえると、そのまま切り込む。
だが、彼方は脚でチェンソーを蹴り返す。長靴の先端からは仕込み刀が飛びだしていた。
「…ああ、そういえば
「あれ、知ってるめう?なんか前の交流会の時に脅してきたんめう。
このことをばらされたくなければ上着を寄こせって。
ミンミンと仲いいから、自分を此処で殺したら絶対嗅ぎつけてくるぞって。
別にミンミンに殺されてもよかったんめうがぁ、臆することなく脅してきたのが面白くてあげちゃっためぅ
代わりに、これ頂戴って言ったらくれためう!」
チェンソーを跳ね飛ばし、その隙に銃を何度も発砲してくる彼方
それを躱すことなく受け止め、一切手を緩める事無くチェンソーを振り下ろせば、ざくっと彼方の肩が切れる。
腕を落とすところまではいかなかったものの、破れた制服からは血が滲み、腕を辿って血だまりを作る。
「あ、いたい、いたいいたいいたい!!
ああ、死ぬかも死ぬかも!!ふへ、へへへ…でも…なんでしーたん血が出てないの?」
「防弾チョッキって便利ですよね」
「防弾チョッキ?痛み共有できないもの外そうめう。つまんないめうよぉ」
「俺は別に戦いに面白さを求めてないから却下ですね」
そうぶーんっと再びチェンソーが吠える。
「それに、こういうの嫌いじゃないでしょ?」
「うん!大好きっ!!一方的な暴力…!施設を思い出すめぅ!!」
ダラダラと涎を垂らし、紅潮する彼方は自身の肩を触ったことで血液のついた指をべろっと舐める。
まるで、ご馳走でも味わうかのように。
「スナッフフィルムの為に殺されて逝く人たちの苦痛に歪む表情…絶望した時のあの絶叫
決死の覚悟でこっちを殺そうとするアイツ等の腕を折って色んな殺し方する。
殴って刺して絞めて毒して撃って轢いて焼いて落として千切って沈めて痺れて…あふふ、最高の毎日
毎日悲鳴が絶えない涙と血液ばっかの空間
ふふふ、人は死ぬ瞬間が一番美しいって思うめぅ
花火みたいに死ぬ瞬間だけ派手に光って散っていく!その瞬間が感じられるのが最高で……そしてその快感を共有できる人が金を落とす。
ふへっ、ホント”処”の施設でよかったって思うめぅ」
ぞくぞくと体をびくつかせながら自身を抱きしめて彼方はいう。
「だから、死ぬならあんな風に死にたいめぅ
しーたんのいうように、一方的に嬲られるのも全然有りめぅ
抵抗しても、虚しく殺される。ふへ、いいビデオがとれそう!カメラがないのが惜しいめうね!」
そういって蹴りを繰り出してくる。
高速の飛び蹴りを躱してチェンソーを振ろうとしたが、銃口が目の前に迫っている。
二本の拳銃が退路を塞いだのを見る。
「顔なら死ぬめうねぇ!?」
立ちブリッチをして躱すと、銃口が下がる前に横に転がって逃げる。
追うように銃弾が追いかけてくるが、ひょいっと起き上がる。
背後に接近する彼方。それを分かっているからかチェンソーを後ろに振り向きざまに振る。
だが、そのチェンソーを踏み台にするように避けられ、頭上に飛ばれ、額に向けて蹴りと銃弾が狙い撃ちされる。
蹴りは腕で、銃弾は背中に回したチェンソーで弾く。
腕で受けたこともあってか、腕が切れて血が出る。
「いやだなぁ……戦闘に関しては毎回パターン変わるから予想むずかしいんですよね」
背中に回したチェンソーから手を放し、後ろ脚を上げ、手持ちの部分を蹴り上げる。
チェンソーの刃が物凄い勢いで上げられ、彼方の太腿を切り落とした。
切断面から溢れ出る血溜まりと共に足が降って地面に落ちる。
「あああああぇへへへへ!!!」
ぐりんと白目をむく勢いで目をむき、涙と鼻水、涎を流しながら彼方は笑い声をあげる。
そのまま、片足だと言うのに絶妙にバランスを取って着地すると、そのまま切りかかって来る。
今度は、先ほどとは違い正面からの突進、チェンソーを回転させれば、相手は銃身部分で受け止めてくる。
火花が散り、金属同士がぶつかり合う甲高い音が響く。
力勝負ではこちらが不利と判断したのか、彼方が距離を取ると、二丁拳銃を発砲する。
それを体を傾けることで躱す。
一発頬を赤い線が走ったが、チェンソーの間合いに入った瞬間、横に一閃する。
その攻撃を見切ったのか、しゃがみこんで避けてからの、何かを取り出す
「!」
それは閃光弾
強烈な光が彼らを包む
「っ、う…」
目を抑える朔
しっかり目を瞑っていたのか彼方は平気そうだ。
チェンソーを持つ手を打てば、チェンソーが弾き飛んで床を滑っていった。
「ふふ、痛いめぅか?そりゃそうめう。
最新型の超高性能な閃光弾をあんな間近で喰らったんめぅ。場合によっては失明♡」
そう声をかければ、紫空は殴る様な動作を見せるが、ひらりと躱す。そうして今度は無防備に近づき、顔を近づけ耳元で囁く彼方
「本当はくーたんに殺されたかっためぅ
でも、決死の抵抗の末、こっちのほうが一枚上手だったみたいめぅ。なら、仕方ないめうね?」
そういって銃を向け…………。
「なんちって」
ごすっと突然彼方の脇腹に衝撃が走る。
ひゅっと口から息が漏れる。視線を脇腹へ落とす。
(ナイフ……!)
朔の袖からはナイフが見えていた。
それで脇腹を刺されたのだ。引き抜かれるそれ。血が溢れる。
痛みに顔を歪めながらも、銃を発砲しようとする。だが一瞬目を逸らしていた隙に両腕が手首から切り飛ばされた。
いつの間にかチェンソーは朔の手に戻ってきていたのだ。
チェンソーの唸り声をバックに手首が地面に転がり、びしゃびしゃと両腕から血が溢れて流れ出る。
「ぁ…」
「あなたなら直ぐに殺そうとしないとわかってました。
だってあなたの目的は殺害じゃなく殺し合いそのもの。死ぬまでの時間を楽しみたい。
その変態性だけはどこでも一緒ですからね」
「は、へ…ぇ、はへ」
だらしなく開かれた口から意味のわからない単語を垂れ流し、彼方はバランスを崩したようにべしゃりと地面に崩れ落ちた。しかし、その顔は喜びに満ちている。
「あへ、っえへへ」
恍惚といいたげな笑みを浮かべながら彼方は顔を上げる。
「ああ、もう無理っぽいめぅ。だって立てない。
どれだけ頑張っても流石にもう抵抗はムリめぅ。銃も握れないしぃ
だからほら、殺して……あ、嬲ってもいいめぅよ?ねぇくーたん♡」
しかし朔はチェンソーを直すと彼方を無視して歩き出す。
それを見て彼方は「もしかして失血死しろってこと?」と首をかしげるが、朔は反応することなく扉をあけ放ち、データベースを破壊する。
そうして戻って来る。
だが
「え、あ、えっ」
朔は彼方をスルーすると出入口へ向かって行った。
「ま、まってよくーたん!どこいくの!?いやどこいってもいいけど…ちゃ、ちゃんと戻って来るめぅよね?!」
「え、なんで?もうここに用事はないので戻ってきませんよ?」
「え、あ……なんで…?それじゃオイラはどうするの…?」
「そのまま失血死でしょ?」
「見届けてくれないの!?」
「生憎俺には貴方以上に大事な用事があるんですよね。
ああ、大丈夫ですよ。ちゃんとここには鍵をかけておくので、確実に死ねます。
死ぬことこそ美しい、って……死にたいっていってましたよね?どうぞ、安心して死んでください」
「ち、ちがう!!!確かに死は美しいけどそれを見る人がいないとゴミと変わらない!!!
観客がいて初めて綺麗なんだ!ねぇ分かるでしょ!?しーたんなら!一緒にあそこで思い出を共有したしーたんなら!!!!
あの時共感してくれたしーたんなら!!!
お願い見届けて!綺麗に散らさせて!!くーたん!くーたん!!!!!」
泣きながら必死に声を上げる彼方。朔は足を止め、彼方を振り返る。
「!、く、くーた」
「やだ♡」
べっと舌を出して笑う朔
瞬間彼方は絶望に染まった顔をする。
「や、だ。やだぁぁぁぁああああああああ」
そんな断末魔を上げる彼方を無視して、朔は扉を閉める。
「バカだなぁ、彼方は。
別に"いいんじゃない?"って言っただけで共感なんてしてないのに。
死体は死体。綺麗も醜いもない。人間は、生きてるからこそ美しい。死は単なる結果でしかないんですから」
そう考えながら約束通り鍵をかける。
そうして朔は「さ、エンドでも見に行きますか」と呟き、歩き出すのだった。
今回は彼方と朔の戦闘
人間同士のバトル。書くの楽しいけど難しい!
彼方はなぁ、ビジュが結構好きな子なんだぁ…あとキャラもいい感じに狂ってて好きだったんだけどねぇ。
裏設定ですが彼方は所謂ソシオパスというやつです。
環境によって歪んだタイプですね。
なので元はこんなとち狂ってない子だったりします。嫌わないであげてね(´・ω・`)