呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

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こ+さしす

結局その日中には術式の操作はうまく行かず、それから数日かけて、少しずつなんとか制御できるようになっていった。

その過程で、というかこれ半ば領域展開みたいなものだよねぇ…と夏油が頬杖をつきながら漏らすと、リョウイキテンカイって何?と覚中が聞く。

 

「領域展開っていうのは呪術の極致とも言えるものだよ。生得領域…自身の心の中を呪力で再現した空間を作り出すこと。その中では使用した術師の術式は領域内にいる者全てに絶対当たる。それに、使用者の身体能力が急増したりもするから正直使ったら勝ちの必殺技みたいな物だね」

 

「……私そんなやばいことしてたの?」

 

「まぁ心音の術式は殺傷性低いし、術式が垂れ流されてるだけだから正直未完成とすら全く言えないけどね、術式が周りに対して常に発動されてるっていう形だけなら」

本来、領域を展開するにはとんでもない量の呪力を維持しなければならなくなり、その操作難易度も跳ね上がる。が、覚中の場合はただただ術式がばらまかれているだけのため、防ごうと思えば難なく防げるようなそんなレベルだろう。せいぜい不意打ちで術式を使われていた、位だ。

 

「ほぇー…あ、そういえば私、傑の術式の話全く聞いたことないや」

覚中が少し…いや、目をキラキラと輝かせているところを見るとかなり興味津々なのだろう。ズイッと寄って聞くと、夏油は少し苦笑いする。

 

「いや、そこまでいい術式じゃないからあんまり言いたくないんだけど…まあでも、呪術に触れるならいずれ話すか。私の術式は呪霊操術っていって、呪霊を使役する術式なんだ」

と、覚中の目が見開かれる。少し、不自然にも見えたが…

……()()()()()

 

「呪霊って…あの呪霊だよね…?それってめちゃくちゃ強くない?…あ、あれかな?使役するのにめちゃくちゃ苦労するとか…」

 

「あー、まあ確かにそれはあるよ。自分より遥かに強い呪霊とかは弱らせないと厳しいし。…まあ、一番きついのは、使役するためには…その、食べなきゃいけないんだけど」

と、そこまで聞いて覚中の表情がピシッ、と完全に固まった。

 

「食べる、って、その…そのままの意味で?」

 

「うん、そのままの意味で。これがかなり不味くてね…」

 

「まじかぁ…いや味とかの感想はいいけど、それより別のベクトルでキツいなぁ…」

苦笑いしながら覚中は頬をかく。

ちなみに味は「吐瀉物を拭いた雑巾を丸々飲み込むようなもの」らしい。何でそんな妙にリアルな表現するのか。

 

 

そんな話をしながら、今日もまた過ぎていった。

 

 

─────

──

 

結局、夏油と覚中の進路は別れた。

夏油は呪術師になるために東京都立呪術専門高等学校という呪術師の学校へ、そして覚中はそのまま普通の公立の高校へと進学していった。

 

とはいえ、覚中も一応呪力があり、操作能力もある程度身についているようなため呪術師のマネごとのようなことはちょこちょことやっていた。

まあ道すがら目についた4級相当の呪霊を祓ったりする程度だが。

それに、別に夏油との関係が疎遠になったわけではなく、ちょくちょく覚中の所に遊びにも来るし何なら呪術高専の同級生も一緒に連れてくる位だ。

夏油の代の一年生は夏油傑、五条(ごじょう)(さとる)家入(いえいり)硝子(しょうこ)の三人であり、遊びに来るというよりは泊まりに来るといった方が大きい。

 

「…来るのは良いんだけど何で三人ともいつも泊まる気満々で来るの?向こうに寮とかあるんだよね?」

 

「駄目なのかよ?」

 

「いや、まあ良いんだけど」

真っ黒なサングラスをかけた白髪の青年…五条が言うと、覚中は少し肩をすくめつつ戸を開ける。

普段はかなり傲慢な五条も、最初の頃は割と借りてきた猫状態(尚普段と比べての比。普通の人よりはそれでも数段酷い)だったのだが、気を許して問題ないと判断したのか普通に接するようになっていた。

 

「っていうより心配するのはあなたの方よ、覚中さん。年頃の男二人を家に連れ込むなんて中々よ?それもよりによってこのクズ二人」

 

「ちょっと待って、傑も悟さんも何したの?」

逆にお前の目にこの二人はどう見えてるんだという風に家入に聞かれ、いや、普通の人ですけどと答えると大爆笑をかっさらう。

 

「アッハハハ!傑作だね、そりゃ。二人とも高専随一の大問題児だよ。しかもなまじ実力があるし、何気にちゃんとその過程で任務もするから一概にやめろとも言えない一番質悪いタイプの問題児さ」

 

「うるさいなぁ、いいんだよ俺は最強だから」

 

「悟、どちらかといえば私()で、だろう?」

 

「違いないね」

ね?と家入に目を向けられると確かに、と返す。

 

覚中は、三人のある程度の情報は手に入れている。まあ夏油は言うまでもないが…

 

五条悟。

五条家の次期当主であり、無下限呪術という五条家相伝の術式と、六眼という呪力を看破することのできる目を併せ持った数100年に一人の天才。

 

家入硝子。

反転術式という、怪我を治すことのできる術式を人に向けて使うことのできる数少ない呪術師。普通は使えないか、使えても自分にしか使えないのだという。

 

また、その三人も覚中の事は聞いていた。

 

覚中心音。

突然呪力に目覚め、無自覚に術式を扱うことができるようになった一応一般人。

言うならば読心術式、と言える人の心を看破する術式を持っており、最初期は術式を使うために、ではなく術式を使わないように練習をしなければいけなかったとかいうよくわからない者。

術式が使えるにも関わらず呪術師ではなく普通の人として生きることを選んでいる。

 

呪術高専にこれがバレるのは厄介で(というか本人がそっちの道にはあまり進みたくないらしく)、学校の方には秘密にしている。

 

「心音ぇー!飯ー!」

と、部屋で大人しく漫画を読んでいた五条がバーンとクッションに体を投げ出して叫んだ。

 

「おいクズ五条、人の家で何くつろいで家主働かそうとしてんの」

 

「良いよ、硝子さん。来るって聞いていたからもう作ってあるし」

家入が五条の頭を叩く音を聞きつつ、リビングまでは来てねーと声をかけて覚中は台所で作っていたものを温める。

泊まると聞いているときには毎回こうやって夕飯を準備していた。

 

「おー!」

「毎回思うけど覚中さんって料理上手いわよね。モテないの?」

 

「え?傑と心音って付き合ってないの?」

 

「逆に付き合ってると思われてたのかい?」

「付き合ってないよー。小学3年生の時からの同級生だから、だいたい7年前からの幼馴染と言うか」

五条が、ん?と首を傾げて聞くも、当人たちの反応はこれだ。

少し掘り下げてみると、恋人と友人のギリギリのラインをずーっと歩いている感じがあり。

まあ正直五条&家入の意見としては「何でここまで来てこいつら付き合ってないんだろう」なのだが、当人たちには全くその気がないわけだからしょうがない。

 

「まあ心音はともかく傑はかなりのヘタレだしnちょっとまって傑呪霊出すのは聞いてないし無言で笑顔になるのやめて?」

いつものテンションで煽ろうとして準一級相当の呪霊を出されるのは聞いていないと言うが、それでも普通におちゃらけていられる五条は流石というべきなのか。

 

「はいはいそこのクズ二人、冷めるから早く食べちゃうわよ」

そんなワチャワチャとした騒がしさが大体週に一回。

ゲームをしたり駄弁ったり映画を見たり、やることは日によって違うものの、ある意味覚中の家の名物みたいになっていた。

 

 

──《閑話》──

覚中の家に行く前…

 

「…お前ら何か外泊届け多くないか?毎週出されてる気がするんだが」

五条、夏油、家入の三人から外泊届けを出された、彼らの担任である夜蛾(やが)正道(まさみち)は何回目だ、と言いながら目の前に立っている三人を見る。

 

「気のせいじゃないー?なー傑、硝子」

 

「そうですよ」

「そうね」

五条に振られると、口を揃えて答える二人。

と、夜蛾ははぁ、と小さくため息をこぼしながら答える。

 

「……まあ、硝子も一緒なら馬鹿をやらかすことはないか」

 

「「(俺(私)達の信頼うっす…)」」

 

「考えてることが顔に丸出しだぞ、二人。硝子はお前たちと比べると圧倒的に常識人だからな、信頼の寄せ方は違うだろ」

 

「まあ、流石に外で無闇矢鱈と人に術式使うようなバカはしないでしょ?クズではあるけど」

 

「「(こいつは後で絶対潰す)」」

 

とのことがあったり。

 

その結果、覚中の家にあったWii Partyで家入vs五条&夏油のファイトが行われ、途中で家入が「ふざけてんのかぁ!」とさじを投げ、呼ばれた覚中が追加参加して形勢逆転、五条&夏油チームがこてんぱんにされるという事もあり。

 

「…心音、術式使ってない?」

 

「……キノセイダヨ」

 

「使ってるねェ!!」

そんな不正があったりなかったり。

 

また、その後お風呂に入って寝ようかとなった直後に五条が枕投げを提案。

結果…

 

「ねえこれ勝ち目なくない?」

四つ巴でやったのだが、当然のごとく五条の一人勝ちである。

まあ、現実世界の勝負で行けば無下限呪術を持つ五条に勝るものなしだろう。枕はそもそも当たらず、逆になんかとんでもない速度で射出された枕が家入の後頭部にクリーンヒットしたり。

 

「まあね、俺最強だし」

そんなことを口走ってしまったがために次の任務で家入に治療をめちゃくちゃ渋られたりしたのは、また別の話。

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