呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

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うーん難しい…


誤字報告ありがとうございます。


対面

「やあ、覚中さん?」

 

「?あぁ、」

ふと声をかけられて見上げると、バイクから降りている見覚えのある金髪の女性が。日本に四人…いや、五人しかいない特級呪術師の中の一人。

 

「九十九さん」

 

「聞いたよ、大変だね」

小さく笑いながら言う彼女からは、おちゃらけているようで真剣な雰囲気が漂ってくる。

 

「何ですか?術師として呪詛師を倒しに来ましたか?」

 

「いやいや高専の任務なんて手伝わないよー、面倒だし。今回は単純に君が気になっただけさ、大丈夫かい?色々と」

ナイナイ、というふうに手を振る九十九は小さく威圧した覚中に笑いかける。

 

「大丈夫です。そこまで手強いのはいませんし、給金は元々殆ど使わずに貯めてたのでお金も。あと睡眠が必要ないのが分かったので時間にも余裕は」

それを聞いて九十九は少し驚いたようになり、バイクから地面に降り立って覚中の顔を覗き込む。

 

「……ホントに大丈夫かい?その言いぶりからして寝てないんだろう?疲れてるだろう」

 

「気にしなければ問題ありません」

 

「あと雰囲気も変わったし…」

 

「これが素です」

ピシャリ、と答える覚中に少したじろぐ。

こんな子だっけ…?と思いながら聞いてみると、これが素だと言う。

マジで?夏油くんたちと一緒にいた時もこんなのじゃなかった気が…と考えるが、あまり深く考えないようにした。なにか事情があるんだろう、と。

 

「まあとりあえず…あまり喜ばしいことじゃないかもしれないけど、特級の昇格おめでとう」

 

「ホントそうですね。全く嬉しくもないです」

 

「君なら上層部全員操って好きなようにできるんじゃないのかい?」

ほとんど声に抑揚すら付けずに言う覚中にそんな言葉を投げかけると、小さくため息をついて彼女は答える。

 

「そもそも相手が私を前に引っ張り出そうとしてきません。おおよそ頭の中の悪事を覗かれるのが嫌なんでしょうが…まあ、人の心を読む術式持ちと認識されてる点では嫌われて当然です。そもそもそんな術式を持ってるのが好かれる時点で変な話だとは思ってたんですが」

ふーん…と聞きながら九十九は相槌を打つ。

と。

 

「………おっと、お客さんみたいです」

 

「…?」

何の気配も感じていない九十九が首を傾げると、覚中は少し前に出て付け加える。

 

「…昨日から飽きずに向かってくる、学習しない変な人たちですよ。もう四度目です」

その言いぶりと、気付いた気配から禪院家かぁー…と九十九は若干笑う。

特級呪詛師討伐のためなのだから一級相当の術師が送り込んでいるはずだし、それなりの数いるようだが、もう四度目と言っていたということは、少なくとも三回は撃退できているのだろう。

そりゃ特級にもされるわ、と納得した彼女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

適当にあしらって禪院家に差し向けられた人全員をまた昏倒させた頃。

九十九と少し応酬をしてから彼女が帰り、下に転がる死屍累々の群れを見下ろす。死んではないが。

もう面倒だし殺したほうが良いか…?とか思ったがそっちのほうが面倒か、と思い直す。

彼女の術式は基本的に殺しには向かない。対呪霊用と言ってもいい位のもので、生身の人間には一部の技を除いて基本的に命に支障をきたさせるような方が難しいくらいだ。呪力の撃ち出しなどで攻撃はできるがそれより術式を使ったほうが速いし正確。

 

と。

 

「……今日はお客さんが多いね」

新たな呪力の気配。

それは、感じたことのある呪力の集まり。

 

「……や、高専諸君」

 

 

 

「…久しいね、心音」

見覚えのある面々(教え子達)と、前までの覚中心音の友人たち(夏油傑と五条悟)

その数は10やそこらだがこれまでの()()()()とは違い、油断はできない。

 

「……場所を変えようか」

流石にここで戦闘を始めるとそこら辺で伸びている禪院家の面々が巻き込まれて起きる可能性がある。

基本話を聞かないし、敵のことになるとIQが3まで落ちるので正直巻き込むと余計にややこしくなる。サボテンと同等である。*1

 

 

 

 

 

 

 

「さて…」

さっきの場所から離れた場所で覚中はトントン、と靴のつま先で地面を叩き、話を進める。

 

「何でここがわかったの?」

 

「与君の術式さ。呪霊やカラスの索敵じゃ見つからなかったけど、機械を通した索敵にはかかるってことが分かったからね」

夏油が答えると、覚中はあぁー、と少し長めにため息をつく。

 

「傀儡操術か。たしかに機械やら傀儡やらには無力だからなぁ…この術式」

 

「心音、帰ろう。上層部には言い訳はできるだろう。一般人に呪術で危害を加えようとした点はあの領域の説明で片がつくし、そもそも私たちを助けるためにやったことだ、私達も協力…」

「必要ない」

ピシャリ、と言い放つ覚中に、言葉を途切れさせる夏油。

 

「な、」

「何で、って?興味ないから」

ス、と覚中は構えを取る。

 

「私は呪詛師で皆は呪術師、ならやることは一つでしょ?」

 

「心音」

今度は五条が声を上げた。

 

「悪いのはお前じゃないだろ、僕達の責任だ。その部分の尻拭いまでお前にさせるような事…」

言い切る前に彼女はその姿を消す。

 

「っ!?」

と、音もなく全員の後方にその姿が現れる。

 

「長い。あと何度も言わせないで」

ズオ、とその呪力が解放され、ビリビリとその空間に緊張が走る。

 

「私は今は呪詛師だ。殺しにかかるよ?」

バッ、と飛び出した彼女が向かうのは一年生の方向。

 

「っ!満象!!」

と、それに逸早く対応したのは伏黒。大きな薄桃色の象が現れ、その鼻から大量の水を噴出する。が、覚中はワンツーステップでそれを回避し、空中を駆ける。

 

「虎杖!」

 

「りょーかい!」

と、伏黒の声で満象の鼻の裏から虎杖が飛び出し、体制を整える。

 

「!」

いなして反映しようとした覚中の目に止まるは、チリ、と一瞬走る黒い稲妻。

迎撃から回避に転じて攻制状態から体制を崩し、空中で一回転してその拳を避ける。

 

「うぇっ!?」

急に人外じみた挙動をした覚中に驚いた虎杖は一瞬動きが止まり、その隙に下から顎にハイキックをもろに食らう。

 

「がっ、」

 

「次」

気絶までは持っていけなかったにしろかなり強めに蹴ったため数十秒は視界が定まらないだろうと判断して他に照準を当てる。標的を特に厄介そうな伏黒に絞…ろうとして。

 

「そいやぁっ!」

 

「!!」

ギリギリ回避できたが、目の前に出てきた拳に少し仰け反る。

大したダメージもなく虎杖がアッパーカットを繰り出していた。

 

「うぇー…なんで避けれんの…」

 

「こっちとしてはなんで動けんの、って聞きたいところだけど…」

普通顎に衝撃が走った場合その衝撃が頭蓋骨まで届き、脳が揺れて脳震盪を起こす。

気絶まで持っていけなくとも、どんなに屈強な人間でも十数秒は平衡感覚がバグる。

 

「覚中さんが呪力操作とか色々教えてくれたおかげッス!まだまだ聞きたいこととかあるんすよ!」

そう虎杖は叫ぶ。

耳を貸さずに少しそっぽを向く…と。

 

「簪ッ!」

『動くな』

ビシ、と動きが止められる。が、直前でその釘に反応した彼女はギリギリ躱す。

次の瞬間、視界の端で狗巻が口から血を流した。

キャパシティを超えたか。

 

「最初に会った時に優しくしてもらったのが東京来て一番初めに『よかった』って思えたことだったんですよ…!まだまだ一緒にやりたいこととか色々あるんです!」

「じゃげ、づなマヨ゙!」

叫ぶ二人の言葉を無視して次の攻撃反応を探知する。

その間に真希が彼を介抱しつつ乙骨が治癒を施す。

 

「うおお!」

そこにパンダが突貫し、その周囲に鵺が飛んでくる。

 

「……厄介」

純然たる近接特攻。

更に鵺は不規則な動きをしながら飛んでおり、いつどこから来るかわからない。

ブンブンと振り回されるパンダの手を踊るように躱し、頭に手をついて空中で一回転、背中から呪骸としての核がある場所のうち二つに向かって貫手を放つ。

 

「ッ…!俺はパンダだからあんま良くわかんねーけど…覚中さんは悪くないはずだぞ、ほら、皆戻ってきてほしいって思ってるぞ?」

 

「ッ、」

撃ち漏らしたもう一つの核めがけて貫手を打とうとして…

 

「脱兎!」

それを見た伏黒は脱兎を顕現、大量の兎型式神で覚中の視界を潰した。

かつて本人の言っていた弱点、多対一の物量押し。

 

「操作もうまくなってる…言われたことはちゃんと遂行するタイプか」

脱兎の一匹一匹の動きが複雑化しており、全てを読み切るのは難しい。と脱兎は覚中を包みこんで巨大な兎となった。

 

「覚中さん!俺たちは呪術師です、相手を呪って交戦する役目です…!ですが、俺は勝手に、不平等に人を助けます、あなたはその標的です…!!」

油断はせず、次の式神は…!と考えていると。

 

「赤血操術…穿血(せんけつ)!!」

後ろから超高速の血液が覚中のいる兎を貫いた。それは見事に覚中に命中する。

 

「!お前…」

 

「心配せずとも威力は落としてある」

放ったのは脹相。その血液には、毒がある。

 

「……弱ったね」

ド、と呪力を放出して脱兎を片端から消し飛ばして覚中は少しふらつきながら地面に立つ。

当たった左半身がジクジクと痛み、少し震えていた。

 

「…全力ではないとはいえほぼ無傷とは…本当に人間か?」

 

「脱兎のお陰で勢いは落ちてた」

短く返すとまたふっとその姿が消え、脹相の後ろに現れる。

 

「ッ!超新星!」

と、それに呼応するように脹相は周囲に血液で赤星をいくつか出現させ、それを破裂させる。

もろに食らう訳にはいかないと覚中はそこから退避し、反転術式で毒を消す。

 

「弟が世話になったんだろう?俺からも礼をさせてくれ…!」

その言葉に反応せずそこから離脱、少し離れる…が、安地などは存在せず。

 

「行くぞ憂太!順平!」

「リカちゃん!」

「澱月!」

その背後から真希の声と同時に乙骨がリカを、順平が澱月を顕現させて襲いかかる。

近接に真希にリカと乙骨、中距離から澱月の触手が襲いかかる。澱月の毒は、麻痺毒だ。

 

「次から次へと…!」

まずは順平。再び姿が消えて彼の背後に回り込む…と。

 

「来ると、思ってました…!」

その時には澱月の中に入っており、触手が覚中の方を向いていた。

これはまずいと思い、自分の体に術式を使って慣性を無視した動きを無理矢理行ってその触手を回避する。

 

「戻って下さい…僕も母さんも、虎杖君とあなたに助けられたんです…!」

 

「…はぁ……おっと」

次の瞬間には背後に真希が迫っており、その手に持たれた三節棍を振りかぶる。

 

「!不味っ、」

事前察知はできても回避ができない。

読心操術としての術式の使用を封じたため予測がしづらくなった弊害か、その三節棍…特級呪具、遊雲への対処は回避より防御に専念する。が、

 

「い゙ぐよ゙お゙ぉ゙ぉ゙!」

防御方向からではない方向からの衝撃。白い巨体の手が視界に入る。

 

「っ…!」

しかし、それすらブラフ。覚中の()()に乙骨の刀が振り下ろされ、土埃が舞う。

 

「僕の呪いを解いてくれましたよね…。里香ちゃんと僕を救ってくれました、ありがとうございました…!」

 

 

「……うるさい、」

そこで、初めて彼らの言葉に彼女が応えた。

が、様子がおかしい。

 

「勝手に感謝して勝手に救おうとして勝手に助けられた気になって…私には関係ない…!!」

彼女はそれまで大規模な反撃はしてこなかった。そしてそれも彼らが想定していた通りの行動だった。

しかし、そこで初めて彼女の呪力が膨れ上がり、目が光る。

 

「!!不味い、逃げてッ…」

「極の、番…!」

咄嗟に気づいたのは乙骨。その咄嗟の判断でリカにその場にいる全員を連れて離れる。だが、それをも飲み込むような範囲でソレは展開される。

地面に手をつき、白い呪力が暴れ狂う。

 

 

 

 

────白痴(はくち)

*1
サボテンのIQはだいたい2〜3

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