キングズ・クロスの人混みはすごかった。ユーストンから歩いた時は昼下がりだったけど、今は通勤の時間。コーヒーと、タバコと、香水の匂いが溢れかえって気持ち悪い。今頃家の方は冷たくてほのかに甘い霧の中だろうに!
人の波の中、でっかいカートを押して歩くのも至難の技だ。ラクランは最初、恐々歩いていたが、こっちがこどもと見てわざとぶつかって来るクソジジイに気づいてからは自分をラッセル車だと思って思いっきり人の波を割ってやった。
セーターの左胸ポケットを叩いて、切符を思い出す。
「9と......(3/4)」
そっと周りを窺って、最後は小声でつぶやいた。
エレベーターで降りて、9番線に入る。流石に田舎者でも3/4がヘンってのはわかる。もちろんスラグホーン先生にも聞いたけど、「慣例で喋れない」と言われた。そういう法や規則があるんじゃないのに、慣例にスラグホーン先生は従う。流石にちょっとイラついて
「先生は困っている生徒を助けるより、風習を守るほうが大事なんですね」
と皮肉ってしまったけど、ほけほけ笑ったままではまたホグワーツで、と言われたから、意味はわからないけど困難な問題ではないはずだ。
なるべく人の邪魔にならないように柱に体を寄せて観察してると、スラグホーン先生のように古臭い格好をした家族がちらほらいるのがわかってきた。しかも、待合室とか汚いトイレとか、人がまばらなところから急にゾロゾロと出て来るのだ。子供は軒並み俺のように大荷物を押し、そしてみんな急ぎ足でホームの後方に向かう。
ふと、俺と同じくらいの背格好で、しっかりポマードをつけた髪の少年が目に入った。ホグワーツの存在を知らなければ、かのイートン校の子だと思うような見た目だ。学校帰りにみた街角のテレビで、イートン校にはあんな感じの子がいっぱいいた。
でもそのすぐそばに、肌色のエイリアンみたいな小さいヤツがぴょんぴょん跳ねているのが殊更目を引いた。
動物?というにも、なんだかよくわからない見た目だし、汚いけれど布を身につけている。それに二足歩行して、何か喋ってるようだ。
こんな目を引く謎の生命体がいるのに、周りの人はそんなの一切目に入ってないって顔でツカツカと歩いていくのも、またヘンだった。
うん、まちがいない!
これだけヘンなところがある彼は、きっと魔法族だ!
「坊っちゃま!お急ぎください!いいお席が取れなくなってしまいます!!」
キーキーした声が聞こえて来た。ぼっちゃま、だって!
ラクランはひとりでクスクス笑いながら後を追っていたが、それからすぐに唇の形はそのままに、ストンと笑いを止めるハメになった。
「き......えた???」
ぬる、いや、しゅる?
よくわからないがとにかく、なんの抵抗もなく坊ちゃんくんは柱の石に中に消えてしまった。
「どういうことだ!?......漏れ鍋式なのか?」
サッと集まる視線に、ラクランは自分が思いの外大きな声を出していたのに気づいて慌てて口を覆ったがもう遅い。
「漏れ鍋?今あなた漏れ鍋って言ったかしら?」
「あ......はい。あの、少しお聞きしても...?」
「ええもちろろん。...その様子だと、一年生かしら?」
驚いた様子の声に振り返れば、やはり古臭い、けれど綺麗なイタチの襟巻きをしたご婦人が立っていた。鳥の羽までついていて、その横にむっつりと口を真一文字に結んでいる少年がいる。
「はい、あのー、マグル生まれ?です。この柱を潜る、パスワードをご存知ですか、ミセス?」
「ロングボトムよ。まあ!礼儀正しいこと!こっちの無愛想は息子のフランク、3年生よ。漏れ鍋と違ってここはただ通り抜ければいいの。お先にどうぞ」
「なるほど!ありがとうございます、ミセス。それとフランクさん?どうぞよろしく」
「......」
「こらフランク!気にしないで、さ、どうぞ」
お礼を言って、ご婦人がフランクをぶっ叩くのを尻目に、促されるまま逃げるように柱へ向かう。
通り抜けるだけと言っても、勇気はいる。
ついギュッと目をつむって、開けるともう、別のフォームだった。
ポォォォォー
どことなく懐かしい感じのする汽笛が響く。もくもくと白い煙が湧く。つられるように数歩歩み寄れば、白い煙の中からぺかぺかと赤く輝く車体が現れる。たしかに、ホグワーツ特急と書いてあった。
後ろからやってきたフランクにそっと背中を押されて汽車のほうに進む。トランクを自分で載せなくちゃいけないみたい。フランクがそっと手伝ってくれて、お礼を言ったところでラクランの肩に、力強い手が置かれた。
「ワ!!??」
「ハハ!なにそれ。ノッポだけどホントに一年生っぽいね。見ない子だけどロングボトムの親戚?」
振り返ったところにはラクランより頭二つは大きい女子がいた。見たところ先輩らしい。その逞しい肩には猫が乗っていて、先輩の目もきゅっと目尻が上がった猫目だった。
「い、え、ああ」
「おっと、こりゃ失礼!私はイザベラ。イザベラ・ブルストロード。よろしく一年生」
ビッと差し出された手を握る。不思議なところにまめがある手だった。相手の方も、スッと目を細めて笑う。どういう意味?
「えっと、ごめんなさい。よろしくお願いします、ミス・イザベラ・ブルストロード」
「長ったらしいからベラでいいよ、君は?」
「ラクラン・ケイヒルです」
「そ。よろしくミスター・ラクラン・カーヒル?じゃあキースって呼ぶわ」
「あ、ありがとう......あの、名前、かすりもしてないけど?」
トランクはそのまま、学校に着くまで預けるらしい。積んでしまってから気づいたが、読みたい教科書をバッグに分けておいてよかったと、ラクランはそっと胸を撫で下ろした。
「君もこっちのコンパートメントにくる?」
「ご迷惑じゃなければ、お邪魔したいです」
「迷惑なもんか!ハッフルパフの鼻たれやグリフィンドールの奴らと違って、あんたは随分ちゃんとしてるよ」
「11歳にもなって身なりがまともじゃない子なんて、いるんですか?それも入学式の日に?」
ラクランが首を傾げて問うと、ベラは一歩下がって、上から下までジロジロと観察してくる。
髪は拝借してきたじいちゃんのヘアリキッドで適当ではあるが整えたし、顔も洗った。歯も磨いた。服はただのセーターにシャツ、ツィードのパンツだけど、じいちゃんの教えで毛玉はいつもちゃんと取ってる。出来るだけしゃんと背筋を伸ばして見せると、ベラはやれやれと言った具合に肩をそびやかした。
「もうちょっと肩の力を抜いてもいいんじゃない?」
「シャツの裾を出してたら下着を出してるのと一緒だし、寝癖をつけてる人は僕はよく寝るのでどうぞ盗みにいらっしゃいと言ってるようなもんだってじいちゃ...祖父が。自ら進んでナメられに行くほど、おれは馬鹿じゃないさ」
「アッハッハ!最っ高!それをあのだらしない奴らに聞かせてやりたいね」
「だらしない子ばかりとは思わなかったけど...」
ミセス・ロングボトムの隣にいたフランクを思い出して言えば、また膝をピシャリと叩いて笑われる。
「マシなのと会ったみたいでなにより!しっかり覚えとくといいよ。少数派のまともだから」
「へぇ......あと、肌色の小人みたいなの連れた子も」
「君のとこでは雇ってないの?屋敷しもべさ。今年の一年なら、クラウチ家か?」
「さあ、名前までは...あのお...僕、あの子が気になって」
「だったらコンパートメントに行ったらいいよ。あの子、もう座ってたはずだし」
べラに教えてもらった通りのコンパートメントに彼はいた。やしきしもべ?もテーブルの下にいる。嫌がらせのように広げられた本にうげっと思ったけど、やっぱり気になるのでラクランはそっとノックした。
「はい?見ての通り空いてない。他を当たってくれ」
「ホグワーツの生徒がそんなに少ないと思う?」
「ハァ、わかったよ、でも一人分しか開けないからな。それと、復習の最中だから邪魔しないでくれ」
「アー、了解。おれはラクラン、ラクラン・ケイヒル。よろしく」
「これはどうも。僕はバーテミウス・クラウチ・Jr、こっちはうちの屋敷しもべ妖精のウィンキー。よろしくするつもりはない」
蛇のように舌をペロリとした後、返ってきたのは冷淡な答えだった。
握手を断られてしまったので、苦笑しながらウィンキーに屈んで手を伸ばすと、ウィンキーはおろおろと後ろに下がって泣き出した。
「おれ、何かまずいことしちゃった?」
「......ウィンキー、もう戻っていい。ここまでありがとう」
「はいぼっちゃま、ホグワーツでのご健勝をお祈りしております」
しゅるん、とウィンキーが輝く渦になって消えた。目をぱちくりしていれば、またため息をつかれる。
「幸せが逃げるぞ」
「マグル生まれなのか?屋敷しもべ妖精は人間みたいに扱われるのに慣れていないのは常識だろう。言っただろ、邪魔しないでくれ」
目当ての不思議生物は去ってしまったし、バーテミウスは結構怒ってしまった。マグルというのは魔法族でない人のことだから自分はマグル生まれで正解だが、これ以上喋らない方が良さそうだ。
目線を逸らして車窓から眺めても、川を挟んでゴッチャリとした建物の群れが広がるばかりで少しも動かない。
「はぁい、車内販売はいかが?」
気まずい沈黙を突き破るように、おばあさんがガラガラとカートを押して現れた。
「こんにちは!」
藁にも縋るような心地で飛びついた後。
朝漏れ鍋の主トムにもらったお昼のマフィンとソーセージを思い出してカバンから取り出す。
クッキングペーパーに包まれてるマフィンは美味しそうではあるけれど、見るからにもそもそしていた。
「えっと、なにか飲み物ありますか?」
「かぼちゃジュースがあるよ」
「それはちょっとオススメしないぞ......歯が抜け落ちそうなほど甘い」
バーテミウスがうぇ、と言う顔をラクランにだけ見せて囁く。
「えー、そっか。おばちゃん、ラズベリーソーダとかアイアンブルー......はないか。うーん、紅茶はない?おれ、喉が渇いちゃったんだ」
「大鍋ケーキに使う茶葉ならあるよ。それで良いなら10シックルで淹れてあげよう。おぼっちゃま方の舌に合う保証はないけどね」
「やった!じゃあそれで!」
おばあさんが量り売り用のコップを取り出し、杖でコンと叩くと水がコップの底からもこもこと現れて、満ちた。ふわふわと湯気が立つ。そこへケーキにつかうというティーバッグを放り込んで、おばあさんはズイと差し出した。
「はい、紅茶一杯。10シックルたしかに。それじゃあね、ホグワーツまで良い旅を!」
「おばちゃんありがとう!」
車内販売のおばちゃんを笑顔で見送ると、本から顔を上げたバーテミウスが訝しげにラクランを観察していた。
「なぜそんなにお礼言いまくる?」
「アー、都会のマナーは知らないんだ。何か気に障ったならごめんなさい」
「いや、」
「サービスで特別なことをやってくれたから、ちゃんとお礼を言った方がおれはすっきりするんだ」
あの魔法すごかったし!とラクランが鼻息荒く言えば、あんなのは簡単だ、とバーテミウスはつんと鼻を上に向けた。
「本当に!?やってみせて!」
「アグアメンティ 水よ」
ラクランがマフィンと一緒に飲み干して差し出したコップに、また水があふれる。
「わぁ!......おっとっと!!」
得意げにするバーテミウスは、水を出し続けてしまうので、慌ててコップごと窓の外に突き出す。びしょ濡れで入学式はごめんだ。
ヤレヤレ、と首を振りつつ、手の滴をはらいながら一口飲んで、ラクランはちょっと眉を顰めた。あんまり飲みなれない味。おばあちゃんは軟水を出したけど、バーテミウスは硬水を出したらしい。水には変わりないから間違っちゃいないけど、自分の馴染みの水道から魔法で水を引っ張ってきたりするんだろうか?仕組みもわからないからなんとも言えない。
「君もできるなんてすごいけど、操作はおばちゃんの方が上手いかな」
「今のはちょっと加減を失敗しただけだ」
「おっと、ストップ。もういいよ、ありがとう。水っぱらになっちまう。それより、よかったら杖の振り方教えてくれない?呪文はアグアメンティって言った?」
ラクランは聞きたかった妖精のことなどすっかり忘れて、バーテミウスの教えてくれる魔法や、魔法界の話に夢中になった。
車窓から見える景色は晴れやかな湖水地方に差し掛かりつつあり、勢いよく流れていった。
「イッチ年生はコッチ!イッチ年生はコッチ!」
野太い声が車外から聞こえてくる。トランクはそのままでいいらしい。
先ほどベラがコンパートメントに来て、教えてくれたタイミングで着替えておいてよかった。
制服の長ったらしい裾に手こずりながら、ラクランはヨタヨタと歩く。前でバーテミウスが颯爽と人並をかき分けてくれているが、彼の表情もどこか固かった。
「まだ組分けじゃないのかあ」
「そうらしい。何人かでボートに乗るそうだ」
「なんで一年生だけ.......?」
適当に周りにいた数人で乗り込んだ。大きなけむくじゃらの男の人に、女の子が大きな松明を渡されそうになっていたので、ラクランが横取りする。
「おれ、力持ちだから持つよ」
「それなら櫂の方が似合いじゃないか?......っと、そんなものは不要というわけか」
口端を釣り上げて皮肉を言ったバーテミウスが、すこしだけ目を見開く。ぴくりと右眉が上がったのがちょっと面白かったが、ひとりでにボートが発進すればだれでも驚くので、ラクランは特に揶揄わなかった。
他にも何艘かのボートがゆらゆらと並ぶ。ハイランドによくある渓谷の合間の湖同様、水は黒いようで、松明に照らされてもよく見えない。深いところでなにか大きな生き物の尾が翻った気がして、ラクランは首を振って前を向いた。
「うわぁ!見ろよ、あれ」
後ろに乗っていた男子が真っ先に声を上げた。ゆらゆらと揺れる火がそこかしこに灯された、美しい城。
「これがホグワーツ......」
「もうとっくにホグワーツの敷地だろう」
「そうだけどさあ」
また冗談として皮肉を言われたんだと思ってのんびり返せば、今度はキッと睨まれて肩をすくめる。
「無駄話をするなよ、ここで各寮の適性を見られてたらどうするんだ」
「どうもしないよ。むしろそうだったら最高だな。へんに背伸びして寮に入ったって、七年間息苦しいだけだ。おれは普通にしてて、一番適性がある寮がいい」
そうじゃない?と松明を持ったまま肩を引き上げて問えば、バーテミウスは目頭を抑えてため息を吐いた。そのわざとらしい仕草についラクランが吹き出すと、指の隙間からじっとりと焦げ茶色の瞳が見つめてくる。
「能天気め。......僕はたぶんレイブンクローだと思う」
「ふうん。聞いてる感じだと、おれはハッフルパフかな?もし寮が変わっても仲良くしてくれる?」
「......レイブンクローとハッフルパフは合同授業が多い」
「やった!仲良くしてくれるってことでいいね」
「違う!...勉強の効率のためなら、ヤブサカじゃないって意味で言ったんだ。ペアで受講する授業もあるから」
テンポよくかわされる会話が水面を踊っていく。大広間の階段下で待たされているときも会話は止まなかった。
「静粛に。これから伝統ある儀式が始まるんですよ」
「あ、......はい、先生」
「すみません、先生」
お喋りをパッとやめいい返事を返した二人に、スッと背筋を伸ばした女性の先生がよろしい、と頷く。
「それでは、一年生の皆さん。ついてきなさい」
くるりと優雅に身を翻した先生が歩くのに従って、ぶかぶかの制服を着た小さな魔法使いたちの集団が動き出す。
「じゃあ、約束だ。寮が違っても友達だぜ」
「......わかった」
「寮が違っても友達になるつもりだったけど、まさか同じ寮になるとはな」
すぐそばの壁から垂れる緑の寮旗を見上げながら、ラクランが言うと、バーテミウスはため息をついてシー!と指でサインした。
「僕も、君と同じ寮になるなんて思ってなかった。ハッフルパフか、グリフィンドールだろうと......たぶん君、"組分け困難者"って奴だ。すごく帽子が悩んでいたから」
「たしかに、あのボロ帽子ウンウンいってたな。ともかくおれは、君と一緒にスリザリンになれて嬉しいけど」
「僕はスリザリンとレイブンクローの二択だった、と思う。どことどこで迷っているか、帽子は明確に教えてくれなかったから。僕はどこでだって勉強できるから、迷ったけど、勉強一辺倒じゃない寮を選んだんだ。それでちょっとマズイことになった。今はとにかく、僕も君も目立たないようにしない、と......」
「ベラ、さっきぶり、君が言ってた"うち"って、スリザリンのことだったんだね」
「キースじゃん!やっぱうちがお似合いだったね!」
ケイヒルの馬鹿野郎!〜!〜〜!!
つい最近、母が読んでいた小説でみた汚い言葉が出そうになるのを、バーテミウスは途中で口を塞いで堪えた。
イザベラ・ブルストロードは聖28一族の娘ながら家柄を鼻にかけた下品な連中とは違って、家柄に恥じぬよう努力することを知る人間だったはずだ。
列車に中でラクランは、身なりや言葉遣いが訛りはあれどちゃんとしていたので、僕からも一見すると"真っ当な魔法族の子供"にみえていた。そこで気に入られたのかもしれない。
けれどあれはいただけない。闇祓いで活躍する父上を持つ僕、そしてマグル生まれのラクラン。素性が知れれば、まず今後平和なホグワーツ生活は送れまい。僕は逆恨みで済むけれど、ラクランの件はバレるとタチが悪い。特にスリザリンでは。
「ベラ、列車でバーテミウスと仲良くなれた子がいるんだ。ベラが教えてくれたおかげでもあるから、って、わ!ごめん!」
「レギュラス様!」
マグル生まれのラクランより、よっぽど顔のしれているバーテミウスが出て行ったほうが混乱をまねいてしまう。ラクランをどう黙らせるのがいいか、考えを巡らせているうち、ことは起こってしまった。
バーテミウスを紹介しようとしたのか、美味しそうなジャケットポテトやステーキの並ぶ皿の近くで、ラクランが無造作に振り返ったのだ。
振り返ったラクランの腕は後ろにいた生徒の手に当たり、その手に持っていた紅茶がこぼれてしまった。レギュラス・ブラックのローブに、だ。
レギュラス様。ベラが叫んだその声で、偉い人なの!?と慌てたラクランが白いハンカチで一生懸命拭おうとする。
「いい。僕も不注意だった。"アグアメンティ
水よ"」
滑らかな発音でレギュラスと呼ばれた少年が杖を振るうと、しゅう、と音を立ててマントから紅茶が蒸発して空いているゴブレットに満たされた。
「わぁ!すっげえ!でも当たり前か、水を呼べるってことは、ある場所にある水をまた別の場所へ移動できるってことだから.....あ!きれいになったみたいだけど、本当にごめんなさい」
レギュラスに注目して足を止めている人混みを抜けて、やっとラクランに追いついたバーテミウスは、息を切らしながらラクランの肩に手を置いた。
「僕の知人です。本当にすみませんでした!」
「君はクラウチ家の子だったかな。大丈夫、僕は気にしてない。お互い不注意だった、それだけだ。一応、挨拶しておこうか。2年のレギュラス・アークタルス・ブラックだ。」
「あ、はい......ラクラン・ケイヒルです」
「僕はバーテミウス・クラウチ・ジュニア。お久しぶりです」
「うん。よろしく一年生」
さすがはブラック家次期当主と目され教育されている先輩だ。聞きなれないファミリーネームにぴくりとも眉を動かさずに、ほんの少し口端を持ち上げて目だけで会釈すると、呆気に取られて見守る僕たちを置いて、滑るように去っていってしまった。
ゆるくウェーブした長めの黒髪がかすかに揺れ、蝋燭の灯りを反射して輝く。ポマードで固めないまでも、しっかり整えてあったし、ローブにも皺や埃ひとつなく、革靴もぴかぴか。さながら、絵本とかにでてきそうなちょっと小柄な紳士の後ろ姿である。
「2年生?!一つしか変わらないのに、すっごく落ち着いてた!」
「あれがレギュラス・ブラック先輩だ........まずいことになった」
さっそくオリキャラ、イザベラ・ブルストロードの登場です。ミリセント・ブルストロード、ちょいキャラだけどいい味出してる。ミリセントの叔母かな、というイメージです。
フランク・ロングボトムさんは妖精の魔法が得意、というのとめちゃくちゃ無口って情報しかないけど、きっとすごく優秀だったし良い人のはず。