professional of joker 作:たいたい35
「協会の連中から呼び出しがあっただろ、今朝」
「うん、あったよ」
「あー、その顔はまたドタキャン決め込んだか。はぁ、全くウチのリーダーは。気持ちは分からんでもないが、ドラキッドが協会からの依頼を生業にしてるのは紛れもない事実。いくらアンタとはいえ、協会に背を向けているばかりだとグラスターの機嫌を損ねかねない。依頼を止められるばかりか、最悪俺達全員のリングを剥奪、そしてアルカン追放……、なんてこともあるかもな。あの男は、それくらい簡単にやってみせる」
ソレアは機嫌の悪い猫のように頬を膨らませていた。ペンを器用に指で回しながら、目線はフューンを見ていない。まるでふてくされる生徒のように。どこか皮肉めいた口調で言った。
「無理だよ。今の協会にはあたしが必要。多少無茶したところで、あたしを消そうなんて思わないさ。大丈夫大丈夫、何かあったとしても、みんなには手を出させない、命に代えても守ってみせる。ドラキッドはあたしの大切な居場所で、あたしの全てだから……」
「その顔を見てると、どうも説教する気分じゃなくなるな。偉大なるリーダー様だ、きっと考えがあってのことだろう、もうこの話はやめだ」
フューンは着崩れた白衣を直す。じゃあ次はあたしの番だね、待ってましたと言わんばかりに、ソレアは口を開いた。
「近くの森林で、とんでもないサイズのでっかいミミズが現れた。知ってる?」
気の抜けた口調でも、語尾だけは冷たかった。その表情に、フューンはソレアのリーダーとしての顔を見た。白衣の汚れを気にしていたが、今はもうソレアとピッタリ目を合わせている。
「知ってるといえば知ってる、知らないといえば知らない。今朝の協会の呼び出しは、実はそのことだった。森林で巨大ミミズが見つかったから、討伐してこい。数日放置するだけでも、生態系への被害は計り知れないんだと。俺が聞いたのはここまでだ、見たことがあるわけじゃない」
「ふーん。でもあのミミズ、その辺のモンスターの比じゃないよ、正直デカすぎ。色々と気になる点もあると思うけど」
「全くだ。研究者の血が疼いて仕方ない。まあでも、『殺害』が協会の判断だ。それだけはアンタに伝えておく。あとは勝手にしてくれ。俺が動くより、あんたの方がずっと円満にあのミミズを活かしてくれるさ。あと、そのミミズの名前なんだが、『タイラントワーム』と協会は名づけた」
「あの気持ち悪い見た目にピッタリな名前だね。了解、そのタイラントワームについてはこっちでなんとかしとくよ。報告ありがとね」
なに、礼を言われることでもない。そう言って自室に向かおうとするフューンだったが、何かを思い出したのか、ポケットに手を入れたまま反転してソレアに目線を合わせた。
「ああそうだ、最後に。もうすぐバトルGPが始まる。もしユウリを出場させるなら、早いとこ闘技場に挑戦させた方がいいだろう」
「もちろん分かってるさ。正直、今回までに彼を仕上げる気はなかったけど、体験くらいはさせといた方がいいのかもね。ま、彼次第かな、出たいと言ったら出させるし、それに合わせて配合もレクチャーすることになるかも。だからそん時はお願いね、天才科学者さん」
へへっ、任せとけ。ぶっきらぼうに答えながらも、フューンはどこか楽しげだった。
「おや、キッチンから香ばしい匂いがするね」
「キャロル、お座り!うーん、ルタには懐いてくれないよぉ。あ、ソレア!もうとっくにご飯できてるのに、早く食べないと冷めちゃう!」
「お、今日もおいしそうな匂いが。フューンもシェラも一緒に食べればいいのに。二人とも、ユウリクンがイケメンだから照れちゃってるってとこかな。乙女だねぇ。さ、もう一杯」
相変わらずのスピードで酒を漁るソレア。ユウリたちの声が届いている分、今日の酔いはまだマシな方なのかもしれない。
「何の話をしていたんですか」
「なに、大した話じゃないよ、ちょっと大人の話をね。二人には関係ないから気にしないで。それで今後のことなんだけど。よっと」
椅子から跳ね上がり、ボードに文字を刻み始めた。作戦を書いているようだが、端の方にタイラントワームのイラストを添えて、遊び心を忘れない。
「ユウリクン、闘技場に出張るよ!」
ボードを思い切り叩いて力説する。改めて森林に向かい、タイラントワームと対峙するのだとユウリは思っていたので、その発言には驚いた。まあまあ話を聞きたまえ、彼の反応に満足している様子だ。
「森林には行くよ、もちろん。ただ目的は、もう一体モンスターをスカウトすること。闘技場は三対三になるんだけど、ユウリクンが出場するには一体足りないわけ。だからお気に入りのモンスターをもう一体仲間に迎え入れて、万全の状態で闘技場に挑むべきかなあと。お、リーヤクンも賛成?よしよし、そうと決まればさっそく出発だ!」
「まだ何も言ってないです!!」
リーヤの反論も虚しく、ソレアは扉の向こうへと消えていってしまった。
「ソレアさん、あのミミズと会ったっていうのに果敢ですごい……!」
「何感心してるのよ、深い森なんだから早く行かないと見失っちゃうわ!」
「もうちょっとゆっくりしたかったなあ」
ご飯を頬張るスラっちとキャロルを引き連れて、二つの影は森林へと駆け出した。