「はぁ、はぁっ、く、っそが!」
無限に続く階段地獄にヘロヘロになる誠
彼は未だ馬鹿正直に悲鳴の方へ走り回っていたのだった。
(でも流石にこの悲鳴が囮だってことは分かる。
まんまと嵌められた。クソ!だから適当に扉開けてるけど意味なさそうだし…。
人がいたとしても死体ばっかだ。くそ、俺なんの役にも立ってねぇじゃねぇか!)
ギリギリと歯を食いしばり階段を上がり、へとへとになりながら辿り着いた拝堂を開けようとして……直後、向こうから突然開いた。
驚いた誠の額目掛けて伸びる蔦に驚いて避けようとして、ガクッと膝が揺れる。
「なっ」
階段が崩れた。
蔦で壊されたのだ。
その下はどこまでも続く奈落
(刀さす場所がねぇ!くそ、しかたねぇか!)
誠はガッとこの状況を作り上げた蔦を掴む。
それにより、ガンっと生き物のように蔦が動き一瞬叩きつけられるもののそのまま引っこ抜かれるように開かれた扉の奥に引き込まれ、そのまま地面に投げ出される。
「あら、いきなり蔦掴んでくるからドンナ奴かと思って引っこ抜いてみたらよく知った顔が吊れたわ」
「っ!お前!」
「久しぶりじゃないの。虫けら」
偉そうに胸を張り、地面に這いつくばった誠を見てニヤッと笑う不死者
「
「虫けらの分際でアタシの名前、呼ばないでくれないかしら?」
夜縁の一人。螺であった。
彼女は巫女装束を着た姿で誠を無防備に見つめている。ぐっと足に力を籠め、刀を握り警戒する誠。
「前にもましてみすぼらしいわね。へろへろじゃない。
そんなのでアタシを殺せるのかしら?いいえ、無理ね。だってアンタ、相変わらず弱そうだもの」
「……うるせぇよ、前の俺じゃねぇ。今度は殺す」
「あらそう。威勢だけは良いみたいね。
前回はアンタのせいでお腹が空いて空いて仕方なかったのよ…………そのお返しに、簡単に殺してあげないわ」
そううっそり笑う螺。直後
「!」
ガンっと地面が揺れる。
「……床を破壊した虫がいるみたいね。それもかなりの馬鹿力で、ああ、最悪……まぁいいわ
そっちは兄さんやお母さんたちが殺してくれるもの、アタシは害虫駆除に勤しみましょう」
そうして、火蓋は切って落とされた。
カンっと甲高い金属の音が響き渡る。
「……ッ!」
誠の刃が巨大な掌に遮られる。
それは蛇の集合体、ばらばらと零れた蛇が誠に噛みつこうとするが、誠は腕を振るって蛇を振り落とす。
「ちっ、やっぱ鬱陶しいな。この蛇」
「それはこっちのセリフよ。さっさと蛇に食いつくされてしまいなさい。虫けら」
ぎりっと此方を睨みながら蛇をけしかけつつ、合間を縫って蹴りを放ってくる。
それを躱し、蛇を刀で押さえつける。
(まずは蛇をどうにかする)
地面を蹴り、素早く横、前後に動き、巨大な蛇の四方向に強烈な一発を叩き込む。
「!」
それにより、ばらばらと蛇の拳が崩れていくのが分かる。
(
身を素早く翻し、同じように切り込み、拳が小さくなったところで最後に飛び上がり、身を捻じりながら、刀を上から下へ一刀両断すると、蛇が分散する。
そうして軽やかに着地すると、螺に向かう。
螺が腕を振り上げる。
それを躱し、振った刀の切っ先が螺の胸に付く。
”……二刀流なら多少楽だろうが、俺やお前みたいな一刀使いは弱点が何かと多い。一番は次の攻撃を繰り出すまでにあるラグだ”
そう、あの練習の日、
”特に突きの動きとかな。刀の切っ先で相手を突くなら、接触は一度きり。
二度目を放つためには一度刀を退くという動作が必要だ。だから、ここで大事になって来るのは差し込む角度と動きだ”
言われた言葉を思い出し、刀身は斜めに傾ける。
そうして、点を描く刺突ではなく、素早く斜めに流して滑らせ、直ぐ位置をずらしてまた押し込む。
それにより、巫女服が切り裂かれ、血が噴き出す。
蛇が螺の掌から生み出され、此方に迫ったので一旦バックして、様子を見る。
(なにアイツ…!前より……ずっと強くなってる!)
ぎりっと歯を嚙み締める。
誠の姿が、前に自身の片目を潰そうとしてきた
(ただの虫けらの分際でっ)
眼が血走っていく。白目の部分が黒く色を変える。
(イライラするイライラするイライラする!!!)
歯を嚙み締め、蛇を走らせると同時に自身も腕や足を膨張させる。
そうして、突進
誠は冷静に蛇を切ろうとする。
だがその寸前で蛇が一人でに分散する。それにより誠の刀は空ぶる。
(くそっ、振らされた!!)
その間に、蛇が後ろで固まり誠を横へ払う。その先で螺が蹴りを放つ。
がっと誠の体が上に打ち上げられ、更に追撃をしようとする螺
その螺を空中で、刀の刃を滑らすことでその腕から逃れ、すれ違いざまに一発
しかし、その刀身は螺の足で抑えられる。だがそれを見越していたのか、自身の刀剣を下から蹴り上げ、刃を無理矢理進めれば抑えていた螺の足の裏が切れ、だばりと血が溢れる。
一瞬怯んだ隙に螺を蹴って地面に落ちれば、蛇が寄って来るので、ブンブンと刀を回し、蹴散らす。
そうして無事着地、ふと足に違和感があり、見れば蛇が這いあがってこようとしていたので、踏みつぶす。
(油断も隙もねぇ、な!)
そうして、落ちて来た螺目掛けて踏み込む
物凄い速度の踏み込み、だが、それを知っていたのだろう、螺は腕を振りあげて待っていた。
身をよじるようにして回避
空ぶった腕が、余波だけで地表をえぐる。
姿勢を崩した誠。対して螺は既に次の攻撃を準備している。
”体勢を崩したら死ぬと思え。だから、死ぬ気でバランスを取れ”
「_______っ」
誠は崩れた体勢であったが、歯を食いしばり無理矢理、崩れた方の足に力を入れて踏ん張ると
右へ回転しながら螺の攻撃を受け流しながら、後ろに迫る蛇を刻む。
「な___」
そうして、撃ち放たれる斬撃三連
それを蛇で防御するものの、最後の一発だけは螺の顔を横に裂いた。
それは、前に切られた目玉にも当たる。
ドロリと血が溢れ、俯く。距離を取る誠
(いける、このまま押し切れば)
「調子に乗ってんじゃないわよ……虫けらが」
(!)
突然目の前の螺の姿が崩れ、蛇に代わると背後の虫から形成され、手首に線が入る。
そこから血が噴き出し、肉が裂け、骨が削れ、ぶらりと腕が揺れる。
「……ッ、あ”ぁ!?」
腕を抑える誠
「少し攻撃が通用したからって悦ばないでくれる?目障り」
そうして、胴体に蹴りが放たれた。
「っ、けほ」
刀身の握り部分で蹴りの威力を抑えたとはいえ
(……くそ、右手が)
使えなくなったのは利き手である右手
刀が上手く握ることができない。力が入らない。
右腕が使えないことにより状況が逆転する。
殴り、蹴り、吹き飛ばされる。
全て寸前で躱し、流していることから致命傷は何とか避けられている。
だがそれだけ
(このままじゃ、時間の問題か…!どうする!)
躱して、逃げて流して打ち返しても右腕が使えないんじゃ、そのうち限界がきて此方が負ける。
必死に頭を回す誠
それにより、意識が散漫となった。
「つかまえた」
「!」
後ろの蛇の手が誠の体を締め付けた。
そのままぎりぎりと締め上げられ、骨が軋む。
「っ、うぁ」
何とか手を動かして逃げようとするが、腕が封じられて全然力が入らない。
それどころか、段々意識が遠のき始める。
(しん、けい……ど、く)
「虫けら如きがアタシ達に盾突こうとするからこうなるのよ。
きっと今だって、アタシの家族がアンタ等を殺していってるわ。ざまぁないわね!!!蛇に食いちぎられて死になさい」
そうして蛇が誠の体を食べ始める。
服を破り、手を千切り、傷口にも侵入して食われ、目を瞑る。
そのまま顔も飲み込まれた。
「誠」
「……!」
目を開ける。
そこは幼いころに母とよく来ていた公園だった。母は優しい顔でベンチに座っていて、誠はサッカーボールを抱えて公園の中央に立ち尽くしていた。
母はいつも通りだ。柔らかい笑みを浮かべて誠を見守っている。
「ぼーっとしてどうしたの?眠いのかな?」
「……かあ、さん」
「なぁに?誠」
手に持っていたボールが地面に落ちる。転がったボールを放置して誠はベンチに座る母に抱き着いた。
少し驚いたような顔をしたが、母は優しく誠を抱きとめ、そして慈しむ様に頭を撫でた。
「今日の誠は甘えただね。ふふ、今日のご飯は誠の好きなオムライスだから。楽しみにしててね」
「……うん」
グリグリと腹に顔をうずめる誠。だが誠はそっと体を起こすと、そのまま公園の出入り口に足を向ける。
「どこへいくの?まだお家に帰る時間じゃないでしょう?」
「…ごめん、かあさん」
「え?」
「ごめん。俺、かあさんのこと好きだったはずなのに。憎いって、思っちゃってたんだ」
「誠?」
きょとんとする母の顔を見て、誠は悲し気に目を伏せる。
「最低だよな。あんなに大好きだったのに、俺を庇って……死んだのに、俺が見殺しにしたのに。
俺は不死者が嫌いだ。死ねばいいと思ってるし、すぐにでも殺してやるって思ってる。でも、母さんも憎いって思っちゃったんだ。
母さんが死ななければ俺はあんな現実を見なくて済んだのにって……父さんに捨てられることも無く、ぬるま湯の中で、そこが嘘の世界だって気付くことも無かったのに。
例え、あの時俺が死んだとしても、俺は両親から愛されて、死ぬのを最後の最後まで悲しまれて死ねたのにって、そう思っちゃったんだ。
楽しかった思い出も優しい思い出も、全部偽物だって思うと……思い出したくないって」
目を瞑る。
そして目を開けると、そこには公園ではない場所
そこに佇むのは………
誠は八生を見る。
「それはな、お前に対しても思っちまう。
最低だなって自分でも感じてる。でもな、あそこで死ねたら良かったのにって考えるんだ。
お前が俺の代わりに死んだから、俺はその分生きないといけなくなった。生きないといけない理由が出来た。
ここに死のうと思って来たのに、お前のせいで死ねなくなった。お前の……”自己満足”のせいでな」
そういうと八生は苦笑いを浮かべる。
でも何も言わない。その顔を見て顔を顰める誠
「お前も俺と似たようなもんだったんだろ?死にたくてもただじゃ死ねないから、死んだらダメだから、死んでも許される理由を探すためにここにきた。
俺はお前の自己満足で生かされた。気付いた時、最悪の気分だったよ。
でも、俺はお前とは違うから……もうそんな生き方、嫌なんだ。
楽しい思い出を塗りつぶしてしまうのも、他人のせいでしか生きられないような薄汚い自分も、誰かにこんな糞見たいな気持ち押し付けて死にたいって願っちまう自分も…だから」
誠は顔を上げる。
「俺は、俺の為に生きていくって、俺の意思で決めた。
俺のせいで八生や母さんが死んだなら、俺はお前らの命抱えて生きてく。生きててよかったって思えるまで、ずっと」
気付けば、八生と母の姿がそこにはあって、誠の手には刀が握られていた。
誠はそれを確かめるように両手で強く握る。カチリという金属の音と感触をはっきりと感じながらゆっくりと刀を振り上げ
「あっちで気長に待っててくれ」
二人を切り裂いた。
「!?」
次の瞬間、蛇の塊が一瞬で吹き飛ぶ。
それを見て勝利を確信していた螺は目を剥いた。
「は?なに?!」
一瞬で切り刻まれた蛇の群れ。
其の中には、千切れかけの腕を握り締める誠の姿
全身が血に染まり、ボロボロになった誠
フラフラになりながらも目を開ける。
顔に蛇がついているのを左手で拭う。眼は虚ろだった。
(なんでもいいけど、同じことで殺せるでしょ)
蛇を向かわせる。
切ろうとする刃を前に分散し、襲わせる。
だが、一瞬空ぶった刃は急激にカーブし蛇を一掃する。
そして
「え」
ざくっと螺の前に来たかと思えば一瞬で背後に回り、螺の腕が千切れて飛ぶ。
顔を覆った事で、目玉は死守したが腕は千切れた。
そうして素早く刀を返してそのまま一気に畳みかける。
蛇を出して対抗しようとするも全て一掃されてしまった。
(なんなの、?!此奴人間でしょ!?そんな腕でこんな力っ
それどころかさっき神経毒を大量に注入されて動けないはず、なのにっ)
その間も誠はまるで人形のようにぐにゃりと体を動かし切り刻み螺に接近しようとする。
(此奴…焦点があってないっ、もしかして気絶してる?無意識なの??
だから痛みも感じてない?!この馬鹿力もリミッターが外れたから??でもそうだとしても毒よ!?動けるはずがないっ!!!)
開きっぱなしの口からはだらりと涎が零れている。
その姿が悍ましい。
(まさか此奴がおかあさんが言ってた半血?
いや、そんなわけないっ!片目は確かに潰れたし傷だって治ってない!!!!!なら本当にただの人間なの?!)
汗を流し、怯えを滲ませて見る螺
「なん、なのよっ、なんなのよアンタッ!!」
叫びながら蛇を入れていくが、全然通じることも無く蛇を殺していく。
そうして、体を斜めにやり、そのまま刀を滑らせる。
右足が千切れ、螺の体制が崩れるが、蛇を出して支えながら、腕を振ろうとする。
だがその前に腕が切られる。
逃げる為に蛇に体を変え、蛇の塊になって出現するが、目の前には誠の姿
目玉を切ろうとされたことで蛇を解除する代わりに蔦を出して刃を止める。
ふっと蛇が消滅し、両手から蔦が生えだす。
「はぁ、はぁっ」
ブチブチと蔦が切られ、振られたものを躱す。
(此奴は、置いておいたら危ない……殺せなくても、ここに留めるくらいはしとかないと…っ
今は分かってないみたいだけど、この空間から出られたら不味い)
焦りを滲ませる螺
(どうにか、此奴を引き留め___)
その時
「!!」
目を見開く螺
数秒固まった彼女は震える唇で呟く。
「……い、かなきゃ」
瞬間彼女の思考はソレ一色で塗りつぶされた。目の前の男も今の現状も全部どうでもよかった。
それよりも行かなくてはいけない場所がある。だって
「婁邪が…泣いてる……っ」
かわいくて大事な弟が泣いているのだから。
螺は誠を置いて扉から外へ出ようとした……のだが
「逃がさねぇよ」
「!」
扉ごと破壊する勢いで一閃が走る。
蛇を突き破り、螺の体が切断される。
下半身が地面に転がり、上半身が床に転がる。
それでも、螺は這ってでも前に進もうとする。そんな螺の耳に死神の足音が響いた。
「っ、邪魔しないでよ!!!」
振り返って大量の蛇を塊にして、挟み撃ちにするようにして向かわせる。
だが、それすら千切られる。
「近寄るな!近寄るなァ!!!!」
そう叫ぶが誠は近寄っていく。
蛇を戻して、治り始めている下半身に蔦を巻きつけ足代わりにするとそのまま開かれた扉に飛びつこうとするが、一瞬で回り込まれる。
それを横に躱すと、耳が削がれる。
(此奴!此奴がいるせいで!早くしないと!婁邪が!!!)
歯を嚙み締め螺は誠を睨む。
(きっと父さんも母さんも、絡も助けになんて行かない!アイツ等は家族ごっこをしてるに過ぎない。なら婁邪を助けられるのは、アタシだけなんだ!!!)
はぁ、はぁと荒い息を繰り返す。
(蛇を使っても意味がない………なら蔦で行くしかない)
蔦を伸ばし、鞭のように無限に叩き付ける。
それを捌く誠、だがまだ完全に追いつくことは出来ていないのか、傷ついていくのが分かる。
そうして、そのまま蔦を刺し、核を植え付けようとする。
だが、その蔦を千切られ、それどころか逆に蔦を掴まれて思いっきり引っ張られる。
そのまま切られそうになるのを腕でガードする。
「っ、る、か!」
そのまま蹴られ、地面に転がる。
千切れた腕で懸命に起き上がろうとする。
直後
「!!」
物凄い揺れが起きる。
館全体が悲鳴を上げるように何度も何度も激しく。
同時に螺にははっきりと分かった。一つの命が、この世を去っていくのを。
「あ、あああ……る、か…………るっ」
ボロボロと螺の目から涙が溢れる。
「あ、あ”あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
非痛に染まった絶叫を上げる螺。蹲って叫ぶ。両目からはボロボロと涙が溢れだした。
呼吸ができないほどに胸を押しつぶされる感覚。はくはくと何度も口を開閉する。
「悲しいとか苦しいとか、そういう感情がわかるんだな。お前も」
「っ!」
そういって刀を握りながら声を掛けたのは誠
その目は、しっかりと焦点が合う。眼帯のついていない青い瞳が螺を見る。
「痛みがわかるのに、なんで人を傷つけることを選んだんだ」
「あた、アタシだって………!やりたくなかったわよ!!!」
そういって蔦を出し襲い掛かる。
それを躱し、後ろに下がれば螺は震えながらも立ち上がる。
「生まれた時からずっと……!アンタ等はゴミで!化け物で!殺さないといけない悪い生き物だって!!!!散々いい聞かされてきた!だから!小さい頃から辺鄙な場所でチマチマ人を殺す練習をさせられてきた!
褒められて嬉しかった。これが正しいことだって信じて疑わなかった!
なのに、いざ実践って言われてその辺で捕まえて来た人間を殺したら…そうじゃなかった!!!全然聞いてた話と違った」
古びた倉庫の中。
そこには連れ去られてきたらしい人間たちが転がされていて、皆が皆顔を引き攣らせて助けを乞う様に螺を見上げて震えていた。
___助けて!お願い!!!
___おかあさぁぁぁん!お家に返してよ!!!
___痛い!痛い痛い!!!
声が未だに残っている。あの鉄の匂いが鼻の奥に残っている。あの生ぬるい液体の感覚が両の手に今もしっかりと残っている。あの光景が未だに瞼の奥にこびりついている。
吐き気がした。悍ましかった。恐ろしかった。
肩に手を置いてその行為を促してくるあの男が何よりも怖かった。
「皆平然とした顔で殺していくの。信じられる?アタシだけ異端なのよ……?アタシだけが可笑しいの。それに気づいて明らかに皆アタシに冷たくなった。
婁邪だけよ…あたしに優しいままだったのは……ううん。きっとあと一年もすれば婁邪だって…。
邪魔になるから殺した方が良いんじゃないかって話してるのも聞いた。誰も守ってくれない。助けてくれない。それならもう…殺すしかないじゃない…!生きるには殺すしかなかったのよっ!!!!!」
そう叫んだ瞬間ばきりと頬がわれ、黒い肌が露出する。
そこからは大量のキンセンカの花
その下半身からは大量の蛇があふれ出し、どんどんと周囲は蛇の海ができる。
その中には明らかに巨大な蛇まで生まれだし、誠は溜まらず後ろに下がる。
しかしそれを追い詰めるように螺は叫びながら勢いを増していく。
「わかんないでしょ!?どうせアンタ等には!!!アタシだってこんな力、欲しくなかったッ!
なのにこうでもしないと生きていけない!!
なら仕方ないじゃない!!こんな力、っ要らなかったのに!!!!」
そう叫ぶ螺。そこで漸く誠は顔を上げる。
「……アンタも、アンタの親たちも、きっと望んでた力なんてなかっただろうな。
理不尽だって、思うだろうな。
でも、どれだけ喚いたってその痛みはお前のもので他者が知ることはできない」
ちきっと誠の手に力がこもる。
「……きっとひどく苦しい思いをしたんだろ。
俺なんかには想像もつかないくらい…死にたくなるほど
そしてお前は痛みを他者に押しつける道を選んだ。
生きるために…それがお前の選んだ選択で、今の現状がその結果だ。
お前を肯定したら、お前の都合で殺されていった奴らはどうなる。
残された奴らの気持ちはどこにいくんだ?
人を殺しておいて……正当化していいわけねぇだろ!」
ばらっと全ての蛇が切り落ちる。
「生きるなら、背負わねぇと駄目なんだよ。この結果含めて受け入れるしかない。
俺もずっと逃げてたよ。誰かのせいにしてこんなはずじゃなかったって
でも、無駄だ。どれだけ目を背けても結果っていうのは付きまとって現実として突き付けてくるんだ」
「あ、ああっあああああ!!!」
爪を出し、蛇の下半身を伸ばすと、他の巨大な蛇とともに一斉に襲い掛かる螺
「だから、お前の思いも死も、俺が代わりに背負ってやる」
ざくっと刀が………螺の目玉を切り裂いた。
「だからもう、休んでいい」
「あ、ぁ………」
崩れ落ちる螺
蛇と華は枯れるように地面に千切れて塵となり、残された体もまた、黒ずんでいく。
「…………こ……どは………ちゃ……ん、と………」
何かに手を伸ばす螺。唯一白かった指先まで真っ黒になると同時にその手は地面に落ちて………そうして動かなくなった。
それを見届けると同時に、誠はどしゃっと崩れるようにして床に座り込んだ。
「……………はぁ、い”ッ!!!っ、けほっ、けほけほ、っげぼっ!!」
そのまま身を丸めて口から吐き出したのは一部穴の開いた細い小瓶
誠は舌を出すとそこには傷が出来ており血がダラダラと滴り落ちた。
そして、そこには僅かに硝子の破片が、それを指でつまんで捨ててから息を吐く。
「っ、はぁ…まさか紡のアイディアに助けられるとは思ってなかった…」
穴の開いた小瓶を投げ捨て、誠は刀の鞘で手首周りを上着で縛って固定する。
「……結構消耗したが…まだ行ける。ここで死ぬわけにはいかない」
はぁ、はぁと荒く息を吐き、誠はゆらりと立ち上がる。
そうして、近くにあった扉に手を掛け。
「って、またここかよ!!!」
見覚えのありすぎる空間を前に思わず絶叫するのだった。
因縁対決でしたー!
殲滅隊には化け物以上に化け物してるやつが多くて雑草も少し引いてます。
まぁ、あれだよね。ジャンプとかマガジンとかの主人公って明らかに人間やめてるから、普通だよね!うんっ!
それにしても一人一人育った環境によって持ってる価値観が違うからセリフ作るのが本当に難しいと思っている今日この頃
誠くんは比較的王道主人公みたいな思考してるからまだ作りやすいんですけど、ちらほら特殊な価値観もってるやつがいるから考えるのが難しいなぁって
まぁそういうキャラ達を愛してるからいいんだけどね!( ̄▽ ̄)