がんばれ皆!負けるな皆!殲滅隊の明日は君たちに掛かってるぞ!
「お前たち人間を殺し、私は新たな世界で神としてこの世に君臨する。
その光景を想像するだけで身悶えしてしまいそうだ。お前たちは神を作る糧となれる」
凄まじい斬撃が、部屋を襲う。その斬撃を繰り出している男は目の前の光景に目を細めて微笑んだ。
「嬉しいだろう?人間」
攻撃を繰り出し続ける
彼等三人は傷や汚れを体に負いながらもなんとか
否、戦うというより、逃げ回る、という方が表現としては正しいだろうか。
全く持って近づくことが出来ず、駆けまわることしかできなかった。
そんな彼らのもとへ水の砲撃が飛んでくる。
かと思えばそんな彼らの足元で水が大爆発を起こした。
(変幻自在な水の能力!それも近、中、遠すべてに対応可能…その上回復速度が桁違いです)
(必ず何かしらノ弱点はアるはず。それヲ探す)
「刮目するがいい。人間」
しかしそれは単純な操るだけではない。
水を圧縮して氷へと変えたり、形を変えたりすることができるのだ。
今三人を攻撃しているのは水で出来た槍状のものである。
そしてそれを地面に突き刺す。躱せば大爆発に襲われる。
そうして
そうすればバカでかい剣のようなものが生み出される。
「まずいっ」
「ヤバ」
「!」
それを見た三人もそれぞれ回避行動に移る。
だが
「遅いな」
三人の行動より一瞬早く
直後、巨大な水の大砲から放たれた一撃が三人を襲う。
避ける間もなく直撃したそれに飲み込まれてしまった。
辺り一面に土煙が立ち込め、地面が瓦解する。
しばらくすると徐々に視界が晴れてくる。
「やはり人間、脆いな」
だが
「…ほぉ?」
茉莉と蓮の前に堤が立っていた。
「お前、その姿…なるほど。本当に人間は面白いことをする____人体の機械化、なんてな」
先程の一撃を受け切った堤
その姿は肌が剥がれ落ち、出てきたのは冷たい金属だった。
右頬から上半身。右足と露出し、機械がのぞいている。
これこそが”育”の人体改造なのだ。
「0,6」
「え?」
「次の攻撃までの時間が伸びてる。僅かな差」
「!」
茉莉と蓮はその言葉に目を見開く。
0,6秒という時間は確かに伸びていた。
ほんの少しの違い。だが、それは確かな活路となる。
彼の頭上に巨大な水の塊が現れる。そしてそれを投げつけるように振り下ろした。
当然そんなものを喰らうわけにはいかない。
だがこれを喰らわなければ
(仕方ない。ここは一旦引いて………って)
だが堤はそのまま特攻する。
「たかが機械ごときが舐めるな」
「ッ」
直後、水の砲弾が大爆発を起こす。
堤はその衝撃に耐えきれず吹き飛ばされ、地面に落ちた瞬間更なる爆発に襲われる。
だがすぐに起き上がると、足を踏み込み一気に飛躍する。
「何度やっても同じこと」
そうしてまたもや攻撃を仕様とする
「!」
がんっと直後、壁が破壊された。
同時に銃弾が飛んできて頬を掠める。
そしてそちらに意識を持っていかれていた
「ヒット」
ぶしゃっと手首が飛んだ。
蓮が鎌を投げ、頭上から大量の銃弾の雨が降り注いだのだ。
そして
「討伐」
堤の武器である二刀流を振り上げ、思いっきり振り下ろした。
べこんっと目玉こそ潰れはしなかったが
「やりましたかぁ!?」
「音まだする!まだ死んでねぇぞ!」
壁をぶち破ったのは和真と叶恋の二人だった。
和真がぶち破った壁に手をついて下を見て叫ぶ。
抜けた先には水の膜を作って攻撃を軽減したらしい
「さっきは驚いたよ」
ごきりと首を鳴らし起き上がる
その表情は怒りに満ち溢れているようだった。
「神である私に穢れた身でありながら触れるなど、身の程知らずが」
そしてそれを圧縮させていく。次第に大きくなる水の球
それが帳の身体よりも大きくなった時、彼はそれを投げつけた。
彼等は咄嵯に回避行動を取る。
すると先程までいた場所に大爆発が起こった。
地面には大きなクレーターができており、爆風がこちらにまで届く。
「ひゃぁぁぁぁっ。な、なんですかあれぇ!」
「やっべ!めっちゃラスボスって感じ!強ぇぇ!」
「…喜んでいる場合ですか…」
爆風で吹き飛ばされた叶恋を和真は腕を掴んで引き留めてやりつつ喜びを見せる。
通常運転な和真を見て茉莉は深い溜息を吐いた。
だが、そんな和真の前に
「お前たち、何をしているんだ?」
「え」
直後、腹部に強烈な痛みを感じ吹っ飛ぶ。
「ぐっ」
「綾坂さん!」
「綾瀬和真!」
(っ、近寄って来る音、聞こえなかったんだけどっ)
げほっと血を吐きながら、地面に墜落する和真
同じく攻撃されかけた茉莉と叶恋はそれぞれ回避行動をとり逃げ切る。
だが___背後、二人の背後に水の槍が生成され。
「がっ」
「あ”」
刺された。そして
「死ね」
ばんっと槍が爆発を起こす。
貫通こそしなかったが、それでも体内に槍が入った状態での爆発だ。多大なる損傷を受け、二人は血を吐き出す。
だがただでは終わらない。
茉莉はぎりぎりと歯を食いしばり銃弾を連射する。
そして塞がれないように叶恋もまた鎖で
そして脳みそをたたき割る様に堤と蓮がそれぞれの得物を振り下ろす………だが
「二度も同じ手は食わない」
「行ってください!!!」
砲撃を横へ流して見せたのは會だった。
その言葉に蓮は
だが
しかしそんな
「畳掛ける。準備は」
「「「できてます。隊長」」」
堤の無機質な声に東の戦闘部隊が呼応するように声を上げる。
「げほっ、げほげほっ、最後だ!派手にやってぶっ殺して散ってやるぜ!」
「ち、っちゃ…だめでしょうよ」
血を吐いていた和真、茉莉もまた立ち上がり武器を構えた。
(叶恋ちゃんも、いかないと…っ、みんな、頑張ってるんだ。叶恋ちゃ、んも…!!!)
そうして叶恋もまた、ズタズタの両足で立ち上がる。
腹からも大量に血を流しながら。
(気づいたことがある…。
地面から突然の水の爆発が起こる時、本当に一瞬だけど、緑の何かが見えた。
それに、他の場所の床は簡単に崩れるのに、ここの床は全然壊れない。
ここが一階だから?いや、違う、それなら上のタイルがはがれる。なのにそれがないってことはっ!!)
そうしてモーニングスターを振り上げる。
大量の血を吐きながら、勢いよく振り下ろす。
ばきっと思いっきり砕かれたそこには…。
「やっぱり!」
太いツタが蠢いていて。
「!」
その蔦が膨らみ、水の大爆発を起こす。
「きゃっ」と悲鳴を上げて、叶恋は地面を転がる。続くように地面から水の爆発が巻き起こっていき、空に打ち上げられる。
「っ…」
他の隊員も同じように爆発で巻き上げられる。
(あの、蔦を…切らないとっ、ずっと地面から攻撃され続ける…!数がいても、減らされ続けるっ、早くっ)
「あの蔦が地面からの爆発の正体っすか」
「お手柄」
「!」
宙に放り出された叶恋をキャッチしたのは
「か、いくん…れん、くん」
會と蓮であった。
「合わせてくださいっすよ」
「ウン」
そうして二人はそれぞれ獲物を振り上げ。
「「おらぁぁぁぁぁ」」
思いっきり地面に叩きつけた。
爆発的な衝撃が起こり、バキバキとただでさえ脆くなっていた地面に亀裂が物凄い勢いで入っていき、がんっと一気に崩壊した。
蔦が露出する。瞬間その蔦が勢いよく水爆発を起こし、同時に蔦が大量に飛んでくる。
(ホントに規格外っす。本来蔦と異能は同時に使えないっつーのに)
(もう、何がきても…驚かナい)
その蔦さえ予想通りだといわんばかりに二人は対処していく。
同時に
「なんとか、間に合った!」
その太い蔦が切れた。切ったのは
「ひ、さめ、くん!」
誠だ。
あの不死者が死んだことで漸く神社から抜け出せたらしい彼はこの戦場へと一直線に向かってきていたのだ。
そんな誠を見て會はにやりと笑みを浮かべる。
「いいとこにきたっすね。
片腕死んでるみたいっすけど、その状態でここに来たってことは扱き使えっていうことでいいんすね?」
「はい!」
「いい返事っす。
夜縁の対処はあっちに任せるとして、今はこのぶっとい蔦を切ることに俺たちは集中っす」
指示を出した會は飛び出す。
「叶恋、戦えそうっすか」
同時に、腕に抱えている叶恋に聞く。
聞かれた叶恋ははっと顔を上げる。
「…っ、行ける!」
そういうと叶恋は真っ直ぐな目で言う。
「まだぁ動けるよ!」
會は叶恋を離す。
「誠君と蓮、叶恋の三人で蔦は任せたっす。俺はアイツを削ぎます」
「了解」
「はい!」
「わ、かった!」
會と別れ、叶恋たちは蔦を壊しに向かう。
叶恋がモーニングスターを振り下ろすと同時に蓮もまた獲物を振り下ろす。
(蔦が来ると最初からわかっテいれバ躱せル)
そうして飛んできた蔦と水の爆発を交わしながら誠とともに蔦を叩き切る。
(…蔦が再生しないところを見るに、この蔦自体が異能の一部ってわけではなイ
ならやっパり通常の蔦
この蔦は異能を使っているとき、再生させることはできない。
あるいは、機械の設定みたいに事前に蔦に色々仕込んで合図一つで使っている、とかそんな感じかナ
更にゴムみたいに弾力があるから切るときにかなり力がいる。厄介この上ない)
「蓮くん!」
(ただ、弱音を吐くわけにはいかなイ。あっちのほウが、断然酷イ)
ちらりとみる先、そこには會含めての隊員たちが賢明に
(あっちの負担を減らス。それが僕たちノ役目)
勢いよく振り上げ、そして地面に叩きつける。
がんっという激しい衝撃が走り、蔦が激しくのたうち回る。
しかしそれを気にするまもなく崩して、切り裂いていく。
(やっぱり再生してない。このままいけば取り除ける)
「蓮、危ない!」
會の声に反応し振り返ると目の前まで水の塊が飛んできていた。
すぐに避けようと飛び退くがそのタイミングで他の場所にあった蔦が動き。水が下から発射。バランスを崩し地面に倒れる。
會がこちらに来ようとする。だがその背にもまた
そんな彼らの姿はぼやけて見える。
ぼやけた理由は、目の前に迫る水の塊を通してみたからだろう。
そうしてそれは
「_____!」
目の前で弾けて消えた。
「おっ、ラスボス戦ってのに、思ったより人死んでないじゃん」
「不謹慎なこといってんじゃねェぞ、お前」
二つの人影が、戦場に舞い降りた。
一人は蓮の目の前に。もう一つは
それは東、西にとっては頼りになる二人だった。
「善さん!!」
「狗星さんっ!!」
善、そして飛鳥の二人だった。
「ここまでの引き留めご苦労さん。こっからは足手纏いだからさっさと撤退してね」
いつものように手を振る善は、目の前にいる
「相変わらず、屑っすね。アンタは」
その背を見て會はいつも通り悪態をつく。だがその表情は何処か安堵したように緩んだ。
「怪我してる奴らは一旦引け!武器壊れてる奴もだ!補給してもっかい来い!!」
(この調子じゃ、囮にすらなれないでしょうね。彼の言う通り一旦引きますか)
その言葉に一部が引いていく。
それを見ながら善は顔を上げる。
「人間は無駄な努力をするのが好きだな。まだ勝てると思っているとは…それにしても、人数を減らしてしまってよかったのか?ただでさえ弱いというのに更に不利となるように動くとはつくづく救えない」
「不利になる?まさか」
善は肩を竦める。
「不利になったのはそっちだと思うけど?」
「なにを____」
何故なら背中に激しい衝撃が走ったからだ。
かひゅっと息が漏れる。何が起こったのかわからず顔をそちらに向けようとして
「っ!?」
今度は腹に衝撃が走った。
右と左。その眼球の端でそれぞれ黒と金の髪が舞った。
「さっさと死んどけ老害」
「まぁそういうこと」
ざくっと同時に前と後ろから引き裂かれる。
(なにが………おこった…?)
混乱する
「あの二人の援護をするぞ」
「ああっ」
敵はこの二人だけではない。人数は減っても残っている人間がいる。
その間に二人はすれ違い様にまた
(何故だ!?何故こうも一方的にやられている!?この私がっ、たかが人間にっ)
どうして二人が自分たちを圧倒されているのか。その理由を必死に。
人間は夜縁に比べて短命な生き物だ。
たかだか100年程度しか生きられない。それに加え弱く脆い。
それに比べ夜縁は違う。特に子禽や
数百年以上生きている。その過程で様々な武器を手に入れた正真正銘の化け物
だというのに、たかが2,30年程度しか生きていない。夜縁のような特別な能力も何も持っていない人間と何故こうも数百年に渡る戦争を繰り返しているのか。
なぜここまで、互角にやりあえるのか。
それは人間の環境に対する適応能力とそれに伴った進化が理由だ。
短命故に人間は学習し適応。そして進化を続ける。その速度は夜縁すら軽く超越するほどに。
数百年間人間を下等生物として見下し続けた彼には
「っ、くっがぁっ!!!」
何故こうも一方的に攻撃されているのか。その理由が理解できない。
「下等生物が……いい気になるな!」
叫び、
それは一直線に二人へ攻撃を仕掛けた。
善、飛鳥は矛先を逸らしつつ後ろに下がる。
触れた瞬間大爆発を起こし、館内が壊れていくのがわかる。それだけでどれだけの威力なのかがはっきりとわかった。
それどころか後ろで流れ弾を喰らったらしく何人か巻き添えを喰らったのかわかる。
(早ェし数が多い。爆発付与か……場合に寄っちゃ物量で押し切られかねねェ。なにより後ろの奴らが潰されかねない。挙句)
上を見る。そこには宙に浮く巫蠱の姿。
その足からは水が出続けている。
(………水の応用で宙に浮けるのか。あの水遮断できるならしたいけど、どうせさせてくれないだろうし。落とすしかないか。そのためには)
善は後ろを向く。
「君ら全員撤退して、科学と開発のメンバー連れてきて。今の現状じゃ、君らは肉壁すらできない」
「そんなことっ」
食い下がってこようとする會、だが
「っ」
第二破がくる。善は顔を歪め、會を抱えて横に逃げつつ鋏を滑らせる。
「あいつ以上に面倒くさそうじゃん……連戦は勘弁してほしいんだけど」
善はちっと顔を歪めながら會から手を離す。
「君の仕事は全員をここから逃がすこと。武器の補充して科学の連中連れてくること。君らがいると気が散って仕方ない」
「………っ」
「…頼んだよ」
言われた會はぐっと手のひらを握りしめる。
そして、援軍を仕様としている隊員を見る。
「全員退散。一旦戻るっすよ」
「え、で、でもぉ」
「多少の援護くらいならできるかもしれないじゃないですか!」
「いいからいくっす。動けない奴には手ぇ貸してやって!」
會の声と同時に善が一歩踏み出していた。
疾風のような速さ。
流れるように善は近くの障害物を使って巫蠱へ迫る。
「やはりこの場においては遅いな」
しかし巫蠱は既に場所を移動していた。
そのまま善の背後へと回り込み、水の刀を振り下ろす。
「そりゃこっちのセリフだよ」
「なっ___」
しかし善はそれを空中で身をよじり、振り向き様に避けてみせた。
巫蠱は瞠目しながらも即座に次の動作をしようとする。だがそれより先に
「俺のこと忘れてンなよ」
「かはっ……!?」
「てーい」
「ぐっ」
飛鳥が巫蠱の背を切り裂き、善がその肩目掛けて足を振り落とした。
善の攻撃にはついてこれたらしい。巫蠱はギリギリと歯を噛みしめながら善の脚を水で受け止める。
そうして払い落とすように善を地面に叩き落とすと同時に先ほど同様、物凄い速度の水の銃弾を打ち放った。
飛鳥は身を翻しつつそれらを長刀で払落し、善は地面に着地する成り、低い体勢で全て躱しきる。
(っ、猿が………!)
顔を歪め、巫蠱は水を身に纏い、彼等二人に一気に迫る。反動で近くの壁が凹む。その速度は音速を超えていた。
常人ならば反応することすら敵わない超スピードで動き回る巫蠱。だが善と飛鳥は当然のように目で追った。
そうして水は糸のように姿を変える。それはまるで死んだ子禽の業の様だった。
糸は巣に代わり、彼らを包囲する。少しでも触れれば一発で致命傷になりかねないソレ。
「きかねェなァ!」
だが飛鳥は一切怯むことなく巨体を動かし糸と糸の間を通り抜けた。
通り抜けられない者は長刀で薙ぎ払う。
(ダメージは確実に食らっているはずなのになぜ怯まないっ!?)
次の瞬間、飛鳥の姿が視界から外れる。
「ッ!?」
一体どこへ?という疑問よりも先に背後から襲ってきた殺気に振り返った。
「なっ」
飛鳥は巫蠱の頭目掛けて鋏を振り下ろす。水で防げはした。
(馬鹿な、あの一瞬でどうやって背後に)
水の攻撃を切っ先で押さえつけるが飛鳥はそんなことどうでもいいとばかりに無理やり力で押し込みにかかる。
激しい水の流れに逆らい切っ先が突き進んでくる。
弾けるように彼の頭上に銃を発射するが
「それしか能がないの?」
それらすべて飛鳥に被弾する前に善が叩き潰した。
驚く巫蠱。だがその間に飛鳥の長刀の切っ先が巫蠱に触れる。
「っ、ふ、ざける……なぁぁぁぁぁぁあああああああああ」
咆哮と共に巫蠱の手が飛鳥に向けられゼロ距離から水鉄砲とは到底思えないほどの威力を纏ったそれを放つ
しかし飛鳥は既にそこにはいなかった。
「なっ……!?」
身をかがめ、背後へと回り込んだ。
人間離れした動き。予想外の行動に驚く。
振り返り、先ほど同様水で攻撃。もしくは防御しようと腕を動かす。
「させねェ」
が、それよりも速く飛鳥がその腕を蹴り上げた。
がんっと鋭い痛みと共に手が上を向く。
「傷から発射されちゃァ溜まったもんじゃねェからな」
上げられた手から水が溢れ出す。
だが飛鳥には当たり前のように当たらず、それどころか敵を前に片腕を上げるという致命傷ともとれる隙を見せてしまった。
「ッ……甘い!」
だが、巫蠱とて何百年と生きてきた。
脚から出していた水を操り、飛鳥へ攻撃を仕掛ける。同時に自身の手から流れた水も操り、取り囲むようにして襲い掛かる。
先程の蜘蛛の巣とは違い、距離が近い上に隙の無い包囲。前、後ろ、下、上。右も左も水の壁。どうすることもできない。
善が援護に回ることもできないだろう。
死ぬしかない。
「ご……っ」
直後、腹に激しい痛みが走った。
見る。そこには回転する長刀。それは水を描き破り……そして、巫蠱の体を突き破った。
その体の開いた穴を、何かが通り抜けていった。
ごぼごぼと血を吐き出す。そして目だけがそれを追う。
「ただではしなねェ」
全身から血を流しながら笑う巨体。
死んでいない。どこにも欠損していない。ただ血を大量に垂れ流した男がそこにはいた。
その血も、どこまで本人の物か分からない。
そちらに意識を向けてしまっていた。故に
「しまっ……」
目のまえに迫った、二本の切っ先への反応に遅れる。
「あ”がっ」
ぶしゃっと片目から血が噴き出した。
紅い双眸。その一つが…………潰された。
長年無事だった一つが、破壊された。こんなにも簡単に、壊されたのだ。
「_______________っ」
様々な感情が体の中で巻き起こった。
負けるかもしれない不安。勝てるのかという焦り。意味の分からない状況への困惑。そして………己の夢を奪おうとする無礼者共への、激しい怒り。
目のまえには。金髪の男。そいつが自身に向かって長刀を振りかざす。
それをみて、カッと目の前が赤くなった。
「塵となって消えろ!下等生物がっ!!!!!」
今までの気品などかなぐり捨てて彼は叫んだ。
しかし飛鳥は止まることなく長刀を振り上げた。
そうして無防備なその体目掛けて
「!」
振り下ろそうとした。
だがそれよりさきに、屋根が落ちてきた。
目を見開く飛鳥。それを蹴って回避する。その際に顔を上げて………その光景に目を見開いた。
「………は?」
いままで空を覆い隠していた館の屋根や上の階の床は全て粉々に潰れていた。
それだけじゃない。
「なっ」
デカい球体がそこにはあった。
「気づかなかっただろ。ずっと少しずつ少しずつ作っていたんだ。
ただこれを使うとこの家の中がボロボロになるからな、あまり気乗りはしなかったが…」
それは水を限界まで圧縮させ、肥大化させた高エネルギーの塊。軽く館すべてを呑み込めるデカさの球体。下手すればここら一帯が吹き飛びかねない。
「お前らを殺した後に全員なぶり殺し、私はこの世界の神となる。お前はその礎だ。死ね」
そうして飛鳥目掛けてそれが豪速球で振り下ろされた。
飛鳥は身を捻って躱そうとする。
だがそれはそう簡単に逃げられる程度の大きさではない。
これは………無理だ。
自分だけじゃない。
飛鳥は目を後ろに向ける。
そこには少数の人の姿。まだ完全に逃げ出せてはいない隊員たちの姿
自分ごと全員巻き込んで死にかねない。
飛鳥はぐっと歯を食いしばる。そうして一か八かの賭けで長刀を振り上げ
「対抗しようとすんな馬鹿」
そんな声が響いたかと思えば…………とんっと体を押された。
ふわりと体がその勢いにのって地面に落とされる。顔を上げる。黒い布が降ってきた。それは上着で
それを剥がしたその奥には
「_____善ッ!!!」
鋏を持った善の姿があった。
飛鳥の声に善は一瞬飛鳥の方を見る。
そして善は僅かに笑みを浮かべ__________そして球体に呑み込まれた。
「っ!」
飛鳥は地面に着地すると同時に激しい衝撃波に襲われた。
善にぶつかった球体が破裂したのだ。四方八方に飛び散る水の破片
建物の壁が崩れて落ちていく。
どんどんとぶっ壊れていくそれらに建物全体が大きく揺れた。
そして遂に建物は崩落する。
「まずいっ…!!」
「外も内もどっちも危険度変わらねぇじゃないっすか…!」
「取り敢えず落ちてくるもん破壊しつつ逃げるぞ…!!」
残っていたらしい隊員もまた慌てて逃げ出す。
そこかしこから破壊音が響く。
そうして崩壊が止んで地面が建物の残骸で埋まった辺りで彼らは一息つくと同時に巫蠱、そしてあの球体に呑まれた善を思い出し辺りを見る。
しかしどちらの姿も見えなかった。
静かだ。先程の戦いがあったとは思えないほどの静寂。
生ぬるい風が辺り一面を吹き付けた。
「な、んだ」
そしてその風に乗って、掠れた声がはっきりと彼らの耳に入った。
見る。そこには2つの人影
一つは地面に倒れ込んでいてもう一つはその直ぐ側で片膝をついていた。しかし彼らの間には一つの影
それは鋏の影をしたもの。
善だ。
誰もそちらに近づこうとはしなかった。
目を見開いてそれらを見つめる。
そしてそれは、倒れ込んでいる影……巫蠱も同じだった。
胴体を鋏で貫かれ地面に縫い付けられているというのに彼は暴れることなくただただ困惑した表情を浮かべていた。
やがて、彼の青白い唇が震えながら開かれる。
「き、さま…なんで」
「…」
目を見開いた先
そこには善がいて。
善の体はもはや原型をとどめていなかった。
代わりに…蔦と葡萄のつぼみが咲き乱れていた。
その姿は到底人間のとは思えない。それを証明するように巫蠱が叫んだ。
「なんで夜縁の血を引きながら、人間の味方をしている!?」
なんていうか善も飛鳥もあんまり苦戦することなく今まで敵を一方的にボコってきた二人なんでなんというかちょっと巫蠱が不憫だな、って思いながら書いてました。
まぁ最後でしっかり反撃してるんで帳消しですけど。
それはそれとして善と飛鳥は普段仲悪いですけど、連携取るときはとります。そして取ったら最強です。素晴らしい。
てか飛鳥がついに善の名前を呼びました。
雑草は悶えました。うちの子がっこんなにっ尊いっ!!!心の中でペンライト振り回してました。
そんでもって善ちゃんの不死者バレっ!ふぅぅ!!!
実は善ちゃんって要所要所でボロ出してたりするんですけど、周りは気づいていなかったって感じです。
皆さんは善が何処らへんでボロ出してるか気づけたかな〜?
まぁ正直一回読んだだけではなかなかわからないと思いますがねっ!!へっっっ!!!
さてさて、雑草の予想じゃ五節で終わる予定なので、皆さんもうしばらくお付き合いください(*'ω'*)