ダドリー坊やとメイベル嬢ちゃん   作:Tuuri_ecru

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第6話 元通りの日常

ハグリッドが帰って、雑然としたサイロ小屋にただずむ、開いた口が塞がらないダーズリー一家。

バーノンは冷静さを取り戻すように、大きくゴホンと咳払いをする。

 

「えー、まー、なんだ。帰ったようだから、これでもう、安心だな」

 

「うん、僕、びっくりしたよ。メイベルが魔法使いだなんて。知らなかった」

 

ダドリーはメイベルを抱きかかえ、頭を何度も撫でて興奮気味に言う。

 

「叔父さん、叔母さん、ずっと私に秘密にしてたの…?」

 

メイベルは怪訝そうに、目の前にいるダーズリー夫妻へと問う。

 

「わざとじゃないのよ。真実を知りたがってないように見えたから、あえて言わなかったの」

 

それから、ペチュニア叔母さんは、ペシャンコになったソファをもう一度整え、ダドリー、メイベルを座らせると、子守唄をきかせるように語った。

メイベルの両親は交通事故なんかじゃないということ、その手の傷は魔法使いとの攻防で出来た傷らしいということ、妹(メイベルの母リリーの事)にも同じような手紙が来て、その学校に行ってしまった事、休みで帰ってきた時にはコップをネズミに変えたり、ポケットをカエルの卵でいっぱいにしてきたこと、ほかにもたくさんたくさん、メイベルの知らないことをうんと話して聞かせてくれた。そして一呼吸置くと、最後につけ加えたのは、話さなかったのは意地悪なんかじゃないと、そう言った。

 

「…僕、なんにも知らなかった、君のこと。確かに、君と過ごしているとたまに、不思議なことが起きたりしたね」

 

「でも私、わざとなんかじゃないし、私も知らなかった。…叔母さん、話してくれてありがとう」

 

ダドリーとメイベルはそれぞれ、思っていた事を伝え合う。ダドリーは、メイベルと過ごしている中で稀に、物が消えたり、かけっこでは人を超越した速さで記録を更新したり、マージ伯母さんが膨れ上がったりした事を思い出した。そして最後にメイベルは叔母さんにお礼を言う。

 

「話さなくてごめんなさいね」

 

ペチュニア叔母さんは素直に謝った。

メイベルは気にしない様子で優しく微笑んだ。

 

「ねぇ、叔父さん、叔母さん、ダドちゃん。わたしが、魔法使いであっても、まともじゃなくっても、一緒にいていいかな?」

 

ソファに凭れかけて、ダドリーと手を繋ぐメイベル。やや伏し目がちに、彼女は聞く。

 

「まぁ、そうだな、当たり前だよ。大事な我が娘なのだから」

 

バーノン叔父さんは気恥ずかしそうに、しかし、しゃんとした声でメイベルに伝える。

 

「そうよメイベル。わたしたちはずっとメイベルの親代わりなのだから、そんなこと気にしなくたっていいのよ」

 

「そうだよメイベル。僕、メイベルがどんなメイベルでもずっと一緒にいるよ」

 

そう答えるは、ペチュニア叔母さんにダドリー。

叔母さんはメイベルに優しく微笑み掛け、ダドリーは繋いだ手を固く握って叔母さんと同じように微笑んだ。

 

「さぁ、寝よう。朝になれば嵐も止んでいる。おやすみ、皆」

 

バーノン叔父さんはそう言うとベッドへごろんと横になった。

部屋は適度に暖かく、パチパチと揺れる炎が目覚めたメイベルを心地よく眠りへ誘った。

 

「うん…おやすみなさい叔父さん」

 

「おやすみパパ、ママ、メイベル」

 

2人もソファで横になると、手を繋いだまま寄り添うように目を瞑る。

ペチュニア叔母さんはそんな微笑ましい光景に釣られてふわり、微笑むと、丁寧に毛布を掛けてやり、自分もベッドに横になった。

 

「おやすみ、私の愛し子たち」

 

朝、メイベルは真っ先に起きた。ダドリーや叔父さん叔母さんもまだ寝ていた。外の大嵐はいつの間にやらどこかへ去っており、窓から柔らかい陽の光が差し込んでいる。空腹で目覚めた朝だった。お腹が空き過ぎて、パッと見た先にあったハグリッドからのプレゼントのケーキを少しずつ大切に食べた。とろりとしたチョコレートの甘さで口の中がいっぱいになり、それを流すためにダドリーにもらったペットボトルの水をガブガブ飲み、嚥下する。少し、お腹は満たされた気がした。そして、ポテトチップスの袋を開け、1枚ずつ取り出して食べる。そんなガザガザとした物音を立てていたら、後ろから重圧がかかった。妙に背中が重い。ビクッと震えてチラリと後ろを見やると、そこにはダドリーの顔があった。

 

「あ、おはよう。起こしちゃってごめんね」

 

「ううん、おはよう。おなか空いてたよね。食べれてよかった」

 

背中越しにダドリーに抱かれて布団がかぶさったように身体がぽかぽかと温かかった。暖炉を見やると、もう燻っているだけだった。

 

「ねぇ、ダドちゃん。嫌いになってない?」

 

「なぜ?」

 

メイベルは不安そうに訊ねる。

 

「だって、夜も話をしたけれど、私、普通ではないから」

 

「だとしても、僕はずっとメイベルが好きだよ。だって、家族じゃないか」

 

ダドリーは持ち前の明るさでそう言うと、優しくメイベルを背中から軽く抱きよせる。

 

「…そっか、嬉しい。不安だったから」

 

「これでもう不安にはならないだろ?僕の気持ちは変わらないよ」

 

ダドリーは優しく頭を撫でやり、1つキスを落とした。

 

「うん。ねぇ、今日、ここから帰るのかしら?」

 

ポテトチップスの袋を置いて、メイベルはダドリーに問う。

 

「多分ね。パパとママ起こしてくるよ」

 

もう一度メイベルを軽く抱き締めると、ダドリーは毛布を彼女に掛けてバーノン叔父さん、ペチュニア叔母さんのベッドへ向かった。

 

「んん、あぁ、おはようダドリー。もう起きていたんだね」

 

バーノン叔父さんは寝ぼけ眼で大きく欠伸をすると、1度伸びをした。

 

「ペチュニア、起きるんだ。帰る支度をするぞ」

 

「んん、まあ、そうなの。なら、起きないとね」

 

ペチュニア叔母さんも欠伸をすると、軽く腕を回しながらベッドから立ち上がった。柔らかな陽の光が優しく、ダーズリー一家を包む。

 

「さぁて、帰る支度をするぞ。荷造りだ」

 

キラキラと朝日を浴びて荷造りを始めるバーノン叔父さん。目覚めたばかりなのに手際よく荷物を纏めていく。ペチュニア叔母さんもテキパキと一通りの細々した手荷物をカバンに詰めた。そして2人にも荷造りするように促す。

 

「私はそんなに荷物持ってきてないから、すぐ終わるわ」

 

「僕も持ってきていないよ」

 

「よし、なら、一同、乗船だ!」

 

バーノン叔父さんが号令をかける。皆それぞれ荷物を抱えて、扉を開け外に出た。空は晴れ渡り、暖かな日が眩しく、小屋の中との明暗差に少しクラクラした。波は穏やかで、パチャパチャと水音を立てているだけで、岸辺に付いているバーノン叔父さんが借りた船はまだそこにあったが、嵐で船底は水浸しだった。皆で協力して船から水を抜くと、ペチュニア叔母さんは船内を軽く乾拭きし、座りやすいように乾かした。そして、皆が乗り込むとバーノン叔父さんはぐいっと勢い良く漕ぎ出す。メイベルは暖かな日差しと心地よい船揺れに何度か居眠りをしてしまっていた。ダドリーはそんなメイベルを抱き寄せると肩に凭れかけさせてやっていた。

次、メイベルが居眠りから覚めた時には既に陸地へ到着していた。

 

「へ?もう、着いちゃったの?」

 

間が抜けた声を出して驚くメイベル。皆は降りる支度をしており、ダドリーは軽くメイベルを叩いて、降りるよう促した。

 

「うん。何度か君、寝ていたね。降りるみたいだけど、降りられそうかい?」

 

「待って。……うん、もう降りられるわ」

 

荷物を抱えて下船するメイベル。1度大きく伸びをして、車へと向かう。

 

「船を返してくるから、お前たちは先に車へ戻ってなさい」

 

バーノン叔父さんはそう言うと、車の鍵と荷物をペチュニア叔母さんに渡して老人がいる小屋へよったよったと歩いていく。

 

「さぁさ、車へ戻るわよ。メイベル先に行っちゃったじゃないの」

 

「ああ、待って、メイベル。僕も行く!」

 

せかせかとペチュニア叔母さんは車へ戻る。取り残されたダドリーは慌てて駆け出していく。

メイベルは車に乗り込むと不快そうに海の潮風に塗れてベトベトになった髪を手櫛で解く。どうも、潮風は苦手だ。顔も髪もベタベタと引っ付いて、気持ち悪いからだ。早くお風呂に入りたい。不快そうな顔をしたのが傍から見ても分かったのか、ダドリーは自分のカバンからメイベルのヘアブラシを取りだしてゆっくり梳かしていく。いいよ、気にしないでと言われるが、そんな事お構い無しに梳かしていく。確かに、良く通る髪が所々縺れて引っかかりやすくなっている。ダドリーなりに溶かし終わると、抜け落ちた髪を外へと捨て、ヘアブラシをカバンに仕舞う。

 

「ありがと、ダドちゃん」

 

「うん。早く帰ってシャワーを浴びようね」

 

ポンポンと頭を軽く叩くと、もたれ掛けさせるように肩にメイベルの頭を乗せるダドリー。ダドリーも汗と潮風に塗れてベトベト気持ち悪かった。

 

「よし、ただいま。帰ろうか、いいね?」

 

バーノン叔父さんは用事を済ませて車に乗りこみ、運転席からぐるりと車内を見回した。そして全員が頷くのを確認すると、車を発進させた。

海をバックに、車はずんずんと進んでいく。何気なく眺めた窓ガラスには森を、過ぎる車の影を、家々を写し出しては消えていく。今は何時だろうか?朝のニュース番組で今日あった不思議なことについてやってないだろうか?なんて、ふと考えていた。またも、暇になってきて眠りこけてしまう。気付いた時には既に家の車庫だった。ダドリーに揺すられて起きた。どうやらメイベルは乗り物に乗ると眠くなりやすいようだ(嵐の時以外)。

 

「メイベル、起きて。家だよ、荷物を下ろして片付けたらシャワーを浴びてきな」

 

ダドリーに揺すり起こされ寝ぼけ眼のまま、荷物を抱えて車から出る。

太陽が眩しく、車内との明暗差にまたもクラクラした。下がった血圧にズキンと痛む頭を抱え、荷物をどんどん家の中に入れていく。その様子を近所の家がジロジロと首を長くしてみていたが、そんなことメイベルはお構い無しだった。

無事に荷物を家へと運び、1個1個元あった場所にしまうと、リビングでゲンナリした様子のペチュニア叔母さんの抑鬱した声が聞こえる。

 

「片付ける身にもなって欲しいものだわ、この手紙の量と来たら。ゴミに出すのも気が重いったらありゃしない」

 

「暖炉で燃やせないのか?こんなもの、ゴミ捨て場に置かれてみろ、近所の笑いものだぞ」

 

「こんなに大量にあるのですもの、暖炉なんかで燃やしていたら日が暮れてしまう、それに燃え残った灰をかくのも一苦労だわ」

 

うーん、と悩むはバーノン叔父さん。荷解きをしながら、リビングに散らばった果てしない量の手紙の処分に頭を抱える。1枚1枚拾うが、紋章や宛名が大きく記されているのはゴミとして捨てるにも気が引ける。

だからと言って、暖炉で燃やすにも煤や灰の山となってしまう。どうしたものかと、ふたりで途方に暮れる。

 

「ねぇ、叔父さん叔母さん。なにか手伝う事あるかしら?」

 

「おぉ、メイベル。メイベル宛の手紙をどうやって片付けるか悩んでいたところだよ」

 

バーノン叔父さんは手紙を拾うため曲げていた腰をぐいっと真っ直ぐに伸ばして答える。

 

「黒い袋に包んで、直接焼却場に持っていこうよ、もちろん、ほかのゴミも入れて。きっと、それしかないよ」

 

「ううん、やはりそうかね。じゃあ、そうするか」

 

メイベルは困ったようにそう言うと、手紙を一つ一つ破きながら黒い袋をキッチンから取り出し(袋類はキッチンにストックしてある)捨てていく。

 

「しかし、これじゃあ時間がかかってしょうがないわ」

 

ペチュニア叔母さんは呆れ顔だ。

 

「だって、他に方法あるかしら?シュレッダーだって、まとめてかけてはくれないわ」

 

「ううん、そうだけど…」

 

メイベルに言われてぐうの音も出ないペチュニア叔母さん。家族総出の処理作業になるだろう。

 

「僕も手伝うから、仕方ないよ。そういうこともある」

 

「あ、ダドちゃん、来てくれたのね」

 

「リビングルームが騒がしかったから、気になって。手紙を捨てるのかい?」

 

「うん。わたしの手紙で、皆を困らせちゃった」

 

申し訳なさそうに、項垂れたまま手紙を破いていくメイベル。羊皮紙で出来た手紙は固くて破くのも一苦労だ。

 

「ね、気にしないでって言ったじゃないか」

 

隣で破くのを手伝うダドリー。ダドリーの方が力は強いから、ちゃっちゃと破いていく。

 

「でも…」

 

「何を気にすることがあるの?家族だろ、協力し合うのは当たり前だよ」

 

破いては袋に詰めていくダドリー。手際の良さにメイベルは脱帽する。

 

「…分かった。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

数分もすると黒い袋は手紙の山で風船のように膨れ上がり、それを固く結ぶとバーノン叔父さんが自家用車に乗せて焼却場まで持って行った。

ひととおりリビングがスッキリとリセットされたが、次は家の外観だ。

屋根や庭に酷くフクロウの糞で塗れている。これらも片付けなければ…。と先が思いやられる前に、メイベルはシャワーを浴びてくると浴室へ行ってしまった。ダドリーが手伝うと言うのでペチュニア叔母さんとダドリーでその掃除をしたという。メイベルがシャワールームから出てきて外を見た時にはピカピカに綺麗になっていた。




ダドリー坊やの口調が迷子です。
ダドリーは優しくて、お兄ちゃん気質な所を全面に書いています。
苦手な方はUターンいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。※1話からコピー

ではまた次のお話で会いましょう♪see you♩♪
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