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ちょっと現実味がなくてびっくりしてますが、皆様、ありがとうございます。
夢だな、と分かった。
さっきまで自分は両面宿儺と戦っていたはずで、そもそも自分の事を三人称視点で見てる時点でもうおかしいと理解できた。
もう何度も見た夢だから、というのもあるだろう。
それを見るだけで、勝手に蘇ってくる記憶。
それは、古い、古い記憶。
もう30近くにもなっても未だに夢に見る、記憶。
もうほとんど抜け落ちていて、途切れ途切れになった記憶をつなぎ合わせても歪にしかならないほど昔の事だが、はっきりと覚えている…そんな記憶。
というか、未来永劫忘れることは無いだろう。
忘れることなど、できないであろう記憶。
お世辞にも、自分の置かれている環境は良いとは言えないと、小学一年生…もしかしたら保育園の頃からある程度察していたのかもしれない。
覚中の家の環境は、大人から習ったり周りの人の話で聞く物とかけ離れていた。
家では父がアルコールに溺れており、時たま暴れていた。自分が家でして良いことなど本当に限られており、基本的には父の影に怯えてずっと隠れておくことしかできなかった。
小学校二年の頃、覚中は母と家を出た。
元々そこまで快活な性格でもなく、学校にそこまで友達が多いわけでもなかった彼女は別に拒むこと無く賛同した。
そして環境が変わり、新しい学校に行きはじめ…覚中は、自分を変えた。まあどちらかといえば、それは恐怖心から来るものだったのだろう。
もう二度と自分が傷つけられないように、自分の一人称も変えて人当たりの良さげな少女を象った。性格を騙して笑顔を貼りつけ、慣れるまで我慢するつもりだった。
幸い、彼女は自分を守るように人の感情を読み解くすべを身に着けていた。
表情の変化、視線、態度、言動…それらの情報を無意識的に読み取り、自身にフィードバック、悪感情を持たれそうになれば話や態度を軌道修正し、傷つけられることがないようにずっと明るく演じていた。
周りの人と活発に接し始めて、あらゆる人には表の感情と裏の感情がある、と気付くには数日程度しか要さなかった。
楽しんでいるように見えて裏では面倒くさがっていたり、嬉しそうに見えて実は全然興味がなかったり。
その全てには、正の感情の裏に負の感情が紛れ込む、という共通点があることに気付いた。それがとてつもなく怖くて、それでも自分も同じことをし続けていることに気づいて、自分を嫌った。
そんな日々の中で、だった。
転校してから一週間ほど経った頃、既に半グレじゃないか、という噂の立つ同級生がいるのに気付いた。
今まであまり目に付かなかったが、確かに、彼らの注目の先には一人のガラの悪そうな男子がいた。
彼に対しては周りも特に
「………」
しかし、覚中の目には不思議と、その子がそんなふうには見えなかった。
むしろ、周りよりただ裏表がないだけなように見えた。
「ね、」
気がつくと、彼の席の近くに寄っていた。
周りから好奇の視線が浴びせられるが、今は無視しておく。
「?何だよ」
「話そっ!」
ぶっきらぼうに聞かれたため、そういう人用に人当たりの良さそうに、口角を上げて目を細め、いつもよりほんの少しだけテンションを下げて、会話がしやすいように話しかける。
「…別に、俺は話したくないし」
が、ツンとそっぽを向いて外に目線を移してそう返された。しかし彼女は驚くでもなく動揺するでもなく、ただ確信した。
間違いない。彼は本当に心で思っていることだけを出している。
少し、彼…夏油傑の事を気に入った。
「何で付き纏うんだよ」
「気になってるから?」
「んだそれ」
それから、覚中はほとんど毎日付け回していた。
どういう偶然か、夏油の家は彼女の家の隣でもあった。
ちなみに母親にその事を話したら「そんな偶然もあるものなのねぇ」と言われた。
まあそんな偶然もありつつ、しょっちゅうちょっかいを掛けていたのだが、彼からの態度はほとんど変わることがなく。むしろ周りからの好奇や怪訝の視線が強くなっている一方だった。
「ね、ねぇ、心音ちゃん、もしかして夏油君みたいなのが好きなの…?」
ある日、そうクラスメートに聞かれて、いやーどうだろうねぇ、と煙に巻いた。
確かに周りの人よりは興味が湧いているが、それは単に今まで見たことの無いタイプの人だからというのが理由で、正確には彼への興味が高いというより周りへの興味が低いから相対的に、と言ったほうが正確なのかもしれない。別に好きとかそういうの以前の問題だった。
「…お前、変わってるな」
「げとー君のほうが変わってる気がする」
ある日、夏油に唐突に言われた。
けどまあ言われてみれば一年くらい、煙たがられても延々と付きまとって、しかもその理由が裏表のないその態度に触れていたかったから、とかいう理由って中々重たいしヤバいな、と思い直す。
「…調子狂うな…」
「?何の?」
「お前みたいなのはそう居なかったってこと。何でこんな突き放しても寄ってくるんだか」
まあ理由なんか聞いても訳わかんねーだろうけど、と付け足して夏油はフイと覚中から外の方に目線を移した。
そして、小学五年生の頃だった。
たまたまいつも一緒に帰る友達が用事で抜けてしまい、一人で帰っていた時。
「お、いたいた」
ふと自分に投げかけられた言葉だと理解して振り向くと、おそらく6年生と思われる体の大きい男子が、4人ほど。
体の大きい男性を見ると、無意識的に少し体が固まった。
「こいつ、ホントに夏油と仲良いわけ?」
「まじまじ。分かんねーよなー、結構人気者だろ?こいつ。何であんなのに絡むんだか」
ゾク、とする。
向けられた感情が、昔と被る。
笑顔が剥がれ落ちそうになって、必死に取り繕って聞く。
「何、ですか?」
「あーいや、ちょっと一緒に来て欲しいんだよねー」
逃げたい。
本能的に察知し、振り向いて走り出す。
が、体がうまく動かない。元々運動が得意な人間でもなかったが、輪をかけて体が動かない。
「おいおい逃げるなよー」
腕を、掴まれる。
怖い。逃げたい。痛い。
フラッシュバックのように記憶が次々と叩き起こされ、完全に笑顔が消える。
相手の動き一つ一つに過剰に反応してしまい、次の瞬間には自分が害されているイメージができてしまう。
「や、めて、お願い、お願い、します、っ」
「おいおいビビってるって」
「怖がらせんなよー」
乱れた息の中で必死に言うも、四人は笑って相手にしない。
そんな時だった。
「おい」
その声には、聞き覚えがあった。
「手離せよ」
でも、載せられた感情は聞いたことがなかった。
「夏油だ」
四人のうち誰かが言った。
四人から発される感情が、帰る途中なのだろう彼に向けられた。感情が、変質した。
「こないだはよくもやってくれた、なぁ!」
四人は、夏油に喧嘩をふっかけてボコボコに負けた6年生達だったらしい。
目的は知らないが、覚中を探していたというのは、彼と繋がりがあったからだと分かった。
殴りかかる6年生達相手に…夏油は、圧勝していた。
三人を一瞬で伸し、道の端っこに折り重ねて山にして、最後の一人をぺいっと捨てるように山の上に投げ捨てた。
「雑魚」
特になにかの感情が動くでもなく、吐き捨てるようにそう言って夏油は覚中の方に来た。
「立てよ」
「…え、」
ポカンとしていると夏油は覚中の腕を掴んで立たせた。
が、覚中は想像以上に強いが痛くないように配慮された夏油の力に、夏油は思っていたよりも軽い覚中の体に、お互いに驚いていた。
「…何で?」
口をついていた。別にこれといった理由があって出したわけでもない言葉に、夏油は相変わらずぶっきらぼうに、でも少しだけ軟化した声色で答えた。
「いつもみたいに変な感じで居てもらわないと、俺が調子狂うから」
それを聞いて、覚中は目を少し大きく開く。
その言葉は、覚中が今までずっと周りから聞いてきていたのと同じような言葉で、それでいて感じていたのとはまた違うもの。
聞き飽きたような、出た言葉が心の言葉が矛盾した言葉だが、
不思議と、おかしかった。
「…ふふ、ふふふ、ふふふふふっ!」
「!?んだよ気色悪い」
口をついて出てくる笑いに対して投げられたその言葉は、いつもと同じ彼の言葉であり。
「ふふ、あ、いや…ふふ、夏油君の方が、変だなって」
「お前に言われたくねー」
眉を少し潜めつつ言うその言葉に、また小さく笑いが漏れる。
ふと、心から笑ったのはいつぶりだろうかと思って…考えないようにしておいた。
別に覚えていても居なくても、これが「私」だと。
次も過去編です。
一応言っておくと作者はハピエン主義者です。
つらいお話書くの辛い…