予想以上に文章で盛り上げようとするのって難しいですね。泣きそうです。
終わり方は決まってるし、イベントも決めてるんですけど、それを繋げる話が掛けないという。
誰かオイラに文章能力を下せェ(ノД`)・゜・。
「こいつを殺せば終わりだ!!」
「明日を生きるために戦え!!!」
「死んだ奴らを無駄にするな!!!」
わやわやと隊員たちが目玉へ飛び掛かっていく。
辿り着けず体を吹き飛ばされるもの、千切られるもの、粉々に粉砕されるもの。
辿り着けても切り潰す前に殺されるもの。
「潰し続ける」
「殺せなくとも、役に立たなくてはいけない」
「それが役目だから」
その中には欠損が目立つ隊員も紛れていた。
「あ”あああああああああ死にたくなィィィ」
「いやだいやだぁ!!!」
しかし、死ぬのは怖い。あれだけ自身を鼓舞したっていざ死を目前としてしまうと酷く恐ろしい。
脆い意志が死という圧倒的暴力を前に簡単に打ち崩される。辺りに断末魔が響く
「開発部隊は後方支援頼むっす!」
「対不死者専用弾!発射します!!」
いくつもの爆発音が響く。
弾けるように血を吹き出す目玉。本体が蠢く。
攻撃全てが鬱陶しいとでもいうように凄まじい轟音と共に水の塊が打ち出された。
地面も死体も武器も、全て吹き飛ばすような一撃
すでにいくつもできていたクレーターがまた一つ。特大の物が出来上がる。
凹みまくってまるで空洞のようになったそこ
頬を撫でる熱風がその威力を物語っていた。
畳掛けるように残った目玉から打ち出される攻撃。息をつく間もない。
だが、完璧な生物など存在しない。何かを差し出し強化したとしても、何処かに綻びは生じるのだ。
「目玉が潰れるごとに攻撃範囲が狭まってンな」
「ついでに速度もだ」
最初の異常なまでに早く凄まじい攻撃を受けたからこそ飛鳥にはその違いがはっきりと分かる。するとその意見は正しいという様に堤は付け加える。
しかしその変化も少しだけ。当たれば死ぬという事実は変わらない。
和真、そして茉莉。それぞれが持っている銃火器の砲口が熱を帯び、弾頭が射出される。目玉も靄も全て打ち落としていく。だが
(銃の傷はすぐに治ってしまうようですね。刃物の方が威力は高そうですね)
ちっと舌打ちをする。辺りに吹いた風が外套を揺らす。
そうこうしている間にも目玉の再生は進む。
僅かに残る靄は目玉が再生するたびに色を増していき、見える範囲の靄は黒く変色した。
黒く、黒く。霧のように辺りを包む。視界が悪い。
靄ごと空気を割る様に走る閃光
複雑な攻撃が黒い靄のせいで余計に躱しにくくなる。少し楽になってきたというのに余計に不利を強いられる戦況。消耗していく体力と武器
思考を巡らせても打開策はない。ただ、勝利を盲目的に信じて、或いは言い聞かせて目玉を潰し続けるしかすべはない。
だが視界が暗くなったことで仲間の存在もわからず、聞こえてくるのは恐ろしい悲鳴ばかり。先の見えない終わりと恐怖に煽られ、精神状態は最悪だった。
「っ」
「茉莉!」
「後ろ!!」
茉莉の肩や太ももに火が迫り、その身を焦がす。
それを見た和真が声を上げた直後、和真の背後に枝が迫り、がぶりと上半身から噛みつかれる。
呑み込む様に頭から食われた和真。口内に向けて銃を撃つが効果はなく腹に枝が食い込み苦痛に顔を歪めた。
(……ちっ、集中狙いしやがンな。いや、それだけ怖がってるってことか。
殺されるかもしれねェって。つまり殺せるってわけだ)
一方飛鳥と善は本体相手に悪戦苦闘していた。
というのも二人は集中的に本体からの攻撃をされていたからだ。
巫蠱はわかっている。飛鳥と善を殺せばすべてが終わることを。本能的に理解しているのだ。
飛鳥は目をこらし視界の悪い靄の中攻撃をかわす。善も似たようなものだ。
瞬間、黒い靄の中から巨大な水の塊が打ち出される。それは地面を抉り、大きな溝を作る。
ぐらりと足元が崩れそうになるのを飛鳥はグッと堪え、斬り込む。
水の塊が打ち出されるのが見える。それはまるで弾丸のように速い。弾く…が
「っ」
一瞬ふらりと視界が揺れ、目の前がブラックアウトする。
「ぐっ……!」
胴体に激しい衝撃を受ける。
見ればもう一本迫っていたらしい枝が飛鳥の右脇腹に噛みついていた。ぎりっと力が入り、飛鳥の皮膚がぎちぎちと音を立てる。
歯を食いしばり食いちぎられる前に切り捨てる。
力を失ったように地面に落ちる枝。飛鳥は自身の腹を見る。だばだばと血が流れだし、地面が血でぬかるんでいた。ただでさえ失血が多いというのに。これ以上は不味いだろう。
だが気にしている余裕も止血する暇もない。すぐに迫って来る次の攻撃をかわし流す。
(せめて、視界が晴れりゃ………!)
げほっと血を吐きながら飛鳥はただ只管に手を動かし続けた。
(攻撃速度も戻り始めてる。この靄じゃ、どれだけ破壊できてるか把握できねェ)
くそっと歯噛みする。
「これは不味いですね。士気がさがり押され始めている気がします」
そしてそれは少し離れた場所で援護を行っていた楓も同じ感想だった。
目のまえには真っ黒な靄。なにも見えず中の状況がわからない。
「もう、駄目だ」
「助けて!」
暗い視界。既に錯乱し始めているものまで出てきている。
「楓さんっ、この装置はあったんですが靄をどうにかできそうなものは……」
「そうですか…」
楓は僅かに顔を険しくさせる。
(……全滅する前にこの靄さえどうにか…)
(くそ、くそ。体が…!)
一方、靄の中、混沌とする船上で誠はギリッと奥歯を噛む。
先程地面に尻もちをついた時にがくりと体から力が抜けてしまったのだ。どれだけ立ち上がろうとしても膝が震えて立てないのだ。
はぁ、はぁと荒い息が漏れる。
「ここまで来て、役立たずになって……たまるか」
腕に力を込めて戦場を這う。口に刀を噛みしめる。
(靄を吐き出してる目玉があった。他の目玉に隠れるようにあったちいせぇの。アレを潰せば消える)
キリキリと刀から音が鳴る。
ずりずりと這う。だがこんな戦場で這っていればどうなるか。
ぐしゃりと手を踏まれる、足を蹴られる。意図的ではない。故に突発的な衝撃が誠に容赦なく襲い掛かる。呻きながらも彼は懸命に這う。這い続ける。
そうして、ぼんやりとしたシルエットが、かすかに見えた。
(ちいせぇ影は見えない。でも、あの目玉のどれかの間にある。あそこまで…いければ……!)
ずり、ずりと這う。
「がっ」
「ひぇぁ!?」
背中に強い衝撃が走ったと同時に間抜けな悲鳴が響いた。
空気が肺から抜ける。その際、がたりと口から刀が零れ、直後目の前を走った閃光に弾き飛ばされた。
「………げほ、げほ…あぶ、ね」
何度も咳き込みながら誠は言葉を漏らす。
あと少し進んでいたら目玉の稲妻に貫かれていただろう。
だがどうする。今ので刀は飛んで行ってしまった。目玉に近付けても武器がないとどうにもならない。近くに武器はない。探しに行くには時間も体力も足りない。
「……どうすりゃ…」
「ひぇえ!?ししし、死体が動いた!?」
声がした。すぐそばから。見ればそこには座り込んでいる萌の姿があった。
「ああああ、僕がふんじゃったから怒ってるんですよね!?すみませんすみません!成仏してください!お願いします!呪わないで!っていうか僕死んだ!?死んだんじゃっ、ひぃ!やっぱり後方に回ればよかったぁ!うわぁぁぁん死んだんだ!」
そう泣き出す萌に誠は「なんだこいつ」という顔をする。だがふと萌の持つ銃が目に入った。
(護さん曰く此奴の銃の威力は凄まじかった。
交流会様に威力は下げてたらしいけど…それでも威力がやばいなら、本物なら…!)
カッと誠は目を見開くと萌の銃をぶんどった。
その際萌は「と、盗難!?」と悲鳴を上げているが気にする余裕などない。
そうして狙いを定める。
「っ」
しかしトリガーを引こうとするが一向に引ける気配はない。
カチカチという軽い音が響く。まさか壊れているんじゃないだろうかと焦りが生じ
『落ち着いて。安全装置を外さないと撃てないよ』
ふと耳元で声がした。
一瞬で冷や水を浴びせられたように精神が静かになる。
思い出すのは拳銃だった。あの少女が……坂谷八生が使っていたもの。
構造は違えど位置は大体どの銃も一緒だ。見る。それらしいものが銃の横についていた。
それを捻る。かちりと小気味良い音がして何かが外れた様な音が響く。
「………ありがと」
ぼそりと誰かに告げるように誠は呟く。そして
銃口が熱を帯び、打ち放たれた。
衝撃で誠の体が後ろに吹き飛ぶ。がんっと瓦礫にぶつかり、頭が揺れる。霞んでいき、狭まっていく視界の中で見えたのは地面を抉り、跡形もなく吹き飛んだ三つの目玉の残骸と靄の晴れた戦場だった。
ーーーーーーーーー
「っ、けほ」
善は暗い靄の中、攻撃を捌きながらも何度か咳き込む。口内が鉄で溢れている。恐らく吐血しているのだろう。
「………ちっ、損傷のしすぎか」
半血ゆえに回復能力事体あまり高くない。回復が損傷に追いついていないのだろう。
顔を顰める善。だがその時
「!」
ふっと目の前に視界が開けた。靄が消えたのだ。
「靄が消えた!」
歓喜の声が聞こえてくる。だが視界が開け、不利が傾いたところで既に戦場は絶望的なまでに追い込まれていた。
「人手が足りない!」
「誰か、動けるやつは………!」
そんな声が辺りから響くが、恐らく動けて、なおかつ戦える全員がここにいる。
明らかに士気が下がり押されている。
ただでさえ疲労し、消耗しているのだ。精神すら摩耗されれば無理もない。
轟音、爆発、衝撃。砂煙が立ち込め辺りを満たす閃光。流れる紅。吹き飛んでいく人だったもの。
迎撃し、受け流し最小限の動きで交わすものもちらほらいるがそれが一体いつまで続くか。
「御影さん!」
悲鳴まじりの声が響く。見ればそこには背中から枝に貫かれている御影の姿があった。
それでもなお、彼は立ち上がろうとしている。だが立つことは出来ず、地面に倒れ込んだ。
その背後では律が戦っていた。手が、全身が痛む。それでも彼は手を緩めはしない。何故か。
「早く、起きろ」
近くに誠がいるからだ。彼は現在気を失っている。律は救護がくるまで庇わなくてはいけないのだ。
「げほ、っ」
腹に強い衝撃。空から降ってきた水の弾丸が横腹を掠め、血が噴き出す。
膝をつきそうになるがそれを寸前で耐え、なおも攻撃を逸らし続ける。
「あ”あ”ああああああああああああああああああああああああ」
そんな彼らの劣勢を嘲笑う様に咆哮が響く。
狂ったように攻撃を撒き散らし、辺り一帯に枝と水が放たれる。
びりびりと肌を打つ衝撃。転がる瓦礫片が地面を跳ね、唯一残っていた壁が次々と砕け落ちる。
巫蠱の気持ちに呼応するように潰れていた目玉がぎゅるぎゅる音を立てて異常な速度で回復していく。
慌てて切りつける隊員たち。だが間に合わず殆ど回復する。
「もう駄目だ!」
「やっぱり、勝てるわけなかったんだ!」
「逃げろ!」
諦め嘆く彼らの声が響く。
戦争の喧騒に紛れて、嫌にしっかりと響いた。何故か。きっとこの場の誰もが一瞬でも思ったから、だろうか。
それでも彼らは逃げない。泣き言を漏らし、恐れているのに一歩も引かない。
諦めた方がいいと分かっていても諦めたくないのだ。
「……そりゃそうだ。皆生きたいんだ。幸せになりたくてなりたくて仕方ない」
どれだけ絶望しようが打ちひしがれようが、その願いがある限り、彼らは戦い続けるのだろう。
明るい未来、目指した夢、望んだ幸せ、楽しい過去の記憶
その全てを守りたい。その全てを大事にしたい。だって
「___だって人間は、欲深いから」
とんっと善は足を一歩踏み出す。
僅かに地面が凹む。瞬間だっと善は駆けだす。そうして本体へ向かう。
飛来する攻撃。その全てを掻い潜りながら地面を這う様に接近する。
そんな善の前に飛び出してくる木の枝。何十とできたそれ
軽く数十回殺されるような猛攻だった。
だがそれをしのぎ、善はボロボロの鋏で切り裂き続ける。
その隙間から水が放出されるがそれは横によけて裂く。
「……手伝って」
それを捌きながら善がいう。
直後、ばんっと横から銃弾が飛び込んでくる。
「…っ、声で俺に指示出してくるとか、めちゃめちゃ鬼畜じゃん」
胴体からどくどくと血を流し地面に横たわって銃を撃つ和真
彼は耳がいい。だからこそ、この距離でも聞こえたのだろう。
和真の傍には銃弾でボロボロになった広がった枝。傍でマシンガンを連射し目玉を潰している茉莉が彼を助けたのだろう。
「狗星さん。一度下がってくださいっす!手当てを」
「………いらねェ」
「でも」
血を拭いながら飛鳥は駆け寄ってきた會を押しのける。
(俺への集中攻撃が止んだ。あいつが単身で突っ込んだからか)
ちっと思わず舌打ちが漏れる。
(尻拭いなんざされてたまるかよ)
飛鳥は刃を握り駆けだす。
そうして回復しようとしている目玉を切り裂く。
「てめェら死んでも目玉は回復させンな!ここを耐えりゃ殺せる!!」
「おう!」
飛鳥の言葉に全員が吼える。最後、という言葉に威勢が戻ってきていた。
別に目玉を殺しきったからと言って本当に目玉が出現するかどうかはわからない。わからないが今の彼らはそれを信じるほかない。
人が勝利するために。希望の為に。明るい未来のために。
そうしてそんな彼らの思いを抱えて善は走る。
和真の援護を受けながら鋏ですべてを切り裂いて。
「切った!!」
「!、核出現!現状を死ぬ気で維持しろ!!」
そうしてついに最後の目玉が切られる。
直後、巫蠱のがらんどうな穴の奥に目玉が出現する。視力のいい飛鳥が一番にそれに気づき叫ぶ。
そしてその声は善にも聞こえていた。
走りながら善は手を見る。武器はボロボロだ。それでも全力を込めた一撃一発なら、壊れるかもしれないが喰らわせられはするだろう。
ぐっと手に力を籠める。
全身全霊、いや、それでも足りない。血の一滴、髪の毛に一本に至るまで、力を振り絞れ
ばきっと腕から葡萄の蕾が生える。首の皮膚に罅が入り、僅かに黒が見える。
これで最後だ。出し惜しみなんてする気はない。
「あ”ああああああああああああああああああああああっ!」
咆哮を上げる巫蠱
攻撃が強くなる。だがそれらすべてを払いのけ、ただ走る。
夜縁は悲しい存在だ。人間の欲の果てに生み出された化け物。醜悪な欲望の成れの果て
人間より強くなった。目玉さえ壊されなければ死ぬこともない。だが彼らが幸せになることは決してない。
それは禁忌に手を出し、人の理から外れた代償だ。
さぞや人が憎いだろう。苦しんだ挙句無理やり押し付けられた代償。殺したくもなるだろう。どうして自分ばかりと喚きたくもなるだろう。
でもきっと彼らはわかっている。こんなことをしたって無駄だということを。無駄だと分かりながらも殺し続けている。何故か
夜縁にとっては………生きることも、死ぬことも地獄だ。
生きても幸せになれず、過去のトラウマに苦しみ続ける。憎悪が脳をめぐり、泣きわめきたくなる。
でも死ぬのは怖い。なによりここでその選択を取れば、今まで生きてきた時間を、意味を、気持ちを、その全てを否定することになる。そうしてずるずると生きてしまった。だからこそ、誰かに八つ当たりをして少しでも気を保とうとする。でもそんなものは一時的な処置にしかならない。彼らは一生苦しむしかないのだ。
故に、唯一の救済があるとすれば、それは_____
善は地面を踏み締める。その踵が石床を砕き、深く沈み込むと同時に飛躍する。
「あ”あああああああああああああああああ」
暴れる。枝がいっぺんに善へ襲い掛かる、が
「………」
堤が双剣で切り落とす。打ち落とし漏れもあったが脇で挟み込み、善に攻撃が向かないように押さえつけた。
血が溢れる。だが堤は無表情のまま全てを受け止め耐える。
善は二枚の鋏を合わせ、一本の剣のようにしそれを両手で握りしめ振り上げる。巫蠱は目玉を潰されぬように口を閉じる。ぎらぎらとした鋭い歯で目玉が隠れそうになる。だがその前に善は身を捻り蹴りを放つ。その蹴りは歯を砕いた。
さらけ出された目玉
「壊せェェェェェェェェ!!!」
_______善の鋏が振り下ろされた。
ばきんっと固いものが割れる音と、紅い血が宙に舞う。
「…………ぇ」
______________だがそれは巫蠱のものではなく善のものだった。
ぱきんっと何かが壊れる音がした。でもそれは目玉が壊れた音ではなくて鋏が砕けた音だった。
別に強い力を籠めすぎて耐え切れず砕けたわけではない。単純に目玉が固すぎたのだ。
「あ”あ”ああああああああああああああああああああああああ」
そしてそれは致命的な隙となった。
堤が抑えきれなかった枝が善の体を貫く。
「っ」
貫いた位置は心臓と顔と脚
血が体と口から破裂するように溢れる。
(体が……動かない)
死にはしない。そのはずだ。心臓だってきっともう修復されている。だが骨や筋肉、神経は?
きっと治り切っていないのだ。だから動けない。
______勝てない。
善は血を吐きながら、ああとぼんやり光景を眺めて思う。
手数が足りないのもある。だが一番はあの核の硬度だ。
ただでさえ馬鹿みたいに強いのに、あの硬度。飛鳥なら壊せるかもしれない。だが利き腕を失った彼ではきっと無理だ。そもそも相手のとれる手段が多すぎる。先程の一撃。今のは奇跡ともいえる瞬間だった。またあんな状態が訪れるとは到底思えない。このまま消耗戦を続けても絶対に勝てないだろう。
殲滅隊の人間は、皆本当に人間なのかと本気で疑うくらい強い。だが、腕がなくなればそのまま、血を失えば動けない、心臓を破られれば死ぬ。どこまでいっても人間であることに代わりはない。今は大丈夫でも終わった後にきっと死んでしまう。
目のまえに新たな枝が迫ってきている。ぱっくりと開いたそれ。
だがそれよりも
視界の端、きらりと光るものに善の視線は向いた。
そこには銀のピアス。善がつけていたものだ。
こんな状況だというのに善はそちらに手を伸ばした。折れて刃を失った手持ち部分を投げ捨てて。
「…………」
だがその手はピアスを掴む前に止まる。
視界には自分の手が映る。ところどころ皮膚はなくなり肉と骨がまろびでている。到底人間とは思えない腕。
腕だけではない。きっと他の部位も似たような状態になっているのだろう。
夜縁ならきっともっと綺麗に治っている。だが中途半端にしか治らないのは体の半分が人間で出来ているからだ。
どこまでも曖昧で、中途半端な存在。それが天満善という人間だ。
「………ああ、そうだ。方法あるじゃん」
相手を見る。巫蠱は生粋の夜縁で、全てをこの戦いに捧げた。その覚悟を持っている。
中途半端な存在が、中途半端な覚悟を掲げて勝てるわけがなかった。
ふと周りが暗くなった…気がした。
白い線が揺れて輪郭をなぞり浮かび上がらせる。
背後を振り返る。そこには何かがいた。顔のないなにか。体が真っ黒で素足で…そして背中にはツタの羽が生えていた。でもそれは巫蠱のものより綺麗なものにみえた。なのに巫蠱以上に悍ましい。それは音を発する。
「
「報われるよ」
それから目を逸らし、真っ暗な空間を眺める。
「………ろくでもない人生だ」
眼の前にキラキラと光るガラスの欠片が現れる。よく見ればその中に何かがある。それは思い出だった。写真のようなものが丸めて詰まっている。まるでクリスタルパズルのピースのような形をしているそれをつまんで眺める。
「八つ当たりで殴られるし、兄弟間での恋愛みせられて気まずいし、勝手に死ぬし、クソ重い出自知っちゃうし…一々突っかかってくる同期とか精神不安定なチームメイトとか、ウザい先輩とかクソ生意気な後輩とか…ろくでもない思い出ばっかだ。
だからどうでもいいし。それにどれだけ
ボロボロと上から降って来るクリスタルパズルはドンドンと何かの形に姿を変えていく。
指を離せば手から離れたパズルのピースもまたその一部へと吸収されていく。
出来上がったそれは透き通ったクリスタルで形成された心臓だった。
「だからいっそ完全に化け物になろうかなって。
今までずっと曖昧で矛盾したことばっかやって中途半端で。だから失敗ばかりだった」
善は今まで生きてきて、自分の行動を後悔したことはない。
だってそれが、その瞬間の自分にとっての精一杯だったから。
後悔は後から悔いることだ。後から悔いたって変わらないならするだけ無駄だ。
でも、それでももし自分がここまで中途半端な存在でなければ何かが違ったんじゃないかと考えることはあった。
そうすれば取れる行動も変わったんじゃないのか、と。
だがそれは全て過去のこと。過去は変えられない
「半端な覚悟じゃダメなんだ」
だが、今なら?
「人間にはなれない。でも化け物にならなれる。
いらないものを捨てるだけ。不幸になるわけじゃない。だから……きっと
そうして善は思い出で出来上がった心臓を…………粉々に握りつぶした。
よ、善ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!
ここで終わらせても良かったにはよかったんですけど、雑草の考える終わらせ方的にここで終わられると繋げられないというかくどくなっちゃうので善ちゃんには血を吹いていただきました。ごめんな。そして覚醒モードへ移行!最終決戦への準備は整ったぞー!!!
あとですね。雑草偶に夢の中でキャラクターが来るときがあるんですよ。
三次元と二次元だからって何やっても許されると高をくくってたら夢を通してやってきましたから。
創作する人は気を付けましょう。あんまりひどいことばかりすると夢を通じて銃口むけに来ますから(雑草は1回だけ向けられました。マジで)
でも夢だと死ぬほど怖いんですけど起きると「うちの子がいた!!!」と大興奮し、声とか会話とかを思い出そうとするんですけど全然思い出せないという。
夢って覚えておきたいところを覚えておけないものですよね(´・ω・`)