呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

12 / 45
たくさんのアンケート、ありがとうございます。

肯定系の回答が多かったですが、あまり見たくない方もいらっしゃったためIFストーリー用の小説としてそのうち投稿してみます。
書けたらURLをこちらに貼っておきますのでどうぞよろしくお願い致します。


呪胎載天

「嘘でしょ!?」

「ヒッ、すみません!」

呪術高専の朝方、校舎内に覚中の声が響いた。

同時に男性の怯えるような声も聞こえてきた。

 

「し、しかし、本当に特級相当になるかは分からず…」

 

「可能性は高いよ。場所が少年院なんていう場所だし、受胎から変態する場合、特級相当になる可能性が高くなる。知ってるでしょ?」

 

「は、はい…」

補助監督者である伊地知がこうして覚中と話をしているのは、今日の一年生たちへの任務の件。

少年院に呪胎が発生したのが観測され、緊急避難をしたが生死不明の人が5人。その捜査と救助に一年生三人が駆り出されたのだ。

 

「…特級レベルの可能性のある案件に一年三人を派遣、ね…虎杖君を殺しに来たかな。他の二人が死んでも私達に嫌がらせができて一石二鳥、か…」

ズズ、と呪力が溢れ出る。

 

「悟と傑は昨日から任務で遠出、私も今日の午前中に任務を入れられた。特級相当の任務なら生得領域は当然あるはず……やられたな、電波が届かない可能性が高い」

チッ、と舌打ちをし、伊地知の方を見る。

 

「伊地知君、お願いがある」

 

「は、はい、何でしょう…」

どんな無茶を言われるのかとビクビクしていると…

 

「時間を稼いでほしい。道に迷っただとか、初めての一年生たちの大仕事の為に色々と説明をするとか、とりあえずどんな理由付けでも良いから少しでも三人が少年院に入るのを遅らせて。その間にできるだけ早く任務を終わらせてそっちに急行するよ。…少しなら無理やりみたいなこじつけでも良い。後でこっちで拭いはするから、三人には察されないように頑張って」

いつもとワントーン下がった、いつになく真剣な覚中の声が響く。

 

「し、しかし、任務は生死者の確認と救助で…」

 

「じゃあ聞くけれど」

ピシリ、と呪力にヒビが入ったような気がした。

 

「呪力も持たない一般人が、特級相当の呪霊と三時間一緒にいて無事でいられる確率、どれくらいあると思う?」

静かに、重くのしかかるように声が響いた。

窓…高専直属の()()()()()()()()()達が受胎を発見したのはもう二時間前。既に誰かが生き残っておる可能性は皆無だろう。

 

「は、はい…」

稀に隠れていたりして無事な人もいたりするが、今回の舞台は少年院という完全な閉鎖空間。

その上逃げられるものは早いうちから逃げており、逃げ切れていない時点で生き残っている確率は限りなく低い。

 

「…悪いけれど、私には近くにある命しか守れないんだ。……ごめんね、宜しく。頼りにしてるよ」

そう言うと覚中は纏めていた荷物を引っ掴んで()()()

 

「呪力消費がすごいからあんまりやりたくないけど…!」

ドン!と大音を立てて打ち出されるように上空から覚中の姿が消えた。

呪力の瞬間的な射出で空を飛ぶとかいうそれこそ人外じみた挙動をする覚中にぽかんとしつつ。

 

「…はっ、」

普段術師側から言われることのない、「頼りにしている」という言葉に打ちひしがれながら、伊地知も支度をするのであった。

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

「…やっぱり無理か」

空を飛びながら覚中は電話を取って五条と夏油に連絡を試みたが、どちらも繋がらない。仮説があたってしまったようだ。

 

「…チッ、」

また小さく舌打ちをしながら携帯をしまい、目標地点に急ぐ。任務場所はまだ比較的近く、中部地方のとある場所での呪霊の祓除だ。飛んでいけば30分もかからない。

 

「早く…!急がないと…!」

若干焦りながら向かう。

どうか、これ以上誰も死なないように、と願いながら。

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

 

 

「我々の窓が呪胎を確認したのが四時間ほど前。避難誘導9割の時点で現場の判断により施設を閉鎖。受刑在院者第二宿舎、五名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており、呪胎が変態を遂げるタイプの場合…特級に相当する呪霊になると予想されます」

一方少し経って、伊地知は虎杖達一年生ズを車に乗せて移動し、既に少年院に到着してしまっていた。

いや、これでも粘った方である。

あえて道を少し外し、しばらく迷ったフリをして伏黒に注意され、車内でもできた説明を到着してから少し長めにして、直行した最速のルートから考えれば何とか伸ばしに伸ばした30分。

 

「なぁなぁ俺特級とかまだイマイチよく分かってねえんだけど」

そんな中、呪術師になりたての虎杖はまだ、等級を上手く理解できていないようで。

そんな虎杖に呆れる釘崎を尻目に、伊地知は少しでも時間を伸ばせるようにすこし考える素振りを見せつつ説明を始める。

通常の兵器が呪霊に有効だと仮定した場合に、四級から一級までの相手の対抗手段を述べて、特級呪霊はクラスター弾での絨毯爆撃でやっと祓えるかどうかの相手だと冷静に伝える。

 

「(覚中さん…!できるだけ早く戻ってきて下さいっ…!!)」

内心こんななのに、だ。

 

「ヤッベェじゃん」

「本来呪霊と同等級の術師が任務に当たるんだ、今日の場合だと五条先生とか夏油先生とかだな」

「で、その二人は?」

「出張中。そもそも高専でプラプラしてていい人達じゃないんだよ。あと覚中先生もだな」

呪術界は基本的に人手不足である。

ブラック企業もビックリな仕事量に、頭おかしいとまで思える無茶振り、さらにその上に生徒の指導まで受け持つ人間もいる。

更にもっと言えば、腐った上層部(はいはいゴミゴミ)からいらない邪魔が入ることもある。

 

「この業界は人手不足が常。手に余る任務を請け負うことは多々あります。ただ今回は緊急事態で異常事態です」

メガネを指で直し、冷や汗を隠しながら伊地知は続ける。

 

()()()戦わないこと。現在の特級と会敵した時の選択肢は“逃げる”か“死ぬ”かの二択です」

ゴクリ、とその場の全員が息を呑んだ。その言葉はこれから体験する物事の凄惨さを物語っていた。

 

「…伏黒、釘崎。…助けるぞ」

 

「……ああ、」

「えぇ」

笑ってしまうほどにお人好し。それが虎杖の本質だった。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

「あぁもうっ!」

またまた一方、覚中。

任務をさっさと終わらそうとしたのだが…罠にかかってしまった。

 

「多す、ぎ!」

四方八方から溢れ出てくる呪霊の波。何をどうしたらこうなるのか。

幸い、一体一体は強くて三級、ほとんど四級である上一番最初の()()…拡張術式、周眼(しゅうがん)と名付けた技を使って常に周囲の思考を常時軽く読み取り、奇襲を意味を成さなくしてはいるためその方面ではキツくはないが、いかんせん数が膨大。疲労が色濃く残る。

 

「もう…こうなったら、!」

この後の帰りの分と最悪特級と会敵しないといけないのを見越して、呪力と体力の無駄な消費は抑えたい。

そして、胸元から覚瞳を取り出し…

 

「拡張術式、覚瞳千万(かくどうせんばん)!」

周囲に大量の目が現れ、呪霊たちを一瞥していく。

力の弱い呪霊のため、軽く負の感情を削減するだけでも割と簡単に消えてくれた。

 

「、っはぁー…多すぎ。本当に嫌がらせだこれ…」

周りを見回し、念のため術式を広範囲に展開してからもう呪霊を完全に祓いきったのを確認し。

 

「…よし、ここからだ」

再び飛び、漏出は更に激しくなるが更にスピードを上げるために呪力を大量に爆発させながら加速する。

想定以上に時間がかかってしまったため、どうしても焦りが強く見える。

 

「速く…早く、早く…!」

覚瞳を服の下にしまい込んで荷物を肩からかけ、全速力で飛ぶ。

行きに30分かかった距離をわずか10分で飛び去り、指定の少年院に到着した。

 

「伊地知君!状況は!?」

 

「さ、先程潜って…およそ、10分ほどです!」

 

「っ…!」

10分もあれば、特級相手なら万が一が有り得る。

と、少年院から人影が出てきた。

 

「恵君!野薔薇さん!」

釘崎に肩を貸しながら伏黒は状況を説明する。

 

「不味い、です、虎杖が一人で…!」

 

「っ!伊地知君、二人に応急処置して病院に!恵君、ありがとう。絶対助けるから、安心して」

それを聞いて、覚中は釘崎と伏黒に手を向け反転術式を施術、それだけ言うと飛び出して少年院に入っていった。

 

「っ、生得領域…!」

中は壁やらパイプやらがごちゃまぜになった空間だった。

これじゃはっきりわからない…!と思い、術式を展開、虎杖の位置を補足する。

が。

 

「!!交戦してる…!?急がないと、!」

虎杖の心は呪力を使うための()()()に入っており、特級呪霊と思われる相手に殴りかかるところだった。

 

「く…!間に合え…間に、合え!」

開けた所に飛び出た覚中の目に入ってきたのは、呪力を纏った特級呪霊の拳が虎杖を捉える寸前であり。

 

「っ、術式反転、忌忌!」

瞬間的に発動した術式反転で呪霊の腕を後ろにのけ反らせ、腕を飛ばす。

 

「…へ、?」

 

「頑張ったね」

ふわ、と虎杖の頭に手を置き、そこから反転した呪力を流し込む。

虎杖は左手の手首から先が焼ききれており、右手も指が焼け崩れてしまっていた。そこに重点的に、正の呪力を流し込んで再生させる。

家入直伝の他人への反転術式。

 

「え、うぉ、傷が…!あれ」

が、へろ、とバランスを崩して虎杖は気絶する。

 

「…まあ、普通そうだよね。ここまで長時間特級と戦って、怪我して…よく頑張ったよ、お疲れ様」

その言葉に呼応するように、後ろからふんどしのようなもののみを身に着けた特級呪霊が呪力を固めて投擲してこようとしていた。

 

刹那。

 

「───!?」

ド、と呪力が弾けて、覚中の周りに青いゆらぎが立ち上る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───やってくれたな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、特級呪霊は体の内側から破裂して祓除された。

それと同時に生得領域は閉じ、飛んできた指も回収してから虎杖を背負って外に出よう、と思った。

 

 

「お前、強いな」

 

 

「!?」

バッ、と振り向くと、そこに立っていたのは虎杖。

…の、体をした宿儺だった。

 

「両面宿儺…だね」

 

「おぉ、一目で分かるか。やるな、お前」

パチパチ、とわざとらしく宿儺は手を叩く。

 

 

割と、最悪に近しい状況に追い込まれた。




Q.特級相手に何やったのー?
A.普段負の感情を削減して弱体化させてたのの発展です。今回は削減じゃなくて相殺。負の感情100%の相手の体に正の呪力を無理矢理叩き込み、負の感情とぶつけ合わせたら相殺される時にエネルギーが生まれて体の中で暴走、爆発四散します。
イメージ的には対消滅現象的なやつ。
オリジナル設定です。

が、それが簡単にできると家入さんが無双できちゃうので、相手の呪力の中に無理矢理ねじ込むことからめちゃくちゃ呪力使うことにしておきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。