三匹の蛇   作:休肝婆

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 緊張で体がこわばり、首すら思うように動かせないこちらの気も知らず、エバン・ロジエールはいつもの憎たらしい笑顔でよ!と手を挙げた。
 集会場所はレストレンジ家の屋敷。デスイーターの急先鋒としてとっくに知られた名だが、生半可な戦力では太刀打ちできないために、こうして堂々とデスイーターが集まっている。

「寝癖頭をどうにかしろ......レパロ」
「お、ありがとよ。あいつは飲んだか?」
 幸運の液体のことだろう。バーティは目だけで返事する。気分の良さそうなエバンだって、どうせ飲んでいるだろう。
 幸運であれば、僕たちの心が開かれすぎることはない。
 幸運であれば、僕たちはもちろん、友人も守られる。

 バーティは大きく深呼吸をした。




三匹の蛇 19

 

 の朝は早い。4時には窓から青い光が差し込み始め、鳥たちの声や羽音が聞こえてくる。

 ラクランは、ふう、と息を吐いて顔をあげた。少し微睡んだあと、言い争いになりつつレギュラスに眠ってもらって、気づけばもうひとりで3時間看病をこなしている。

「う〜〜ん」

 バキバキと背骨を鳴らして伸びをすると、クリーチャーがすこし瞼を震わせた。

 クリーチャーには30分おきにあたたかい皮下注射と15分おきにちびちび補給をつづけ、さらにそのあいまにバイタルサインを記録した。呼吸数と心拍数は徐々に上昇し、2時ごろから安定している。

 

「様子はどうだ」

「だいぶ良くなってる。もう直ぐ意識が戻りそうだ」

「ほーう」

 一旦休んだ後、自分のベッドへ戻っていたじいちゃんがギシギシと床板を鳴らして現れる。適当な返事をして、珍しくご機嫌な鼻歌を歌いながら外へ出ていった。ドアが開けっぱなしなのにムッとして、杖を一振りしてバタンと閉じる。

 そういえば夜中まではどんな魔法を最初に使おうか悩んでいたのに、がむしゃらに色々使ってしまった。今更だが、最初に唱えたのはなんだっけ?

 じいちゃんが戻ってきた。なにやらわさわさと手に持っている。ヂヂヂ、と音を立てて電気がついて、赤と緑のグラデーションが見えた。

「お、ルバーブだ」

「これでクランブルでもつくるぞ。精をつけるんだ」

「いきなりクランブルは重いかなあ」

「食えなきゃ、お前が食うだけだ」

 ハイハイ、と肩をすくめる。じいちゃんは屋敷しもべ妖精を初めて見るはずだけど、あんまり弱々しいんで世話を焼きたくなったらしい。

 

 湖たちが赤い光を反射し始めたのを見つけて、東向きの窓を開く。冷たく青い草の香りが頬を撫でた。

 湖が点々と広がる草原の向こう、黒々とした山並みの隙間から、少し潰れた半円の赤混じりのオレンジ色がとろりと顔を出した。ずっとみていると太陽が目に焼き付くから、ときどきまだ夜の色を残す山の麓の朝霧に目を凝らすのがコツだ。少しずつ空が水色になり、星が姿を消していく。ついに完全に姿を現した太陽が、家の中までをも赤く染め、草原の草露ひとつぶひとつぶをキラキラと輝かせていった。

 近くのもの、遠くのもの、また近くのもの、と忙しく視線を動かし、動物や植物たちを眺める。それから目を瞑って、すうっと思い切り息を吸い込んだあと、ハンノキの花の香りでかすかに甘い霧を味わって、ゆっくりと吐き出した。

 

「お前は本当にこの時間が好きだな」

「みんな生きてるなーって、思うからさ」

 じいちゃんの呆れた声に振り返ったラクランは、頬をかいた。それからクリーチャーごと、日の当たる窓際へクッションを慎重に移動する。

「あの子はどうした?」

「アー、疲れてると思うから、寝かせてやったんだ」

「こんなにガタガタやって起きないもんか?」

「じつは休めって言ってもなかなか寝ないんで、失神させる魔法をかけちゃったんだ。たぶん起きられない......いて」

 もじもじ言い訳すれば、ぽか、と頭にゲンコツを落とされる。よくないのはわかってたけど、一番確実に休息を取らせる方法だったんだ!

「エネルベート!」

 じいちゃんに睨まれながら、ベッドに向かって反対呪文を飛ばす。すぐに安らかな寝息が途切れて、ベッドがガサガサと動いた。

 

「悪かったよ、おはよう、レギュラス」

「クリーチャーは!」

 眉を下げて覗き込みながら声をかけたが、予想に反して怒られることはなかった。さっと血の気を引かせて、胸ぐらを掴まれる。指の関節が白くなるほど強く握られていたが、レギュラス自体は軽い。そのまま状態を起こして、くるりと回転させ、レギュラスを朝日の降り注ぐ窓辺へ近づけた。

「このとおり、今は日向ぼっこ中。危険な状態は脱したよ。血色も良くなってきたし、見立てではもうすぐ、ワッ!」

 胸ぐらから手を外してもらえると踏んでいたのに、逆に飛びつかれたせいでドガンとそのままテーブルに激突して、床に落っこちた。

「いっっっっってー!君、もう...」

 尻と左肩を強かにぶつけて、文句を言おうとしたけれど、そこで右肩のほうから嗚咽が聞こえたんじゃ黙るしかない。ラクランは黙ってタオルになることにしたが、倒れた机のむこう、日向ぼっこさせてるおくるみがモゾモゾ動いた。

「ねえレギュラス、ねえったら!泣いてる場合じゃないぞ、クリーチャーが!」

「クリーチャー!」

「は、はい?ケホ...ぼっちゃま?」

 クリーチャーが目を覚ました。無理に体を持ち上げようとするが、それはレギュラスから禁止してもらう。たくさんの布に落ち着かないようで、動くのはやめたけれど手で布をいじくって目を彷徨わせる。

「どうしたんだろう?」

「屋敷しもべ妖精は主人から洋服を渡されると解雇になるんだ。だから居心地が悪いのかも」

「ああ、それはうちのタオルや毛布だから、心配いらないよ。今はおとなしくくるまって」

「ケイヒル......レギュラスぼっちゃまのご友人...半純血の可能性が高い...」

 顔を知られていたのには驚いたけれど、続く言葉についピシリと固まる。

「クリーチャー!」

「いや、いいよ、事実だ」

 

 屋敷しもべ妖精までもが厳しい純血主義なのには驚いたが、彼が主人にどんなに忠実な存在なのかは、昨日もきいた。レギュラスをいなしたところで、テーブルを直す音がして、じいちゃんの存在を思い出した。

 じいちゃんは、振り返ったラクランに、眉をひょいと持ち上げてとぼけて見せる。

 いいや違う、ラクランは首を振ってみせた。

 魔法界の凝り固まった思想を飲み下してそっちで生きると決めたおれはともかく、おれを尋ねてきた友人のために、ただ世話を焼いただけのじいちゃんが傷ついてないフリをするのはおかしい。

「クリーチャー、たしかにおれはマグルの母さんと、誰かも知らない父親の子供だ。ファミリーネームから分かる通り、半純血の可能性が高いのは否定しない」

 キッチンの方の、母さんの写真をチラリと見ながら、胸をはっていう。なにも恥じるところはないんだから当然だ。それからラクランは一歩近づいて、腰をかがめた。

「でもね、今君がいる家の主人は、おれの祖父。じいちゃんはマグルだけど、君の命を救うのにだって協力してくれたんだぜ。おれの尊敬する人だ。だからとりあえずこの家にいる間は、誰のことも馬鹿にしないでほしい。できるかい?」

「僕も死にかけていた君を助けてくれた二人を尊敬しているし、感謝しているよ」

 クリーチャーは視線を彷徨かせたが、レギュラスが一歩踏み出して言うと、渋々といったように頷いた。

 

「さて!それより時間だ、ちょっと失礼するよ。脈拍数と呼吸数を計らせてほしい。それから補給もね」

 レギュラスが隣にいるからか、クリーチャーはおとなしく頸動脈で脈を測ったり、腹部に手を当てて呼吸を数えるのに従った。塩入りハチミツ湯には顔を顰めたが(おいしくないから仕方ない)、粛々と飲む。

「うん、屋敷しもべ妖精の平均値がわからないけど、上昇した後この2時間で安定している。どうだい?なにか食べられそう?」

「屋敷しもべに、魔法使いが料理をするのですか?」

 垂れた瞼を目一杯持ち上げて、クリーチャーが驚く。

「おれは結構腕に自信があるぜ、じいちゃんも」

「フラップジャックはとくに絶品だよ」

「レギュラスもなにも食べてないんでしょ?」

「ぼっちゃまがお食べになるなら、クリーチャーもいただきます」

 じいちゃんが楽しげに腕まくりした。

 話は決まった。ルバーブクランブル作りだ。

「あ!悪いけど、おれは外に出てていい?」

 窓の外でスナーガラフが揺れるのを見て、ラクランはハッ!と思い出した。

「何をしに?」

「おれ、昨日でようやく成人でさ。君たちが来てすっかり忘れてたけど、もっと家の周りにいろんな守護呪文をかけまくらなきゃ」

「僕も手伝うよ、クランブル作りよりは戦力になる。クリーチャーはおとなしくしていてくれ」

「じいちゃんごめん、終わり次第手伝うよ!」

 

「プロテゴ・トタラム、プロテゴ・ホリビス、サルビオ・ヘクシア、カーベ・イニミカム」

「......プロテゴ・マキシマ、フィアント・デューリ、レペロ・イニミカム」

 ラクランがドッグイヤーをたくさんつけた教科書片手に四方に呪い避けと守りの呪文をかける。それぞれ性質があり、かけ直しも必要だから、時計をみつつ何時何分にどれをかけたのか、羊皮紙にガリガリとメモをとった。

 その横で、レギュラスが小屋のまわり全体を覆うように、強固な盾の呪文をかけていく。レギュラスは先に魔法をかけ終わったが、クリーチャーのいる窓の方をたまに確認しながら、家のちかくの石に腰掛けて戻ろうとはしなかった。

 すべての方向に魔法をかけ切ってから、レギュラスの元へ走る。

「ご協力ありがとう!練習はしてたんだけど、レギュラスがかけた魔法なら安心だ」

「本当にそう思うか?」

 レギュラスは少しも笑わず、左腕をシャツの上からそっと押さえた。その下にはデスイーターの死の印があるはずだ。

「でも、君は今ただのレギュラスだろ。それともデスイーターとして、マグルの家にまで、屋敷しもべ妖精のためにやってきて、おれたちを襲撃でもするのかい?――もう全部、思い出してるんだろ」

「......忘却呪文を使った時、記憶が戻った場合警報を鳴らしたりする仕組みを作るべきだった」

 レギュラスが少し恨めしそうに睨んでくる。ラクランも思い当たるところはあったので、眉を下げた。

「たしかにそこは考えが足りなかった。君がデスイーターのまま、記憶を思い出してたら危なかったな」

「そもそも僕はまともに声も出せてなかったのに、あっという間に扉が開いたぞ」

「あんなふうに夜中にノックする住人なんてこの辺いないからね!でもさ、そうとう強い衝撃や気持ちがなきゃ、忘却呪文で奪われた記憶は思い出さないはずだ。一体何があったんだ?」

 

 岩の隣、草っ原にどかっと腰をおろして、ラクランはついに問うた。結局どうしてクリーチャーがあんなふうになって、どうやってレギュラスがラクランの生まれを思い出し、そしてここまでやってきたか、わかっていないのだ。

 風が額を撫でていき、ウサギがどこかの穴ボコからでてきて走っていく。それを上空からりっぱなハイイロチュウヒが滑空して、諦めたのかまた浮上し旋回をはじめる。

「......記憶を思い出したきっかけは、君にもらった石だ。あれに助けを求めていたら、家の場所など知らないのに、草原にクリーチャーと一緒に勝手に姿眩ましした。その衝撃で」

 レギュラスが、ゆっくりと慎重に口を開いた

「困ったことがあったら、石を返す用事を思い出せ。そんな不可解なことをいって僕に渡してきただろう。僕は友達であることすら、ほとんど忘れていたのに」

「へへ、あれはフェリックス・フェリシスのおかげで口がよく回ったんだ」

「そんなくだらないことに幸運の液体を使ったのか!?」

「くだらないことじゃない。結果的に、幸運が最良の結果に導いてくれたんだ」

 てれくさくなって鼻の下をこすってから、はて?と首を傾げた。デスイーターをやっていて、しかも友達の記憶を忘れていて、ブラック家の当主になっていきそうなレギュラス・ブラックとしては、バーティやエバンの方がずっと頼りやすいはずだ。二人に頼っていたら、石に祈って必死になって記憶を思い出す必要もない。

「バーティやエバンは?いやまさか......」

「ああ、そのまさかだ。僕やいくつかの家は自分の家の屋敷しもべ妖精を、あのお方......いや、ヴォルデモートに伴う任務に出せ、と指示を受けたが、そのとき、ベラトリックスがご機嫌で話すのを聞いていた。ロジエールとクラウチがいよいよ加わる、とね。ウィルクスも去年、成人後加わったから不思議ではない」

 そうか。ラクランは少し背筋を伸ばして座りなおす。

「......二人にも、話は聞いていたよ。全面賛成ってわけじゃないけど、今の魔法界に居場所がなかったり、改革が必要だって考えみたいだ。おれもフランスへ出る予定だし、気持ちは分かる」

「いいや、ヴォルデモートはそんなに甘い相手じゃない」

 

 ふいに風が吹いて雲が流れ、足元から日影に飲まれていっきに涼しくなった。視界の端で、ハイイロチュウヒが抜け目なく急降下し、雲の影で気づくのに遅れた野ネズミを捕まえた。

「僕も初めはそう思っていた。ブラック家という立場として同意できるところがある、と。記憶を消したせいもあるが、結果どうなっていた?」

「どうって、すごかったな〜?パーセルマウスについて熱弁したりしてたぞ」

 どう答えても傷つけるのは目に見えていたが、話は先に進めたい。しかたなく茶化すように言ってみたが、案の定レギュラスは黙り込んでしまった。

「気にすんなよ」

「そうじゃないんだ。ヴォルデモートの強力な魔法も、恐ろしい闇の魔法も、僕は畏怖し、憧れていた――本来なら、恐怖し、警戒するべきだったのに」

「恐怖を尊敬に変えてしまうような、そういう力が?」

「さあ。僕やベラトリックスのように熱心な者はそれほど多くなくて、イライラしていたくらいだから......恐ろしいことをやらねば酷いめに遭うから、いっときの熱でしもべとなって、あとは恐怖から従っていた者も多いと思う。けれど一度ヴォルデモートの眼前に出れば、何を思っても変わらない。結局あのお方の意に沿うように動かなければならなくなる」

「二人も一応、フェリックス・フェリシスを飲むと言っていたけれど......そうか。それで君はクリーチャーを」

「愚かだった。どんな理由や思いがあろうと、家族を差し出すなんていうのは、絶対に間違いだ」

どんな理由や思いがあろうと、家族を差し出すなんていうのは、絶対に間違いだ」

 

 後悔に顔を伏せるレギュラスの後頭部を、そっとぐしゃぐしゃ撫でる。こういうのが一番うまいのはエバンなんだけれど。あの頼れる二人がいないのが、もう心細い。

「.......それくらいあの人の人心掌握がたくみで、危険ということだ。それで、クリーチャーはどんな任務であんな目に?」

「詳しくはわからない。回復したら、クリーチャーから詳しく聞かなければ......あとは見ての通りだ」

「息も絶え絶えで、冷たい水に浸かっていたようだったね。命が危ない状態になった主な要因は、低体温症。それと、呼吸や意識を朦朧とさせる毒が悪さしたらしい」

「うん......結果的にだけど、君に助けを求めてよかった。マグルの知識でなければクリーチャーは生きていなかったかも」

「さあどうだろう。君たちに特別なつながりがあったからこそさ」

 ポン、と膝を叩いて気合いをいれさせる。家の方からいい匂いがしてきた。クランブルは簡単だから、あっという間に調理が終わっちゃったみたいだ。

「さ、行こうぜ?クリーチャーは生きてる。次の問題は君がこれからどうするのかってところだ。食べて精をつけなきゃな!」

 手を引っ張って家の方に連れて行こうとしたが、逆に引っ張り返されてよろめく。

「そうだな、それが問題だ......僕はもはやあの方に忠誠なぞ誓えない」

「じゃあなおさらまずは腹ごしらえだ」

 

 

 バーブの甘酸っぱい匂いが立ち込めた家の中は、太陽の温もりを集めてぽかぽかと暖かかった。

「ごめん!すっかりおそくなっちゃった」

「盗っ人でないなら、よそうのくらいやれ!」

「ハイハイ!」

 ザクザクのクランブル生地と、その下に敷き詰められたルバーブを大きなスプーンでバランスよくよそっていく。しっかり焼き色がついて、ルバーブはとろとろのいい感じ。これに冷蔵庫からアイアンブルーを二缶出して、プシッとあけてグラスに分けて注いだ。

「この気味の悪いオレンジの液体はなんですか?」

「アイアンブルーだよ!スッキリした味のジュースさ、マグルの会社製だから、レギュラスは飲んだことないでしょ」

 クリーチャーは同じ席につくのを躊躇ったが、じいちゃんが彼が座るはずだった整備用の折り畳み椅子をレギュラスに進めようとしたら、素直にそちらに座った。

「甘!」

「ふふん、甘いけどそのあとスッキリするでしょ。クリーチャーも飲んでごらん」

「マグルの飲み物なんて......」

「魔法界じゃ飲めないから、貴重な体験だよ。飲んだらどうだい?」

 アイアンブルーをちびちび飲む二人に笑いながら、クランブルをほおばる。とろっととろけたルバーブは少しえぐみを残した甘酸っぱさで、蜂蜜風味。

「じいちゃん、うまいよ!変わらない美味しさだ」

「相変わらず食事の時にうるさいな。ほれ、牛乳を入れると柔らかくなるぞ。

 硬い生地と格闘しているクリーチャーの皿に、じいちゃんが温めた牛乳を注いでクランブルを柔らかくした。かすかにお礼を言ったクリーチャーは、非常にむず痒そうな顔をしながらもしっかりスプーンを動かしてくれた。

 

 食事を済ませて皿洗いをした後、クリーチャーに話を聞くために、じいちゃんには出かけてもらうことにした。話を聞くことで、じいちゃんにまで危険が及ぶとまずいといえば、しぶしぶ湖に釣りに出かけてくれた。

 レギュラスが、マグル避け、耳塞ぎなどいくつかの魔法をかける。

「さて、ベゾアール石はたいていの毒を解毒する。体調も改善したし、毒は問題ないだろう。あとは、極度に冷えて低体温症になっていたようだった。どうしてそうなったか、覚えているかい?」

「クリーチャー、辛いだろうがなんとか思い出しておくれ。僕は主人として、知らなければならない」

「......クリーチャーたちは、洞窟の前に集められました。洞窟には、闇の帝王が魔法をかけてはいっていきました」

 クリーチャーはひとつ息を吐いてから語り始めた。

 ラクランは羊皮紙を広げて、絵を交えながらメモをとり始めた。

 

 クリーチャーの言葉に従って、シャッと線を引いて、洞窟、湖、小舟、島を描く。

「洞窟に入る前に、あの方はなにか、魔法をかけました。それで中にはいると...大きなホール状になっていて。小舟が寄ってきました」

 島には水盆。水盆には薬液。

「湖には亡者です、たっくさんの!蠢いているのが、あのお方の杖灯りでかすかに見えました。でもそのときは襲って来なかった」

 たくさんね、亡者はわからないから、棒人間をたくさん描く。

 そして、薬液を飲み干すようにと命じられた、と。

「飲み始めるとひどく喉が渇きました。ひどくまた心が痛んで、恐ろしいことをたくさん思い出しました。けれど命令通り、すべて飲み干しました」

「どうして?」

 つい、ラクランは話を止めてしまった。クリーチャーは目を見開いて、何を一体当たり前のことを?というような顔をした。

「レギュラスぼっちゃまに、なんでも言うことを聞くようにと言われていたからです」

 

 飲み干すと、水盆の中に大きな四角いロケットを入れた。薬は再び満たされた。

「それからあの方は一人で舟に乗り、去っていきました。クリーチャーたちを置いて。クリーチャーは喉が渇いていました。水を呼ぼうともどうにもならないので、しかたなく湖の水を飲もうとしたその時、亡者に引き込まれました」

 闇の帝王は舟で戻ったとなると、水盆を空にすると、亡者が起きる?それとも帰りの向きの舟で起きるようになっているのか。ラクランは頷きながら、クエスチョンマークを書き込む。

 冷たい水に無理やり沈められて、溺水状態になったということだ。

「じゃあ、そこからどうやって?」

「戻りました、お屋敷に。レギュラスぼっちゃまに、なんでも言うことを聞いたあと、戻ってくるようにと言われておりました」

「戻った?......闇の帝王も舟を使う場所から、姿眩ましで?」

 レギュラスの震える手と蒼白な顔はとりあえず置いておいて、これも書き込む。どうやってそんな強い力を?と目で問えば、クリーチャーは胸を張った。

「屋敷しもべ妖精の最高法規は、ご主人の命令です。クリーチャーはなにがあろうと、レギュラスぼっちゃまの指示を全うします」

 

「君に、帰ってこいと言っておいてよかった」

 ついに、感極まったレギュラスは自分の椅子を離れて、クリーチャーに近寄り、ぎゅっと抱きしめた。

「戻ってきてくれてありがとう。生きていてくれて、ありがとう......」

「お礼をいただくなんて、クリーチャーは!」

 耳をパタパタさせ、顔を上気させるクリーチャーは驚き慌てている。

「ちょっと、元気になってきたけどまだ安静に」

「そして、なんでも言うことを聞けだなんて軽率な命令を出してすまなかった。間違った人を信じたばかりに、僕は家族を失うところだった。そのような愚か者に、君の主人をやる資格はない」

 レギュラスの言葉に、今度はクリーチャーが一転して真っ青になって、フラリとした。

「あー!バカヤロ、なんてことを!!クリーチャー、気を確かに!」

「ぼっちゃまは馬鹿野郎などではありません!」

「そうは言っても言われて必死に帰ってきてくれたのを主人の資格がないから解雇なんて、馬鹿野郎だ!まだ安静にって言ってるのに......あれ?大丈夫そうだな」

「一瞬お母様の声が聞こえましたが、あなたに怒ったら戻って来れました」

 顔色がベージュに戻ったクリーチャーに払い除けられて、仕方なくラクランも手を離す。レギュラスは自分の言動でクリーチャーが天に召されかけたためによけいに沈んだらしい。力のないレギュラスからも離れて、フン、とクリーチャーは立ち上がった。

「良いですか、このクリーチャーは先祖代々由緒あるブラック家にお仕えしてきたのです。今更、よ、よ、洋服なんて...!」

「そうだ馬鹿野郎って言ってやれ!使い捨てにされた屋敷しもべが外で彷徨いてたらどうなるか考えろって!」

「ぼっちゃまには決して言いません!そういうあなたが馬鹿野郎です!」

「なんでだよ!」

「ははは、すまない、悪かったよ。わかったから」

 ラクランとクリーチャーの応酬についに吹き出したレギュラスは、慌てて謝って、それからようやく腹を括ったらしい。

「わかった。一生懸命生き延びてくれたクリーチャーに報いるためにも、引き続きブラック家に仕えてもらう」

「かしこまりました!」

 

「しかし、本当に使い捨て扱いじゃないか。君、次会うときがあるならなんて言われたかぜひ教えてくれよ。聞いてみたいもんだ、どんな言い訳をするのかさ」

 ラクランは考えれば考えるほど腹が立った。

 初めから殺すつもりなら、そのあと一体どう説明するつもりなんだ?何を思っても恐怖で黙っていると、そう思ったのか?

「僕も正直、もう会いたくない...というより、会えば心変わりを悟られて殺されてしまうだろうけど」

「ぼっちゃまやあなたのような考え方は稀で、屋敷しもべ妖精は家財のようなものと考える魔法使いがほとんどですよ」

「いいやクリーチャー、僕はヴォルデモートと本質的に変わらない」

 レギュラスはクリーチャーを遮り一言一言絞り出すように言って、それからラクランに目を合わせて苦く笑った。

「ヴォルデモートにとって、クリーチャーの命はもちろん、僕の心も、他の誰かも、すべてどうでもいいんだ。

マグルを惨殺したり、血を裏切る家を襲撃していたのだから、なにを今更当たり前のことをと君は思うだろう......。僕は自分の家族が脅かされるまで、あの人の攻撃性がこちらに向く日など来ないと思っていた。誰かの命を無碍に扱う人が、他の誰かを真っ当に扱う保証など、どこにもないのに.....」

「それなら君は同じじゃないだろ。君は大切なものを持ってるんだから。闇の帝王が自分のこと以外なにも大切にできない、自分のことすら大切にできない哀れな人なら、こうして離れて正解だ。

どんなに思想が支持できても、根っこが腐ってちゃ従った先に明るい未来は見えない。大事なものを持てない人と、一緒になって大切なものを失う必要はないよな」

「ふふ、ありがとう。僕にはまだ、大事なものがある」

 すっとレギュラスは笑みを消して、灰色の瞳をぎらりと光らせた。

 

「僕は、ヴォルデモートの元には戻らない。

次に招集がかかるまでに、クリーチャーを使い捨てにしてまで隠した大事なロケットを、僕が暴き、あわよくば破壊する」

「そのあとは?どうするつもりだ」

「さてね。君と一緒にフランスにでも行こうかな」

 つまり捨て身の復讐だ。できるのか?それより、まずクリーチャーが黙ってない。案の定おいおい泣き出して、レギュラスの足元に縋る。すっかり元気そうだな。

「お、お屋敷には!?」

「わかるだろう、屋敷には戻れないよ。バレなければバーティとエバンの様子をみて、死の偽造工作でもしようかな。しばらく家をあけるけれど.......誰のことも大切にできないあの人は、万全な支配などできないだろう。そのうちきっと帰るよ」

「ヴァルブルガ様になんとお伝え申し上げれば良いやら」

「母上にはなにも伝えない。ただでさえシリウスが出ていってからあの調子だ。絶対に止められる。父上には......」

 

「いやいや、ちょっと待って?」

 やはりギラギラとしたまま、妙に爽やかに語るレギュラスに堪えきれなくなってついにラクランも立ち上がった。

「家族もそうだけど、例の洞窟やロケットやら、どうにかできるの?それに君にできることはまだたくさんあるはずだ!落ち着けよ、君は復讐心で冷静じゃない」

「君に僕の気持ちはわからない!」

「そりゃ違う人間だもの。だが冷静じゃなくなってどうにかできる相手でもないだろ!クリーチャーがこうしてなんとか戻ってきてくれたのに、君は自分を無駄遣いするつもりか?」

「......目の前の冷たい弱ったクリーチャーに手を震わせながら、血が滲むほど小石に縋って、記憶もないのに勝手に草原に姿眩ましして、君のことをすべて思い出したときの、僕の衝撃がどれほどだったか」

 レギュラスは椅子の上で背中を丸め、打って変わって小さく掠れた声でこぼした。クリーチャーが背中をさすりつつラクランを睨みつけるが、その手もやんわりと避けられる。

 

「魔法族を日の当たるところへ、そのためにマグルを殺せ!僕が昨日まで身を置いていたのはそういう悍ましい思想だ。その主は僕の家族を殺しかけ、今、助けを求めて縋っている石をくれた友はマグルの血を引いている。石を縋る理由として寄越し、躊躇わず手を差し伸べてきた......僕はもう、自分の罪に耐えられない......!」

 喉から血を吐くような声だった。

 レギュラスは昨日、物理的にはどこも傷つけられていない。けれど長い時間をかけて、忘れていたことと、したがっていたことと、両方で傷つけられていた心の傷が、昨日全部露わになってしまったのだ。

「わかった、それはわかったよ。でも記憶を忘れたのは君の罪じゃないだろう?お互いを守るためにみんなで同意してやったんだ。だから忘れていたことと、そのあいだの言動はそう気にするなよ」

「それは違う。言っただろう?僕は本質的にヴォルデモートと同じ人間だ。たしかに記憶をなくしていたが、全部忘れたわけじゃない。僕は殺される人々と、君を違う種類の人間だと区別していた。友であり優秀で分別のある君は襲撃されるはずがない、とね。でも君はマグル生まれだったし、マグルのお祖父さんまで、助けてくださった。襲撃されていい人など、いるはずもない.......僕はあの人と、ずっと同じ考え方をしていたんだ」

 

 ほとんど、罪の告白のようなものだと思った。

 人は自分の知る狭いところまでしか配慮などできないし、愛など持てないのは当たり前だ。でも、毎回信じられないほどの新鮮さと恥ずかしさを味わう。

 ラクランはこの土地に育って魔法生物のことなどちらとも知らず、ただこの土地を愛していた。魔法学校にいってようやく美しい魔法生物たちや、楽しい友人たちに出会った。レギュラスは、ちょうどそんな気持ちなのかもしれない。同時に、先に森に火を放ち村に日が当たるようにと信じて動いていたそれまでの自分が、信じられないほど残酷に見えている。

「気持ちはわかった。自分のことも大事にするのが、周りを大事にする一歩だ。君が大事だって思うのと同じくらい、君と関わる周りのみんなは、君を思ってる」

「まったくそうです!あんなハゲナスのために、レギュラスぼっちゃまが命をかけたり、まして死ぬ必要は決してありません!!」

 力一杯腕を振りながら、クリーチャーが賛成した。あんまりな言い草に、ぶー!と吹き出す。

「ハゲナス????闇の帝王はハゲてるの?」

「ええ、見事なハゲでした!声音は若いのに、一本もありませんでした!」

「なに......?」

 レギュラスは少し考え込むそぶりを見せたが、一つ頷いて絶対に生き残る方法を模索することに同意した。

 

「ハイ、あーじいちゃん?ごめんお待たせ。帰ってきてもらっていいよ。もう大丈夫そうだし、緊急でこっちに来ちゃったから、一度家に戻るって。その前にお礼を言いたいそうだよ。またバタバタするかも知れないけど、詳しいことはあとで、うん」

 ガチャン、と電話を切ると、物珍しそうに目を見開くレギュラスとクリーチャーが目に入る。

「それはなんだい?」

「ああ、電話だよ。遠くの人まで、声を届けて話すことができるの」

「マグルは面倒なことをなさいますね」

「君みたいにそこらじゅうで姿眩ましできないからね」

 くつくつ笑ってから、咳払いして場を改め、メモをとった羊皮紙に再び立ち返る。ラクランも腹を括った。

「ロケットを気づかれずに盗むには、3つの壁がある。ヴォルデモートの守り、毒薬、ロケットの偽造、この三つだ。ヴォルデモートが気づかない保証は?」

 次々と議論をかわし――とくに、ベゾアール石で解毒できなかった場合誰が毒を飲むかは大変白熱した――ひとまず決着して、ラクランはシャッと羊皮紙を書き上げた。杖で叩いて、複製呪文で二つにする。

 ちょうどじいちゃんのバイクの音が聞こえてきた。

「それじゃ、手頃なロケットが見つかったら、手紙を出す」

「おれはベゾアール石の調達と、エラ昆布を準備しとくよ」

 じいちゃんに懇切丁寧に礼をして、家のすぐそばでクリーチャーといっしょにパチン!と消えた。

「あれでロンドンまでひとっとびか?いいもんだな、魔法ってのは」

「おれももうできるよ!免許がないけど」

 

 

 

 外にも数日で、ブラック家からのフクロウが来た。

 ロケットを見つけた、明日12:00庭先に来られたし

 

 短く一文だけ書かれている。昼には、ということかな。とりあえず今のところは彼に身の危険はなさそうでよかった。エバンとバーティから手紙の返信がない分、少しだけ嬉しい。

「じいちゃーん、今日昼にはレギュラスくるよ、サンド作ったから、持っていって。病院は午後一時で予約したから!」

「やかましい孫だ!」

 ラクランは自分の練った生き延びる策の案をいくつか書いたものと、バーティと一緒に練習で調合して作りためたさまざまな毒薬をガチャガチャと屋根裏部屋から降ろしてきた。

 

 時間きっかりに庭先でパチン!という音がした。窓から覗けばきちんと石を首から下げたレギュラスが、ひょいと手を挙げた。

「早かったね...ゴホン!念の為きくよ。おれが準備すると言ったのは?」

「いいね、ベゾアール石と養殖エラ昆布だ」

「正解!ようこそレギュラス。お昼は食べてきたの?」

「それが、父上が一緒にどうだというんだ。数日前まで熱を出していたのが、下がってね。母上は今日、ナルシッサのところに行っている」

「えー、こんな格好でいいかな」

「気にするな、パーティじゃないんだから」

 レギュラスの家に行くのは初めだ。こう言う時無駄なことをする人ではないから、作戦に必要なんだろう。それに、みょうに急いでいるようで、時計をチラチラ確認している。

 慌てて道具類をまとめ、レギュラスの家に行く、と書き置きを書いて、居間へ戻る。

 ガチャガチャといろいろ入ったカバンに頷いたから、もしかすると本当にそういうことになりそうだ。

 ズイ、と肘を出されて、しぶしぶそれに掴まった。

 

 ぐるぐると視界が回って、上質なカーペットに足がついた。

「ようこそ、我が家へ」

「ふーありがとう、お邪魔します。クリーチャーの仕事は素晴らしいね」

 歩きながらあたりを見回すが、全体に冷たい色の照明と黒い配色で、荘厳ながら厳格なブラックらしい家だ。

 レギュラスがドアをあけ、促されるのに従って立派な長机のある居間に入った。正面には、白髪混じりの髪をピッチリと整えた神経質そうな初老の男が腕を組んで座っていた。

「初めまして、ラクラン・ケイヒルです」

「......」

「あの?ミスター?」

「ああ、失礼した。ミスター・ケイヒル。よくきたね、いつも倅が世話になっている」

「いえ...」

 濁った灰色の目が、奇妙に静止したことには気付いたが、クリーチャーに促されるままふかふかの椅子に腰掛ける。レギュラスが真ん中に腰掛け、緊張で全く味のしない食事が始まった。

 

「ときに......闇の帝王を裏切り、破壊するロケットの代わりに、我が家の家宝を出す話だが」

 ラクランは思わず豆を取り落として、目を見開いてレギュラスを見た。話したのか!?

 レギュラスのほうもフォークをとめ、固唾を飲んで見守っている。

「......許可する。お前の気持ちはわかっている。ただし、努めて生きて帰ること。クリーチャー、お前も死力を尽くすように」

「はい!」

「ありがとうございます、父上」

「あ、ありがとうございます!」

 慌てて声を張り上げたが、ブラック氏は深く目をつむり、優雅にお茶を飲んだだけだった。

 

「悪いが、お察しの通り決行は今日だ。状況が変わった」

 食事を終えていまだ灰色の目に見られているような気になりながら、レギュラスの部屋にお邪魔する。

 部屋に入ってすぐ、クィディッチの集合写真が目に入って嬉しかった。他には、新しい新聞たちが神経質に壁に貼られている。

「お父上に話してたんなら、言ってくれればよかったのに......状況って?」

「クリーチャーがそっくりだと言うロケットが家宝の一つでね、もらえるかは賭けだった。状況が、これだ」

 するりと左腕の袖を引っ張って出されたのは、くっきりと濃くなった闇の印。

「集会が近い。最近の動向を見るに、マグルを襲撃するんだろう。僕もいよいよ本格参戦だ」

「その前に、やってしまおうと?」

「うん。集会に出なければ調査が来るはずだ。父上から弱気になって逃げた僕を、彼らが追跡したという形にするよう、バーティとエバンに伝えてもらう」

 ラクランも、右腕の袖を捲り上げてここ数日チラチラと確認していた右腕の友の印を見せた。"敵"の表示はないので、彼らは今、闇の一派だ。だけど破れぬ誓いまで結んでくれた彼らなら、きっと協力してくれる。

「いや、待って。ちゃんと話せば協力してくれるはずだ。むしろ後から恨まれるぞ、彼らもちゃんと友達だろ?おれからざっと本当のことを伝える手紙を出す」

「そんなことができるのか?」

 クリーチャーに牛乳をもらって、それで羊皮紙に書き込む。炙り出しというやつだ。最後にインクで、しっかり自分の署名と、アスフォデルの好むもの、とだけ書く。エバンは無理かもしれないけど、バーティなら伝わるだろう。

 

 クリーチャーが夕食の支度を終えるまで、持ってきた羊皮紙で、作戦を確認する。

 ドキドキと手が震えるが、それはきっとレギュラスをこのまま行かせたら危ないという予感だ。おれがやってやるしかない。

 クリーチャーがいないと脱出もままならないから、万一のためにエラ昆布をそれぞれポケットに忍ばせ、ベゾアール石もあらかじめ砕いて瓶に入れた。それからそっと、もしかしたら使うかもしれない、3時間分のフェリックス・フェリシスの瓶に触れる。

 そこへ、大慌てのクリーチャーが走り込んできた。

「お待たせしました!」

「いっぱい姿くらまししてもらうぞ、体調は万全か?」

「完璧です!」

 クリーチャーが細い腕で力瘤をつくるのにくすくす笑い、それからレギュラスと目を合わせて頷きあう。

 クリーチャーの手を片方ずつとって、三人で手を繋いだ。

 

「それじゃ、生きて帰ってこような。洞窟へ!」

 

 

 




長くなったのに洞窟まで行けなかった〜!!申し訳ない!
でも考え方、感じたこと、訣別の理由はめっちゃ大事だと思ってるので、大事に書きました。解きほぐし役がいる拙作ですが、原作ではもちろんいないので、心情を思うと、そりゃ正気じゃない捨て身の復讐をしちゃうよね...と思います。

◽️今回の捏造箇所◽️
・バーティとエバン、デスイーター入り!
 レギュラスが公式設定で16から加入なのですが、やっぱ成人済みじゃないと魔法省に捕捉されるので、ブラック家みたいな特例でなければ17の夏休みかな、という想定です。オブリビエイトはせず、破れぬ誓い+フェリックス・フェリシスをキメて臨んでいます。

・クリーチャーのお話
 改めて振り返ってみると、クリーチャー一人で全部飲んだか分からず、複数人説を採用しています(何人かのデスイーターから屋敷しもべを借りて、みんな死なせた)。一人だけ行って一人が生き延びる、だと瀕死の説得力に欠ける気がしたためです。あと、おそらく帝王は自分の作った罠RTAをしたいがために、抵抗しないで魔法使いに従う屋敷しもべ妖精を強制レンタルしてるので、数が多いほうがRTAになりますよね...?
 また、拙作独自の理由としてはこれから行う復讐が一旦冷静になりつつの復讐のためです。今回、レギュラスは外に聞き役がいて、対話しながらメキャメキャになった心を解きほぐし、比較的冷静に復讐の意図を固めます。そのため冷静になっちゃうと、他の家の屋敷しもべ妖精は?それをつかってまたすぐ確認にくる可能性は?という疑問が残ります。(事実、マルフォイ家のドビーもいますし。ドビーは屋敷しもべ妖精では異端なキャラクターで、またうっかり失言も多いので実戦投入されるか微妙です)
 ということで、「実戦投入できる屋敷しもべ妖精」を、帝王がRTAしたさと命へのリスペクトのなさのために無駄死にさせ、デスイーター側に「使える」屋敷しもべ妖精がいない、という状況がふんわり完成して欲しいなと思ってこのようにしました。実際どうだったんだろう...レストレンジ家とかはいてもおかしくなさそうなんですが。

・毒薬
 原作を読んでいてめっちゃ謎なのがこの絶望の飲み物です。どういう薬かわからないけど、ダンブルドアが行く時には再び水盆が満たされています。でも、レギュラスたちは原作では解毒できずに苦しみながら飲んでそのままです。自然に湧き上がるシステム??謎です。ということでちょっとボカして書きました。

・父上
 オリオン・ブラックとの関係性が本当に謎なのですが、シリウスと違って家族を大切にする息子だったレギュラスが、無断で家宝を使うのに違和感がありまして......もしかするとうちうちに話があったかもしれない、と考えました。ヴァルブルガは肖像画のヒステリックな印象が強いですが、シリウスの反抗期と弟の死、シリウスの勘当からすでに崩壊は始まっていると思います。意思疎通が取れそうかつ、許可を取らなければならないのはオリオン。ということで、解熱早々にお食事の席についてもらいました。

・バーティとエバン、偽装工作に参加の可能性
 これは原作の描写を参考にしました。シリウスやルーピンが断片的に記憶を語るのですが、クリーチャーの語る真相とは大きく逸れたものが多いです。精神崩壊してしまったヴァルブルガによるところも大きそうではありますが、学友などによるなんらかの名誉回復などを偽装工作があったのでは?という方向で想像を膨らめました。拙作現時点ではエバンもバーティも、完全に盲従する熱心なデスイーターではなく、あくまで思想に共感する支持者、程度の熱量です。このメンタルがいつまで続くかは帝王のカリスマ次第ですね。

・いざ、洞窟へ!
 確殺系じゃないめちゃくちゃ性格悪い罠で満たされた洞窟、無事に二人と一妖精帰って来れるのか?ぜひお見守りください。

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