professional of joker   作:たいたい35

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砂漠の夜

「砂漠の夜は危ないわ。モンスターもそうだけど、一気に冷え込むの。まずは安全そうな洞窟を見つけて暖を確保しないと」

 

了解!沈みゆく太陽に向かってユウリはありったけの元気で応えた。バットは上から探索、キャロルは背後を警戒、スラっちは定位置、リーヤの腕の中へ。それぞれが役割をこなすこと数時間、ようやく頃合いの洞穴を見つけた。ユウリは慣れた手つきで火を起こし、道中で拾ってきた木を焚べた。

 

「ひとまず夜はこれで何とかなるかな」

「近くにオアシスがあって本当に助かったわ。ここでなら数日は探せる!」

「月光が全てを照らす夜かあ、よく分からないけど、とりあえず夜まで待たないとだよね」

 

一段落ついたことで最近の疲れがどっと押し寄せてきたのか、ユウリは今にも夢の世界に向かってしまいそうだ。そんな彼のうたた寝を見ながら、王の発言の意味をリーヤは考えていた。

 

「全てを照らす、そんなことがありえるの?そもそも光があれば影があるのは当然だし……」

 

どこまでも続く夜の蜃気楼の向こうへと月が溶けていく。暗闇に飲まれる世界に、焚き火がこれほど頼りなく思えたことはなかった。

 

「真っ暗だわ……」

 

熟考を重ねているうちに、彼女のまぶたも沈みそうになる。思考が気持ちに追いつかず、最後の抵抗として空に花開く星々を一つ二つと数えていると、外を見張っていたスラっちが果実を咥えてやってきた。真っ赤に潤む芳潤なそれはまるで生き物のように光り輝いていて、ちょうど見上げていた星空のようだった。過酷な環境でも新鮮を保つその屈強さは果てしないと思われた今回の依頼に一筋の希望をもたらす。今日はしっかり休息を取ってまた明日考えよう、小さな鍋のスープをすすって、リーヤもようやく瞳を閉じた。

 

「って私まで寝たらダメじゃない!」

 

いくらスラっちたちが見張ってくれているとはいえ、焚き火が消えれば一瞬にして体温を奪われてしまう。なんて過酷な環境。彼女は大きくため息をついて、パチパチと弾ける炎に燃料を放り込んだ。

 

「リーヤ、寝ていいよ!」

「びっくりした、またそんな急に」

 

いつのまにかユウリが目を大きく開いて覚醒していた。

一瞬の油断でぐっすりいってしまいそうな顔だったというのに。夜風に舞う砂塵が衣服にまとわりついてじれったい。

 

「ユウリが寝ないなら私も」

「いつもそうだよね、そんなに気を使わなくてもいいのに」

 

二人はそれ以上の言葉を交わさないまま、夜は色を増していった。同じように、彼女の疑問は深まるばかりだった。そもそも月光なんてどこにも見当たらないじゃない。たかが月明かりなんてこの大砂漠には懐中電灯よりも頼りない。自分で光を発することもできないものに全てを照らすことなんてできるはずがないのよ。まさか王はこの砂漠に存在しないものを指定して楽しんでいるのかしら。疑問が疑念に変わったころ、肩に違和感が生まれた。

眠ってしまったユウリがもたれかかってきたのだ。疲れているのかスヤスヤと寝息を立ててまぶたはピクリとも動かない。

 

「な、何をしているのよ」

 

彼女の脳がユウリの感触に支配されていく。せっかくあなたの代わりに考えていたというのに。いつまでもマイペースなんだから。ため息をついて、ほんの少しだけ彼女も肩を寄せた。

 

「少しだけ、少しだけなんだから……」

「ピキーっ!」

 

周囲を見張っていたスラっちが大声を出した。ユウリも目を覚まし、二人はスラっちが騒ぐ方向に注意を向けた。すると視界限界の闇の中に小さな魔物が見えるのだ。リーヤには全く認識できなかったけれど、ユウリとスラっちたちモンスターには見えているようだ。

 

「ほらリーヤ、あれだよあれ!あの、さそり?みたいなやつ!」

「さそりがいるの?暗くて全く見えないわ。おおさそりかしら」

「多分そうかも、どうしてこんな夜中に目立たない場所を歩いているんだろう」

「おおさそりは昼行性だわ。たまたま起きただけの子が徘徊するなんておかしな話ね」

 

あれ。ほんの一瞬、そのおおさそりの身体が鈍く光った気がした。その輝きに思わずユウリは目を塞いでしまう。次視界が開けた時にはもう、それは姿を消していた。

 

「あれ、いなくなってる」

「自然は不思議ね。私が調べた図鑑も、広げた地図も、実際のところどれだけ詳らかにされてるのかしら」

「つまびらか?」

「まだまだ私たちの知らない魔物がたくさんいるってこと。世界は広いわ」

「そりゃそうだよ!知らないからワクワクするんだ!」

 

歯を見せる笑顔の彼は、光刃が暗闇を突き抜けていくような煌めきだった。まるで、さっきのおおさそりが放った光のように。

眠って起きてを二人で交互に繰り返しているうちに、日はすっかり昇っていた。

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