ようこそ純愛過激派の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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友人が出来て調子乗ってる旭くんです

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作戦会議

 

 

 

「旭くん」

 

 堀北さんがまさかの入部を宣言してから数日の放課後。須藤の審議の一日前。家に帰って夕食の準備をするため、そそくさと荷物を纏めていると、有栖が話しかけてきた。

 

「ん、どした?」

 

 有栖が居た方をチラッと確認すると、数人の男子生徒がニヤニヤしながらこちらを見つめている。……いや、気持ちは分かるけど露骨だなコイツら。

 Aクラス……主に坂柳派の生徒たちは、俺と有栖が何かを話し始めるとこうやってからかい始めるのだ。橋本君に理由を聞いたら「付き合ってない癖に距離感が近いから見ていて面白い」なんて解答を貰ったが、もう入学して3か月近くになるんだ。そろそろ慣れてくれ頼むから。

 

 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、有栖はいつも通り、手を伸ばせば抱きかかえられる程の距離でこちらを見上げてきた。

 

「今日は久しぶりに予定が無いので、一緒に食材の買い出しに行きませんか?」

 

 本当に珍しいな。最近は坂柳派の子たちと帰ってばっかだったのに。

 まあ、そのおかげで綾小路とか堀北さんとかと調査する時間が取れるんだけどさ。ちなみに俺は皆よりちょっと早めに帰っている。理由は有栖と飯を食うからだ。

 

「うん。い……お」

 

 良いよまで声が出がかったその瞬間、端末が小さく震えた。

 画面を開いて通知を確認すると、そこには最近チャットを交換した堀北さんのメッセージが届いていた。

 

『暇なら急いで綾小路君の部屋に来て頂戴。作戦会議よ』

 

 何とも彼女らしい簡素な文章だ。それがちょっとおかしくて思わず笑みがこぼれてしまった。

 

「……旭くん?」

 

「ああ、ごめん。今日はちょっときついかも」

 

「……何か予定でも?」

 

 有栖が何故かショックを受けたように聞き返してくる。そんなバレバレの演技は良いから、君は今日の夜ご飯のことを考えてくれ。

 

「ちょっとね。最近仲良くなった子に呼び出されちゃって」

 

「私との予定を放棄して、そちらを優先するんですか?」

 

 へっ、お前はどうせ断られても一緒に帰る相手が居るだろ? こちとら綾小路たち除けばそんな相手居ないんだから優先させてくれ。

 それにどうせ、俺が有栖にぞっこんだってことをクラスにアピールするのが目的だろうし。その手には乗らないぞ! 

 

「予定って今の話でしょ? ちょっと大事な用事だから、今日の買い出しは1人で行くよ」

 

「……」

 

 うーん、ちょっと怒ってそー。面子は丸つぶれかもだけど、今更そんな些細な事を気にするような坂柳派じゃないっしょ。こいつら有栖に心酔してるし。

 とりあえずこれ以上この場に居ても状況が悪くなるだけなので、鞄に荷物を詰め込んで逃げるように扉へと向かった。

 

「あ。今日のご飯何が良いかチャット送っといて。それじゃ!」

 

 返事を待たず扉を閉め、エアコンの利いた廊下を速足で歩く。今すぐ行くと返事してしまったし、遅れたら大目玉だ。

 

 

 

 

 

 そうしてうだるような暑さの通学路を駆け抜け、綾小路の部屋へと向かう。

 部屋の前へ到着し、インターホンを鳴らす。

 程なくしてドタドタという足音が聞こえ、扉が開いた。

 

「あ! 九条くんー」

 

 中から顔を見せたのは櫛田さん。どうやらもう始まっているらしい。

 

「お疲れ櫛田さん。皆もう来てる感じ?」

 

「うん!  須藤君以外は集まってるよ!」

 

 先に部屋に戻った櫛田さんの後を追うように、俺は靴を脱いで部屋へと入る。

 

「お、来たか」

 

「遅っせえぞ九条! 早く座れって!」

 

 上から綾小路、池と続いて声を上げた。こういった形の作戦会議はよくやっていたらしいが、俺が参加するのは今回が初めてだ。

 ベッドの上に堀北さんと櫛田さんが腰掛け、山内と池がフローリングに直に座り、綾小路は勉強机の椅子に座っている。

 

「すっげえ人口密度……大変だなお前も」

 

「今すぐお前の部屋に行っても良いんだぞ。ソファとベッドがあるそっちの方が快適だろうからな」

 

 煽りを込めて肩をポンポンと叩くと、ムッとした表情で脅しをかけて来る綾小路。

 

「ごめんって」

 

 女性陣は良いとして、山内と池は完全に遊びに来たノリみたいだ。床にポテチの袋を広げ、早速クラスの女子の体型がどうこうの話を始めている。

 

「じゃあ本題に入るわよ。明日の審議で話すことをまとめるから綾小路君、場所を変わって頂戴」

 

 堀北さんの呼びかけに、騒がしかった池と山内も静かに話を聞く体制に入る。流石のこいつらも堀北さんのことは怖いらしい。

 

「ああ」

 

 綾小路と場所を交換すると、堀北さんは机に紙を一枚置き、体を横向きにしてこちらを向いた。

 

「須藤居ないけど大丈夫なの?」

 

 今回の事件の発端である須藤が居ないことに、池が不思議そうに問いかける。

 

「余計な事を考えさせるとかえって逆効果だわ。彼には予め指示を出しておいたから、今回は私達で確認するだけ」

 

「それで、佐倉が証言してくれるとはいえ、勝算はあるのか?」

 

 綾小路が質問を投げかける。

 佐倉さんは、この事件の唯一の目撃者だ。Dクラスの生徒で、巻き込まれるのを嫌がっていたが、綾小路の説得により証言してくれることになった。

 

「明日の目的は無罪を勝ち取る為じゃない、その前準備よ」

 

「というと?」

 

 堀北さんは、机に置いた紙に何かをメモし、それをこちらに向けた。

 

「第一目標は審議の延長。流石に明日までに行動するのは厳しいから、出来るだけCクラスの心証を悪くして、審議の延長を持ち掛ける。その為に、九条君や一之瀬さんが集めてくれた証言を使うつもりよ」

 

 そこには、いくつかの文章が箇条書きで書かれていた。

 

「なになに……『Cクラスの生徒は、入学してからAクラスやBクラスの生徒に度々絡んでいる。中には暴力沙汰一歩手前まで発展するものもあった』『特に石崎は中学のころから不良として有名で、いくつもの喧嘩沙汰を引き起こしている問題児だった』すげえじゃん! こんな情報どっから集めてきたんだよ!」

 

 池がその紙を受け取り、その内容を確認し喜びの声を上げる。

 

「1個目が俺がAクラスの葛城君に聞いた話で、2個目は一之瀬さんが情報提供を呼び掛けた時に来た奴だね」

 

 2つとも信頼できる情報だし、葛城君の話に関しては先生にも報告済み。

 少なくとも、石崎君たちが清廉潔白な生徒ではないという証明は出来るだろう。

 

「後は石崎君たちの証言を聞いて、もし矛盾があるのならそれを突けばいいのだけど……そう上手くは行かないでしょうね。相手もわざわざ監視カメラの無い特別棟を選ぶ辺り、ちゃんと考える頭がある」

 

「まあ、両方の意見が完全に食い違ってる時点で、決定的な証拠でもない限り明日審議が終了することはまずないよ。佐倉さんの証言にどこまで重みが出るかは分かんないけど、相手にカウンターを仕掛けることはできるはず」

 

「そこであなたが言っていた『例の作戦』をぶつける。それでいいわね?」

 

 そう確認を取ってくる堀北さん。作戦と呼べるほど立派なモノではないが、十二分に効果はあるはずだ。

 

「例の作戦? なんだそれ」

 

「秘密よ。あなた達は他の人に言いふらしかねないから」

 

「何だよー。教えてくれても良いじゃんかよー」

 

 仲間外れは嫌なのか、山内が堀北さんに聞き返すが、その言葉に堀北さんが返すことは無かった。

 

「じゃあ、確認も取れたし私はここで失礼するわ」

 

「ん、じゃあ俺も」

 

「ええー。せっかく来たんだからもっと話そうぜ?」

 

 堀北さんに便乗して帰ろうとすると、池が指に挟んだポテチをプラプラと揺らしながら話したが、生憎とこっちも用事がある。必要な事はもう済んだし、これ以上ここに居る意味もないだろう。

 

「今日は特売日なんだよ。売り切れる前に行かないと」

 

「はっ! Aクラス様が特売日なんか気にしちゃって」

 

「うっせ。4月で10万使い切る奴と一緒にすんじゃねえよ」

 

 そんな軽口を池と飛ばし合いつつ、俺は綾小路の部屋を後にした。

 

 

 






 ちょっと考えてた展開と辻褄が合わないので一旦消します。
 過去編に関してはもう少しお待ちください……

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