呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

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前回から休みすぎですね…はい。
この頃ホントに時間がないんです…今更なんですけど作者受験生なんです…


邂逅

「…これ呪霊祓うレースだよね?」

 

「そうだよ。みんなゲームに興味なさすぎだよねー」

開幕早々に全員が全員、相手を見つけて戦うことにしている状態を見て覚中が溢すと五条も笑いながら答える。

まあそれもそれで良いんじゃない?と言っていると、戦局に動きが出てきたようだ。

 

「ふふ、面白い子じゃないか、さっさと二級にでも上げてやればいいものを」

京都校生の水色の髪の生徒、三輪(みわ) (かすみ)と戦っていた真希を見て、冥冥が小さく笑いながら言う。

真希はフィジカルギフテッドという天与呪縛(てんよじゅばく)を与えられており、生まれつき呪力が削られている代わりに身体能力が飛躍的に向上している。

呪力が少ないため呪霊相手にはあまり向かないが、対人戦、特に接近戦においては群を抜いて目立つ能力を持っている。

 

「僕もそう思ってるんだけどさ、禪院家の奴らが邪魔してるくさいんだよねー。いい加減認めれば良いものを」

 

「金以外のしがらみは理解できないな」

ふふふ、と不敵に笑いながら冥冥は言う。

と、開始から何度目か、虎杖周辺の映像が乱れて落ちる。

 

「…ねぇ冥さん、さっきから悠仁周りの映像よく切れるね」

「まあね。ずっと視覚共有するのも疲れるし、動物は気まぐれだしね」

「本当かなぁ?…ぶっちゃけ冥さんってどっち側?」

「どっち側?私は常に金の味方さ、金に変えられないものに価値はないからね、なにせ金に変えられないんだから」

この映像は冥冥の術式、黒鳥操術の応用で繋がれている。そのため、どのタイミングでどの映像を消す、もしくは入れるかは冥冥の裁量加減で決められるのだ。

 

「はぁ全く、いくら積んだんだか」

肩をすくめて言う五条の隣で覚中は画面をじっと見る。

 

主に見るのは伏黒周辺と消えたり付いたりしている虎杖周辺の映像。

 

「…うん、恵くんもちゃんと()()()()ね」

 

「おーホントだ。うわ、よく避けられたねあれ」

陰陽師のような格好の京都校男子生徒、加茂(かも) 憲紀(のりとし)と交戦する伏黒は、映像の奥で加茂の高速刺突する血液を半歩ズレて躱し、後隙を狙って鵺や蝦蟇(がま)と脱兎の複合式神、不知井底(せいていしらず)と鵺で拘束を狙っていた。

加茂も加茂で輸血パックを切り裂いて吹き出させた血液で鵺を拘束したり、身体能力を上昇させたりしているがその動きを伏黒は視て躱していた。

…と、伏黒は鵺を解除して攻撃を仕掛けると見せかけて後ろから大蛇で襲撃、自分の手を読ませないようにしながらカウンターを叩き込もうとする。

が、ギリギリ躱された…と思った瞬間、式神が溶けるように全て消え、代わりに巨大な象の形の式神が顕現した。

 

「戦い方も多彩になってる…でも、手札の多さの強みはもうちょっと活かせるかな?」

 

「へぇ、あの子心音が教えてるの?」

 

「いえ、聞かれたことに答えて特訓してるだけです。相手の動きの先を読む練習を」

 

「あーあれかぁ…」

少し前に覚中と歌姫は手合わせをしていたのだが、その際に覚中は歌姫の攻撃を掠らせることすら無く圧勝していたのだ。しかも術式を使わずにやっていたと聞いて頭を抱えていた。

ちなみに当人曰く「庵先輩はサポートの術式だからこっちだけ使うのは良くないかなって…」だそう。閑話休題。

その時のことを思い出して、あれ頼んだら教えてくれないかな…とか考えていた。

…アクシデントがなければ。

 

「歌姫、心音相手にしても手も足も出ずにこてんぱんにされてたもんなー。降格する?二級位まで一回落ちとく?」

 

「…っ!!」

そう。

その決着をあろうことが五条に見られていたのである。

そして五条はまた良いいじりネタができたと言わんばかりにニマニマとしていた。

 

「い、庵先輩落ち着いて下さい…悟も…!」

そんな事もあってまた喧嘩が勃発しそうになっていた。

と、その時だ。

 

「!!」

強烈な呪力。

同時にボッ、と試合の勝敗を決める呪符が赤く燃え上がる。

 

「何、これ…全部赤…!?」

 

「グレートティーチャー五条の生徒が頑張ったんでしょ…と言いたいところだけど、違うね。外に出るよ、全員向かおう」

 

「ああ、俺は天元様のところへ向かう。学巌寺学長について行け」

さっきまでおちゃらけていた五条が雰囲気を振り払って真面目な声で声をかける。

それに答えるように後ろの方で夜蛾も席を立った。

それに続いて、情報共有のための冥冥を除いた四名が建物から出て駆けていく。と…

 

「帳!?」

交流会を行っている場所を覆うほどの帳が降り始めていた。

 

「五条!あんただけでも帳が降りきる前に行け!」

蒼を使った瞬間移動を使える五条ならまだ間に合うと判断した歌姫が叫ぶが、五条はそれに否定の意を返す。

 

「恐らく、視覚情報より術式効果の方を優先されてます。もう帳自体は降りきってると見たほうが良いかと」

 

「っ!」

覚中が説明すると歌姫は歯噛みする。

そんな事をしていると帳の場所までたどり着いた。

 

「ま、降りちゃった所で壊せばいいだけだし…」

そう言いながら五条が帳に触れたその瞬間、バチィッ!と音を立てて彼の手が弾かれる。

 

「…ちょっと!何であんたが入れなくて私達が入れるわけ…!?」

が、歌姫の腕はそこに何もないかのように帳を貫通していた。それを見て五条は一瞬考える。

 

「なるほど、これは五条悟を弾く代わりにそれ以外全てが出入り可能な帳だね。皆先に行ってて、相手が何考えてるかはわかんないけど…誰か一人でも死んだら、僕らの負けだ」

その言葉に一瞬怯んだが、歌姫と学巌寺は帳を抜ける。覚中も抜けようとしたが、後ろから五条に呼びかけられた。

 

「心音、もしかしたら()()()()みたいに特級クラスの呪霊が投げ込まれてるかも知れない、そうなるとおじいちゃんや弱々歌姫じゃ荷が重い。頼むよ」

「頼まれなくとも。というか庵先輩も学巌寺学長もそこまで弱くないからね?」

苦言を呈しながら彼女も帳を抜ける。と…

 

「っ!なんて濃い呪力…!」

 

「不味いですね…これ、特級クラスの呪霊がいます」

 

「特級クラス!?」

予感的中か、今度は誰だよ…と思いながら覚中は言いつつ術式範囲を広げて探知をする。

漏醐、真人の気配とはまた違う気配。となると陀艮とやらか花御とやらか。はたまた新手の五体目の特級か。

そんな事を考えていると…

 

「おいおいおい、五条悟いねーじゃん!」

 

「…?」

目の辺りを黒く塗った、斧を持った男が大股で歩いてきていた。

 

「歌姫、覚中、先に行け。儂に任せろ」

 

「「!了解」」

 

「待て待て!せめて女を殺らせろ!老いぼれのスカスカの皮と骨じゃ何も作れねぇよ!」

「スカスカかどうかは…儂を殺して確かめろ」

と、学巌寺は上着の和服を脱ぎ、エレキギターを装備して見た目にそぐわないロックな衣装になった。

それを横目に二人は走って進んでいく。と…

 

「あー!来た来たー!」

金髪をサイドテールにした呪詛師と思われる男がいた。

 

「!…こっちも呪詛師…庵先輩、先に行って下さい」

 

「心配はないけど…大丈夫?」

口ではそう言っても少し心配そうに言う歌姫に、小さく笑って覚中は答える。

 

「30秒で片を付けます。庵先輩は生徒達の安全を優先させて下さい!」

 

「行かせるわけ無いじゃん!」

「行かせるんだよ、ねっ!」

柄の部分が手の形になっている剣を振り回してきた呪詛師に、覚中は剣を蹴り飛ばして隙を作らせて歌姫を通させる。

 

「…変わった形の剣ですね」

 

「あ、これ?いいでしょ、柔造(じゅうぞう)が作ってくれたんだよ、さっき会ったでしょ?お前は非力だから刀からも握ってもらえーって」

まるでお気に入りのおもちゃを自慢するように言う男。その刀の柄の手の部分を見てみると、手の形をした柄が彼の手を握り返していた。その言葉に少し疑問を抱き、気づいたように覚中は少し目を見開く。

 

「まさか…人間から()()()呪具…!?」

 

「せいかーい!」

答えながら男はその刀を覚中に向けて振り回してきた。

が、覚中に当たることはなくすぐさまカウンターを入れられる。

 

「いってー、まじで?」

 

「ふっ…!」

モロに腹部に入った蹴りで怯んだのを見て続けて突貫、顎と腕を蹴り飛ばして無理やり刀を剥がし、首元に手刀を入れた。

かふっ、と息を吐く音を立てて男は倒れたため適当にそこにあった灯籠に縛りつけておき、周囲を索敵する。

 

「…!向こうに二人いる」

呪力の感じからして…野薔薇さんと真依さんか、と当たりをつけてそっちの方に走る。

と、木々が途切れて少し開けた場所に二人がいた。

 

「二人共、大丈夫?」

 

「「覚中さん!」」

戦闘態勢なのを見るに、恐らくさっきまでも交戦していたのだろう。

 

「大丈夫そうで良かった。…さて、」

と、周囲の木々がガサガサと動く。

 

「チッ、まだいんのかよ…!」

「粗雑な言葉遣いねぇ、あなたの方が猿なんじゃない?」

「ああ゙!?」

 

「喧嘩しない。しかもこのタイミング…」

仲が悪そうな二人を宥めつつ、思考を巡らせる。

競技用に放った呪霊は全て祓われている。となると、自然発生した呪霊か外部から持ち込まれた呪霊だろう。

 

「…あいつの仕業か。つくづく腹が立つ…」

ズォ、と覚中の呪力が膨れ上がる。

平常時の10%から平常戦闘時限界の25%まで。

たった四半分の呪力でも、そこにいた二人に目を剥かせるには充分だった。覚中の目が細く、鋭く光る。

 

「…来なよ」

その言葉と同時に、10を超える呪霊が飛び出してきた。高いものだと準一級も混ざっている。

不味い、と判断したのか釘崎と真依が臨戦態勢を取るが、覚中に制される。代わりに彼女は怯むこと無く右腕を上に掲げ…

 

「二人共伏せてて。…悟、技借りるよ…呪力収束、疑似〝赫〟!」

掲げた右手の上に呪力の球が現れ、それが破裂したかと思うと周囲の呪霊を尽く粉砕し、祓除した。

 

「…は?」

 

「…呪力消費ヤバいな…もう二度と使わないようにしよ」

六眼あっての無下限呪術だし、と呟いて覚中はフルフルと手を払う。

その隣で、「これは確かに怒らせちゃだめだわ…」と声が聞こえた気がした。




疑似〝赫〟
呪力を無理矢理一箇所の()に圧縮した後に操作を手放して解放、擬似的に無下限呪術の赫を再現した技。
出オチなので多分もう二度と出てきません。
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