零崎絞識の人間志願 作:戯言遣い
001
かの英雄、オールマイトは言いました。
今の世の中には柱が無い、拠り所となる柱が無いから人々は不安に駆られ凶行をおこすのだと。
彼は素晴らしいヒーローです、無いのならば自身が柱となろう。
そのような選択が採れる人間が果たしてどれだけ居るのか。
そして、更に有言実行せしめる
そんな英雄を間近に見る事が出来た私はとても幸福で、だから私がヒーローを目指すのもまた自然な流れというものです。
しかし、ヒーローを目指すにあたって一つだけ懸念があるとすれば…それもまたかの英雄の言葉に関する事なのです。
人は、拠り所が無いから凶行をおこす。
ならば、産まれた頃より人を殺さずにはいられない
人ではない私は、果たしてヒーロー足り得るのでしょうか?
002
「
零崎一賊はお前で最後だ…だから、殺し名なんて関係ない
普通の人生だって、お前なら送れる筈だ…トキのように零崎の衝動を抑えられるお前なら、きっと……」
「どうしたんですか師匠、何時ものちゃっちゃかうるさいキャラ作りがとれてますよ?」
「お前ッ!俺のがキャラ作りって気付いてたのかよ!!?」
室内にも関わらず麦わら帽子を被った老人…いや、こう言うとまた殺されかけるな…シルバーとか?
…まぁこのシルバーこそが私の師匠、元零崎三天王の一人
といっても、そういうのには明るくない私からすれば昔はブイブイ言わせていたと言うおじいちゃんだ。
……まぁ、未だに組み手で私をボコボコにしてくるぐらいにはぶっ飛んだスーパーおじいちゃんだが。
「その年で麦わら帽子被ってちゃっちゃか言ってるのがキャラ作りでなければ老人ホームでしょう」
「………まぁ、それはいい」
流したな…
師匠はこういう自分の予測の範疇を超えた瞬間、どうでもよくなって自棄になる悪癖がある。
やめて欲しいんですけど。
「光詩、俺はもう長くない。…いや零崎としては異例と言って良いぐらいには長く生きたが、とにかく俺はもうすぐ死ぬだろう
長年
「はぁ…そんなに元気に歩いて喋ってるのにですか?
年くって弱気になってるだけでガバァ!?」
グーで殴られた。
何処が死にそうなんだこの暴力シルバー…
「とにかく!今の俺の気掛かりはお前の事だ!
ちっとばかし俺が鍛えたが…今のお前は零崎の衝動のみで闘ってるみたいなもんだ、だからヒーローなんてやめておけ
今のお前じゃヴィランを殺すならともかく、倒すなんて出来っこない」
「…………好きに生きろと言った次にはヒーローなんてやめろですか
本当にボケてきてますね師匠」
「なんとでも言え…光詩、家族として俺はお前が心配だ
ヒーローじゃなくとも社会貢献ってヤツはいくらでも出来るだろ」
「別に社会貢献がしたい訳じゃないんですよ師匠
私はただヒーローになりたい、それ以上でもそれ以下でもありません」
私がそう言うと師匠は頭を掻きながら大きくため息をついて、勝手にしろとふて寝してしまった。
本当に…なんて大人だ。
「師匠、へそ曲げてないで起きて下さいよ
……………師匠?」
零崎の本能というかなんというか…私は相手の生き死にというのが直感的にわかる──わかってしまう。
……どうやら、私は本当に最後の零崎とやらになってしまった。
「これで良いか…」
土で汚れた手を洗いながら呟く。
こういう時は口に出して確認するといいらしい…どれほどの効果があるかは知らないけど。
「本名知らないので…まぁ戒名だと思って下さい」
目の前の大きな石には零崎軋識と刻んでおく。
殺し名が戒名とは…中々皮肉が効いているというものだ。
きっと地獄の師匠も苦笑いしてくれることだろう。
「さて……どうしようかな」
ヒーローには勿論成りたいのだけれど…仮にも師匠の遺言がアレだっただけに大手を振ってヒーロー試験を受けるのもはばかられる。
「………そうだ、高校に行こう」
師匠はヒーローになるなと言ったが、それはあくまでも私が弱いからだ。
ならば、ヒーロー足り得る強さを身に着ければ問題ない。
「草葉の陰から見といて下さいよ師匠
高校受験ぐらい、バシッと決めるので」
早速手近なヒーロー科のある高校を探してみよう。
そうだ、そう言えば……
「雄英高校とか近かったはず…」
かの英雄オールマイトの母校にして日本屈指のヒーロー育成機関でもある。
ふむ、ならばそうしよう…
かの英雄を育て上げた雄英高校なら、きっと私だってヒーローに成れるはずだ。
どうしようもなく