未来産ラルトス系列ポンコツヤンデレメカ娘with薙刀 作:テツノポッポ
ポケットモンスター、縮めてポケモン。
彼らは弱るとメガネケースに入るくらい小さくなるという、現実世界の常識を軽々と覆すような中々ヤバい生態をした生物たちだ。割と出てくる『お前本当にポケモンか?』みたいなやつもボールに入るなら大体ポケモン。入らないならそれ以外の生き物だ。なんともわかりやすい。
まあ当然そんな生命体が現実に存在する訳がない。それらは全てゲームの中の話だ。
いや、話だったというべきか。
気がついたらポケモン世界に転生していた。
ポケモン最新作であるSVのVの方のストーリーを終わらせて粗方図鑑を埋めたところで、気がついたら赤ん坊の姿になっていたのだ。
当初はなんでやねん! と困惑していたが人間は慣れる生き物。10年も経てばすっかりとこの世界に馴染んでいた。
もうお隣のケンイチがイシツブテを投げてきても驚かないし、同じスクールの同級生であるシンメトリー・オオニシがマグマッグの中にサムズアップしながら沈んでいっても表情1つ変えずにみていられる。
ちなみにシンメトリー・オオニシはその後無事病院に運び込まれた。もちろん頭の病院だ。
だがそんなことはどうでもいい。今目下の問題はこの
なんだろうこれはたまげたなぁ……。
順当に考えれば母さんのプレゼントだ。しかし、その可能性は先程母さんに尋ねて知らないと言われた為に否定されている。父さんは俺が生まれた時から蒸発しているので分からない。
とりあえず手紙を見てみようか。
いやでも見ちゃって大丈夫なのかなこれ。もしかしたら間違って届けられている可能性もあるし、下手したらゴーストポケモンの悪質なイタズラの可能性もある。手紙を開けた瞬間爆発するとか、ヒスイに飛ばされるとか。
……よし決めた。まずは手紙から確認しよう。なるようになれ、だ。
Dearシラタキ
個体名:テツノブジン
NN:エルパーダ
パルデアの大穴で運命的な出会いをした。遠く離れた世界から時間と空間を超えてはるばるやってきたようだ。
あなたと一緒に食べるもの、あなたが作ってくれたものならなんでも好き。
物音に敏感。特にあなたの声ならどこにいても絶対に聞き逃さない。
あなたが大好き!!!!
書かれていたのはなんとも要領の得ない怪文書。字の状態からコンピュータで打ち込まれた様なモノと推測する。途中まではステータス画面でよくみるポケモンの経歴に似ているがなんだこれ。後半になるにつれてわけわからん度が急上昇していく上に特に最後のやつとか意味わからん。何故告白された? 普通に怖い!!
ちなみにこの怪文書に書かれていたシラタキ、というのが今世の俺の名前。色白く細そうな名前の通りにひょろいもやしだが、これでもイシツブテを片手に担いで投げることくらいなら出来る。
多分俺の中に眠るスーパーマサラ人の血が覚醒したのだと思う。生まれも育ちもホウエンのカナズミだけど。
確かにテツノブジンにエルパーダと名付けたのは俺だ。こんな最近流行りのBLEACH読みながら「ビーム薙刀っぽいの持ってるし、エスパーダとエルレイドと合わせてエルパーダな!!」みたいなノリでヘンテコ名前をつけるのは世界探せばそれなりにいるかもしれないが、俺の元に届いた手紙にそれがあるのは俺の前世のポケモンと考えて良いんだろうか? マジでそうならもっとまともな名前つけてあげるべきだった。少なくともBLEACH読みながら決めるべきじゃなかったな。
でも手紙の送り主なんでそれ知ってるの? もしかしてストーカーかなんかかな、怖……。
しかしいつまでもこんなことしてる訳にはいかない。中に何が入ってるか分からないボールとか気になりすぎて夜しか眠れなくなってしまう。早急に解決する必要がある。
「もういっそ腹括ってボールを開けてみるか……」
タイマーボールを片手に念の為家の外に出ておく。これで中からテツノブジンでもなんでもなくカイオーガとか出てきた日には部屋が潰れるし家の中が雨天候になる。室内で始まりの海作るのは勘弁してくれ。
ボールのスイッチを押して軽く投げるとポンと軽快な音と共にボールの中のポケモンが呼び出された。
そのポケモンは白を基調とした人型の身体に緑色の頭部を持ち、腰回りは白いスカートの様な存在で覆われていて両腕には赤い色のブレードが取り付けられている。そして何よりも特徴的なことはその全身は金属特有の光沢で覆われていることだ。
一見すればエルレイドかサーナイト、またはその系列の派生進化の様に見えるだろう。だが落ち着いて見れば見るほど違和感が増す。
確かに遠目から見たなら特殊な色合いをしたメガエルレイド。後ろから見ればサーナイトにも見える。だが至近距離から見れば、まるでサーナイトとエルレイドのパーツを腑分けしてごちゃ混ぜにくっつけた様なその姿と金属光沢から、そいつがエルレイドともサーナイトとも似て非なるナニカであることに気がついてしまうだろう。
そんな恐ろしい真実に気がついてしまった貴方はSAN値チェックです
冗談はさておき、その姿は間違いなく未来から来たパラドックスポケモン【テツノブジン】で間違いない。今は顔に取り付けられた液晶や身体の赤色のパーツは真っ黒になっているがその姿は見間違い様がない。
突然すっとテツノブジンの液晶画面に赤い目が映り、全身のパーツに色が灯る。クルクルと何かを探す様にその視線が揺れ、その瞳が俺の存在を捉えると──
『個体名:エルパーダ、起動しました。目の前に人間を確認。容姿、匂い、声、魂、全てワタシの記憶領域内にあるマスターの個人識別データと一致。間違いありません、貴方がワタシのマスターですね』
『状態異常:メロメロを確認。この身体が完全に破損しても解除不能です。状態異常:メロメロの発生源はマスターによるモノと確信。以降、この状態を正常と定義します。マスターには責任を取ってワタシを生涯のツガイにする義務が生じます。フツツカモノですがどうぞ今後とも宜しくお願いします』
『早速ですがワタシの履歴書を読んで頂けましたでしょうか? あれはワタシが1文字1文字愛を込めて書き込みました。もちろん手書きです。わかりやすい様にこの世界の言葉ではなくマスターが以前いた世界の文字であるニホンゴなるものを使用させていただきました。ところで、検索したらところによるとマスターの世界にはラブレターなる文化がある様ですね。あの履歴書はただの取り扱い説明書ではなくラブレターも兼ね備えていまして────』
──なんかめっちゃ喋りかけてきた。あっ、シャワーした時見せてくれるお辞儀モーションだ。かわいい。
でも哀しいかな。所詮人とポケモン、他人種どころか他種族なのだ。言語の壁は大きすぎた。
コイツなに言ってるかさっぱりわからねぇ……
生憎俺はNではないしイエローでもない。波動は使えないしましてやこのテツノブジンと長い年月共に過ごして心を通わせた訳でもない。つまるところ、このテツノブジンが何を伝えたいのかさっぱり読み取れないのだ。
だが、なんとなくこのテツノブジンが俺に敵意を持っている訳じゃないことは理解できた。
パラドックスポケモンは冷酷で凶暴と作中で言われていたが、今目の前で綺麗にお辞儀して見せたこのテツノブジンはそれほど凶暴には見えない。ゲーム上の都合とはいえ、パラドックスポケモンたちはピクニックするとどのポケモンも可愛らしい仕草を見せる。
もしかしたら人に懐いたベトベトンからは悪臭が放たれないのと同じように、野生ポケモンから手持ちポケモンに変わることで落ち着くのかもしれない。
しかしこのままにしておく訳にもいかない。言葉が分からないなら分からないなりにコミュニケーションを取る必要がある。さもなければ大惨事を招く可能性があるからだ。
ラベン博士も言っていた様にポケモンは危険な生物だ。ポケモンからすればちょっとしたじゃれ合いのつもりでも人間からすれば致命傷になることだってある。だからこそ、ポケモントレーナーはポケモンと心を通わせてやって良いこと悪いことを教える必要がある。ただ単にポケモンをボールに入れて持ち運んでいるだけの人をポケモントレーナーとは呼ばないのだ。
「あー、テツノブジン……さん? きみは俺のポケモンってことで良いのかな?」
『エルパーダです』
「え⁉︎」
『ワタシはこれまでの人生においてテツノブジンなどと呼ばれたことはありません。そもそもその名前はパルデアのニンゲンがワタシやワタシと同型機を他のポケモンたちと区別する為に付けた種族名でありワタシ本来の名前ではありません。ワタシの個体名は今過去未来、いつであってもただ一つのみ。マスターからいただいたエルパーダのみなのです』
「アッハイ」
何を言っているのか相変わらずサッパリだが意外と表情でわかるものだ。今のテツノブジンは画面に映る顔が( ̄^ ̄)みたいな顔になっていた。そして詰め寄ってきたあたりおそらく何かに対して怒っているのだろう。
もしかしてテツノブジンじゃなくてエルパーダ呼びする必要があったとか?
「えーっと、エルパーダ?」
『はい、マスターの唯一無二のパートナーであり最高で最強のバディにしてマスターのツガイであるエルパーダです』
エルパーダは嬉しそうに画面の表情を(*^^*)みたいな顔に変化させていた。よしよし、大体わかってきたぞ。
もしかしてこの名前気に入ってくれたのだろうか? だとしたらこんな変な名前にしちゃって申し訳ないな。
「エルパーダだと長いしややこしいからエルって呼んで良いかな? いや、別に変な名前にしちゃって申し訳ないとか言う気持ちがある訳じゃないんだけど……うん」
『了解しました。これは愛称、というモノですね。嬉しいです。マスターからまた名前を貰ってしまいました。これは実質エンゲージリング……といっても差し支えがないモノと判断します。マスター、これからも末長くよろしくお願いします』
今度はいつもの顔で頷いている。これは了承を得たと考えて問題ないかな?
だんだんとエルと心が通じ合っていくのを感じる。なるほどこれがポケモンと絆を結ぶという感覚か。ゲームじゃ味わえなかったモノだな。
「これなら目指してみるのも悪くないかもな……、チャンピオンってやつを」
元々せっかくポケモンの世界に来たんだから旅に出るつもりではあった。そこら辺の草むらから適当なポケモンを見繕ってジムに挑み才能がありそうなら旅を継続してチャンピオンを目指す、ようするに『行けたら行くわ』感覚でやろうとしていた。
まあ、ポケモンと直接触れ合えるだけで満足だしそれ以上は正直今でもあまり求めていない。
だが、俺は今パラドックスポケモンというとてつもなくぶっちぎりで珍しいポケモンを手に入れてしまった。一生ボールに幽閉しておくなら話は別かもしれないが、このポケモンはあまりに珍しすぎて普通に生活することが難しくい。
考えてもみて欲しい、明らかにメタリックなエルレイドがいたら誰だって注目するだろう。そうなった時ポケモンハンターやロケット団的な悪質トレーナーたちが俺たちを見逃してくれるだろうか。
答えは否だ。
つまりそいつらを蹴散らせるほど強くなる必要がある訳だ。どうせ強くなるなら妥協せずチャンピオンクラスまで行きたい。そう考えるのは自然だと思う。
「なあエル。俺チャンピオンになってみたいんだ。俺と一緒に強くなってくれるか?」
俺の言葉を聞いたエルはスッと手を胸元に持っていき頭を下げる様な形をとる。
『ワタシはいつまでもマスターと共に』
「ありがとう。一緒に頑張ってこうな!」
彼女? ──いやエルレイドが元っぽいし彼か、の手を取る。これが俺の初めてのポケモン。感慨深いな。
そしてあと一つ、どうしてもやらなければならないことがある。
──さて、エルのことどうやって母さんに説明しようかな!!
道はまだまだ長い。