professional of joker   作:たいたい35

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王の要求

「そう言ったってどうするの?」

「乗り込んでやるんだ。直接伝えなきゃ分かってもらえない」 

 

城の入り口には門番すらいない。ロンダが開かれていることの証左だった。自由を体現しているのだろう、面白い相談があったら誰でも何でも持ってこい、そう告げているようだ。

 

「あわわ、この壺、あの絵画、高そうだわ」

「もし壊したら、僕たち地下に送られちゃうね」

 

意外にもユウリは格式ばった王宮に日和を見せない。むしろ大胆不敵に王の間へ一直線、カーペットの上を歩いていった。

 

「名前は」

 

王の間へと足を踏み入れた二人は、その中央、衛兵と王の視線を一身に浴びながら跪いた。ユウリは周囲の人間に目もくれず、王だけをまっすぐ見つめ、堂々と口を開いた。

 

「僕がユウリで、こっちがリーヤです。今日は提案があって来ました」

 

注目を感じたリーヤは慌てて下を向いた。権威のある視線が彼女にはどうしても苦手だった。昔を思い出すから。支配されるあの恐怖が沸々と蘇ってくる。汗を滲ませ、瞳孔は開いていた。

 

「スラムの人たちが満足な暮らしを営むための援助をしてほしいんです」

 

ユウリの発言を聞き、王は眉間に皺を寄せた後、大きく笑った。

 

「ここに子どもが来るのは久しい。何かと思えば、いかにも子どもが考えそうな無知で浅はかな愚考よ!感情のみ、政治の初歩も知らぬ実にくだらない案である。もういい、下がれ」

「できないんですか」

 

ユウリは冷ややかな視線を突きつけた。やっとの思いで糊口を凌いでいるスラムの皆は、こうやって一蹴され、見放されてきたんだ。引くわけにはいかなかった。見えない圧力に押しつぶされそうになりながら、必死で顔をつくった。しかし、その泰然たる態度が王を刺激した。

 

「いいか若者、教えてやる。国というのは常に成長し続けるものでなければならないのだ。刹那のつまらぬ御託や感傷で国を動かす態度こそ言語道断。崩壊を招く為政である。政治は取捨選択、適応できぬ者は飢える運命なのだ。学のない貴様でも理解したであろう」

「言い訳じゃなくて、できるかどうかを聞いているんです。できないんですか?」

 

王の眉間の皺が一層濃く深く沈んでいく。リーヤは震えたままだった。それを横目で見たユウリはため息の後、突き放すように言った。

 

「できないならいいです。この度は、王の貴重な時間をありがとうございました。退室します」

 

おい。心臓が止まりそうな低い一言。その瞬間、兵士が二人を取り囲んだ。怒りは頂点に達し、眉は震えていた。

 

「待て、ワシに背を向けることは許さん。一つ機会を貴様に与えよう。そのふざけた態度がただの生意気か覚悟を決めた豪胆か、見定めてやろう」

 

槍に囲まれ動けない状況の中、王の声だけが響き渡る。

 

「今、商人や旅人にある秘宝を探させている。それは『砂漠のバラ』である。月光が全てを照らす夜、砂漠の中央で凛然と咲き誇るという。何十、何百の冒険者が挑み、挫折してきたゆえ、未だ逸話のみ残され見つかっていない。それを見事持ち帰った時、貴様の頼みを聞いてやろう」

「分かりました」

 

即答だった。またしても王は大仰に笑ってみせる。王妃と顔を見合わせ手を叩いていた。

 

「ほお、生意気な小僧だと思っていたが、愚直さだけは突き抜けているようだ。今の話の一切が虚構だったとしても行くのか?」

「はい、それでみんなが助かるなら」

 

その答えを聞いて、王は二人を兵士に城からつまみ出させた。王の間を離れる瞬間、かすかに聞こえたのは、早く行け、という命令。どこか納得のいかない部分もあったが、なんとかツテを手に入れることができた。砂漠のバラ、王が言っていた内容も不十分不確かで不安もあるけれど、やるしかない。巨大な門の前で、よし、と自分を鼓舞した。

 

「後先考えないのは子どもの愚かさではあるが、だからこそ成し得ることもあるだろう。気に入った、気長に待とう。先に心が折れなければいいが」

 

王は再び、玉座に深く根を張った。

 

 

 

「ふう、緊張したぁ。なんで権力のある人はみんなこうも怖い顔をしてるのかなぁ」

「ユウリは、すごいわ。私、足が震えてしまって……」

「僕が連れてきちゃったからだ。リーヤのことは、もう十分知っているつもりだったのに、こんなことすら頭から抜けてたなんて。昔のこと、思い出させちゃったよね」

 

本当にごめん、そう声に出そうとした時、しーっ、リーヤは人差し指をそっと口元に突き立てた。

 

「あの日のこと、覚えてる?ユウリはパパとママから私を救ってくれた。私に新しい世界を見せてくれた。どれだけ感謝しても足りない幸せを教えてくれた。私はあなたと一緒にいれるだけで、ありえないくらい幸せなの。確かにさっきはちょっと気後れしちゃったけど、全然問題ないんだから!」

 

やっぱり僕はリーヤのこと、全く分かっていなかったんだ。彼女は確かに前に進もうとしている、いや、進んでいる。今ではすっかり、僕が励まされる立場になってしまった。でも、不思議と満足感で胸がいっぱいだった。

 

「あははっ、僕なんかよりリーヤの方がずっと強いや。そうだよね、リーヤはこのくらいのことじゃ挫けないよね!でも、だからこそ僕は強いリーヤのこと、もっと知らないと!もっと、もっともっと教えて!」

 

ぐい、ぐい、ユウリが顔を近づけてくる。リーヤの顔が炎を巻いて火照っていく。あなたが知りたいのなら、何だって教えてあげるのに。むしろ、私の全てを知ってほしい。決して言えない言葉を、心の奥にそっと閉じ込めた。

 

「と、とりあえず砂漠のバラを探さないといけないわ!早く行きましょ!」

 

目を泳がせながら強引に話題を逸らして、二人は砂漠のバラの捜索へと向かった。

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