professional of joker   作:たいたい35

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次なる旅

「さて、改めて。配合理論は非常に奥が深い。リーダーのような強いモンスターを仲間にしたいのなら、配合のためのパートナーを野生でスカウトしてくることだ。俺も色々考えたんだが、一つ良い場所があった」

 

地図を引っ張り出し、同時に馬車の代金が入った袋を渡された。

 

「ユウリは……、まあいいだろう。リーヤ、長い旅になる、付いていくなら替えの衣服は用意しておいた方がいい」

 

地図上の一点を指差すとそこは一面の黄金。巨大な砂漠が広がっていた。

 

「ロン砂漠。今の二人なら特別危険ということもないはずだ。銀河の石を宿すモンスターがいるかは分からないが、新しいモンスターを探すにはうってつけだろう。スライムとドラゴンキッズ、そしてヘルコンドルと相性がいい魔物をリストにしておいた、参考にしてくれ」

 

リストを確認していると、その最後、息を潜めて小さく依頼が載っていた。

 

「ドラキッドに届いたクエストだ。ロン砂漠でしか取れない素材らしい、合わせて頼む。ここのところ金欠だからな、誰かさんのせいで」

「何から何まで至れり尽くせりだね」

「ふふっ、フューンさん、ありがとうございます」

 

フューンはまたしてもニヤリと笑った。一瞬、彼女の瞳に未来が映ったからだ。アルカンの喧騒が形作るのは、人々の笑顔とモンスターの鳴き声。ユウリが夢見る世界がそこには開かれていた。そんな世界の第一歩を、彼は確かに歩み始めている。

 

「俺は疲れた。言いたいことは言い切ったし、今度は二人の番だ。さ、行った行った」

 

 

 

アルカンを出発し馬車を探そうとした二人だが、ユウリが何かに気づいた。

 

「この鈴、なんだろう」

 

フューンから渡された袋に入っていたのはゴールドだけではなかった。少し古びた鈴だったが、興味本位で鳴らしてみる。ドドドドドド、遠くから地響きのような音が聞こえてきた。ピキー!スラっちが背後に気配を感じ振り向くと、そこにはなぜかティアラがいた。

 

「もしかして、鈴を鳴らしたから来てくれたの?」

 

リーヤがティアラの頬を撫でながら質問する。冷たい肌触り、胸を張って二人を見つめるその姿は、呼びましたか?そう言っているようだった。

 

「ティアラ、すごいわ、わざわざ迎えに来てくれたのね!」

「用もないのに呼んじゃったね。せっかく来てくれたのにごめんね、ティアラ」

 

しもふりにくを差し出すと、状況を理解したのか超特急で去っていった。

 

「メタルキングってほんとに速いんだね……」

「どうやってスカウトしたのかしら」

 

砂粒のように小さくなっていくティアラの後ろ姿を見送りながら馬車を探すユウリ。対し、地図を見ていたリーヤは前から近づいてくる通行人とぶつかってしまった。

 

「いってぇな、気をつけろ!」

「ひゃっ、ご、ごめんなさい」

 

がなり気味の怒号に彼女は過剰に震えていた。ユウリは相手の蛇のような視線を遮り、リーヤを庇う。ガヤが見守る中、顔を上げ、怯むことなく睨み返した。

 

「あなただって前を見ていませんでした。リーヤに謝ってください」

「なんだお前。ガキが調子乗んな!」

 

強烈な右フックは、ユウリの頬の中心を貫いてしまう。膝を崩し苦しむ姿を見て男は満足したのか、痰を吐いて去っていった。街の中心で人が殴られたのだから、野次馬が集まってくる。いつまでもぐずっていられないと、彼は力なく立ち上がった。

 

「やっぱり都会だとこういう人もいるよね……。いたた、大丈夫、バットの爪に比べたら全然へっちゃらだよ、リーヤもそんな顔しないで、あ、でも絆創膏は欲しいかな」

「ユウリ、ごめんなさい、私のせいで……」

 

リーヤは心配性だなあ、そういつものように強気に笑ってみせたが、今回ばかりはごまかしも効かず、彼女の態度が変わることはない。手当を進めている最中も、不安が彼女から抜けることはなかった。

 

「ピキー!」

「みんなもごめんね、スラっちだって助けようとしてくれたのに」

 

リーヤの心痛が伝染したのか、スラっちはもちろん、バットとキャロルもユウリから離れようとしない。皆自分なりに心配の色を見せていた。しかし、傷つきながらもユウリは気づいてしまった。駆け寄ってくれたキャロルとスラっちの間隙に潜む恐怖に。青年一人が殴られてぶっ倒れているというのに、民衆はユウリを見て怯えている。理由はすぐに分かった。それは、彼が魔物を連れているから。魔物はユウリを心配しているだけというのは誰の目にも明らかのはずなのに、どの人間も怯えていた。くっ、血が出るほど歯を食いしばりながら、リーヤの肩を借りて彼は立ち上がった。

 

「分かってる、スラっちなら間に合ったことくらい。でもダメなんだ。こんな街の中心でモンスターが暴れたらきっとみんな怖がっちゃうから」

「だからって、スラっちは私を守ろうとしてくれただけ、正しいことをしたわ」

「どっちが正しいかなんて関係ない、この街の人たちにとって、恐怖を植えつけるモンスターはいつだって悪なんだ。何も知らないのに、知ろうとしないのに、歩み寄ろうとすらしないのに……」

 

少し憎悪にも似た感情だった。ただそれは寂しさにも似ていて、憂慮にも似ていた。地面に落ちていた小さな石ころを手に取って、遠くへ投げつけた。今の彼にできる精一杯の抵抗だった。

 

「いけない、僕が腐っちゃダメだよね。まずは自分から変わっていかないと。よし、もう大丈夫、リーヤもありがとっ、また助けられちゃったよ。やっぱり僕にはリーヤがいないとダメだね」

 

今度の笑顔は一層明るかった。これにはリーヤも満更ではない。キャロルの炎よりも顔が赤かった。間が悪く、スラっちをぬいぐるみ代わりにぎゅっと抱きしめて誤魔化している。

 

「そ、そんな、私だってユウリがいなきゃ……」

「えへへ、ありがと!それじゃあロン砂漠にしゅっぱーつ!」

 

近くの馬車を捕まえて、一行はまだ見ぬ自然へと進み始めた。

 

「もっとちゃんと聞きなさいよ、バカ……」

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