professional of joker   作:たいたい35

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花冠

「ほら、たとえばあの金ピカちゃん、誰の仲間だと思う?」

 

外周をぐるっと回っていると、突然ソレアが立ち止まった。その指と視線の先には、純金が鏡のように乱反射している。思わず目を細めてしまうほどの黄金の輝きの持ち主だった。

 

「あ、あれはゴールデンスライム……。図鑑で見ました、幻のSSランク……。どうしてここに」

「持ち主は定かではない。けど、激レアモンスターを任せられるほどの腕が、ファスリアンにはあるんだね。そんな彼女がモンスターから逃げてるなんて、そんなことがあると思うかい?」

 

指を立てて誇らしげに語った。質問をしているくせに、返ってくる答えは一つしかないと確信しているようだ。しかし、彼女の視線はゴールデンスライムに釘付けで、全く聞いていない。

 

「す、少しだけなら身体の黄金を分けてくれないかしら……。そうだわ、後ろからそっと近づいて、でもそれだと卑怯になるかも、いっそ正面からお願いしたほうがいいの……?」

「全然聞いてないし……。リーヤクンって意外と金に目がないんだね……」

 

良いことを言ったはずなのに、無視されるソレア。がっくしと肩を落とし、残念そうにため息をついた。

 

「まあ、なんとかなるか。それに今日の来客はあたしだけじゃないしね。あ、そうだ。はい、どうぞ」

 

いつのまにか作っていた花冠をリーヤの頭の上に乗せた。大きさもさることながら、丁寧に編み込まれており、ソレアの意外な技術に驚きを隠せない。

 

「花を愛でるのが好きなんだ、昔っからね。懐かしくなって思わず作ってしまったよ。都会じゃなかなかこんな綺麗な花を見ることもない。ファスリアンに感謝だね」

「こんな綺麗な……、いいんですか?」

「美少女には可憐な花がお似合いだよ」

 

ぽんぽんと頭を叩かれ、顔を赤くしている。牧場の魔物が不思議そうにこちらを見ていた。ソレアは霜降り肉をやりながら言葉を続ける。

 

「花冠は、丁寧に編み込むことでようやく形を保っていられるんだよ。丈夫な茎が重なり合って絡まり、花を美しく引き立てる」

「ここに来るまでの時間で作るだなんて、普通は何時間とかかるのに」

「慣れだよ慣れ、手癖みたいなものだね。ほら、スリの子だって一瞬で財布を抜き取っていくでしょ、手癖でね。そんな感じ」

「その例えはどうかと思いますけど……」

 

ソレアは柵の傍に色づくタンポポの綿毛を拾い上げ、ふっと草原に飛ばした。どこまでも飛んで行ってしまうではないか、そう思われるほど優雅だった。

 

「これを作ってるといつも思うんだ、人間と似てるなって。人は歳を重ねる中で数えきれないほどの人と出会い、縁を紡いでいく。その縁はまた新たな出会いを呼び、絡まる縁は繋がり、やがて絆となる。生まれた絆はその人の生活を豊かにすると共に、支えてくれる大きな存在となるんだ」

「そう言われると確かにそうかもしれないわ……。なんだかちょっと親近感が湧いちゃったかも。でもどうしてそんな話をするんですか?」

 

かつて見せたことがないくらい優しい目をしていた。彼女は今日までどんな出会いを経て、どんな経験をして、どんな苦難を乗り越えてきたのか、リーヤには想像もつかない。しかしその果てしない経験の答えがこの花冠なのかもしれないと、そう考えた。リーヤは花冠を通じて、ソレアの縁と繋がったのだ。

 

「みんなには、これからのどんな出会いも大切にしてほしいと思ってね。新たな出会いには無限の可能性があって、それをみすみす潰すのはもったいない。たとえ反吐が出るような相手との邂逅だったとしても、ね」

「ふふっ、なんだかソレアさん、ユウリのおばあちゃんみたいです。でも、分かりました」

「まだ若若しく瑞々しい二十代だよ。マッタク、リーヤクンも鋭い冗談を言うようになったね」

 

ズレていた冠の位置を戻してあげた。うん、やっぱり似合ってるよ。満足そうに呟いた。

 

「今度はユウリクンからもらえるといいね。その時は冠じゃなくて花束かな。情熱的な視線を向けて、僕にはリーヤが必要なんだ……!なーんて。あれ、リーヤクン?」

「そ、そういうことも、あるのかなぁ……、えへへへ……」

 

満更でもなさそうな顔で、リーヤは自分の世界に入っていた。冗談のつもりだったのだが、きっと彼女の想像の中でユウリに言わせたのだろう。あまりにも惚けた顔をしているので、あのソレアもたじろぐことしかできない。手を顔にかざしてももじもじ頬を染めるばかりで何を言っても通じなく、どうにもならなかった。

 

「はっ、あれ、何の話をしてたのかしら……」

「いや、とりあえずもう小屋に戻ろうかリーヤクン、あたしが悪かったよ……」

 

彼女が我に返ったのは結構な時間が経ってからだった。この子はあまりからかってはいけない、ユウリ君の話をすると自分の世界に飛んでいってしまう。痛いほど沁みたソレアの歩幅はいつも以上に小さかった。

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