professional of joker   作:たいたい35

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ユウリの強さ

その少年はベビーパンサーを従えていた。協会の所有している子なので、名前はなかったはずなのだが、確かにチェロと呼んでいた。少年が入場した瞬間、電撃が走ったように会場がほんの一瞬止まった。なぜなら、そのベビーパンサーは彼の足元にピッタリくっついていたからだ。

 

「大丈夫だよ、心配しないで。チェロには僕がついてる。協会の奴らは嫌いでも、僕のことは信用して。お父さんだと思ってくれてもいいよ。僕はもう、チェロのことが大好きだから」

 

座って視線を低くし、ベビーパンサーの頭を撫でる。異質だった。命令はおろか、近寄ることさえままならないような他の試験者たちに対し、その少年とベビーパンサーは、一緒に十年は過ごしたであろう睦まじさだった。

ひょいとチェロを持ち上げて、スタジアムの中央に移動するその少年の正体は、もちろんユウリだった。

 

「おい、どういうことだよ……。自前のモンスターは禁止されてるはずじゃ!」

「違う、あのガキは控え室からここに来るまでのほんの一瞬であのベビーパンサーを手懐けたんだ!」

 

次の試合はお前だと告げられて、控え室を後にし、そこでようやく試験用のモンスターと対面する。数種類の中から一匹選び、一緒にスタジアムへ。ユウリはそのわずかな間に、ベビーパンサーとの確かな絆を形成していた。会場の熱気は、いつのまにかどよめきに変わる。対戦相手の冷や汗が観戦席からでもはっきりと分かる。そう、これは異常事態だった。司会も驚きを隠せない様子だったが、試合開始の鐘は鳴った。対戦相手は怯えながらユウリを見ている。何も指示を出していないのに、相手のモンスター、いたずらもぐらはそのスコップを全力でベビーパンサーに振り下ろした。

 

「チェロ!」

 

ベビーパンサーの名を呼ぶ、たった三文字の言葉。しかしその言葉がその子に伝わった瞬間、稲妻のごとき速度でスコップをかわし、鋭い爪がいたずらもぐらを抉った。その光景に、会場は絶句。当然急所に爪が抉り込んだいたずらもぐらは耐えられるはずがなく、そのまま倒れ込んだ。

 

「おいおい嘘だろ。こんなことって……」

「あれ、ほんとにベビーパンサーかよ!あの速度、信じられねえ……」

 

チェロの強さに皆が衝撃を受け、対戦相手は完全に戦意を消失していた。しかしユウリはそんなことを気にかける様子もなく、一目散にいたずらもぐらの方へ駆け寄っていた。

 

「チェロ、ありがとう。もう大丈夫。誰か、このいたずらもぐらを治療してください!」

 

おい、あいつ何言ってるんだ。いよいよ会場の半数以上が理解を拒み始める。ユウリは深い傷を負ったいたずらもぐらを抱えて控え室へと戻っていった。それはそれはほんの数分の出来事だったが、ユウリの実力を観客に知らしめす絶好の機会となった。一部始終を見たリーヤの胸には、無事に試験を終えた安堵と、ベビーパンサーを家族のように扱い、さらには相手のいたずらもぐらにまで気を配るユウリの優しさへの尊敬という、二つの感情が渦巻いていた。モンスターを自在に操ることの難しさを知った。そして今日、それをたやすく行うユウリが、彼女の中でますます大きな存在になっていくのを実感する。

 

「ユウリは、すごいんだから……!」

 

本来は一人何試合も行う試験なのだが、ユウリは一試合で終わった。これは過去一度もなかった異例中の異例で、ユウリの相手になるような人物がいないと判断されたからである。その後の試合も盛り上がってはいたが、ユウリの衝撃を忘れられず、観客たちはどこか浮ついた様子だった。試験の結果はもちろん合格、彼は晴れてモンスターマスターの称号と、光り輝くスカウトリングを手にしたのだった。

 

 

「ね、言ったでしょフューン。ユウリクンは絶対合格するって」

「何を今さら、この街にソレアの発言を信じない人間はいない」

「あたしは今、衝撃を受けてる。あの観客たちの比じゃないよ。あたしは最初、スラっちが特別なんだと思ってた。しかし実際は違った。ほんとは、ユウリクンが特別で、その笑みにスラっちが飲み込まれたんだ。幼い頃から牧場の動物だけではなく、野生の環境と触れ合い続けてきたユウリクンは、魔物も動物も分け隔てなく無限の愛を注いでいた。あまりにも優しい言葉で、あどけない笑顔で、自分にできる最大限の愛を相手に伝える。例え相手が自分の親の仇だったとしても、その魔物を愛せるだろう。考えてみれば、それが彼の天賦の才だったのかもしれないね。いつしかそれは、凶暴な魔物の心までガッチリと鷲掴んでしまうようになった。今回のベビーパンサーの件は彼のそんな才が如実に現れたということ。ああ、確信した、あの子は間違いなく、モンスターと人間を取り巻くこの腐った環境を変えるよ」

「だな、俺も俄然やる気が出てきた。あの子が配合で生み出すモンスターを見てみたい」

 

熱気が消え、スタジアムの砂埃が周期的に舞うだけの閑散としたフロアで、ソレアは身震いしていた。

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