professional of joker   作:たいたい35

5 / 36
解放されて

「はあ、ほんと、ほんとなんなの……。生きた心地がしなかったわ……」

 

巨大な扉を背にすると、ようやくグラスターから解放されたことを実感した。リーヤの表情は徹夜明けのように真っ青で、ユウリは落ち着かない様子だった。ピキー、スラっちもようやく解放されて、弱ったリーヤを心配しているのか、不安げだ。

 

「二人は待ってて、僕は試験を受けないといけない。絶対にスカウトリングを手に入れるから、その後でおいしいご飯、お腹いっぱい食べよう!」

 

グラスターを睨みつけていた彼とは一転、にっと子どものように笑う姿に、リーヤも安心の表情を見せた。私も、いつまでもビビってちゃいけないわ!彼女は腰に手を当てて、胸を張る。

 

「それじゃ、行ってくる!」

 

季節外れのマフラーを脱いで、リーヤに渡した。一歩一歩力強く踏みしめて、彼は協会本部の廊下を歩いていくのだった。

 

「ねえスラっち。私、彼のあんな顔初めて見たかもしれない。あのグラスターとかいう不遜で趣味の悪いおじさんは息が詰まるくらい怖かった。でも、言葉を交わすユウリの顔も、同じくらい怖かったの。普段はとっても優しくて、笑顔がかっこよくて、でも、だからこそ、本気で怒ったユウリって、あんなに怖いんだなって……。ごめんね、変だよね。彼は正しいことを言ってたのに、こんなこと言っちゃダメだよね……」

「ピキー?」

 

ユウリが去った後、スラっちにだけ聞こえる声で彼女はつぶやいた。スラっちは理解していないようだったが、彼女の不安を感じたのか、うつむく彼女の膝にマスコットのように乗っかり、ぷるぷる身体を震わせて、温め始めたのだ。大丈夫だよ、ユウリを信じよう、そう言っている気がして、その体温が膝を通って全身に伝わった。ようやく落ち着いたリーヤは、さっきの出来事について思案していた。ユウリは口調こそ荒くないものの、グラスターに並々ならない憎悪を向けていた。そしてその表情が怖くて――。私はいったい、何に怯えているんだろう……。ユウリが帰ってくるまで、リーヤは自身が感じた恐怖と向き合っていた。

 

 

「ここが会場、結構広いなー」

 

もっと独創的な空間を期待していたけど、どこにでもありそうな教室だった。時間もギリギリだったから受付にいたガタイの良いお兄さんに睨まれたけど、僕はなんとか会場に入ることができた。まずはモンスターに関する知識を問うテストからみたい。僕はもう十年近くスラっちと一緒にいるんだ、このくらいの壁、難なく突破してみせる。漸次的に高まる緊張を深呼吸で中和して、裏返しで置かれた紙の上に手を置いた。

 

 

 

「そこまで」

 

低音が響き渡る試験室で、ユウリは何度も冷や汗をかいていた。ちょっと待って、配合ってなに、ランクってなに、スキルってなんだよ!?聞いたこともない単語のオンパレードに、彼のキャパシティはすっかり崩壊してしまっていた。もちろん、そんな状態ではまともに問題と戦うことなんてできるはずもなく――。行きの勢いとは程遠い、小鳥のような歩幅で、リーヤとスラっちが待つ場所へ帰っていったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。