ダドリー坊やとメイベル嬢ちゃん   作:Tuuri_ecru

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第7話 写真館

夏休みが終わり、ついに学校の登校日が明日に迫っていた。

ダドリーとメイベルは思い思いに制服を着て、嬉しさに歓喜の声を上げる。ふたりでまたおなじ学校に通えると思うと嬉しくて堪らないのだ。

まるで歌でも歌うように制服を着てはくるりと鏡の前で回り、8mmカメラで写真を残す。勿論、ダドリーも一緒に写っている。

 

「必要な物は全て用意したし、準備は問題なし!」

 

「記念だからな、写真館で写真でも撮りに行くか!わはは!」

 

バーノン叔父さんは愉快そうに笑うと、自分もスーツに着替える為2階へと向かう。

 

「写真館で写真を撮りに行くですって?もっと前もって話してくれたらいいのに!急いで着替えなくちゃいけないわ」

 

ペチュニア叔母さんは慌ててキッチンの洗い物の後始末をすると2階へ急足で駆けていく。

リビングルームに残った2人はオレンジジュースとクッキーに舌鼓を打ちつつ、そのひと時さえも心地良く過ごした。

時々吹く秋の初風が彼らの髪を撫で、少しずつ秋の訪れを感じさせる。

あぁ、あと少し待てば楽しい学校生活が始まるんだ。同じ学年、同じクラスになればいいな…、夢は膨大に、ワクワクした気持ちでメイベルはジュースを最後まで飲み干す。勿論、ダドリーも同じ気持ちだった。バーノン叔父さんが用意してくれた新しい学校は素敵なことに、スメルティングズ男子校の二番目にボクシングが強いとされている私立の中等学校であるからだ。二番目とはいえ、ボクシングが続けられる環境と、メイベルと一緒という状況にこの上ない幸せを感じていた。

 

「メイベル、楽しみだね」

 

ダドリーがボソリと呟く。

クッキーを摘む手を止め、メイベルは首を傾げた。

 

「写真館本当に行くの?叔父さん、いっつも急に決めるんだから…」

 

「あ、うん、そうだね…」

 

ダドリーの曖昧な返事に、メイベルはもう一度、今度は反対側に首を傾げる。

 

「何?ダドちゃん、どうしたの」

 

「…いや、違うんだ。学校、楽しみだねって」

 

メイベルの飲み干したオレンジジュースのグラスに、置いてあったジュースパックをダドリーは注いでやった。

 

「あぁ、そう言うこと?うん、私、楽しみで今日は眠れないかもしれないわ!だって、ダドちゃんと同じ学校に通えるんだもの、こんなに嬉しいことってあるかしら?」

 

「勿論、僕だっておんなじさ。君と過ごす時間はいつだって大事で、それが長ければ長い程嬉しいことだなんて、君は考えたことがあるかい?」

 

「えぇ、毎日よ!あなたといつまでも一緒にいたいと常日頃考えているの。わたしたち、気持ちは同じなのね」

 

2人はにっこり笑い合うと、階段からバーノン叔父さんとペチュニア叔母さんが何やら話しながら降りてきた。

 

「だから、言ったじゃありませんか。急に写真館だなんて、予約をしないと受け付けてもらえませんから」

 

「しかし良かったじゃないか、1枠受付出来たのだから…」

 

「奇跡的にね。運が良かった…私はそう思ってますよ」

 

何時もよりきちっとしたスーツに身を包んだバーノン叔父さんと、余所行きのフォーマルドレスを着こなしたペチュニア叔母さんが、ちょっとした小競り合いのような痴話喧嘩をしていた。が、ダドリーとメイベルが視界に入ると2人はまるで宝物を見つけたかのように目を輝かせた。

 

「まぁまぁ、やっぱり素敵なわが子たちね!ふたりでいい子で待っているだなんて、なんて賢い子たちなのかしら!」

 

ペチュニア叔母さんはダドリーとメイベルをわあっと抱きしめると2人の顔を見るなり頬にキスを落として、また抱きしめた。

 

「さぁて!写真館も無事受付出来たから、早速車を走らせるぞ!」

 

バーノン叔父さんは愉快そうに笑うと、車の鍵を握り締め外へと向かう。

 

「もう行くの?待って、髪留めを持ってくるわ!」

 

メイベルはそう言うと、慌てた様子で2階へと駆け上がっていく。

 

「髪留め?…もしかして、ダッダーちゃんが渡したプレゼントの事かしら?」

 

2階へ足を急がせたメイベルを見送ると、不思議そうに呟くはペチュニア叔母さん。普段、髪留めなんてあまり付けやしない、自然体なヘアスタイルで過ごしているメイベルだから、髪留めをわざわざ持ってくるだなんて不思議でいられないのである。

 

「そうかもしれないね。メイベルが髪留めを持ってくるなんて、普段ありはしないんだから」

 

呟きに応えるダドリー。カンカン帽を被りジャケットを羽織ると階段からメイベルの足音が聞こえてきた。

 

「あったわ。これがなくっちゃ、大切なものだから」

 

手のひらに包まれて持ってきたのはペチュニア叔母さんが考えていた通り、メイベルの誕生日プレゼントにダドリーが渡したリリーの花の髪留めだった。キラキラと輝きを放つ髪留めはペチュニア叔母さんの手によって、メイベルの髪へと付けられていく。

 

「大事にしてくれていたなんて、ダドちゃん、嬉しいわね」

 

にっこり微笑むペチュニア叔母さんに、2人も釣られて微笑んだ。

 

「ほら、行きましょう、バーノンが車の中で待っているわ」

 

手早くテーブルのオレンジジュースが入っていたグラスをキッチンへと片付けるとメイベル、ダドリーを車へと向かわせるペチュニア叔母さん。言われるがまま、2人はお利口に車へと乗り込んでいった。最後に残ったペチュニア叔母さんは家のチェック…火は止めたか、電気は消したか、洗濯物は干したか…一通りの家事を確認して自分も玄関の鏡で身だしなみを整えると玄関に鍵を掛けて車へと乗り込んだ。車に乗る直前、近所のおばさんが覗いていたような気がしたが、知らないふりをした。この辺は皆詮索が大好きなご近所さんでいっぱいだからだ。私たちの幸せな家族っぷりを疎ましく思う人だっているだろう。気にかけるだけ損である。

 

バーノン叔父さんは上機嫌で車を発進させた。

 

「写真を撮り終えたら昼食もそこで済ませよう。きっと終わった頃にはお腹が空いてくるだろうからな。名物でも食べようじゃないか」

 

ちゃっかりグルメ雑誌まで持ってきているバーノン叔父さん。準備が良い。雑誌には地元の有名なレストランから個人店までありとあらゆるグルメについて詳細に、また魅力的に掲載されている。そして、そのいくつかのページに、付箋や折り目がつけられており、日々愛用している様が窺えた。

 

「そうね、買い物もしたいからちょうど良いわ。…あぁ、そう、制服汚れると良くないから着替えちゃんと持ってきているわよ。写真を撮り終えたら着替えると良いわ」

 

ペチュニア叔母さんはにこやかに笑う。車内の座席の足元に置かれた紙袋には、2人分の着替えが畳まれて入っていた。

 

「ありがとう、そうだよね。明日着ていくのに汚してしまったら大変だもの。終わったらすぐ着替えるわ」

 

紙袋の中身を確認すると、袋を足元の端に寄せて座り直すメイベル。ダドリーはその様子を黙って見ていた。

 

「あぁ、そうだ。この巾着袋、メイベルの髪留めを入れるのに使ったらいいんじゃないかな?無くしたらきっと困るだろう?」

 

ふと、ポケットを漁り手のひらにすっぽり収まるくらいの大きさの巾着袋を取りだしたダドリーは、それをメイベルに手渡した。

 

「あ、ありがとう。えぇ、この髪留め私にとって1番大事なものだから無くしたら凄く困るわ。撮影が終わったら直ぐこれに仕舞うね」

 

ダドリーから巾着袋を受け取るとにっこり微笑むメイベル。巾着袋は着替えが入っている紙袋にポンとメイベルによって置かれた。2人の話を助手席で聞いていたペチュニア叔母さんは、1つ提案をする。

 

「ねぇ、メイベル。髪留め、無くさないように巾着袋に入れたら私が預かっておいても良いかしら?私が持っている分には壊れたり、無くしたりしないと約束できるわよ」

 

思ってもないことだった。物の管理も徹底しているしっかり者のペチュニア叔母さんが大切な髪留めを預かってくれるとは。安心して任せられるだろう。

 

「わぁ、嬉しいわ!じゃあ、写真を撮り終えたら巾着袋に入れて、それから預かってくれるかしら?」

 

「勿論、バッグの中に入れて大切に保管するから、それまではメイベルが無くさないように気をつけるのよ」

 

にっこりと釘を刺すペチュニア叔母さん。預かってもらうそれまでの間は自己管理となるわけだから、無くさないように落とさないように慎重にならなければならなくなった。

 

「そうね、髪に付けてさえいればきっと無くさないと思うけれど、気をつけるわ、ありがとう」

 

メイベルはしゃんとした気持ちになった。ダドリーは偶然ポケットの中に巾着袋が入っていて良かったと、一人心の中で呟いた。

 

そうして暫くは車に揺られ過ぎ行く街の景色をただただ眺めていると、ものの30分もしないうちに目的地へと着いた様で、バーノン叔父さんは駐車場に車を止めて運転席から外へと降りた。メイベルたちが座っている後部座席のドアを開けると出るように促した。

 

「さぁ、待ちに待った記念写真を撮る時間だ。着いたぞ」

 

「そうね、大して時間もかからず着けて良かったじゃない。さてさて、2人とも紙袋の着替えと、忘れ物は無いように車の中を確認しておきなさい」

 

ペチュニア叔母さんも助手席から外へと出ると、反対側の後部座席のドアを開いてメイベル、ダドリーの2人に声を掛けた。

 

「あっという間だったね。僕が紙袋持つから、メイベルはそのまま出て良いよ」

 

ダドリーがメイベルにそう言うと、着替えの入った紙袋を持ち、車から出る。

 

「わかったわ」

 

メイベルも納得した様子で何も持たずに車から出ると、ペチュニア叔母さんに言われた通りぐるりと車内を見回し忘れ物が無いかしっかりと確認した。そして崩れたヘアスタイルと髪留めを付け直す。ペチュニア叔母さんは2人が車から出たのを見届けると、もう一度車内を見回し忘れ物が無いか目視でしっかりと確認した。何も無い、塵一つない車内を見てふぅとため息を零すと車のドアを閉めて、次にバーノン叔父さんが鍵をかけた。

 

「時間丁度だ。なんて良い日なのだろうな、わはは!」

 

時計を見ながら軽快に笑うバーノン叔父さん。予約枠の時間に問題なく辿り着けたようだ。4人が歩いて写真館と書かれている建物の中へ入ると受付らしきカウンターに優しそうなおばさんが座って何かを書いたり、かかってきた電話に応えたりしていた。

 

「あの、予約をしたダーズリーですが…」

 

電話対応をしている手前、こっそり静かに話しかけるバーノン叔父さん。おばさんは手で待っていてくださいとハンドサインを出すと、忙しなく帳簿にメモを取っていた。

しばらく、と言ってもほんの少しの間だが待っていると電話が終わったようでおばさんがバーノン叔父さんに向き直った。

 

「こんにちは、ようこそお待ちしておりました。ダーズリー様でございますね。只今撮影スタッフを呼んで参りますので、すみませんが少々お待ちくださいませ」

 

受付のおばさんは深々とお辞儀をするとゆったりとした物腰で受付の裏側へ立ち去っていく。

 

「あら、自分で付け直したの?ちょっと私がもう一度付けてあげましょうか?」

 

待っている間にメイベル自身で付け直した髪留めが、少し、いびつになっていることに気付いたペチュニア叔母さん。よく気が付く人である。

 

「上手くできていなかった?ダメね、顔が後ろにもあればいいのに!お願いするわ、せっかくの撮影だもの」

 

パチンと音を鳴らして髪留めを外すメイベル。言われたまま、頭をペチュニア叔母さんに預けた。

 

「えぇ、そうよ。今日の写真が家のリビングルームに永遠と飾られ続けていくのだから、綺麗にしなくっちゃあね」

 

バッグからコームを取り出すと梳かしながら髪留めをしっかり付け直していくペチュニア叔母さん。

 

「はい、できたわよ」

 

「ありがとう、ペチュニア叔母さん!やっぱりやってもらうのが1番ね」

 

受付の周りをくるりくるりと回りながら嬉しそうに笑うメイベル。ダドリーも朗らかにその様子を見つめていた。

 

「申し訳ございません、お待たせいたしました本日撮影を担当させていただきます私アイラと、補助のイーサンにございます。よろしくお願いいたします」

 

ちょうど、程なくして受付の裏から慌てた様子で出てきたスタッフ2名が挨拶を。女性スタッフのアイラと、男性スタッフのイーサン。どちらもまだ若い新人スタッフのように窺える。

 

「イーサンです、撮影の補助を担当いたします。よろしくお願いいたします」

 

「あぁ、よろしく頼むよイーサン」

 

男性スタッフのイーサンと、バーノン叔父さんがガッシリ握手を交わした。ついでに肩をパンパンと叩くのも忘れずに。

 

「メイクアップやドレスアップは既にお済みとお伺いしておりますので早速撮影に移らせていただきますがよろしいでしょうか?」

 

ダーズリー一家を撮影場所に案内しつつ、機材を調節していくアイラ。新人スタッフのように見えても手馴れた様子で着々と準備を進めている。

 

「えぇ、構わないわよ、もう、済ませてきたからね。あぁ、でも、終わったら坊やたちの分だけ着替えても良いかしら?ほらあ、この後ランチだから制服を汚したら困るのよ」

 

「あぁ、なるほど。確かにおろしたての制服は貴重ですものね。ドレスアップルームをご利用ください。他には何かございますか?」

 

コンコンと背面にある壁を指で叩く。その一角、場所が簡易的なドレスアップルームになっているようだ。

 

「結構よ。撮影に入ってちょうだい」

 

ペチュニア叔母さんがメイベルとダドリーを撮影場所の指定された位置に立たせるとそこに置かれた椅子に躊躇いなく座る。

 

「かしこまりました。イーサン、照明をこっちによこして!」

 

「了解、アイラ。こっちは準備出来ているよ。いつでも!」

 

スタッフの2人がカメラと照明を持ち、準備万端に構えている。

 

バーノン叔父さんも横に並んで良い笑顔をカメラに向かって決めている。後は撮るだけである。

 

「いいね、皆さんー、ワンツースリーで撮りますよ。ワンツースリー!」

 

パシャ

 

「もう一度撮りますー、ワンツースリー!」

 

パシャ

 

「ありがとうございますー、写真を確認いたしますので、あちらの椅子に座ってお待ちください」

 

すんなりと、思っていたより早く終わった撮影。後は撮れた写真を確認するだけである。

 

「僕、変な顔していなかったかな?とびきりのスマイルだったと思うんだけど」

 

「ふふふ、きっと素敵な1枚になっているわよ。どんなダドちゃんでも私は好き」

 

受付の横に座って写真が仕上がるのを待っている間、ダドリーとメイベルは他愛ない話をしていた。ふざけた様子で指を口の端に置いてぐいーっと引っ張りわざとらしく笑顔を浮かべるダドリー。それをまた面白がってくすくすと笑うメイベル。最後に甘い言葉を囁くのも忘れていない。途端に顔を赤くするダドリー。緩みきった笑顔がまた、嬉しさに身を震わせているのが窺える。

 

「急に予約したとはいえスムーズに撮影出来てほんとに、良かったわ」

 

「そうだな、うむ、今日はとても幸運だろう!」

 

ペチュニア叔母さんとバーノン叔父さんもお互いに他愛ない話をして待っている。

 

「お待たせいたしましたお写真仕上がりました、ご確認お願いいたしますー」

 

スタッフルームからアイラとイーサンが出てきて写真を近くにあるデスクへと置く。それは見事に全員が素敵な笑顔を浮かべた家族写真に仕上がっている。ダドリーはメイベルに手を握られ少し頬を染めたあどけない表情に、固く手を握った嬉しげな表情を浮かべるメイベル。いかにも、立派で大きな顔をしたバーノン叔父さんに、朗らかな笑みを浮かべるペチュニア叔母さん。パッと見ただけでも、とても幸せそうな家族写真である。

 

「あらあら、良いじゃない!今までの、どの写真よりとびっきり素敵な写真よ。皆、笑顔が輝いているわ!」

 

ペチュニア叔母さんはデスクに置かれた写真を手に取ると、とても喜んでみせた。そして、次に写真を手渡されたバーノン叔父さんは同じように、実に誇らしげに笑った。

 

「うむ、とても良いではないか!これは相当飾りがいがある1枚だぞ。せっかくなら、リビングルームの1番目立つ所に飾っておかなければな、わはは!」

 

両親とも満足そうに写真をデスクに置くと、ダドリーとメイベルもその写真をまじまじと覗き込んだ。

 

「…へへっ、なんだか恥ずかしいや。僕、変な顔になっているよ」

 

ダドリーは鼻をくいっと擦りながら、照れ笑いをしてメイベルを見つめる。

 

「えぇ、そうかしら?これ以上ない、良い写真だと思うわ」

 

デスクから写真を持ち上げて、じぃっくり眺めるメイベル。そして写真を置き直すとダドリーに優しく微笑みかけた。

 

「はい、確認ありがとうございます。問題なければこのままお渡しにはいりますが、いかがいたしましょうか?」

 

カメラをセッティングし直していたスタッフのアイラがやってきて、ペチュニア叔母さんとバーノン叔父さんに話しかける。

 

「あなたは?勿論、問題ないわよね?」

 

「あぁ、バッチリ。最高の1枚だよ」

 

ペチュニア叔母さんとバーノン叔父さんが同時に納得すると、置かれた2枚の写真の内写りが良い1枚をスタッフにより厳選して茶封筒に入れ、丁寧に包むと受付に回す。

 

「素敵なお写真が出来上がり本当に良かったですね〜。よろしければおサイズちょうどの額縁もご用意しておりますが、いかがされますか?」

 

先程の受付のおばさんが、受け取った写真入り封筒をカウンターに置き、壁に掛かっているいくつかのデザインされた額縁を手で指し示す。

 

「うむ…、ペチュニア、お前はどれがいい?」

 

困り顔で、ペチュニア叔母さんに尋ねるバーノン叔父さん。このような物を選ぶのは大体ペチュニア叔母さんの出番である。

 

「私ですか?…なら、このゴールドの花柄が素敵なんじゃありませんこと?」

 

壁掛けされた額縁を一つ一つじっくり、丁寧に、手を触れないように眺めて選別すると、ふと、目に止まったのは隅が敢えて古めかしく汚し加工をしているアンティークゴールドの、綺麗な花々が散りばめられた額縁だった。

 

「ではそれを1ついただこうか!」

 

バーノン叔父さんがそう言い放つと、受付のおばさんはひとつ頷き、バックヤードまで在庫を取りに消え、たと思えば直ぐに出てきて箱に入った同じ額縁をカウンターにそっと置く。

 

「こちらでお間違えありませんね?お会計はまとめてお支払いで構いませんか?」

 

そう言うやいなや、レジを打ちだすおばさん。手際よくバーコードを読み取ったり、今回の写真代の総額を計算していく。

 

「支払いはカードが使えるかな?」

 

「もちろんにございます。お品物お包みいたしますので少々おまちくださいませ」

 

おばさんは計算の傍ら、額縁と写真を丁寧に包みパンフレットや無料のフレームなんかもおまけして紙袋に入れ、お渡し用にセッティングをする。

 

「お待たせいたしました、ではカードをスキャンお願いいたします」

 

カードを機械に通すバーノン叔父さん。これで全てのお会計は完了した。

 

「では、本日のお品物でございます。またぜひ、なんでも記念に撮影へ来てくださいまし。……あぁ、そうだ。スタッフから伺っておりました、着替えをご希望でしたね。さぁさ、こちらをお使いください」

 

バーノン叔父さんは品物を受け取り、ダドリーとメイベルは受付のおばさんに促されるまま、ドレスアップルームへ移動する。

 

「ダドちゃん、メイベル、着替えを置いておくわね。着替えたら制服は畳んでちょうだいね、紙袋に仕舞いますから」

 

締まり切ったドレスアップルームのカーテンの中で着替えを始める2人は同時に返事をすると、ペチュニア叔母さんによって置かれた私服に手を伸ばし、いそいそと着替える。そして、先にダドリーが出てくるとダドリーなりに畳んだ制服をペチュニア叔母さんに手渡す。

 

「あらあら、ダドちゃん。もうちょっと、綺麗に畳まなきゃダメよ」

 

なんて、小言を言いつつ手際良く畳み直すペチュニア叔母さん。そして、紙袋へ制服をそっと仕舞う。

その後出てきたメイベルは、女の子らしく綺麗に畳んだ制服を自分で紙袋に入れた。

 

「お疲れ様でしたー、今日はありがとうございます!」

 

突然、スタッフルームから出てきて声をかけてきたのは撮影スタッフのアイラだった。アイラはにこにこ、朗らかに笑うと続いてイーサンもひょっこり顔を出して礼を述べた。

 

「本日はお忙しい中ありがとうございましたー!またぜひ来てくださいね!」

 

こうして、無事に写真撮影は問題なく終わった。




当時の写真館がどのような感じか見よう見まねです。
ダドリーは優しくて、お兄ちゃん気質な所を全面に書いています。
苦手な方はUターンいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。※1話からコピー

ではまた次のお話で会いましょう♪see you♩♪
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