夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

9 / 112
今回もながめかもしれませんねぇ。作者的に好きなキャラクター一気に出せてとても嬉しいですぐへへへへ(´艸`*)


第三節 第一項

D地区。武器の工房や殲滅隊の養成学校や殲滅隊の試験会場の館などが立ち並ぶ殲滅隊活動のための地区。専用の交通手段を利用しなくてはたどり着けず、一部じゃ”隠れ地区”なんて呼ばれているような場所。

そんなD地区に八生は来ていた。

あの試験から今日で丁度10日。八生が正式に殲滅隊で働く日だ。

善の話によれば殲滅隊本拠地は秘隠されているらしい。

試験会場となった館を少し通り過ぎて館の裏側に回る。

するとそこにはひっそりと隠れるように大きな箱が置いてあった。

 

「えっと、この箱の中に入ればいいんだよね?」

 

八生は箱についた扉を開いて中に入る。

するとそこには「ここにカードを入れてください」と書かれた機械が取り付けてあった。

記載されている通り配布されていたカードをポケットから取り出して挿入する。

スキャンするようにカードの上部から下部へ光の線が現れカードをなぞる。

 

〈ユーザー認証。坂谷八生さん。戦闘部隊の部隊員として登録済。これより西本拠地へ転移します】

 

女性の声が響く。そして「にゃー」という音と共に、がたりと機体が左右に揺れ、目の前が真っ暗になる。

しかしそれも一瞬。すぐに周囲の明かりが戻って来る。

 

(もう、降りていいのかな)

 

カードを抜き取った八生は扉に手をかけ、押す。

開かれた扉の奥。そこは地区外と思ってしまうほど野原の生えた土地が広がっていた。

上を見上げれば檻などではなく壁と同じ素材で蓋をされており、鳥かごというより箱に近い。避難所を髣髴とさせる作りになっていた。

 

(あれ、球体照明かな)

 

だが違いがあるとすれば天井からは丸い灯がいくつも吊り下げられていることだ。

しかしそれでも他の地区に比べるとどうも味毛が無い。

そんな空間に一つ、大きな建物があった。

これが基地なのだろう。

横にデカいというより縦に長い作りである基地

灰色の壁には太陽を模したマークがあってその中央には2本の刀が掘られていた。

側面部には外階段が大量に設置されている。

そしてどうやら隣の大きな洋館と繋がっているのか廊下が伸びている。

説明によれば、新入隊員はここに集合するように言われていたが一人だと、少しだけ入りにくい。

それでも入らないと始まらないので、着替えを入れた鞄を握りしめ、思い切って中に入る。

 

中に入れば大きな舞台が設置された大きな部屋に出た。

その様は学校の体育館のようだ。舞台の横には階段があり、3階まで行ける仕組みらしい。

1階のホールには既に大量の人が集まっていた。

皆制服ではなく、八生と同じ私服である。その為恐らく全員今回合格した各部隊の新隊員なのだろう。

時計の針は12時50分を指している。あと10分で集合時間だ。それまで八生は時間を潰す。

 

そうして針は13時を指す。

時計の秒針が12時を指した瞬間、後ろの扉がバタンと音を立てて閉まった。

突然しまった扉に八生や後ろの方にいた隊員は驚いた表情で振り返る。

しかし扉周辺にいた制服を着た女性たち。恐らく正規隊員の彼女たちは特に動じた様子もなく扉に鍵をかけてしまった。

 

扉の外からは声が響く。時計は集合時間を過ぎている。外にいるのは遅刻した人たちだろうと八生は予想する。

彼等も突然しまった扉に驚いているのか扉を叩く音が微かに響き「なんで突然しまったんだよ」といったような声が聞こえてくる。だが扉が再び開くことはない。

代わりに舞台にパッと照明が当たる。

そこには先ほどまでいなかった人影があった。

黒の長外套をはためかせた男。彼はスポットライトの中立っていた。

 

「新兵諸君。ごきげんよう」

 

男はマイクを通して声を発する。その声に八生以外の新入隊員の背筋が伸び緊迫した空気が流れるのが分かる。

 

(皆緊張してる?この人、誰だろ…)

 

首をかしげる八生、ふと誰かがボソッと「あれが、殲滅隊のトップ…」と呟いたのが聞こえる。

 

(あの人が、トップ…)

 

八生は改めて壇上の男を見る。

彼が発するオーラは特に重苦しいものでもなく、プレッシャーのような物も感じられない。

浮かべる表情も朗らかだ。

白髪交じりの黒髪に、紺色の目…年齢は60歳くらいだろう。

 

「私の名は浅葱大賢(あさぎたいけん)

一応ここの総統を任されているものだ。

まず諸君、ここに集った君達を私は心から歓迎しよう。

さて、諸君らがここにいるのは分かっているだろうが不死者を殲滅させるためだ。

何処の部隊にいようとも、その事実は変らず、同時に命を落とす可能性のある場所だ。初日に時間一つ守れぬなど論外だ」

 

目は八生たちを見て言っている。だがその言葉は間違いなく扉の外に居る人たちに向けられているのだろう。

彼は一つ咳払いをする。

 

「さて、諸君らに一つ問おう。

我々がこの世界に生まれ、今ここにいるのはただの幸運だと思うか?たまたま運がよかったがために我々はこの場所で生きていると思うか?答えは”否”だ。

今までの先代が代々頭を捻り、力を研ぎ澄まし、必死に命を繋いだからこそある現実こそが今だ。

その過程で生まれてしまった犠牲者の思いが作り上げた未来だ!

託された以上、我々は彼らの覚悟を継ぐ”責任”がある!!

その重さを知れ!そして背負え!その上で我等が成すべきことをしろ!それが我らの使命であり、義務なのだと知れ!!」

 

そこで彼は一呼吸ため、再び空気を吸う。

ごくりと誰かが固唾をのむ。それが八生自身だったのか、はたまた他の誰かだったのかは分からない。

しかし誰もが彼の次の言葉に必死に耳を傾ける。

 

「愛する家族、友人、恋人、先祖、そしてこれから生まれてくる子孫、全ての人類の未来のためにその身を尽くせ!

それが我々の生きる意味だ!それこそが我々の存在意義だ!この身朽ち果てるまで、役目を全しろ!」

 

そう言って彼は天高く拳を突き上げる。

 

「さぁ諸君!共に憎き不死者共を殲滅し、朝を取り戻そう!!!」

 

大賢が声高らかに宣言を行う。

その姿はまさに圧巻であり、気迫を感じるもので。同時に不思議と彼の言葉には力があり、鼓舞されるように体が熱くなる。

それはどうやら周囲の彼等もそうだったらしい。

一瞬静まり返った後に爆発したような歓声が上がる。

鳴りやまない拍手喝采の音が、建物全体に響き渡る。

強い熱気。これがカリスマ性というものなのだろう。

朔嗣はくるりと身を翻すとそのまま舞台裏へと去っていく。

そうして代わりに出て来たのは、試験監督をしていた千歳だった。

彼女は熱気冷めやらぬと言った様子で興奮する彼らを前にハウリングを態と起こす。

それにより、キーンッという高い音が響き、空気がピタリと止まりって音が止む。ざわつきさえ消えた静寂。それを確認した彼女は口を開く。

 

「それでは副隊長の皆様は新入隊員を連れて寮へ移動してください」

 

先程の浅葱の言葉に興奮冷めやらぬ様子で新入隊員たちはゾロゾロと指示通り移動を始める。

八生もまた「すごかった」と思いながらも一先ずは移動しないといけないと思考を無理やり切り替える。

だがこの人混みだ。どこへ移動するべきなのか分からず、辺りを見まわす。

 

「戦闘部隊のやつ、付いてこい!」

 

迷子になっていた八生の耳に男の声が響く。声のした方に人波を掻き分けて向かえば、見慣れた顔を見つける。

 

「誠君!」

「あ?ああ、お前か」

 

そこには鞄を持った誠の姿があった。

見知った顔に出会えて八生はほっとしながら彼に駆け寄る。

 

「よかった。誠君もちゃんと来てたんだ」

「来てるに決まってるだろ。馬鹿かお前」

 

相も変わらずつんけんとした態度をとる誠に八生は笑みを零す。

 

「あの!」

 

八生が誠が話していれば少し大きな声と同時にトントンと肩を叩かれる。

八生が振り返ればそこには試験であった男の子が何処かそわそわとした様子で立っていた。

 

「君、あの時の」

「先日はほんっとうにありがとうございました!!!ぼ、僕もう無理だって、思って…!」

 

男の子は大きな声で言いながらバッと勢いよく頭を下げる。

 

「お前っ、あの時の泣き虫!」

「あっ、短気なお兄さんもアリガトウ!!」

「誰が短気だ!!誰が!」

 

悪びれた様子もなく、笑顔で言う男の子の言葉にキレる誠。

八生は苦笑いして男の子に向き直った。

 

「私は坂谷八生、名前を聞いてもいいかな?」

「僕は筑波(つむぐ)だよ!」

「紡君ね。これから同期として宜しく」

 

八生が手を差し出すと紡は驚いた顔をして、八生の顔と手を交互に見た後ギュッと手を握る。

 

「うん!うんっ!よろしくヤヨちゃん!」

「え、やよ?」

「渾名!」

 

嬉しそうに笑う紡に八生は「まぁいいか」と納得する。

 

「で、君は?」

 

ずっと黙り込み、無表情の少年に八生は目を向ける。

乱雑に斬られた黒髪に黄色い目。顔には一本横に傷が入っている。少年は八生の声に反応し僅かに此方を見る。

 

勅使河原(てしがわら)(りつ)

「えっと、律君?」

「…」

「あ、私は」

「坂谷」

「え、う、うん」

 

八生が名前を名乗る前に律に謂れ、口を閉じる。

その後、興味はないとでも言いたげに律は違う方向をぼんやりと眺めてしまった。

 

「雑談は終わったか?」

 

第三者の声が頭上から降って来る。

声のする方を見ると、そこには不機嫌そうな青年が立っていた。

 

(この人が…戦闘部隊の副隊長?)

 

善よりもさらに高い背丈。綺麗な銀色の髪が証明でキラキラと光っており、顔の整った青年がそこにいた。

だが八生は彼から目を離すことが出来なかった。

何故か、それはその人の瞳の色が____紅、だったからだ。

 

 

『人型の不死者は勿論いるよ。ていうか夜縁の連中は全員人型だね。

ぱっと見は人か不死者か判断できない。でも大丈夫。赤目があるかないかで判断すればいい。

必ずどこかしら見える位置にある。例え幻覚系の能力持ちだとしてもこれだけは共通なんだ』

 

 

不死者の特徴ともいえる赤い瞳。それを見た瞬間善の言葉が脳裏をよぎり無意識のうちに警戒を滲ませ____ガッと八生は大きな手に顔を掴まれていた。

 

「っ!?」

「人の顔ジロジロ見てんじゃねぇよ。見せもんじゃねぇんだ…テメェ等もな」

 

男は心底不快そうに舌打ちを一つすると八生の顔から手を離す。

 

「あ、す、すみません!」

「…寮に行く、付いてこい」

 

八生の謝罪については特に何か言う訳でもなく彼は背を向けて歩き出す。

八生たちは少し戸惑いながらも彼の後に続いて歩き出す。

 

基地を出て向かった先は、この基地と繋がっている大きな館だった。渡り廊下を通って館へ入る。

館の中は、試験で利用した館と近い作りとなっていて。

しかし通路は細くはなく、普通の幅だ。勿論、血の跡や大きな傷なども無い。比較的綺麗な内装となっていた。

 

「あっちはお前等一般隊員は立ち入り禁止だ。

招集が掛かった時しか入れねぇ仕様になってるからチョロチョロするなよ」

 

釘を刺され、八生たちは首を縦に振った。

そして階段をあがり二階に入ると電光板が壁に埋められていた。

電光板には【東棟、戦闘部隊寮・西棟、支援部隊寮】と書かれている。

東棟に入るとそこには沢山の部屋に繋がる扉が並んでいる。

部屋の一番奥へ向かうと、雰囲気の違う開けた場所に出る目の前には一つの扉

他の扉は茶色に何の模様も書かれていない無地だった。だがこの扉は白色で太陽の模様が掘られていた。副隊長はその扉を躊躇なく開ける。

 

「新人連れて来たぞ」

「お、きたきた」

 

副隊長に促されて中に入る。部屋の白い壁には金色の線で蔦の絵が描かれ、中央には机とソファーが置いてあった。

そしてその奥には仕事用と思われる机が置いてあり、机の前には座り心地のよさそうな椅子が設置してあった。

そしてその椅子に座る男が一人。彼は銀色の髪に紅目で…。

 

「え、副隊長がふたり!?」

 

副隊長そっくりの青年が椅子に腰かけて八生たちの方を見ていた。

思わず副隊長と部屋の中に居る青年を見比べると全く同じ顔だ。瓜二つ。違いが判らないほどにそっくりだった。

驚いたのは八生だけではなく、誠や紡もだった。

紡に至っては「影分身!?どっちが本物!?」と叫んでいるほどだ。

 

「あはは、影分身じゃないよ。僕等は双子なんだ」

 

相変わらず不機嫌そうな顔をする副隊長とは違い、青年は物腰の柔らかい口調で人好きしそうな笑みを浮かべながら椅子から立ち上がった。

 

「改めまして。僕は戦闘部隊で隊長をやっている雪村日向(ひなた)です。よろしくね。それでそっちが」

「副隊長の雪村日向(ひゅうが)だ。バリバリ働けよ新人共」

 

笑顔を浮かべる隊長と、仏頂面の副隊長。

見た目こそ似てはいるが印象はまさしく真逆であった。

 

「今年お前等4人しか居ねぇから、4人で1チームな」

 

扉に凭れ掛りながら自己紹介をしてくれた日向(ひゅうが)だが、彼はいきなり八生達を指さすという。

 

「は?」

「チーム?」

「任務は危険だから、基本は複数人でチーム組んで任務に就く決まりなんだよ。

特にお前等みたいな新人はな。まぁ、協調性も糞もねぇ単独の方が動きやすいとか抜かす馬鹿は単独で動いても構わねぇけどな」

「その場合は相当実力がないとお勧めは出来ないけどね」

 

ケっと顔を顰めて言う日向(ひゅうが)にくすりと笑みを零す日向(ひなた)

日向(ひなた)は視線をずらし、部屋の中央にある机を見る。

 

「アレは皆の制服と武器だよ。試験時に君達が使っていた武器をもとに製作された新品

なにか変えて欲しい要素があった場合は開発部隊に申請出せば作り直してくれるよ」

 

机には制服と武器。そして善が腕に付けていた腕輪がまとめて置いてあった。

銀色のリングの中心には青い宝石のような物がはめ込まれている。手に取ってみれば見た目よりずっと重たい。

 

「はーい、ヒナさん!この腕輪なんですか!」

 

ピンっと腕を上げ紡が聞く。

名前を呼ばれた日向(ひなた)は紡の渾名に驚いたのかキョトンとする。

 

「お、おい!隊長相手になんつー口の利き方してんだ!」

 

誠が紡に怒る、が当の日向(ひなた)は怒る様子もなく笑いを零す。

 

「ああ、構わないよ。少し驚いただけだから。

それで…そのリングについてだけど。それは通信機兼情報共有端末。リングの側面に小さいボタンが付いてるでしょ?」

 

言われて確認すると、確かに小さい出っ張りが3つついている。

3つとも色が違う。黒っぽい色と白色っぽい色、そして青っぽい色に分かれている。

「黒色のボタンを押してごらん」と言われ、八生が押すと青い宝石から光が出て、宙に画面が現れる。

右上には八生の名前が書かれていて。右から任務。電話。メールというアイコンが出ている。

試しに宙に浮かぶ画面に触れると、触れた感覚はない物の、画面はしっかり反応する。

 

「任務が来たら連絡が入る様になってるから、連絡が来たら逐一見てね」

「一日平均2つか3つくらい任務入るが、場合によってはほぼフルタイムで働くこともある。休める時はマジで休んだほうが良いぞ。過労で倒れたくなけりゃな」

 

善も殲滅隊はブラックだってよく言っていたな、と八生は思い出す。

一日2、3こなら問題もなさそうだが、フルタイムは流石にきついだろうことは容易に予想ができる。

過労でも人は死ぬ。死因が過労死というのは嫌なので休める時はしっかりと休んでおこうと八生は心に誓う。

 

「電話とかメールの使い方は普通の携帯と同じ。

因みにボタンさえ押せば声でも操作可能だから仲間と離れてる時、不死者とかと相対した時はそっちの機能使うのもありかな。

白色ボタンは速攻本部と連絡が付くようになってる。緊急事態の時はそっちを押してね」

「お前等面倒臭いからって任務とかバックれたりするなよ?規則違反起こして断罪部隊が動いても俺等は守ってやんねぇからな」

「まぁどうしてもっていう事情がある場合は相談してくれたらいいよ。

多少融通は利くようにするから。それで最後に青ボタンだけど、押せば武器の出し入れが出来る」

 

青ボタンを押した瞬間。手に持っていた銃が吸い込まれるように宝石に消えていく。

 

「すごい…」

「住人に不安を与えないためにも武器は戦闘以外しまう決まりだ。普通に邪魔だしな。

因みに武器とリングは繋がってるから誤って他人の武器を収納する心配はねぇぞ」

「さ、その手荷物も重いだろうし、お腹もすいてくる時間だからね。

部屋に行って荷物を置いたらご飯食べておいで。一階の西棟に食堂があるから」

 

微笑んだ日向(ひなた)

 

(なんだかんだ優しそうな人たちでよかった)

 

そんなことを思いながら八生は制服と武器を取り、同時に隣に置いてあった鍵を手に取って廊下へ出る。

八生が取った鍵は【203号室】

部屋の番号を確認しながら歩く。そうして探していると【203】と書かれた部屋を見つける。

 

「ここか」

 

鍵をはめ、ぐるりと回すと簡単にロックが解除される。

中はポツンと一つベッドが設置されているだけで、他には何も置かれていない。

ベッドの上には窓が一つ用意されているだけの質素な部屋だ。

 

「はぁぁぁ、ひっさびさのベット……」

 

ダイブするように八生はベットに飛び込む。

ぼふんっと柔らかい感覚が体を包み込み、深い息を吐き、ごろりと転がる。

 

「あの布の山とは全然違う……幸せ」

 

呟き、ベッドの近くにある窓を見る。

 

「…真っ暗」

 

墨で黒塗りした様な世界が窓の外に広がっていて奇妙な感覚を抱く。

暫くボンヤリと窓の外を見ていると、トントンと控えめに扉が叩かれる音が響いてそちらに意識が向く。

ベットから降りた八生はガチャリと扉を開けると、そこには誠が立っていた。

 

「アレ、誠君だ…って制服に着替えたんだね」

「まぁ、いつ任務言い渡されるか分かんねぇし」

「あ、そっか」

「お前も着替えとけよ。で、着替えたら飯食いに行くぞ」

「え?」

「チーム組むことになっちまったんだ。ある程度お互いの事は知っといたほうがいざという時連携取りやすいだろーが」

 

「分かったらさっさと着替えろ」と言われ、扉を閉められる。

八生は急いで、ベッドに置いてある着替えに手を付ける。

シンプルな服装だ。黒色のジャケットにカッターシャツ、ベルト、スカートとタイツ、ブーツだ。

 

「この制服……可愛い」

 

ジャケットの袖には金色で線が入っていて、腕には植物の柄が入ったワッペンが張り付けてある。中のカッターシャツの首元には銀の糸で一本線が入っていた。

スカートにも、裾の方に金の糸で線が一本入っている。シンプルだが可愛らしい隊服だ。

誠や善の制服には金の線は入っていたが、ここまでお洒落にも見えなかったし、男女でデザインが少し違うのかもしれない。

袖を通し、服を着替える。最後にブーツを履き、外に出る。

 

「おまたせ」

「んなに待ってねぇよ。行くぞ」

 

誠は階段の方へと向かう。

食堂は一階の西棟だ。西棟に向かうと直ぐに人の賑わう音が聞こえる。

覗き込めば、案の定そこは食堂で人が沢山いた。

中に入ると席を取っておいてくれた紡と律が居たわけ、なのだが。

 

(なんかすごい食べてる…!!)

 

紡の前には空になった皿が既に大量に置かれていた。

 

「あ、ヤヨちゃんとマコちゃん来た!」

「マコちゃんいうな」

「そっちのカウンターでご飯貰えるから貰っておいでよ!凄くおいしいよ!」

「無視してんじゃねぇぞクソチビ!」

「……」

 

紡にキレる誠だが”クソチビ”という度に律が微妙に反応していることに八生は気づく。

もしかしたら気にしているのかもしれない。律の方が少し紡より身長が低いから。

無表情を崩さない律だが、なんだか少し面白く感じながらも八生は紡が指さしたカウンターに目をやる。

するとそこには恐らく支援部隊の人であろう女の人たちがせっせとご飯を作っており、トレーには既にいくつもの食事が並んでいる。

 

「おいしそう…!」

 

駆け寄って一つトレーを取ればいい匂いが鼻をくすぐる。

献立表を見れば、なめこと豆腐の味噌汁と鮭のムニエル、トマトと大根のサラダ、白米とメニューが掛かれていた。

 

(…定食ならどれでも戦闘部隊は無料で食べられるようになってるんだ。

他の部隊はA定食のみ無料…飲み物は全部隊無料提供…こういうのちゃんと設定されてるんだなぁ)

 

メニュー表の隣には別の紙が貼られていて、そんなことが掛かれている。

それを読み終え、誠の分もとって八生が席に戻れば、未だに誠は紡に突っかかっていた。

其れに苦笑いしつつ、八生は誠にトレーを差し出せば「ありがと」といい、大人しく席について食事を始める。八生もまた前に腰を下ろして食事に手を付ける。

そうこうしている間に斜め前に座る紡は既に15人前を平らげていた。

 

「ねぇ紡君。そんなに食べて大丈夫?」

 

紡はゴクンと口の中にあるモノを飲み込み、大きく頷く。

 

「大丈夫!僕沢山食べないと倒れるからこのくらいなら余裕で食べれるよ!!」

「そ、そうなんだ」

 

一体その小さい体の何処に入っているんだろう。そんな疑問を抱えながらも、野菜に手を付ける八生

ふと目の前に座っている誠がなめこをじっと見つめ……そっと紡に味噌汁のお椀を差し出した。

 

「これ、やるよ」

「え!?ほんと!」

 

誠のお椀を目を輝かせて受け取る紡

 

「あと、これも」

「やった!野菜すきなんだ!」

「なら全部くっていいぞ」

「わぁい!」

 

喜ぶ紡。だが誠の行動は明らかに好き嫌いを人に押し付ける子供の行動そのまんまであった。

 

「ちょっ!駄目だよ誠くん!ちゃと食べないと栄養かたよっちゃう!」

「一食くらい偏ったって問題ないだろ」

 

注意する八生に誠は何処かブスッとした顔でいう。

その間も紡に呑み込まれていくなめこ汁たち。

わいわいと話しながら囲む食卓はいつぶりだろうか。

 

(大人数でこんな風にご飯食べるの久しぶり…なんだか)

「楽しいね。こういうの!皆でご飯囲ってさ、お話ししながら食べるの!!」

 

紡が満面の笑顔で言う。

 

「僕がいた”施設”はそういうことしてこなかったからすっごく新鮮!」

 

平然と”施設”であることをいう紡に八生の表情が僅かに曇る。

 

(そっか。ここには施設出身の子も来てるのか…当然、といえば当然だよね。こんな世界だし)

 

八生はごくりと味噌汁を飲みこむと明るく笑う。

 

「そっかぁ、じゃぁこれから毎日みんなで食べようか!そっちの方が楽しいし、親睦も深まるだろうし!ね!」

 

同意を求めるようにムニエルを食べる誠に問う。

 

「まぁ、いいんじゃねぇの?」

「律くんはどう?」

「……」

「いいってさ!」

「何も言って無くね?」

 

ジトッとした目で聞いてくる誠。だが八生は華麗にスルーする。

話を聞いていた紡は数回目を瞬かせる。

 

「……これから毎日こんな風に食べれるの?」

「そうだよ!今日みたいに皆で喋りながら食べるの」

 

すると紡の顔は見る見るうちに明るくなっていく。

 

「やったぁ!」

 

喜びが限界まで達したのだろう。

万歳しながら嬉しそうに笑う紡。その拍子に箸が手から抜け___誠の頭に突き刺さった。

 

「てめっ、箸投げてんじゃねぇよ!!」

「あ、マコちゃんごめん!」

「マコちゃんっていうな!」

 

キレる誠。だがにへにへと笑う紡に誠も怒る気が失せたのだろう。

溜息を一つ吐くと机に設置されていた箱から箸を取り出すと紡に渡す。

 

「所でお前がいた地区ってどこだよ?」

「N地区!」

「ああ、あの結構荒れてる所か」

「え、荒れてる?」

 

八生は首を傾げて聞く。

 

「地区によって荒れてる地区と安定してる地区があるんだよ。

Nは確か結構荒れてたはず。飯とかよく取り合いになるって聞くぞ」

「そうでもなかったよ?少なくとも僕たちは毎日ちゃんと食べれてたもん。

でも僕はお腹が直ぐすくから、よくつまみ食いして怒られちゃってたけど」

「どんだけ食い意地張ってんだよお前。つかN地区っていえばあのハゲが長やってるとこじゃねぇの?」

 

誠が聞けば紡は「そうだよ!良く知ってるね!」という。

 

「まぁ俺も施設育ちだからな。前にウチの施設にそいつ来たから覚えてたんだよ」

 

なんてことなさそうに誠も答える。

 

(誠君も施設出身なんだ)

「あの施設長、前に見た時なんかスゲェ怖い印象会ったんだけど…やっぱ怖ぇの?」

「怖いよ!つまみ食いがバレた時にしこたま怒られたもん!でもね、お説教中に月光がね、施設長の頭を照らすの!!」

「やっぱ輝くんか?!」

「お月様より輝いてた!見たら笑いそうになるから顔を逸らすんだけど、ふと前を向いたら目の前に居て!

思わず口の中に入ってたお菓子噴き出しちゃって二倍で怒られた!

でも窓辺でお説教する施設長が悪いと思うって言ったら次からお説教するときに、微妙に窓があるか確認するようになったから、其れも面白かった!」

 

施設でのことを楽しそうに話す紡。その話をこれまた楽しそうに聞く誠。淡々と食べる律。

学校の友人たちと弁当を食べる時もこんな風に楽しみながら食べたという事を思い出す八生。

思い出すだけで懐かしくなり、同時に悲しくて寂しい。けれどいつまでもめそめそなんてしていられない。

 

(悲しむのは全部終わった後でもできるんだ。

私はここで、この人たちと一緒にこれからも同じご飯を食べて一緒に不死者を殲滅するんだ。

ツクシやお母さん、お父さんを守れなかった分、皆を守って助ける)

 

改めて決意を固める八生

ふと八生の腕輪からジジっという音が響く。

八生だけじゃない、他のメンバーの腕輪も成る。

先ほど言われた通りボタンを押して確認してみればメールのアイコンに通知が入っていて、開けばそれは任務についてであった。

 

「あ、さっそく任務来たな」

「うん。いこっか」

 

そうして食事を書き込んで八生たちは立ち上がる。

食器をカウンターに運び、彼らはカツカツと足音を響かせ、任務地へ向かう為食堂を出て廊下を歩く。

 

「場所はJ地区の東エリア。目撃された不死者は花咲き一体」

(花咲き……異能を操る不死者)

「んじゃまぁ、初任務だ。気合入れていくぞ」

「おー!!」

 

こうして八生の初任務が、ついに始まる。




▽つむぐんがメンバーに加わったぞい
▽りっちゃんがメンバーに加わったぞい


作者が好きなキャラクターは幸村兄弟です。いいキャラしてるなぁって思ってます(自画自賛)
作中きっての美人キャラです。因みに余談ですが善は善で顔がいいキャラだったりします。作者が美形キャラ好きなんで。てへ
ただ幸村~ズは漢字が被ってるのでルビ振りが少々面倒くさくて失踪しそうですけどねっ(ノД`)・゜・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。