ようこそ純愛過激派の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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2巻の範囲ももう大詰めですね

高評価、感想、ここすきをいただけると作者のモチベーションになります!ぜひよろしくお願いいたします!


決着

 

 

 

 翌日の放課後。生徒が出入りすることは滅多にないであろう会議室の近くのベンチに俺は座っていた。

 

「……さて、どうなるかな」

 

 自販機で買ったペットボトルを右手に持ち、はやる気持ちを独り言として消化する。傍から見たら待ち合わせをしている人間に見えるだろうが、生憎とそんなお気楽な状況では無い。

 

 生徒会室というところで予想はついたかもしれないが、現在中では須藤の処遇をめぐって審議が行われている。

 須藤とは友達の友達といった関係だが、それでも不正によって陥れられるのは気に食わない。何より堀北さんの頼みだしな。

 石崎君たちが他クラスにちょっかいを掛けていることの証言は、既に学校側に提出してあるため、俺ができるのはここまで。大人しく結果を待つことにする。

 

 十数分が経ち、生徒会室の扉が重い音を立てて開いた。

 石崎君たちとCクラスの担任である坂上先生が先に姿を見せ、こちらに目を向けることなくすれ違う。

 それから遅れて綾小路と堀北さん、その後ろに証言をした佐倉さんと被告人である須藤が姿を現した。

 

「お疲れ。どうだった?」

 

 俺はこちらに向かってきた綾小路と堀北さんに声をかける。

 しかし、彼らが返答する前に須藤くんが声を荒げて答えた。

 

「アイツら嘘ばっかつきやがって! ……明日の審議でまた決めるってよ。退学もありえるって」

 

 作戦の内容を伝えられてない須藤は、決して良くはない状況に苛立ちを感じているようだ。

 

「まだ負けたって決まった訳じゃねぇだろ? お前が諦めたらおわりだぞ」

 

「……そうだな。わりぃ」

 

 そう励ますと、須藤は意外にもしおらしい態度を取ってきた。出会った頃からは考えられない成長だ。

 そんな正直な須藤の背中をポンと叩き前を歩くように促す。そのまま教室へ戻る須藤の後ろをつける形で、俺は堀北さんの横に並んだ。

 

「須藤君はこう言ってるけど、結果としては上々よ。あとは手はず通り進めるだけ」

 

 前を歩く須藤に聞こえないように、堀北さんが小声で話しかけてくる。

 昨日池たちに話さなかったように、この作戦は俺と堀北さんと綾小路しか知りえないものだ。……何も知らず進められる須藤は気の毒だが、勝率を上げるためだ、許してくれ。

 

「おっけい。じゃ、いっちょやりますか」

 

 そう意気込んで、俺はある仕掛けのために特別棟へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

「準備はいいかしら、綾小路君」

 

 1度目の審議が終わった翌日の放課後、10分後に控えた2度目の審議を前にしたオレに、堀北は確認を取ってくる。

 大方オレが緊張していると思っているのだろうが、こと今回に限っては、オレは勝ちを確信しているため問題ない。

 

「ああ。逆にどんな結末を迎えるのか楽しみなくらいだ」

 

「良い心意気ね」

 

 兄と相対するということで、堀北が使い物になるか不安だったが、昨日の審議の堀北は一切臆することなく戦った。きっと九条とのやり取りが堀北の憑き物を落としてくれたのだろう。

 ノックをして生徒会室に踏み入れる。そこには、昨日と同じように長机が置かれており、ぐるりと長方形を作っていた。 Cクラスの生徒は既に着席している。

 

「ではこれより、二度目の審議を執り行いたいと思います。先日と同じく、進行は生徒会書記、橘が務めさせていただきます」

 

 オレ達が着席したことを確認した橘書記が、そう言い軽く会釈した。

 

「昨日の今日で何ができるのかは分からないが。私は担任としてしっかり見届けさせてもらうぞ」

 

 茶柱先生が、小さく笑いながらオレと堀北を見る。

 

「まあ、オレはぼちぼちやるだけですよ」

 

「ふっ、そうか」

 

「では、まずは双方の主張をもう一度お願いします」

 

 Dクラスの方を見て橘書記がそう告げる。

 須藤は、一瞬オレと堀北を見て立ち上がり、先日と全く同じ主張をした。

 

「昨日と全く同じだ……です。部活の練習を終えた後小宮と近藤に特別棟に呼び出されました。そして特別棟に行ったら、呼び出した二人と石崎が居て、殴り掛かられたからやり返したんです」

 

 これは驚いた。昨日はあれだけ横暴な言い回しだったのに、今日はたどたどしいながらも敬語を使っている。

 きっと九条辺りが須藤に何か言ってくれたんだろう。オレも堀北もそう言うの苦手だからな。

 

「それは嘘です! 僕たちが須藤くんに呼び出されて特別棟に行ったんです。そして僕たちは須藤くんに滅茶苦茶に殴られました。一方的にです」

 

「お前らいい加減にっ! 「須藤君」……なんでもない」

 

 白々しく語る石崎達に苛立ちを感じたのか、昨日と同じように声を荒げる須藤だったが、堀北に抑えられて大人しく座り直す。昨日からは考えられない成長だ。

 

「双方主張に変更はないということでよろしいでしょうか?」

 

 DクラスとCクラスの生徒が肯定する。その後、堀北が挙手をし立ち上がる。

 

「私から質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「はい。質問を許可します」

 

「ありがとうございます。では、石崎君。あなたたちは、日ごろからAクラスやBクラスの生徒に横暴な態度を取っていた。これには同意してもらえますよね?」

 

「はい。ですが、それは今回の件とは関係ないはずです」

 

 堀北は昨日Cクラスの心証を下げるために使用した、九条や一之瀬が集めた証言の議題を出した。

 しかし、石崎がダメージを受けた様子は全くない。当たり前だろう。何故なら、いくら石崎達の普段の行いが悪くとも、須藤の行いはそれ以上に悪いのだから。

 

 そんな中、堀北は生徒会長の方を向き、声を上げた。

 

「では生徒会長。先日申請した、監視カメラの映像を映してください」

 

「!?」

 

 驚く石崎達を背に、スクリーンにとある映像が写される。

 時期は5月14日。須藤の暴力事件が5月末のため、2週間以上日時が違う。

 

「これは、Aクラスの生徒の証言を基に監視カメラの場所、日時を指定し、切り抜いて使用する許可を学校に申請したものです」

 

 そこには、画質が荒く見づらいが、恐らく坂柳を含めたAクラスの生徒数人と、石崎や体格の良い黒人の男子生徒、紫がかった長い赤毛の男子生徒が向かい合っている様子が映されていた。

 堀北は、茶柱先生を通して監視カメラの映像を使用することを申請したのだ。もちろん、普段生徒が監視カメラの映像を見ることは出来ないが許可が降りた。

 当然だろう。この場で使わないでいつ使うというのだ。

 

「……監視カメラの映像と聞き驚きましたが、これは事件とは全く関係ない映像ではありませんか? それに、この映像ではどちらに非があるかを証明することは出来ません」

 

「ええ。しかし、重要なのはそこではありません。では会長。次の動画の再生をお願いします」

 

 無言で生徒会長がノートパソコンのエンターキーを押すと、先ほどの監視カメラのような映像ではなく、人が手で撮ったような映像が流れて来た。

 

「これは、特別棟の様子を昨日映像として撮ったものです。日時の証明として、茶柱先生に付き添いをお願いしました」

 

 堀北がそう言うと同時に、撮影者の隣にいたであろう茶柱先生にカメラが向けられる。撮影者はオレだ。

 ちなみに九条と堀北も同行している。ちらりと映る教室の窓に、2人の姿が反射して映るのがちらほら見える。

 

 そして階段を上っている映像がノーカットで十数秒続き、事件現場であろう廊下が奥に見える位置。正確には、佐倉が証拠写真を取った画角と同じ位置に到着した。

 写真の通り、理科室を右に置いた位置だ。ここで、佐倉は事件を目撃した。

 

「ここで止めてください。事件現場は理科室を右手に、この廊下の奥に見える階段の一歩手前の場所です。あなた達も、間違いありませんね?」

 

「はい。僕達はここで須藤君に殴られました」

 

 堀北の発言を疑うことなく同意するCクラスの生徒たち。

 

「では、映像を進めてください」

 

 映像が進められ、廊下を抜けて開けた場所に出る。ここで事件が起きた。それは双方が認めた間違いのない事実。

 

「止めてください。私は、この事件に対する学校側の態度に違和感を覚えました。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です。この学校は生徒の問題行動を見逃さないよう、徹底して監視カメラが仕掛けられています。そのためこの事件は、監視カメラを確認すれば直ぐに解決できるはずです」

 

 堀北の言い分は正しい。しかし、それを聞いた石崎達は余裕の表情を浮かべている。

 当たり前だろう。彼らは、監視カメラが無いということを確認してこの事件を仕組んだのだから。

 

「しかし、石崎君達が常日頃問題行動を起こしているというのなら、この状況にも説明が付きます。学校側は、あなた達が訴えた時点で証拠を揃えていた。それをあえて放置したのは……」

 

 そして、再生された映像はゆっくりと壁を上って行き、壁に付けられた黒い物体にピントが合わさるように固定された。

 

 

 

「はっ?」

 

 

 

 その映像を見て、呆気にとられたような声がCクラスから聞こえて来る。そこには────

 

 

 

「────あなた達を泳がせ、虚偽の申告に対しての罰則を与えるつもりだったからです。この()()()()()()()()()()()()()()()が、それを物語っています」

 

 

 

 特別棟の廊下を、隅から隅へと監視するように、左右に首を振る監視カメラが映っていた。

 

 

 

「残念だったな。悪事を働くなら、せめて監視カメラくらいは確認するべきだと思うぞ」

 

「ば、な、何でカメラなんか!? ウソだろ!? だって、他の廊下にはカメラなんてなかったよな!? ここだけ設置されてるなんておかしな話だろうが。なあ!」

 

 ドンと机をたたいて席を立ち、他の2人に同意を求める石崎。

 

「石崎君。席についてください」

 

 橘書記が事務的に警告すると、石崎は一度息をついてドカッと席に座った。先ほどまでの余裕は一切見られない。

 

「お、俺たちをハメようったってそうはいかないぜ。アレはお前らが取り付けたんだ!」

 

「石崎君、発言を控えt「待て」……」

 

 こちらに指を指し、声を荒げながら睨んでくる石崎。

 橘書記がもう一度警告しようとしてくるが、それを止めたのは生徒会長だった。

 

「確かに、特別棟の廊下に基本監視カメラは付けられていない。私達もそれは確認した。けど、例外的に付けられている場所がいくつか存在するの。それは職員室と理科室の前。それぞれ貴重品や危険な薬品が保管されてる。ここに監視カメラを付けない理由は無いわ」

 

「ぐっ……」

 

「流石に音声までは記録できないでしょうけど、あなた達が最初に殴りかかった様子はしっかり撮れているんじゃないかしら」

 

「考えてもみろ。昨日の今日でオレ達がお前らの嘘を証明できると思うか? 出来るわけないだろう。審議の時間を伸ばした理由、それはお前らが本当のことを話してくれるのを、学校が待っていた。こう考える方が自然じゃないか?」

 

 今3人は必死に昨日の生徒会室でのことを思い返しているはずだ。もちろんCクラスが嘘をついているとは見抜かれていなかっただろう。

 けど、生徒会側からすれば嘘をついているどちらかを疑っていたのは事実。それが自分たちに向けられていたと解釈すれば、一気に現実味を帯びてくる。

 

 これでさすがにすべてを認める。そう思ったが石崎だけは違った。

 

「ま、待てよ。やっぱり納得いかねえ。もし監視カメラに映像が残ってたんだとしたら、お前らは何もしなくても無実を証明できるってことじゃねえか。わざわざ今俺たちに教えなくても最終的に勝てただろ! やっぱりお前らが仕掛けたんじゃねえのか!」

 

「この際、私たちが監視カメラを仕掛けたかどうかなんて些細な問題じゃないかしら。あなた達が本当に無罪だったなら、監視カメラがあった事なんて気にしないし、むしろ須藤君が嘘をついている事を証明する手段が出来て嬉しいはずよ。あなた達が焦って取り乱した様子はここにいる全員が聞いていたし、録音もしてある」

 

 机に下向きに置いた端末を持ち、RECと書かれた画面を石崎達に見せる。

 

「それに、先ほどあなた達は『他の廊下には監視カメラなんて無かった』なんて言っていたけど、まるで予め確認したような発言ね。それに、私たちが監視カメラを取り付けることが、あなた達をハメるというのはどういうことかしら?」

 

 怯むCクラス3人に対し、堀北は畳みかけるように攻撃を仕掛ける。

 自身の発言で墓穴を掘った事に気づいた3人は、顔を真っ青にしながら下を向いた。

 もう何を言っても墓穴を掘ることになる。そこに気が付くのに時間がかかりすぎたな。

 

 監視カメラがあった場合、既に学校側に事の顛末が伝わっているため石崎達の負け。

 オレ達が仕掛けた場合でも、あれほど取り乱した様子を見せた時点で負けだ。そもそも、この作戦は自分たちが嘘をついていない場合しか出来ないものだ。さっき堀北も言ったが、監視カメラがあると伝え、相手に喜ばれたらそれこそおしまいだ。

 

「決着はついたみたいだな。では、これより結論を出すが、双方問題は無いか」

 

 生徒会長が全体を見回しそう呼びかけるが、そこに待ったをかけた者が居た。

 

「待ってください」

 

 待ったをかけたのは堀北。完全に勝ちが決まったDクラスからの発言に、この場にいるオレ以外の人間は驚いた様子を見せている。

 

「現状、まだ監視カメラの映像は証拠として提出していません。提出するには、一度この場で映像を確認する必要があります」

 

「それがどうかしたのか堀北。証拠映像が無くとも石崎達の反応から、どちらが嘘をついているのかは明白だ。提出されていないから生徒会長が判断に迷うというのは、お前の杞憂だぞ」

 

 そう続けた堀北に茶柱先生が語るが、堀北の狙いはそうではない。

 

「仮に石崎君達が退学になったとしても、暴力を振るった須藤君には何かしらの処分は下るはずです」

 

「須藤には情状酌量の余地がある。処分も軽くなるはずだ」

 

「それでも、須藤君のバスケ部レギュラーの話は危うくなります」

 

「起きてしまったことはしょうがないだろう。この場で須藤の処分を無しにするのは不可能じゃないか?」

 

「いいえ。この場で全員が不幸にならずに済む方法が1つだけあります」

 

 茶柱先生との会話を続け、堀北はCクラスの生徒達を見た。

 

「石崎君。確か訴えを起こしたのはあなただったわよね?」

 

「ああ? ……それが何だよ」

 

 もう取り繕うこともやめたのか、苛立ちを隠さずにこちらを睨みつける石崎。

 

「じゃあ、この場で訴えを取り下げなさい。そうすればこの審議は無かったことになり、誰も処分を受けることも無くなる」

 

「なっ!」

 

「くっ、くくく……そんな手段があったか。考えたな堀北。だがいいのか? 石崎達が退学になれば、Cクラスはペナルティを受けるかもしれないんだぞ? 意図的に暴力事件を起こして、虚偽の報告で学校全体を巻き込んだんだ。確約は出来ないが、DクラスがCクラスになるほどの処分を受ける可能性だってある」

 

 堀北の言葉に驚く石崎と、笑いをかみ殺しながら聞き返す茶柱先生。

 

「それも魅力的ですが、私は須藤君がレギュラーになって試合で活躍し、クラスに恩恵をもたらす方が良いと考えました」

 

「堀北……」

 

 須藤が感動を隠さずに堀北を見つめている。

 自分の無実を信じ、戦い続けてCクラスの訴えを完璧に退けた上、自分の唯一の非である、石崎達に手を出したことまで庇ってもらったのだ。

 

「……それでどうするの石崎君。訴えを取り下げるのか、取り下げないのか。早く決めて頂戴」

 

 須藤からの尊敬のまなざしがこそばゆかったのか、堀北は気まずそうに石崎達に問いかけた。

 そして、石崎は他2人と目を合わせ数秒考えた後、絞り出すように呟いた。

 

 

 

「……はい。Cクラスは……訴えを、取り下げます」

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 昨日と同じく生徒会室近くのベンチで審議の終わりを待っていると、ガタンと扉が勢い良く空く音と共に、須藤が勢いよく飛び出してきた。

 

「九条おおおぉぉぉおおお!!!」

 

 目が合った瞬間、勢いよくこちらへ走ってくる須藤。

 

「ちょ、なに──」

 

「ありがとな! これ、全部お前が考えた作戦なんだろ!?」

 

 運動神経を無駄に発揮しながら、走ってきた勢いそのままで肩を組んでくる須藤。辛うじて受け止めたが……ったく。その体格で突撃されたら死人が出るぞ。

 

「ちょ、暑苦しいってお前。離れろマジで」

 

「んなこと言うなって! お前最高だよマジでっ」

 

 グイグイと絡んでくる須藤に辟易していると、奥から堀北さん、茶柱先生の2人がその様子を見て呆れていた。

 

「九条」

 

「あ、茶柱先生。お疲れ様です。こいつ引っぺがしてくれませんか?」

 

「それは出来ない相談だが、改めて感謝しておこう。お手柄だったな」

 

 おー。茶柱先生のねぎらいの言葉。普段厳しいからこういうの言われると嬉しいよね。

 

「当然だぜ! 九条は俺の恩人だマジで。バスケの試合も出れるし、あいつらザマァねえな」

 

「私個人としては、おまえは罰せられるべきだったと思っているけどな」

 

 喜ぶ須藤を断罪するように、茶柱先生は厳しい言葉を向けた。

 

「今回の事件は、そもそもおまえの日頃の行いが招いたことだ。事件の真実や嘘なんて些細なことで、大切なのは事件そのものを起こさせないことだ。おまえだって本当は分かっているんだろう?」

 

「う……」

 

「だが自分の非を認めるのは格好悪い。だから態度だけは偉そうにしている。強がっている。それもいいだろう。しかしそれでは本当の仲間など出来るはずもない。いずれ堀北もおまえに見切りをつけて、離れていくだろう」

 

「……それは……」

 

 既に離れている気がしなくもないけど。

 

「自分の過ちを認めるのも強さだぞ、須藤」 

 

 先生らしく教え子に接する茶柱先生。普段けっこう適当な人だから、こういう姿を見せるのは珍しく感じてしまう。失礼だけど。

 それを無意識のうちに須藤も理解していたんじゃないだろうか。

 うな垂れるように椅子に座り込む。

 

「分かってんよ……。そもそも俺がしっかりしてれば、俺が相手を殴りさえしなきゃ、こんな大ごとになることはなかった。どっかではわかってたんだ」

 

 こと今回に関しては須藤にそこまで非があるとは思えないが、普段の行動をしっかりしていれば防げたことには変わりない。

 

「バスケも喧嘩も、自分が満足するためだけに突っ走ってきた。けど、今はもうそれだけじゃないんだよな……。俺はDクラスの生徒で、俺一人の行動がクラス全体に影響を与える。それを身をもって体験したぜ……」

 

 この経験は流石に堪えただろう。コイツが1日で変わるとは思えないが、成長したことは間違いない。

 そこで、俺はこの場に居るはずの綾小路の姿が無い事に気が付いた。

 

「あれ、綾小路居なくね? 一緒に審議出てたんでしょ?」

 

「さっき血相を変えて出て行ったわ。お腹でも下したんじゃないかしら」

 

 ウケる。あいつ食生活終わってるからな。菓子パンカップ麺山菜定食の三種の神器以外食っているところを見たことが無い。

 

「私からも改めて感謝するわ九条君。あなたのおかげよ」

 

 そんなことを考えていると、堀北さんが珍しく素直に感謝の言葉を口にした。

 

「ま、お礼は須藤が焼肉で払ってくれるらしいから。池たちも誘ってポイント食いつくしてやろうぜ」

 

「……来月まで待ってくれ。俺今ポイントすっからかんだしよ」

 

 サムズアップしながら笑顔で語ると、須藤は端末でポイントを確認し顔を真っ青にして言った。……あ、そう言えば言うの忘れてたわ。

 

「何言ってんだよ須藤。()()()()()()()()()()()()()()んだから付いて来て。ほら、堀北さんも」

 

「……どういうことかしら?」

 

「やられっぱなしじゃ俺の気が済まないんだよ。この事件を裏で操っていた、黒幕の元へ焼肉代を集りに行こうじゃないか」

 

 疑問符を浮かべる2人を連れて、俺はとある生徒へメールを送るのだった。

 

 

 





 正直原作の対処法以上にいい方法が思いつきませんでした。
 でも偽カメラ作戦での呼び出しに石崎達が応じない場合もあるし、堀北の静止を振り切って龍園に電話するかもしれないし、何なら龍園が付いてくる可能性もあるよねってことで、こういう形で解決することになりました。
 多分原作の方法より確実かなって思います。

 先生とかいる前でこんな反応するかってツッコまれそうですが、まあ原作でも音声撮られてたら一発の中喚き散らしてたので…ってことで勘弁してください。

 次回はみんな大好きあのキャラとのご対面です。
 最近影が薄くなりつつある坂柳さんですが、もうちょっとしたら色々書くつもりなので、もう少々お待ちください!



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