professional of joker 作:たいたい35
今の彼を見れば、誰もが思うだろう、ああ、失敗したんだな、と。リーヤも例外ではなく、彼の姿を見た途端、がっくりと肩を落とした。
「もしかして、ダメだった?」
「リーヤ、タスケテ、ボク、もうダメだぁ……」
「ちょ、ちょっと!まだ不合格って決まったわけじゃ」
たぬきのように泣きつくユウリ。そんな顔されても、失敗しちゃったものはしょうがないじゃない!そういつものように奮起させようとしても、彼へのダメージは想像より深いようだ。とは言うものの、ユウリはモンスターと通じ合いたいと心の底から願っているし、それを知っているリーヤの中には、当然の疑問が宿った。そんなに難しい問題だったのかしら。リーヤもユウリの役に立てるよう、本を買い漁ってモンスターについて学んではいたが、いったいどの程度の問題なのか。頭の中にはてなが残った。
「どんな問題が出たの?」
「そりゃ全部訳分からなくてさ!ランクとか配合とか、さらにはスキルだって。そんな専門用語並べられても分かるわけないじゃん!メタルドラゴンとグレイトドラゴンを配合って、そもそも配合が分かんないよ!」
えっ。お腹の奥から反射的に出た一言。これには思わずリーヤも頭を抱えた。どれだけ聞いても、モンスターと関わる人間ならば知っていて当然のものばかり。五十分ほどのテストだったが、問題の概要を見ても彼女なら十分もかからないようなものだったのだ。リーヤの頭はますます混乱してしまった。ちょっと待って、どういうことなの!ユウリはもしかして、モンスターについて全く勉強してない?そんな疑問が身体中を駆け巡った。
「あんな難問を数分で解いちゃうなんて……。やっぱりリーヤはすごい!」
「ちょっと待って、これくらい普通よ普通!当然なの!ユウリも、知らなかったじゃ済まされないレベルなの!」
ピンときていない様子のユウリ。そのヘンテコな顔を見て、彼女は思い出した。ユウリは身体で覚えるタイプだから、理論とか知識を詰め込むということがとんでもなく厳しい子だったのだ。オムライスを作るときも、レシピを覚えるよりとりあえず調理してみるタイプだし、生姜焼きについて、どうして肉と生姜が合うのかと聞かれても、生姜の成分には触れずに、おいしかったからとしか言えないような子なのである。モンスターに関しても例外ではなく、牧場や野生の世界でスラっちと共に体験した事を基に、彼の様々な技術が構成されているため、重要な基礎をすっ飛ばしていきなり実践を行っているようなものなのだ。文献にこのモンスターが危険だと書かれていたから実際には近づかないようにしよう、この思考が一般的だとすれば、ユウリの場合、このモンスターは危なかったので今度からは近づかないようにしよう、そういうスタンスなのだ。だから、実際に野生とまみえるための知識である配合やランクなどは、そもそも野生で暮らしているようなものであるユウリには特別必要のない知識であった。リーヤはやってしまったわと動揺したが、過ぎたことを考えても仕方がないので、とりあえず必要最低限の知識だけ押さえてもらってから昼食を食べることにした。
「いい?よく聞いて。ランクというのは、モンスターの種に応じて割り振られたアルファベットのことよ。SS、S、A、B、C、D、E、Fまであって、一般的にはSSの方が強いし数も少ないとされるわ。ちなみに、スライムはFよ。でもスラっちの強さはFに収まる器じゃないけどね!」
スラっちはご機嫌で胸を張っている。
「へえ、そんな細かく分けられてたんだ。じゃあ配合は?」
「性別の異なるモンスター同士の力を借りて新たなモンスターを生み出すことよ。ただ、十分に人間に慣れていないと失敗してしまうけど。そして、配合の後はその二体のモンスターは野生を取り戻し去ってしまうの。まったく、このくらいは基本中の基本なのよ、私は優しいから教えてあげるけど!」
「そうなんだ、知らなかった……!そんな難しいことまで知ってるなんて、リーヤはやっぱり天才だね!」
「と、当然よ!」
顔を赤くして、ふふんと上機嫌な様子を見せるリーヤ。髪をかき上げて、自慢げだった。ダメダメ、良い気になってちゃいけないわ。これからのことを考えないと。モンスターマスターになるために、今からでもユウリに知識を身につけてもらわなければいけない。リーヤが次の説明をしようとした時、彼のお腹が鈍く鳴った。
「とりあえずご飯にしようよ」
「もう、しょうがないわね。あっちにおいしそうなパンが売ってたから行きましょ!」
人混みをかき分け、スラっちを頭に乗せて、二人は進んでいった。