呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

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い、いつの間にかお気に入り数が700…UAさんも40000越え……

本当にありがとうございます。


醜悪

「なるほどな…フンッ!」

 

「へっ?」

真人という人のこと、悪い呪術師が順平の家の周りをうろついていること、危害を加えられる可能性が高いこと、そういう事をあらかた聞き終わった虎杖は、思いっきり自分の顔を殴りつけた。

いきなりすぎる奇行に、順平から少し抜けた声が出た。

 

「いや、なんか何も知らずに普通にぶん殴っちまったからさ。人並み以上には力あると思ってっから、まあ禊というか」

 

「え、えぇ…?」

少し困惑する順平をよそに、虎杖は話と考えを進めていく。

 

「にしても、真人…真人か…」

どっかで聞いたことあるはずなんだよなぁ…と首をひねる。

 

「虎杖君も真人さんの事知ってるの?」

 

「いや、よくある名前っぽいから気のせいかも。でも最近聞いた気がするんだよなぁ…」

何だったかなぁ…と頭をひねる虎杖に、ふと数日前の記憶が蘇ってきた。覚中の声だ。

 

『漏醐、真人、陀艮、花御、荘士…呪霊と呪詛師が組んでる訳ね』

 

「…!」

そして、七海が戦った、人形のツギハギ呪霊。

推定等級最高の、特級呪霊。

 

「まさか…!」

咄嗟に腰から携帯電話を抜き取り覚中の電話番号に電話をかける。その瞬間。

 

「初めましてだね、宿儺の器」

その声と同時に、虎杖は伸びてきた異形の腕に絡め取られ、壁に叩きつけられた。同時に携帯が巻き込まれてへし折られる。

 

「っ…!お前は…順平!逃げろ!」

己の身よりも優先したのは順平の身。だが、突然の状況に順平は混乱していた。

 

「ま、真人さん、虎杖君はあいつらとは違うんだ、…虎杖君も落ち着いて、真人さんは悪い人じゃ…」

その言葉を言い終わる前に、真人は順平の肩に触れ、気安く話しかける。

 

「順平はさ、まあ頭良いんだろうね。でもね、熟慮は時に短慮以上の愚行を招くものさ。君ってその典型!」

何を言って…と思った。そんな時、虎杖が再び吼えた。

 

「お前…順平から離れろ!順平も逃げろ!そいつはッ…!」

が、真人はガッチリと順平の肩を掴んで離さない。

ささやくように彼は続けた。

 

「順平は、順平がバカにしてる人間の…その次くらいには馬鹿だから。だから、死ぬんだよ」

ゆっくりと真人の呪力が順平の身に流れていった。

その時、順平は理解した。誰が敵で、誰が味方だったのか。

眼の前にいる()()()こそが諸悪の根源だと。

 

 

───無為転変

 

 

「…?」

いつもと何ら変わらない動作で真人は術式…無為転変を行使した。何の違いもない。

魂の形に触れ、変形させることで肉体をも変形させて人間を改造人間に仕立て上げて操る、いわゆる初見殺し、即死の術式。

だが、目の前の少年は?

 

何ら変化していない。

 

そこで、真人は自分が順平に触れていないことに気がついた。しっかり掴んでいたはずの自分の腕が自分の意識から外れて、いつの間にか離れていたことにすら気付かなかった。

そして、その隙は拘束から脱した虎杖にとってはあまりにも大きなチャンスだった。

 

「らぁァッ!」

ものすごくきれいに左ストレートが真人の顔面を襲った。確かな手応えに虎杖はよし、と体制を低く、構え直した。

その一方で真人は大きく仰け反りながら混乱していた。

無為転変を使おうとした時に触れていなかったのもそうだが、それより魂を誰よりも知覚しているはずの彼の体には基本ダメージが通らないはずなのだ。

しかし、その攻撃はまごうと無く彼に刺さり、鼻血を出させることに至っていた。

 

「真人、さん…今、何を…!」

その中でもう一人、一人震えているのは順平だ。

その方を見て、クククッ、と真人は小さく笑い、ゲラゲラと大声で笑い始めた。

 

「そうさ!騙してたのさずっと!あぁ滑稽だったなぁ、ずっと自分が一番賢いと思い込んでたあの順平の顔!」

 

っ!と順平の顔が歪む。同時に、虎杖の顔にも憤怒が浮かぶ。

 

「真人さん…いや、真人!」

 

「「お前を、殺す!」」

 

「祓うの間違いだろぉ?お二人と…も!」

その瞬間真人の右腕が鋭い鉤爪の着いた鎖に変化し、それらが縦横無尽に踊って二人を襲う。が、

 

「澱月!」

順平の式神、澱月が体を膨らませてそれらを受け止める。できた隙に虎杖が突貫するとそのサイドから澱月の触手の援護が入る。

今の澱月に籠められた毒は体育館に散布したり伊藤に食らわせたものとはまた別次元、苦しめることが目的ではなく、ただただ殺すことに特化した濃密な呪毒。

しかし、

 

「効かねぇんだよそんなの!」

真人は澱月の触手を避けようともせず、虎杖の攻撃のみに注意する。

そして、廊下の中で真人は左腕をハンマーのように変化させる。

 

「そォーら!」

ぶん!と振りかぶられたハンマーをバク転で躱すと、隣で澱月が掴んでいる鎖が変化、次々とギザギザとした刃に変化して鋸のようになり、それが澱月を振り払って振り回される。

 

「うぉあっと!」

狭い通路が災いして躱しづらく、体制を崩しながらそれを紙一重で躱したその先に、振りかぶられた根棒が。

 

「お前は落ちてなよ!虎杖悠仁!」

回避しきれずにそれが当たる寸前、またハンマーの動きがピタリと止まる。

 

「…!?」

 

「虎杖君!乗って!」

と、順平が虎杖を引っ張って澱月に乗せ、校庭の方に飛んでいく。

 

「ククッ、面白いことを…ん?」

と、校庭の方を見ながら呟く真人の後ろに、人影が。

 

「お前も行きなよ」

 

「へ?」

その瞬間。真人の背中に強い衝撃が走り、校庭に身を投げ出された。視界に一瞬赤い光が見えたがそれよりも、またダメージが入った事に動揺を隠せない。

その一方でその隙を見逃すほど二人は甘くない。

 

「行くぞ!」

「うん!」

二人は連携して真人に迫っていく。

しかし真人もやわではない。

無為転変を行使して自分の体を変形させながら考える。

 

順平の方はさほど警戒するほどではない。とするなら、やはり警戒するのは宿儺の器、虎杖悠仁。

あと、気配もなしに後ろから急に現れることができ、かつ自分にダメージを負わせられたあの何者か。

まずは虎杖悠仁に無為転変を使って人間やめさせて、順平と戦わせるか!と結論をつけ、虎杖を見据えて手を伸ばす。

身体を捩って避けられるが、そこは手数の多さが強みの無為転変。羽を生やして追尾して虎杖の体をしっかりと掴み、腹から棘を射出する。

回避不能の攻撃に、虎杖の腹が貫かれる。

 

「ほらほら、早く宿儺に代わりなよ」

そうささやくように呟いて、真人は虎杖に無為転変を行使する。

しかし、虎杖悠仁の魂に触れるということは、同時に()の魂に触れるということでもある。

一つ、大きな拍動が真人の体を襲った。

 

真人にとって他人の魂とは自分が操ることのできる、()()()()()

だが、次の瞬間には真人は()…両面宿儺の魂の領域である生得領域に引きずり込まれていた。

 

『俺の魂に触れるか…』

怪しく輝く双眸が真人を射抜いていた。

睨みつけながら宿儺は鋭く、重い口調で言い放つ。

 

『分を弁えろ、痴れ者が』

威圧感だけで自分の体が粉々に切り刻まれるような感覚に襲われた真人は、その言葉に反応すらできなかった。

そんな彼を見て宿儺はフン、と鼻を鳴らして興味を失ったかのように目をそらす。

 

『二度は無いぞ』

それだけ言い残し、宿儺は真人を生得領域から叩き出した。

そして、その隙に一番注意すべきだった「もう一人」が存在していた。

校舎の方から、異様な雰囲気が漂ってきて…それが爆発した。

 

「っ!?」

「な、んだ…!?」

「何だ、これ…!?」

嵐。

呪力が暴れ、暴風域となった大嵐が顕現した。

動揺して動きの止まった三人をよそに、()()は校舎の方から降ってきた。

真人を叩き落とし、虎杖を抱えて地面に下ろす。

 

「隙あり」

ズドン!と彼女は土煙を上げ、視界を潰した上で真人に殴りかかる。

彼女の()には光は必要ない。

 

「ふ、っ!」

バチィッ!と激しい音を上げて真人の両腕が宙を舞った。そして次の瞬間には足も消えていた。

その衝撃で空圧が生まれ、砂煙が一気に晴れ渡った。

 

「さ、覚中さん!?」

 

「悠仁君。ごめん、本来ならもうちょっと様子を見て行こうと思ったんだけど、限界」

言いながら覚中は虎杖と順平、二人に反転術式を施していく。

情報を集めるために夜見で真人の頭の中を覗いていた彼女だったが、情報はあらかた集め終わったため参戦したのだ。

当然の如く縛りを解放して。

 

「お前…」

 

「二人共、聞いて。相手は魂に触れてその形を変えて肉体の形も操れる。触られないように気をつけて。その上自分の魂を知覚してるからダメージも基本入らない」

真人の声を無視して話し始める覚中に対して、呪力で再生したのか、腕が変化した鎖鉤爪が顔に向かって一直線に飛んでくるが覚中は一瞥して首をひねって躱し、逆にまっすぐ、莫大な呪力を放出して吹き飛ばす。

 

「あれみたいに、衝撃は与えられてもダメージは通らないんだ」

 

「えっ!?じゃあ何で俺は…」

 

「多分宿儺がいるからだね、魂だけの存在は自分のことを理解してるのと同じだろうから」

順平は何の話をしているのか理解できないと言った風のため、その話も後でするよ、言って話を続ける。

 

「それで、私が真人の魂を知覚できなくするからその間に攻撃して。それで祓えるはず」

 

「!覚中さんそんな事できるんすか?」

 

「できる。まあ常に、は無理だと思うから…精々2分くらいかな」

と、真人が復帰してきた。と、同時に。

 

「…どういう状況ですか」

 

「あ!ナナミン!」

 

「七海君。…ななみん?」

一級術師、七海建人現着。呼び方に戸惑った者約一名。まあ、これでようやくコマが全て揃った。

 

「…覚中さん、何故かあの呪霊、普通にダメージを食らっている気がするのですが」

 

「食らうようにして叩いた。あとは悠仁君の攻撃でね。怪我人は体育館で倒れてる人たちで全員、死者は出てないよ」

 

「了解です。…虎杖君、次からは君がこういった伝達もしなければなりません、覚えておくように」

 

「お、おっす!」

そこまで言って、七海と覚中の声が被った。

 

「「ここで、確実に祓います(祓うよ)」」

 

「おう!」

「はい!」

と、真人は流石に不利と感じたのか口から改造人間のストックをボトボトといくつか出し、形を変化させる。

 

「桃髪のガキを殺せ。あと…」

更に一つ、縮小されているはずなのに少し大きめの塊を吐き出して大人の3倍ほどもの大きさの改造人間を生成する。

 

「お前の相手はコイツだよ、女」

自分にダメージを入れられる存在は多くない。とりあえず二人を遠ざけておけば残りの二人はそこまで考慮する必要もないと考えた真人は巨大な改造人間を覚中の方に向かわせた。

 

「…悪趣味」

ヒュッと後ろに飛び、真人へ意識も割きながら改造人間へと対峙する。

順平は七海をメインディーラーとしてその補助の動きをすることに。

決着の足音が近づいていた。

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