呪い、呪われ、覚り、覚られ   作:謎の通行人 δ

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編入学

呪術高専東京校の二年生…夏油達の担任である夜蛾正道の前には、覚中が立っていた。

 

「さて…とりあえずだが、お前に呪霊を祓う術が身に着いている事がバレてしまった。既に呪術師のような事をしている事も同様に、だ。その上、特級術師である夏油傑ともやりあえて()()()()ような者となれば、上が黙っていなくてな…野放しにさせているわけに行かない、と」

どこから漏れたんだか…と若干遠い目をしながら覚中は考える。

 

そう。

 

夏油の件がバレたのだ、呪術高専に。

 

そのせいで怒られるとか処分が下されるとかならまあ分かる。

 

そのせいで強制的に入学って本当にドウイウコト?

 

「まあ正直なところ、この頃あいつらがやけに外泊届出してくるなとは思っていたが…これで確かに点と点が繋がりはしたな」

 

「怪しまれてたじゃん三人ともぉ…」

家に来るたびに大丈夫大丈夫と言っていたが、彼らの大丈夫は何語だろうか。ばっちり疑われていたではないか。

 

「まあ、そこはいい。とりあえず、編入はほとんど決定してしまっている。元々通っていた学校の方には引っ越しによる転校という形を取らせてもらっているが…これに関してはもう完全にこちらの私情で入学させてるわけだから、卒業した後に呪術師になるか普通に暮らすか、それはそちらの自由にしてもらって構わない」

 

「そうですか…了解です…」

 

「…大丈夫か?」

明らかに顔色を悪くしながら答える覚中に夜蛾が聞くと…

 

「正直言ってあんまり大丈夫ではないです」

げんなり、といったように覚中は答えた。

遊びに来るたび3人から、やれ任務が大変だとか面倒だとかいう愚痴は聞いていたのだ。夏油や五条の強さは理解しているが、それ故にあのレベルで大変とか言い始める任務なんかに当たりたくないと思っていた。

しかし彼らの言い分はまさにその通りで、呪術界は中々にブラックである。人手不足も相まってもう夜のブラック企業も裸足で逃げ出すブラックさである。なんと言っても直接的に命がかかっているのだからそこも加味される。ブラックを超えてベンタブラックである。何言ってんだ。

 

それに加えて、覚中が祓っていたという呪霊なんてほとんど四級相当。たまーに三級寄りの四級が混じってたかも、といったレベルだ。

 

つまるところ、彼女自身はめちゃくちゃに弱いのだ。

 

術式が使えるし呪力もある程度操れる、なんて言ったところで攻撃力も防御力も周りと比べれば皆無、できる攻撃なんて殴る位しかない。

…まあ普通は呪力が安定しないため殴るだけでは呪霊にダメージは与えられないのだが、そこは天賦の才というべきか、なんかうまくいった位の認識でやっている。

指標として前に聞いたのは、四級呪霊は(物理攻撃が効くのであれば)木製バットがあれば余裕、三級は拳銃があればまあ安心、という感じらしいため身体能力は確かに常人からすれば高いのだろうが、呪術師としてはやはり弱い。

 

まあ…何かあったら傑とかに助けてもらおう…ごめん…と心の中で謝りつつ、夜蛾の話に耳を傾ける。

 

「とりあえず編入はあいつら…五条、夏油、家入と同じ所だ。…申し訳ないが、慣れていってくれるとありがたい」

…それにしても、こんないかつい見た目なのに中身めちゃくちゃいい人じゃんと思う。何かぬいぐるみが大量に置かれてるけど。

彼ら…さしす組の評価があまり良くなかったのは何故だろうか。

 

────

 

「ってことになってね…」

 

「「よし、腐った蜜柑は潰すか」」

 

「待って待って待って?」

教室に入るとボッコボコになった五条と夏油が家入に治療してもらっているところだった。まあそれを見て大体は察したのだが、一応聞くと殴り合いの喧嘩をしてた、と。

 

で、なんでこんなところにいるのか聞かれて事情を話すとこうなった。

 

サングラスを傾けて六眼を晒し、右にいる夏油を睨むように見る五条と右手をパキパキと言わせて一級相当の呪霊を四、五体出現させながら左にいる五条を鋭い目つきで見る夏油。

詳細を説明した結果の反応がこれである。

 

「どうする、どこから行く?」

 

「まどろっこしいのは止めにしよう。私達二人なら正々堂々正面突破だ」

 

「賛成」

完全に二人共思考がジャンキーになっている。

助けて硝子さん…と覚中は家入に助けを求めると、

 

「そもそもだけど夏油が余計なことしなきゃこうはならなかったんじゃ?」

とのことだった。

いや、まあ間違ってはいないのだが…

 

「そうなると私が死んで傑が呪詛師になるんだよね…」

 

「…うん、アレが呪詛師になるのはいいけど覚中さんが死ぬのは却下ね。そうなれば上を潰すしかないわね」

暴走列車のブレーキまで無事にぶっ壊れた。

 タ ス ケ テ 。

 

「当人がやりたくねぇってんのにわざわざやらせる意味が分かんねぇな」

「上の奴ら本人は一切出てこない癖してねぇ…」

「それはそう。まああんたらに任せれば証拠一つ残さずヤれるでしょ?」

そろそろ本当に不味い。…そう思いはしたが、どうしようもない状況に頭を悩ませる。

 

まあ三人とも別に悪意があって言っているわけではなく、ただ純粋に覚中のことを心配しているというのは分かるのだが、実力行使が過ぎやしないだろうか。

と、

 

「おいお前らそろそろ席に…ってうお!?」

ガラガラ、と前の扉を開けて入ってきたのは夜蛾正道(担任)

…が、既に一級術師を長いことやっている夜蛾ですら、思わず見をのけぞらせる程には濃密な、教室を取り纏う殺気。

もしかしたらここに溜まっている負の感情だけで二級呪霊くらいなら作れるかもしれない。

 

「ほ、ほら!先生来たし一回落ち着いて!?流石に殴り込みは…!」

 

「いやだって心音はいいのかよ?呪術師とかクソみたいなやつしかいねーし、弱っちぃ心音ならすぐ死んじまうかもしんねーんだぞ?」

「言い方は悪いけどそれはその通りだよ、心音。術師の検定は一応四級からだけれど、それでも場合によっては一、二級相当に駆り出される可能性だってあるんだから」

 

「え、そこら編は流石に考慮してくれるんじゃ…」

え、考慮してくれるよね?と五条、夏油、家入と視線を移動させ、首を振られた。まさか〜と夜蛾にも自然を送ったがちょっと目をそらされた。

…嘘でしょ、と言わんばかりに頭を抱える。

 

「…万年人手不足とか言っておきながら余裕で2級術師を数人だけ一級任務に当たらせて壊滅させるような連中だよ、頭の中身は精々鶏と良いところだ」

本当にそれで大丈夫なのか、呪術界。

人手不足を加速させてるの上層部じゃないか。

 

「…最終危険を感じたら傑とかに連絡するからできれば助けて…」

 

「まあそれは良いけど」

 

「ここまで特級を普通に使える人もなかなかいないよねぇ」

カラカラと笑う家入に、ちょっと不満そうな五条、肩をすくめる夏油と頭を抱える覚中を前に、夜蛾はどうするべきか…と少し頭を悩ませていた。

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