あと吉野凪さんの口調が迷子になってます。敬語使うのかなあの人…
「あ、悠仁君」
「ただいまっす、覚中さん」
えらく帰りが遅いなぁ、と思っていた所にちょうど帰ってきた虎杖。何やら表情がほくほくしている。
「なにか良いことあった?」
「あー、まあそうっすね」
聞いてみると、映画鑑賞好き同士の友人ができた、とのこと。
映画かぁ、と思う。覚中はあまり映画が得意でない。いや映画に得意も不得意もないだろうが、今まで映画館に行ったわずか三回のうち、まともに全部見て帰ってこれた事は一度もない。
いや言い方が悪いが、映画館に行くと毎回の如く体調に不調が出て途中退出する羽目になるのだ。
頭痛、貧血、腹痛で三回とも最後まで見れていない。多分体にあってないんだろうな、と思っている。流石にそんなナニカが憑いてるわけではあるまいし。
「良かったね……ん?」
まあ何でも、同じ趣味を共有できる友だちができたのは良いことだねと思って言おうとして、ふと気付いた。
僅かな残穢、虎杖の呪力とは違う呪力が纏わりついていた。
「…何処かで呪物とか触った?」
「へっ?あー、呪霊には」
「呪霊って…何級相当?」
そしてどこで…と思っていると、どうやら吉野順平が呪術師が見極めるために使った四級呪霊を、とのこと。まあそれ以前に少し一悶着あったようだが、そこはどうでもいい。
…それだけでここまで残穢はつかない。吉野順平という少年も、呪術師になりたての感じらしくその時点でここまでの呪力を纏うわけがない。
「…虎杖君、その友達の家何処か案内できる?」
「え、まあできますけど」
「案内して」
サッ、と嫌な予感が胸中を満たした。
昔から、覚中の直感はよく当たる。勘違いや小さな事なら別にそれでいいのだ、謝れば良いし言い訳もできる。
だが、大きな事は本当に大事にならないと気付かない。そして大事になってしまうともう取り返しがつかなくなってしまうこともある。
駐車場に着いて少し暗い中ヘルメットを被り、虎杖にも被せて後ろに乗るように促す。
指示通り進んでいくと、一軒家の前に着いた。
「っ…!」
「覚中さん?」
感じた、呪力。
しかも数がそれなりに多いようだ。
「…待ってて。合図したら入ってきて良いから」
ドアのチャイムを鳴らす。…返事がない。
ドアを叩く。…返事はない。
できるだけ大きな声で読んでみる。…反応が、あった。
小さな声だったが、ドアの隙間から侵入した覚中の呪力はそれをしっかりと拾い取った。
ドアノブを回してみると、鍵がかかっていなかったようで簡単に開いた。嫌な予感が倍増して、お邪魔します!とできるだけ大きな声で言って入る。
…居間で見つけたのは、大きな呪霊の塊と、その前で尻餅をつき、動けなくなっている一人の女性。
呪霊は大きく口を開け…
「忌忌」
寸前で術式を発動、呪霊を大きく仰け反らせて女性を救助する。
「え、だ、誰ですか、?」
「すみません、勝手にお邪魔して。積もる話は色々ありますが、少し後に回させてください」
周りを見回す。暗くて見づらいが、呪霊は覚中の
「…手早く」
等級はせいぜい二、三級。今の覚中の敵ではない。
呪力を操作し、蜘蛛の巣のように周りに広げる。そして…
「忌忌、祓除」
その瞬間、周囲の呪霊が
その間に、机の端に置かれた呪力の塊を回収しておく。
「よし。良いよー」
と、中から覚中が合図をすると虎杖が入ってきた。
「あ、こんばんわっす」
「ん?虎杖、君?」
どうやら面識はあるらしく。まあさっきまでここに居たわけだから当たり前といえば当たり前なのだが、顔見知りがいると人の緊張は解けやすい。
「申し遅れました。虎杖悠仁君の普通教科担任、覚中心音といいます」
「え、先生?」
「はい。…さて、色々話すことはあるんですが…その前に、ちょっと電気つけてもらってもいいですか?一つだけ確認したいことがあるので」
はぁ、と彼女…
「…これ、見えますか?」
「は、はい…なんでしょうか?それは…」
と、あちゃー、と覚中は片手で顔を覆う。
彼女は、さっきののせいで呪霊が見えるようになっていたのだ。呪力はそこまで無いため呪術師と言うわけでもなかろうが、吉野順平という術師の母親ということもあり呪術師の才能はあったのだろう。
呪力を込めてペペッと片手間に祓いながら覚中は彼女に言う。
「…これから話すことは内密にお願いします。これは、呪霊と呼ばれるものです。普通の人にはそう見えるものではありません」
「えっ、覚中さんそれ話していいんですか?」
基本、一般人には呪術関連のことは伏せられる。その事を知っていた虎杖は覚中に聞くと、覚中はあぁ、と返す。
「もう既に呪力を持っちゃってるからね。呪霊も術式も見えるようになってる人に秘匿は難しいんだよ。だからそういう人には内密に、っていうことで教えることになってるの。人によっては窓になったりもするからね」
はえー…と虎杖がなっている間にある程度の概要を覚中は説明する。
「私達は呪術師と言われる者です。…ええ、悠仁君も同じく、こういった呪霊を祓うことを生業としています」
呪術師とは何なのか、から何故呪霊が見えるようになったのか、呪力とは、等を色々と話した。
そして。
「現在吉野さんには二つ選択肢があります。一つは、今まで通りに生活をする事です。その場合、呪霊や呪術に関する記憶は消させていただくことになります。もしくは、窓、という呪霊を発見した場合呪術高専に連絡をして頂く仕事を担ってもらう事になります」
「その…窓というのは他に何か特別なことはあったりしますか?」
「呪霊や呪術のことを秘匿していただく必要があります。が、それ以外は特には。普通に生活をする中で呪霊を見つけ次第連絡をする、といった感じで結構です。…あ、報酬も一応出ます」
と、彼女は少し悩んだ素振りを見せた。
まあさっきの今で、急に色々話をされても困るだろう。
「話はまた今度にしていただいても構いません。急な事で混乱も大きいでしょう」
「えぇ…そうしてもらいます」
そういう事で、連絡先だけ渡して一旦その日の話はそういう感じに纏め、高専へと戻っていった。
…こっそりと家の中を探知し、彼女の息子…吉野順平の存在を確認して。
「(呪力の操作能力もそれなりに高いと思われる、と…お母さんと話した感じ、彼女は彼の呪術の事は知らなそうだったし、呪力が発現したのもここの頃かな?)」
バイクを走らせながら覚中は考える。
可能性として、もし彼の後ろに特級呪霊がついていたとするなら。
もしかしたら、最悪も考えうるのかも知れないと。
「(…策を立てておこう。手の届く範囲位は、助けたい)」
虎杖を高専まで送り届けたあと、また一人で引き返していく覚中。
先程と変わらない道を再び通り、吉野家の前にバイクを止めて