professional of joker 作:たいたい35
「おはよ、お二人さん。あれ、リーヤクンなんか嬉しそうだね」
寝起きのソレアは髪があらゆる方向へ伸びている。他の皆はまだ起きていないようだった。寝巻きと呼べるようなものを着ているわけでもなく、下着だけの彼女はユウリには刺激的だったようで、姿を見ないように目を逸らし、顔を紅潮させて壁掛け時計だけをじっと見つめている。
「おっといけない。そういえば昨日から男の子もここに加入したんだった。着替えてくるから、五分だけ待ってて」
腕を伸ばした後、大きなあくびをして出ていこうとしたが、何かを思い出したのか踵を返してユウリに顔を近づけた。
「そうだ、ユウリクン確か、料理上手だって聞いたよ!食材は適当に使ってくれていいからなんかおいしい朝食作ってくれると助かるなあ。どう、どう?」
「早く着替えてきてください!」
リーヤが頬を膨らませて叫んだ。これには珍しくユウリも目を見開いて驚いている。彼には彼女が怒っているというよりかは、どこか妬いているように見えた。
「い、いくらリーダーでも、服くらいちゃんと着てください!見てるこっちが恥ずかしいです。ユウリだって顔赤くしてんじゃないわよ!」
「痛いっ!どうして僕まで」
強烈なビンタがユウリを襲った。くくっ、リーヤクンは初々しいね、ニヤつきを見せながらもさすがに多少の冷や汗はかいていたソレア。ビンタの次の標的が自分にならないために、彼女から目を離さないようにして後退していく。そしてそのまま自室へ戻っていった。
「もう、なんて不躾なのかしら。だいたい、せっかく美人でスタイルもいいのにもったいないのよ……」
小声で文句を垂れるリーヤの横で、保存食材に目を光らせている少年。包丁やボウルを並べて、朝食を作る気満々のようだ。
「ソレアさんもルタさんもフューンさんもシェラさんもいるから、いっぱい作らないと!リーヤも手伝ってくれる?」
「もう、仕方ないわね」
リーヤは食い気味に答えた。ビンタの腫れが治まったのは朝食を作り終えた後だったが、二人はすっかり仲良く作業を進めていた。
「うお、何だこれ。こいつら、あんたたちが作ったの?」
頭を掻きながらやってきたのは汚れた白衣のフューンだった。てっきりソレアが出てくると思っていた二人は少し困惑していた。二人が作った朝食の眩しさと匂いにうろたえているようだった。
「あー、そうか。俺の紹介、まだだったか。俺はフューン、こんなナリでも一応研究者やってる。いや、こんなナリならむしろ一択か。まぁいいや、そういうことで、ヨロシク」
ソレアの笑いを抑えるような声とは対照的に、へへっと不気味に笑った。
「二人ともエプロン似合ってんじゃん。モンスターと仲良しで料理もできる、スキル高いな、君。えー、ユウリとリーヤ、だったな、確か。もう飯できてるならもらっていい?」
フューンの目元の大きなクマは、どれだけ光を浴びせても吸収してしまいそうなほど黒かった。猫背な彼女は目をこすりながら席に着き、黙々と食べ始める。ただひたすら口に運ぶだけで、味をあまり気にしていない様子。何のリアクションも取ることはなく、数分で完食すると、おもむろに立ち上がった。
「これ、ソレアのよりうまいわ。なんか活力漲ってきた。また頼む」
清潔感があるとは言いがたいその格好でも、フューンの去り際に彼の鼻腔をくすぐった匂いは、桃のように甘かった。
「あ、そうだ。モンスターや配合についてなんか聞きたいことがあったら俺の部屋来な。ユウリには俺も興味があるんだ、いつでも歓迎。それじゃ」
開閉音さえ立てずにいってしまった。無音、風貌、その様はまるで死神のようだった。
「悪い人じゃなさそうだけど、ちょっと不気味な人だったね」
「ユウリおにーちゃん、リーヤおねーちゃん、おはよ!」
その傍らにはソレアもいた。朝だというのに野良鳥のような快いハイテンションでルタは挨拶。二人も笑顔で返事をする。
「これ二人が作ったの?これはうまそうだ、ドラキッドの爽やかな朝にピッタリだね」
舌なめずりをして、たまごサラダにドレッシングをかける間もなくソレアは食べ始めた。仕方がないのでルタと二人で使うことにして、四人で食卓を囲んだ。何気ない会話をしながらほんの十分程度の時間だったが、ユウリにはとても幸せなものに感じられた。両親や親戚と食事をする時の温かみに包まれたが、まさかそれと同じものを、都会であるアルカンで享受するとは夢にも思わなかった。たった一日ここで過ごして、談笑しながら食事をしているだけなのに。ここに来てよかった、そうユウリが思い始めるのも無理はないことなのかもしれない。
「あははっ、ソレアさん、スラっちはそんなにやんちゃじゃないですよ!」
「くくっ、冗談だよ。それにしても今日は賑やかでいいね。ワインが飲みたくなってきた」
「もー、ダメだよソレア、今日は二人のサポートなんだから!」
今日ユウリは初めて、スカウトリングを使用する。ここから少し離れた森林へモンスターマスターとして向かい、モンスターを仲間に迎え入れる予定だった。今朝早く起きたのも、落ち着きがないのも、ついにユウリの夢が動き出し始めたからだった。