呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

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一応最終回です。
多分後日譚的なのも多少やります。


今は、まだ。

「あ、いたいた。早かったねー」

 

「悟、何してたんだい」

あらかた生徒達に詰め寄られ、夜蛾に若干叱られ、家入に半泣きになりながら怒られ、七海に呆れられ、生徒達に群がられしていたところらへんで五条が戻ってきた。上層部のところに話をつけに行っていたとのことだが、どうなったのかと夏油が聞くと…

 

「いやー…ちょーっとばかし面倒な事になっちゃってさー。一回心音を上層部の奴らの前に出したいんだけどって待って傑呪霊出すな硝子その手は何メスをどこから出してきた」

頭をかきながら言う五条に「は?」と言いながら呪霊を顕現させようとする夏油とどこから出したのかメスを逆刃ナイフの持ち方で握る家入。

一回話聞いて、と宥めて五条は話を続ける。

 

「もーうあいつら話聞かないのなんの、一回弱点見つけたからって延々擦ってくんのよ、だから…武力制圧、心音に一回脅してもらおうと思って」

 

「脅す、って…」

虎杖が声を漏らすがくくくっ、と小さく喉を鳴らして五条は笑う。

 

「とは言っても直接なにかするわけじゃない。どうせあの臆病な鶏共のことだ、心音を連れてくると知ったら呪符から結界から大量に使うでしょ、そに対して…」

 

「…あえて呪力で真っ向から暴れるってわけね」

相変わらず無茶苦茶、と覚中が零すと一瞬五条も違和感を覚えたのか首を傾げる。が、すぐにニッ、と笑い直す。

 

「無茶苦茶するから特級なワケよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一応聞くけど大丈夫そう?」

 

「何が?」

 

「呪力量とか」

上層部の待つ部屋に向かっている途中、一言で短く言われたその言葉には、横から夏油が口を出す。

 

「問題無いだろう。封印室の呪符が全部焼き切れるくらいの呪力出力出るんだから」

 

「…なんか威力上がってない?」

気のせい?と聞くと縛り取っ払ったから増えてるようなもん、と返される。

まあ何でも良いか、と思い直して部屋へ向かう。

先頭に五条、その後ろに覚中と夏油。

ノックすることもなく一室のドアを蹴破る勢いで…というかマジで蹴って五条が開けると、そのくらい部屋中がどよめき始める。

 

「やーやーお待たせー、君たちご所望の覚中心音さんを連れてきたよー」

その声にも少なからず憤りが混じっていたがさておき。

ザワッ、と一気に騒がしくなった部屋の中にはいつの間に張ったのやら封印室の数倍厳重な結界、集合体恐怖症がノックダウンされそうなほど敷き詰められて張り巡らされた呪符、護衛であろう一級術師もそれなりの数いる。

じゃ、と短く夏油と五条に言って覚中はカツ、カツ、とヒールを鳴らして円形に並んだ障子の真ん中に歩いていき、中心で足を揃えて踵を鳴らす。

 

「で、ではこれより、特級呪詛師覚中心音の処遇を決める会議を行います」

司会役の術師であろう者が若干慄きながら仕切ると、同時に周囲四方八方から非難の声が飛び交う。

 

「ええい、会議など必要ないだろう!」

「呪詛師は敵、殺す以外の選択肢など存在せん!」

「今すぐ殺せ!五条悟に夏油傑までいるのだぞ!処刑程度訳ないだろう!」

うーわ、と部屋の隅で五条と夏油が声を漏らした。

強いのはお前らじゃなくて僕等じゃん、そうそう、それに誰もお前達の味方なんて言ってないんだけどねー、と言いつつ、まあ心音ならなんとかするでしょ、と結論づいたその時。

 

「…はー……」

長い、一つのため息。目を閉じる。

その音に、一瞬全員が黙る。

 

 

刹那、音が消えると同時に恐ろしい重圧とともに部屋中の呪符が焼ききれ、結界が崩落し、特級と上層部を除いた術師全員が昏倒する。

 

 

「…は?」

だれから発された言葉かは確認しない。

もしかしたら上層部の中の誰かかもしれないし、五条か夏油だったかもしれない。

呆然とする人が集まり、小さく爆発音のような音が響く空間に、少なくとも今までの彼女からは考えられないほど低く悍ましいような声が発される。

薄く開かれた目にゆらりと、淡く蒼炎が宿る。

 

「 誰 か ら 、 逝 く ?」

そこまで張り上げられたわけでもないその声が頭に反響し、うるさく聞こえる。

皮膚の下に蛆が湧いたような感覚が全身に襲いかかる。

その場から一刻も早く逃げ去りたいという思考が体の硬直という本能と混ざり合って延々と恐怖を与え続けられる。

 

 

 

「私は、悟や傑ほど優しくない」

 

 

 

 

 

────さあ、どうする?

 

 

 

 

時間にして1分にも満たない時間の内。

その僅かな時間に、覚中の処遇は決定した。

 

呪詛師としての悪称を取り消し、呪術界への復帰を認可、五人目の特級術師として取り扱う、とのこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっさり片付いたね」

 

「まあ問題ないでしょとは思ったけどあそこまでなるとは思わなかったね」

部屋から出て苦笑しながら五条と夏油が言う。

それに応じて覚中も少し表情が和らいだ…ように見えなくもない。

 

「にしても特級の称号は変わんないのね、良いの?あれなら二級まで戻してもらうのもできたろうに」

 

「全然大丈夫じゃないけど。…ま、なんか事あるごとに傑のせいにできるから鬱憤は晴らしやすくなる」

 

「ごめん何の話?」

覚中の話に全く繋がりが見えない五条が聞くと秘密、と答え、夏油の方を向いてみると口に人差し指を当てて秘密さ、と答えられる。

 

「まあ言うなら一種の縛りみたいなもの」

 

「ふーん…?」

釈然とはしないらしいが深く追求することもせず、三人は高専職員室へと戻る。

 

途中でまた家入にも会い、生徒や夜蛾達に少し断って四人で少し外に散歩に出ることにした。

もう時刻は戌の刻(午後10時)を過ぎた頃、月光と星の光だけが弱く降る時間帯だ。

 

「夜に外出ると高専ってまた雰囲気変わるな」

 

「夜の神社とかってホラー系の映画やらドラマやらでよく使われるしね」

まあクオリティーはさておくけど、と夏油が付け加えるとわかる、と家入と五条の二人が反応する。

 

高専時代、四人でホラー映画を見た際には「この程度じゃこんなに血は出ない」やら「ホントにビビったらこんなもんじゃ済まない」やら、果てには「脚本は良いけど表現のお陰で半ばコメディーみたいになってた」とか言われる始末。本物はまた違うんだなぁ…とその頃の覚中は思っていたが、今なら多分似た感想が出る。

 

「ホントねー。あ、でも月めっちゃ満月だね」

話を変え、月見酒とかでも良かったなーと家入がこぼすと、あれ満月じゃないよ、と覚中が返す。

 

「多分小望月。若干潰れてる」

 

「お、それじゃあ明日が満月か、準備しとこ。五条と夏油と心音は?一緒にやる?」

 

「僕にそれ聞くの?」

「私は一緒しようかな。悟はどうせ来ないだろう、最強を名乗るくせに酒も飲めない奴だから」

「ほー言うじゃねーか傑くん、飲み比べしてやるよ」

「無理をするなよ、悟。酔いつぶれても知らないよ?」

「そっちこそな?傑クン、今際の際だぞ」

「…私も、」

また煽り合いが始まりそうになったそこに、少し呟くような声が鳴る。

 

「私も呑んでみようかな」

それに対して、一瞬驚いたような顔をしてからくくっ、と家入は喉を鳴らして良いね、と言う。

 

 

その後の道中では五条がふざけたり夏油が乗っかったり家入が呆れたりもしていたが、覚中は軽く反応するだけに留めていた。

 

 

高専時代や前の教員時代とは、どこか違って何も変わらない結末。

 

 

 

都合の良い、エピローグ。

 

 

 

仕組まれたように、関わった人が救われる、そんなご都合主義の戯話。

 

 

 

ただ、今はまだ、これでいい。

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