professional of joker 作:たいたい35
「チームっていってもただ仲良しこよしで集まってるわけじゃない。みんなで協力して色々と作業をするんだけど、せっかくだから一つ一つ説明しよう」
ホワイトボードに書き殴る音がキュイキュイ響き渡る。まるで演説をするように、一音一音はっきりと丁寧に言葉を紡いでいくソレア。
「チームで活動するには当然資金がいる。お金だよね、お金。二人も知ってるかもしれないし見たことあるかもしれないけど、街の掲示板とか酒場なんかにモンスターマスター向けの依頼があるんだ。あたしやルタ、シェラはそれをこなして資金を確保。フューンはモンスターについての研究に勤しんでもらってる」
「依頼って、主に何をするの?」
「よく聞いてくれた!依頼主は基本的に民間の人で、協会を通して依頼書が発行されるんだけど、例えば畑を荒らす魔物を追い払ってほしいとか、キメラのつばさが欲しいとか、そんな感じかな」
箇条書きで要点をまとめていく。二人は彼女の話を食らいつくように聞いていた。
「後は協会が依頼主の場合。野生のモンスターの管理は協会が行ってるのは知ってる?あいつら腰抜けだから、魔物の生態系から数まで全部管理しないと気が済まなくて、恐ろしくて恐ろしくてたまったもんじゃないからね」
ふっと嘲笑う。彼女が協会のことをあまりよく思っていないのは明らかだった。しかしユウリにとって、そんな彼女だからこそ信用できる節があるのも事実だった。
「でも結局協会にすがらないと食ってけないのも現状なんだけどね。はあ。ま、そんな話はいいんだ。あたしが言いたいのは、協会の依頼の方がちょっと残酷だよって話。生態系保護の名目で捕獲したり、殺害を許可される、もしくは依頼される場合もある。もちろんスライムばっかりの草原にギガンテスが現れたらそりゃまずいし、なんとかしなきゃいけないんだけど――」
ソレアが唇を噛んだのを、ユウリは確かに見逃さなかった。今まで協会の数々の依頼をこなしてきた彼女にとって、その道程は決して楽な道ではなかったことはすぐに分かった。さらには協会屈指の実力者ということもあって、過酷な依頼も任されてきたのだろう。彼女がふと流した一雫の涙は、溢れ出そうになる思いを堪えて堪えて、それでも耐えられなかった無言の慟哭だった。そんな彼女を前にして何も言えずにいると、申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめんごめん、こんなしんみりさせるつもりはなかったんだ、あはは……。二人はほんとにいい子だね。さあさあ、話の続きなんだけどね、二人とスラっちにはこれらの依頼をこなしていってほしいんだ。引き受けてくれるのがドラキッドのメンバーだって知ったら依頼者も他の人間に任せることよっぽどしないだろうし、報酬金も多少こちらの運営に回させてもらうけど、ある程度は相談して二人の自由分にしてほしい。どうかな」
端まで書き切ったホワイトボードの隅にルタが落書きしている。
「依頼の内容も玉石混交で、骨が折れるようなやつから簡単な作業まで色々あるんだけど、まずは対象のモンスターが住んでいる土地まで行けなきゃ話にならない」
「どういうこと?」
「例えばそもそも自然が過酷な場所には優秀なモンスターマスターしか踏み入ることは許されない。そんな場所に住んでるモンスターが弱いわけないからね。協会が認めた人間だけってところかな。そこで必要になってくるのがスカウトリングってわけ!」
三度その虹のスカウトリングを掲げるソレア。ユウリのものは緑色だが、そこに何の意味があるのか。
「スカウトリングの色は、モンスターマスターとして行動できる範囲を示してる。ユウリクンを始めとした成りたての子のスカウトリングの宝石色は緑で、危険な場所には行けない。その分依頼を受けられる範囲も狭まっちゃうってことだね」
「それならどうすれば――」
リーヤが何か言葉を発しようとしたが、ちっちっちと指を振って自慢げになるソレア。君の言いたいことは全部分かってるよとでも言いたげだ。
「そう、じゃあスカウトリングの色を変化させるにはどうすればいいのかってことになるけど、協会主催の試験に合格すればいい!コホン、じゃあ具体的に説明していくよ。モンスターマスターとして生活する者は協会の試験を受けることでその実力を認めさせることができる。試験の内容は、モンスターのランクに準えて、FからSSランクまで難易度が存在するよ。飛び級もオッケー。各ランクには協会が用意した、ある程度決められたモンスターが登場するから、自前のモンスターを操ってそいつらを倒せば合格。晴れて実力が認められて、スカウトリングの色が変化する。そして、まだ見ぬ境地へ探索に向かうことができるって感じ。また長話しちゃったけど、ここまでは大丈夫?」
情報量の多さに頭をパンクさせ蒸発するユウリの隣で、リーヤは熱心に話を聞いていた。
「だから、当面は闘技場の制覇を目標に、チームに流れてくる依頼でいけそうなのを選んで旅をしていってほしい、これが最終的にあたしが言いたいこと。どうせ世界を旅するなら目標とか後ろ盾があってもいいでしょ?」
「じゃあ、まずはFランクですか?」
「そういうこと、さすがリーヤクン、飲み込みが早いね。いきなり挑戦といきたいところだけど、スラっちだけじゃいくらユウリクンの実力でも突破は難しい。まずは近くの森林へ行って、新しい仲間をつくるのはどう?」
「新しい仲間、ですか……?」
ニコニコと満面の笑みで骨付き肉を頬張るスラっちを、ユウリは眺めていた。