professional of joker 作:たいたい35
「バトルGPの詳細が届いたよ。予選の期限は一週間、それまでに指定されたアイテムを協会に届ければオッケーみたいだね。もちろん先着八名様。ドラキッドからはユウリクンとシェラが出場だ。これから二人は敵同士だね」
「て、敵同士、ですか」
ユウリは妙に緊張しているが、シェラは相変わらず無表情のまま。普段から言葉を発することもあまりないため、何を考えているのか分からなかった。ユウリ達と積極的に関わることもなければ、食事を共にすることもない。ユウリが彼女の部屋をノックしても何の返答も期待できなかった。それなのにバトルGPは参加すると言い出したのだから、正直何を考えているのさっぱり分からない。
「相変わらず勿体ぶるなリーダー。今回の標的は何だ」
「それじゃあ発表しよう!二人に見つけてもらうアイテムは……!」
どどん、この声色、今日の彼女はご機嫌だ。
「ずばり、『銀河の石』だよ!」
ユウリは目を丸くしている。そんな名前は初めて聞いた。大体、銀河という言葉を聞いたのも久しぶりかもしれない。加えて石という取り合わせとしては考えにくい単語。その反応も当然だった。
「魔物のエネルギーの源がマ素なのは分かるよね。マ素はあらゆる原因で結晶化しマデュライトとなることがある。マデュライトはその性質からとんでもないエネルギーを秘めているんだ。魔物の生命の素だから当然だよね。そして強力な魔物ほどマデュライトの純度は高まり、それは銀河のように美しく輝く……。そんなマデュライトを、特別に銀河の石と呼んでいるんだよ」
朝食の支度が終わりエプロンを脱いだリーヤが興味津々に会話に参加した。リーヤ、知ってる?ユウリのピンとこない顔に、彼女もハテナを浮かべて返した。
「要は強い魔物を見つければいいってこと。あたしは何回か手に入れたことはあるけど、どの魔物も二人なら相手にできるレベルだ。ユウリクンもシェラも、頑張って探すように!さ、とりあえずご飯だご飯」
何だか説明になっていないような気がする。僕もリーヤもまだ右も左も分からない素人なんだから、もっと丁寧に教えてくれればいいのに。ユウリの嘆きは朝食と共に喉の奥へと流されてしまった。
「グラスター、どこまでも腐っているな。これじゃまるでユウリだけを名指しして落とすと言っているようなものだ。なあソレア、あんたも分かっているんだろう、ユウリには銀河の石は無理だ。何があっても、絶対に。これはモンスターマスターとして未熟だとかそういうレベルの話じゃない」
「何を焦っているのフューン。君らしくもない、あたしは見守るだけだよ、二人とリーヤクンの成長をね。そして君は配合で手助けしてあげるんだ。大丈夫、道をこじ開けるのは活力溢れる若者の特権だから。この程度の辛苦で挫けるような彼じゃないさ」
早くユウリクンに配合を教えてあげなよ、背中を押されて部屋から強制的に追い出されてしまった。フューンの実験室のはずなのに、一体どうして俺が。ため息をつきながらユウリの元へ向かった。
開会式の少し前、ユウリ達は闘技場に来ていた。目的はもちろんEランクの制覇。これを制覇することで配合をすることが可能になるようだ。ソレアが言うには、配合はまだまだ未知だからむやみやたらにするものでもないらしい。生まれたモンスターの責任を取れるか、モンスターマスターとしての最低限の自覚があるかを問うための試験のようだ。闘技場の試験としては最低ランクだが、これほどまでに重要な意味を持つ試験もEランク以外に少ないだろう。だからこそユウリには一回で突破してほしいと期待されていた。
「魔物を使役するためには、戦況を広い視野で観察し、自分の命令に自信を持つことが大切だ。君なら問題ないだろう、ユウリクン」
「や、やるだけやってみます」
「ユウリ、頑張って!」
リーヤの純粋な応援が身に染みる。ソレアさんも難しいことばっかり言うんじゃなくて応援してくれればいいのに、そう胸の中で愚痴をこぼした。今日は愚痴ばっかりだ。しかし再びこの闘技場の砂の中に飛び込んだ時、ピシッと帯が締まった気がした。開会式の時ほどではないが、周囲を歓声が大いに囲んでいる。
「闘技場Eランク最終戦、開始!」
一回戦二回戦、ユウリは圧倒していた。スラっちの猪突猛進な体当たり、キャロルの広範囲に渡る火の息、バットの相手を引き裂く鉤爪。その猛攻はとてもEランクの器ではなく、ワルツを踊るように華麗に蹂躙していった。観客達も徐々にヒートアップしていき、ついに最終戦を迎えた。
「こいつを倒せるかな?」
降ってきたのは巨大な樹木。枯れた木の葉を数枚落とし、また新しい緑葉を生やす。落ちゆく木の葉は「やくそう」か「せかいじゅの葉」か、幹に宿った顔の正体は「じんめんじゅ」だった。
「あのじんめんじゅ、大きいわ……。ユウリ、負けないで……!」
息を入れる間もなく、じんめんじゅは飛びかかってきた。この巨大で踏み潰されたらひとたまりもない。スラっち危ない!その声と同時にスラっちはひょっと身を翻した。
「ナイスだよスラっち。うん、これならいける。あいつよりスラっちの方が速い、それなら」
僕はピシッとじんめんじゅを思い切り指差した。スラっちは合図と共に駆け出し、一瞬にして背後を取る。気配に気づいたじんめんじゅが後ろを向くその時には、もうスラっちはまたまた背後を取っている。前、後ろ、前、後ろ、ぐるぐると高速回転するスラっちに気を取られ目を回した瞬間、空に影が現れた。
「キャロル、火の息!」
バットに乗ったキャロルが頭上から思いきり火の息を浴びせた。魔物だが元々は樹木であるじんめんじゅには効果絶大、瞬く間に燃え広がっていってしまう。ついには気絶して倒れてしまったところで、KO!とアナウンスが聞こえた。
「くくっ、いいね、まるでサーカスみたいだよ」
危なげなく勝利したユウリは晴れて配合の権利を得ることに成功した。危なかったと安堵を漏らす暇もなく、試合終了後、協会を訪れるように言われた彼は改めて受付に向かった。
「Eランク制覇おめでとうございます、ユウリさん。配合が解禁となりこれからはもっとチームを強く育てていくと思います。それに伴って、これを。リングを着けている方の指をこちらに」
ピンとこないまま言われた通り指を差し出すと、カウンター越しに案内役が手をかざした。すると、リングを囲むように蒼炎が生まれ、そのまま吸い込まれていった。暗黒に一筋の光が差すような、生きる炎のゆらめきだった。
「今日からユウリさんのリングは青色になります。同時にEランクを制覇したことの証明になるので、ご活用ください。ちなみにですが、Dランク以降、リングの色を授けるのは私ではないので、楽しみにしていてくださいね」
青く眩いその光に、ユウリも目を輝かせていた。これが僕の新しいリング――。うっとり。この調子で闘技場を制覇していけばリングの色も変化していき、探索できる範囲も権限も増えていくようだ。指に宿る蒼き炎は高まる彼の胸の高鳴りそのものだった。
「ふふっ、良かったわねユウリ。スラっち達も誇らしそうにしてたわ」
「みんなは本当によく頑張ってくれたから、今日は美味しいお肉を食べさせてあげないと!」
原作のリングは緑色ですが、こちらでは各ランク制覇に伴って色も変化していき、その色によって実力を周囲に示すことができます。フューンがここまで言うのには何か理由がありそうですが、これからもぜひ見ていただけると幸いです。