一応全部書けはしたんですけど…なんかうまく行ってない気も…
呪詛
「さっ、」
「「覚中さんが呪詛師認定された!?」」
渋谷事変の翌日。
五条と夏油から聞かされた事に、一年生たちが驚愕を顕にする。
「な、何で…!」
「京都校の与幸吉に対しての二重スパイ要請、渋谷事変での広域領域の展開に一般人を巻き込んだことを理由にして一般人にも呪術師にも害をなし、及び一般人に呪術を広めようとしたと判断されたんだ」
ギリ、と夏油は奥歯を噛み締めながら言う。
「でっでもそれがなかったら五条先生も夏油先生も…」
「上の奴等はそんなの関係ないよ。自分にとって害があるか利があるか。その二択でしかものを考えられない鶏共だ」
五条も怒りを隠しきれずに言う。
確かにあれがなければ渋谷事変はとんでもなく地獄絵図となっていただろう。
頼みの特級二人は瀕死、及び封印。呪霊が渋谷にばらまかれ、術師にも一般人にも大きな被害が出ただろう。
しかしそれを防いだというのは予測論。もしかしたらこうなるかも、ということを防いだだけに留まり、更にその場での判断が呪術界への妨害に当たると結論付けられたのだ。
「でも覚中さんはそんな害をなすようなこと…」
「それがね、あるんだよ」
伏黒の言葉に対して、言葉を噛みしめるように夏油は言う。
曰く、覚中の術式、読心操術はほとんど必中の術式でその効果も強力。仮に一度目の前に出てしまえば考えていることが丸裸にされてしまう。
上層部はそれを危惧していた。
何せ心の中の利己的な考えやら
そのため絶対に彼女を呼び出すことはせず、用がある場合も全て五条や夏油を介して連絡を行っていた。
つまり、正直なところを言えば上層部にとって覚中は少々目の上のたんこぶだったのだ。
「そんな…!」
「…何が面倒って言い訳ができない。現時点ではあの領域が心音の奥の手で、かつ非術師にとって害をなすようなものじゃない物なのは私達は知っている。だがあれを使えるのは心音しかいないから、当人がここにいない以上証明ができない。理由付けも、屁理屈だけど筋は通ってるから向こうは嬉々として押し付けてきたよ」
ギリギリと声を押し漏らすように夏油が言う。
五条、夏油が何とか誤魔化そうとはしたようだが、こればかりはできなかったらしい。
「…やっぱり
「あの時…ああ、心音が強制的に術師に引き入れられた時かい」
「そ」
殺意にも近しい怒りを滲ませ、五条が言う。
「んなもん、認めれるわけねえじゃねえか…」
わなわなと虎杖が腕を震わせる。
伏黒や釘崎、二年生組も同意見のようだ。
が、その様子を見て五条と夏油は珍しく真面目な顔をしてそこにいる学生たちに言う。
「…それを聞けてよかった。こんなもの、僕らも通す気は更々無い。早急に心音を見つけ出して御三家…多分禪院家辺りから派遣されるであろう術師から保護、それから処刑処分を取り下げさせる」
「無理強いはしないよ、元よりこんな事になったのは私たちが下手をこいたからだ。自分の尻くらい自分で拭く。でも…協力してくれるとありがたい、それくらいにしておくよ」
「……五条先生、夏油先生」
虎杖が口を開いた。
「俺は、行くよ」
その言葉に、その場の全員が賛同する。
一年生だけでなく、二年たちも含めて、だ。
「…ありがとう」
心から出た言葉だった。
「無論、弟が行くなら俺も行くぞ」
「んでお前はなんでここにいるんだよ」
ついでに脹相も賛同していた。
その頃─────
「……」
一言も発さずに覚中は渋谷の中を歩き続けていた。
呪霊は領域反転によって完全に消失しているため残穢ごと消滅しきってしまっているが、
「………来たか」
ザッ、と音がした。
同時に背後から斬撃が飛んでくる。が、特に意にも介さず半身動いてそれを避ける。
荒廃した渋谷の一角に集まるは、50を超える呪術師の群れ。
「覚中心音だな?」
格好からして、おおよそ呪術界御三家の一つ、禪院家だと判断する。
覚中は、答えない。答える必要もないと考える。
「貴様は先程特級呪詛師として認定され、処刑対象とされている」
先頭の男がなにか言っているが、彼女は気にしない。知っていることを長々と言われた所で退屈なだけだ。
踵を返して歩いていこうとする。と、その進行方向にも30人ほどの術師の群れ。
「……囲んでた、ってわけか」
さして興味も無さげに、それだけ呟く。
当然合図もなく、術師の群れが迫ってくる。
斬撃、打撃、術式…彼女に対するいくつもの呪いが四方八方から彼女を襲う───
「あーあ、」
が。次の瞬間には、彼女の目の前にいた少ない方の術師の群れが全員倒れ伏していた。
「…は?」
意味不明な状況に、運良く逃れたのか覚中が当てなかったのか、どちらにせよ残ったもう片方の群れの誰かから発された声が後ろから聞こえてきた。
じろ、と目線を後方に移す。
「まあこうなるだろうとは思ってたしね。この程度で倒せると思われてたのは心外だけど」
覚中とて呪詛師認定されるのは覚悟の上だったが、特級にまで上げられるとは思っていなかった。
しかしそれはそれとして特級は単独での国家転覆が可能な術師につけられる階級。それをこの程度で倒せると思われては困る。
「何や、けったいな術式やなぁ?」
ふと聞こえてきたのは関西弁。五条から聞いたことはあった、禪院家の次期当主。
「生意気な真似しよって、アマやったら男の三歩後ろ歩かんかい」
「…興味ない」
さっ、と目を向けると、目が淡く
自分に課していた縛りはすべて取り払った。常時呪力は100%を引き出せるようになっており、
「んなっ…!」
「…省略してると抗われることもあるのか。弱いのしかいなかったから知らなかった」
軽く一瞥しただけで彼…禪院直哉は膝をつく。
「な、んやこれ…!!立てん…力も入らん…!ドブ、カスがァっ…!」
なにか言っていたが彼女は全て無視し、彼を半目から少し目を見開いて見…ようとして視界から彼が消える。
「おっと」
ひゅっ、と背後に回り込まれ、背中に触れられた。
同時に覚中の身体が少しの間フリーズする。
「(…体が動かないってこんな感じか)」
力を入れようとしても時が止まったようにびくとも動かない。
相手は目で見ずとも気配である程度分かりはするが、それでは不十分。少々手強いか?と思ったが呪力は何の問題もなく練れる。動きが止まるだけか、と判断して動けるようになった体で少し後方に跳躍、呪力を固めて弾幕とする。
視界が若干遮られて術式は使いにくいが、まあ問題はないだろうという判断の上でだった。
「アカンなぁ、反撃に転じるんは速いし正確、何で俺のスピードに着いてこれよるん?」
弾幕を避けながら直哉は言う。彼の術式は投射呪法。自身の身体の動き一秒間を24分割してそれをアニメーションのように操作する。
それ故に初速からかなりのハイスピードを出すことが可能で、連続使用すれば亜音速まで加速可能。かつ触れた相手がそんな器用な真似をできなければ一秒フリーズするという術式だ。
しかし覚中は、動き出す直前の動きや砂埃の動き、彼が気づかないほど薄く、希薄に広げられた呪力の中で動かすことでフィードバックされる情報からある程度の位置や姿勢、次の行動を予測している。そもそも近づかれなければ自分がフリーズさせられることもない。
そして。
「…………そこ」
おおよそ1秒、とトレースが終わったと判断したその瞬間を狙って目を
「なっ、何なんだ…!全員かかれェッ!」
直哉は性格こそひん曲がっているが禪院家の中でもトップクラスの実力の持ち主。その彼がやられた、しかもろくに傷を与えることすらままならなかったということで焦ったのか、その号令で全ての術師が彼女に殺到する。が、彼女は軽く跳躍して近くにあった信号機の上に陣取る。
「学習もしないのか単純に気づいてないのか…むしろそこまで行くと困惑すら感じるな…」
若干引きながらも適当に全員を視野に収め、目を赤く光らせて全員を倒れ伏させる。
全員が倒れたのを確認して覚中はその場を離れた。
数分後には、倒れ伏していた術師全員は目を覚ましていたが。
呪霊はいないけど改造人間の撃ち漏らしが酷いな…と思いながら索敵を続ける覚中。
改造人間は呪霊ではなく、魂を変えられただけの人間だ。そのためあれは
そのためわざわざこうして回って一体も残さずに首を刎ねて回っているのだ。
いっその事…?も自分の手をチラ、と見るがいやいや流石にアウト、と思い直してまた足を進める。
まだ
「回るかぁ…」
面倒くさいけどけじめくらいはつけよう、と術師達が漏らしてしまった改造人間をまた殺めに回る。
少し空が曇ってきた、雨が降るかもなぁと思いながら。