professional of joker 作:たいたい35
「ユウリクン!!」
どこからか髪を乱してソレアが登場した。鮮血に倒れるユウリを見て状況を察したのか、取り乱しながらもキートスを招集した。
「まだ息はある、キートス、ベホマ!早く!」
「キッキー!」
ソレアの指示を受けたキートスが、ユウリに近づき力を込めた。ユウリの身体を優しい光が包み込む。まるで壁一面をローラーで染めるように、傷口は端から塞がれていく。
「何とか間に合ったかな。ふう、やれやれ。ユウリクン、やはり君はとんでもない子だね、マッタク。自分を犠牲してまで格上のヘルコンドルをスカウトしようとするなんて。度胸があるのか命知らずなのか、マスターとしては完璧だけど、大切な人を泣かせちゃいけないよ、特に年頃のレディはね。ね、リーヤクン?」
みるみるうちに傷が塞がっていく様子を見てようやく安心したのか、リーヤは込み上げる涙を拭った。
「ベホマは最上位の治癒魔法だけど、一瞬にして傷を癒すというのは、身体への負担も大きい。ユウリクンはとりあえず拠点に連れ帰ってしばらく休ませよう」
「よかった、ほんとによかった……。ソレアさん、本当にありがとうございました……。キートス君も、ありがとう」
「お礼を言われるようなことはしてないよ、団員を守るのは長の務めだからね。本当なら彼に怪我を負わすことすら防ぐべきだったと、反省してるよ。それはそれとして、こんなかわいい子を泣かすなんて、やっぱりユウリクンには起きたら制裁が必要だね。あと、キートスは女の子だよ」
「えっ、そうなんですか」
「くくっ、ちょっと男勝りだけどね。あたしのあげたリボンだっていらないって跳ねられちゃったよ。さあ、今日はもう帰ろうか。ティアラ、ユウリクンをお願い」
音もなく現れたティアラはその巨体にユウリとキートスを乗せて、一行は帰路に着いた。
「そういえば、ユウリクンとリーヤクンはどういう関係なの?ただの幼馴染?それとも他に複雑な関係があるのかい」
夕日が翳る中で、ソレアはずっと胸に抱いていた疑問をぶつけた。彼女は顔を赤くしながら恥ずかしそうに答える。
「ユウリは、私の命の恩人です。ユウリがいなかったら、今の私も生活もありませんでした」
想像以上の答えが返ってきてしまった。ソレアは驚きの顔を隠せない。まずただの友達のような関係ではないことは確信していたものの、命の恩人までいくとは。これはかなり、ユウリクンに酔ってるな?その生来の探究心と好奇心が、彼女の饒舌を加速させた。
「へぇ、昔何かユウリクンに助けられたわけだ。あれだけ良い意味で振り切れてる子だから、リーヤ君の恩人って聞いても納得してしまったよ。ちなみに、どれくらい進展したの?ぎゅってした?それともキスまでいっちゃった?」
十分染まっていた桃色の顔が、さらに紅潮する。ソレアなら聞いてくるだろう当然の疑問に少しは覚悟をしていたものの、想像以上の直球にリーヤは恥じらいを隠せなかった。
「な、ななな、何を言ってるんですか!私とユウリはそんなんじゃ……、というかまだ気持ち、伝えられてないし、そもそもそういうのは違うというか……」
「ごめんごめん、ちょっとデリカシーのない発言だったね。でもリーヤクンが彼を心の底から信頼し、慕っていることは伝わってるよ。それが恋でも愛でも傾倒でも心酔でも、きっとユウリクンは受け入れてくれる、そんな気がするよ。偉そうなこと言って、素直に応援してあげられない自分が嫌になっちゃうよ。生まれた時から捻くれてるからね、あたしは」
「ほんとですよ、私、ソレアさんのそういうところ、好きじゃないです……!」
あはははっ!あたしは腹を抱えて豪快に笑った。もしかしたら本心かもしれないけど、そんなジョークを言われるようになっただなんて、あたしもちょっとリーダーっぽくなれたかな。それともリーヤクンが気を許してくれたのかな。まあいいか、とにかく今は本当に気分がいいや。くくっ、この二人は本当に面白いなぁ。
「一つ言えるのは、リーヤクンはどんな男でも思わず振り向いちゃうような美人になるってことかな。同じく美人なあたしが言うんだから間違いないよ。もちろんユウリクンも例外なく、ね。そうだ、ちなみにリーヤクンは、彼の好みのタイプは知ってる?」
「えっ、ユウリの、好きな女性のタイプ……?」
「くくっ、気になるかい?」
腕をモジモジさせてためらいながらも、興味津々なようだった。気になる気になると、そのつぶらな瞳に書いてある。リーヤには絶対に話さないような内容、聞かない選択肢はなかった。
「彼が言うには、『僕はあまり賢くないから、頭が良くて勉強ができる人がいいかなって思います。あとは、僕の料理を美味しく食べてくれるとか!そう、例えばリーヤみたいな!』だって。伝えることは伝えたから、この話はおしまい!」
「えっ、ちょっと待ってください、どういうことですかソレアさん!ねえ、ねえってば!」
まるで欲しいものを前にして、親にぐずるようにソレアを問い詰めている。やっぱり二人は面白いね、口角を上げてニヤリと笑った。
「乙女なリーヤクンもかわいいけど、これ以上いじっちゃ可哀想だ。夜も近いし、こっからはダッシュで帰ろうか」
山の奥へと隠れる夕日を背に、ユウリのモンスターマスターとして、初めての遠征は何とか終わりを告げるのだった。