ようこそ純愛過激派の教室へ 作:妄想癖のメアリー
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一之瀬さんから聞いたアドレスにメールを送り、返事が来るまで待とうとしていたその時、続けて生徒会室から出てきた堀北会長と目が合った。
「あ、ちょっと行ってくるね堀北さん」
実はまだ入学してから堀北会長とは話したことが無い。昨日話したかったが叶わなかったので、今日こそはと堀北さんに断りを入れ、早足で廊下を歩く。
「久しぶりです! 堀北さ……んだと被っちゃうな。何て呼べばいいですかね」
堀北さんと呼ぼうと思ったが、それだと妹の方と被ってしまうことに気が付き、開口一番呼び方の話になってしまった。
「2年ぶりの会話の最初がそれか? お前の好きに呼べばいい」
「じゃ学さんで! いやーもう2年も経ったのか……背も追いついちゃったし、早いもんですねホント」
「お、お知り合いですか? 生徒会長」
そんな懐かしい会話に花を咲かせていると、生徒会室の奥から1人の女子生徒が驚いたように、俺と学さんの目を交互に見る。
「初めまして。1年Aクラスの九条旭です。会長とは入学前から色々お世話になってて、もう少し早めに挨拶に行けたら良かったんですが」
「いえいえ。入学してから色々と忙しかったでしょうし。ご丁寧にありがとうございます。3年Aクラスの橘茜です。生徒会書記をやらせて頂いてます。よろしくお願いします」
橘さんは丁寧にお辞儀を返し、挨拶をしてくれた。話し方や雰囲気から品行方正さが伝わってくる。学さんはこういう女の人がタイプなのか?
この人マジでそういう話全然しなかったからな。もしそういう話になったら全力で応援するのに。
「九条はこう言ってるが、端的に言えばライバルだ」
「嬉しいこと言ってくれますねー。一回も勝てた事無いのに……いたっ」
「調子に乗る性格も相変わらずだな」
うりうりーとにやけながら肘を突くと、学さんは手刀で軽く俺の頭を叩く。
その様子を見ていた橘さんは、目を丸々と見開いて呆気に取られていた。……この人反応面白いな。
「か、会長のライバルですか? 2つも年下の貴方が!?」
そんなに驚くことかと思ったけど、同じクラスで生徒会に所属してるならこの人の凄さは身に染みて分かってるか。
「俺も会長も空手習ってたんですけど、先生が友達同士だったからよく交流会的なのをやってたんですよ。そんでその度ボコボコにされてました」
「へぇー。凄いですね九条君。会長にライバル認定されるだなんて」
最初に抱いた印象からは意外に、橘さんは興味津々といった様子でこちらを見つめてきた。この人も俺と同じで学さんのファン的なノリかもしれない。
「橘さん。ちょっとちょっと」
ちょっと気になった事があったので、橘さんの肩をちょんちょんと叩き、会長に背を向けながら小声で呼びかける。
不思議そうにこちらを見つめる橘さんに、小指をピンと立てて
「学さんって、
「い、いえ! 生徒会長は品行方正なお方なので、そのような噂は一切」
「なんだー。面白い話聞けると思ったのに」
「……中学校時代の生徒会長って、やっぱりモテました?」
「そりゃあもちろん。顔良し頭良し運動良しともなると最強っすよマジで。学校でどうだったかは知らないですけど、道場でも結構
「やっぱりそうですよね……」
「そうだ。もし手伝えることあったら。これ僕のIDなんでいくらでも相談してください」
「んなっ!?」
うん。この人やっぱおもろいわ。仲良くなれそう。
「九条、あの作戦を考えたのはお前か?」
橘さんにシンパシーを感じていると、学さんが質問をして来た。
「はい。作戦って程のもんじゃないっすけど、監視カメラ云々は俺が考えました」
「ふっ……そうか。思いついたのは一回目の審議よりも前だな」
「お、やっぱ分かります?」
「あの時点での鈴音と綾小路は、そもそも須藤の無実を証明する気が無かったからな。最初はそもそも諦めているかと思ったが、審議を混沌とさせ、期日を延長させるつもりだったと考えたら自然な対応だ」
「一応審議が延長されなかった時のことも考えてたんですけど、まあ杞憂でしたね」
この人の性格からして、曖昧な状態で決断をするとは考えづらい。審議の延長は予想していたことだ。
既にCクラスの生徒は居ないため、周りに聞かれないように声のボリュームを抑えて2人に説明する。
「あの監視カメラは家電量販店で買ったダミーカメラです。意外と安くって、1個3000ポイントくらいで買えちゃうんですよ。どうでした? あいつらの反応。さぞビックリしてたでしょ」
「ああ。監視カメラの無い特別棟で、評判の悪かった須藤を狙った犯行は中々のものだったが、最後の詰めが甘かったな。あの場の対応を見るに、石崎達の裏で操っている生徒がいるのは間違いない」
「これからそいつ脅してポイント集りに行くので、もし成功したら飯でも食い行きましsy「言い方を考えろ」あいたっ……そう何回も頭叩かないでくださいよ。これ以上バカになったらどうするんすか!」
頭をさすりながら訴える俺を見て、学さんは小さく笑って話した。
「入試で坂柳に続いて2位だったお前が良く言えたものだ。流石に大学数学の範囲は履修外だったようだがな」
サラッと点数開示されてるんだが。
結果って先生に聞かないと教えてもらえなかったのに、生徒会に所属するとそう言うのも見せてもらえるのか。
「うわ恥ずかし。人の点数勝手に見ないでくださいよ。……ってか、普通高校数学に大学の範囲入れます? やっぱ頭おかしいっすよこの学校」
「同感だ」
やっぱり学さんなら同意してくれるよな。なんだかんだ言って優しいしマジリスペクトだわ。
「橘。まだ書記の席が一つ空いていたな?」
懐かしい温度感の会話にしみじみしていると、学さんはふと隣に立つ橘さんに確認を取った。
「はい。先日申し込みのあったAクラスの1年生は1次面接で落としましたので」
「九条。お前が望むなら書記の席を譲っても構わん」
「いいですね! 私、九条君なら上手くやってけると思います!」
おお。学さんの下で生徒会として働くってことか。かなり魅力的な提案だ。橘さんも歓迎してくれてるし、この学校のルール次第では喜んで受けていただろう。
「いやーすみません。ちょっと遠慮しときます。受けたいのは山々なんですけど」
しかし残念だが、ここは断るしかない。
「えええっ? 断っちゃうんですか!?」
「ふっ……だろうな」
驚いたように声を上げる橘さんとは対照的に、学さんは納得の様相を見せている。
「性格悪いっすよ学さん。俺が空手部立ち上げるの知ってるでしょ? 『生徒会と部活動の兼任は出来ない』って。あなたが言ってたじゃないですか」
「あっ……なるほど」
その言葉で納得が言ったのか、手をポンと叩く橘さん。
「最初にそれを聞いたときは驚いたぞ。なにせ部員が綾小路と鈴音だったんだからな。どうやってあの二人を囲い込んだんだ?」
「綾小路はポイントにつられてホイホイ入部しましたよ」
「……っ。そ、そうか」
お、ちょっと笑ったな学さん。……有栖も学さんも、あいつのことを変に評価してるけど、どれだけ実力を隠してようと1人の男子高校生で、俺の友達な事には変わりないんだから。
いや気になるけどね!? あいつ世間一般の常識とかマジで無いし。初めて出会った時もそうだったし、ボウリング行った時も普通の人の平均スコア聞かれたから250(プロレベルの点数)ってふざけて答えたら262だったし。
何なん? 必ず平均より少し上取ろうとするの。絶対褒められたいやん。
因みに最近俺の中で最もアツいのは『研究所から逃げ出してきたクローン的な生き物説』だ。次点で『家に引きこもって英才教育をこれでもかと受けた貴族の超箱入り息子説』。
流石に1個目は冗談として、箱入り娘説は結構あり得そうだ。こいつ家族の話とかマジでしないし、中学の時の話も聞いたことが無い。仮に家同士で繋がりがあって、幼少期に有栖と出会っている的な背景があるかもしれない。……その場合俺が竿役(NTRにおいてヒロインを寝取る憎き人間のこと)じゃね?
……雑念は取り払うとして、となると不器用ながら学生生活をエンジョイしているのも納得がいく。まさか長年俺を悩ませてきた竿役の正体だとは思わなかったけど。
そんな感じで色々思う所はあるが、綾小路が有栖に興味無さそうだし、一緒に居るのは楽しいから割り切って友達やってるというわけだ。コイツ俺に振られたらそれこそぶっ壊れそうだし。
……っと話が逸れた。目の前で笑いを堪えていた学さんに続けて説明する。
「堀北さんは何故かあっちから入るって言ってくれたんですよね。多分学さんの話をちょこっとだけしたかr……あっ」
「……ほう? 一体鈴音にどんな話をしたか、詳しく聞かせてもらいたいものだな」
「会長!?」
急に圧を強めた学さんに、橘さんが驚いたように声を荒げた。うん、やっぱ超怖いこの人。
俺の肩に置かれた手に力が籠められ、心無しかミシミシといった音が俺の肩から聞こえて来た。
「部活動を作るには生徒会の許可が必要だが、知っていたか九条?」
「は、はい」
そう答えた後で、俺は学さんが生殺与奪の権を握っている事に気が付いた。
「!? ま、まさかあの天下の生徒会長が、個人的な理由で設立を認めないなんてことしないですよね!?」
俺は右肩に走る痛みを堪えながら、そう嘆願するように叫んだ。
「安心しろ。そんな子供のような真似はしない。だが、俺も活動内容に興味があるんだ。今度見学しに行っても問題ないな?」
「……はい。ぜひ、お待ちしております」
終わった。絶対ボコられるの確定だわ。
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石崎達がこっぴどくやられた報告を聞いてから1時間後。俺は差出人不明のメールを受け取り、そいつが指定した特別棟の裏手へと足を運んでいた。
時刻は既に夕方もうすぐ6時を回り、先ほどまでウザったく照らしていた夕陽も沈みかけている。そんな中、学校と特別棟を繋ぐ渡り廊下を、数人の足音だけが響いた。
「……ねぇ、これやっぱ罠じゃないの」
隣を歩く伊吹が今更ビビったのか、小さくこちらを睨んできた。
「罠だとしても、コッチが出向かなかったらそれこそおしまいだろうが」
「……すみません、龍園さん。俺がしくじったばっかりに」
斜め後ろを突いてくる石崎が、申し訳なさそうに声を上げる。
「何度も同じこと言わせんじゃねえ。今回に関しては相手が1枚上手だった。ただそれだけのことだ。あの場を整えられた時点で、テメェらには逆立ちしても勝ちを取るのは不可能だ」
正直言って誤算だった。Dクラスで表立って動いていたのは須藤の友人と櫛田、そして堀北という生徒だ。Dクラスだからと言って甘く見ていた節も、ないとは言い切れないだろう。
「逆に考えれば、こんな面白い作戦を考えた張本人とご対面できるってわけだ。どんな難題を吹っ掛けて来るか楽しみだな」
学校から配布された端末、そのメールアプリを起動し、先ほど送られてきた画面を表示する。
そこには『今日の18時、特別棟裏にてお待ちしております』という簡潔なメッセージが表示されていた。
「……悪戯って線は無いんすか? 龍園さんのアドレスを知っていれば、誰だって送れるし、あいつらこれ以上何するって言うんすか! 須藤の無実は証明されたでしょう?」
「いいや無いな。無実の証明だけだったら、テメェらの会話を録音する必要は無い。わざわざ録音していたのも、それをコッチに知らせたのも
石崎の話を聞くに、Dクラスの堀北は監視カメラがあると判明した際の、Cクラスの反応を録音し、それをわざわざ知らしめるように見せてきた。
無実の証明をするだけなら、石崎達の会話はあの場にいた奴らが聞いているんだ。わざわざそんな面倒くせぇことはしない。
「……クソッ!」
苛立ちを抑えきれないのか、石崎が壁を殴る。ガンという鈍い音があたりに響いた。
「でも、わざわざこんな場所を指定してくるの?」
「意趣返しだろうな。特別棟裏には監視カメラは存在しない。ムカつく奴らだ」
「……だから、最悪暴力で済ませようってわけ? アルベルトまで連れてきて、アンタも懲りないね」
相も変わらず反抗的な伊吹を無視し、俺はポケットに手を突っ込んだまま、うだるような暑さが残る校舎裏を歩く。
指定された場所に到着すると、そこには壁に寄りかかって端末をいじる1人の男子生徒と、女子生徒の姿があった。
「よう。お前か? 俺を呼び出してくれたのは」
静寂に包まれた校舎裏に、俺の声が響き渡る。
こちらの存在に気が付いた男子生徒は、にこやかに笑いながらこちらへ歩みを進めてきた。
「こんにちは。君が龍園君で合ってるのかな?」
「確かに俺の名前は龍園で合ってるが、人に名を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀じゃねえのか?」
「これは失礼。俺は1年Aクラスの九条旭。よろしく龍園君」
……ほう、ここでAクラス様のお出ましか。
九条と名乗った男子生徒は、こちらの警戒心をそぐような、そんな薄気味悪い表情で右手を差し出してきた。
「悪いな。生憎こっちはよろしくするつもりは無ぇんだ。さっさと要件を言え」
「そうよ九条君。彼らと友好を深めた所で意味は無いわ。むしろマイナスにしかならない」
俺の発言に同意するように、向こう側の女子生徒が発言した。
「ま、そりゃそっか。……じゃあ端的に伝えるよ。こっちの要求は、
「何を言うかと思えば。それに従うメリットが俺たちにあるのか?」
「メリットは単純。そこにいる石崎君含め、今回の事件に関与したCクラスの生徒3人が退学せずに済む。これを飲まない場合、俺たちは石崎君達を『Dクラスの生徒を虚偽の証言で訴えた』と学校側に訴えるつもりだ」
あくまでも余裕の表情を隠さず、こちらに質問を投げかける九条。
「クラスメイトが退学した際のペナルティは公表されていないけど、まさか0で済むと考えるほど能天気じゃないよね? その理由が学校による罰則なら、さらに重くなること位想像つくと思うけど。そしてもしこの契約書にサインしてくれるなら、俺たちは彼らを訴えないと、先生の下で約束する」
九条が取り出したのは、CクラスとDクラスの担任、それぞれの判子が押された契約書。
はっ、既に先公には伝達済みと。仕事が早いこった。
「額に関しては、君たちが入学当初受け取っていた10万ポイントを3人で掛けたもの。元からもらってた分を渡すだけで、退学のペナルティを防げるんだ。安い取引だと思わないかい?」
「龍園さん……どうするんすか」
後ろで石崎が耳打ちをしてくる。
確かに、このバカ共3人分のプライベートポイントで防げる取引は悪くない提案だ。
「契約自体は受けてやってもいいが、その場合条件を書き直してもらう。値段が高すぎるんでな」
だが、コイツは大事な情報をあえて隠して取引を持ち掛けている。
「じゃあ、どんな条件なら受けてくれるのかな?」
「
「大分吹っ掛けたねー。そんな端金貰うくらいなら、君達に堕ちてきてもらう選択肢もあるんだよ?」
そう言い返した俺に、九条は初めて余裕の笑みを消し、こちらをジッと見つめてきた。
「条件の設定とそれを受けさせる話術は悪くないが、それじゃあ俺は騙せないぜ? ……
その言葉を聞いた九条は、一度大きくため息を吐いた後、苦笑いを浮かべて振り返った。
「ごめん。やっぱダメだったわ堀北さん」
「まあ及第点ね。流石に相手も賢いようだし。それが知れただけでも大きいわ」
緊迫した空気が一気に緩み、九条はもう1枚の契約書とペンをこちらに渡してきた。
そこには以下のように書かれている。
1.乙は甲に対し、一括で90万pptを支払う。期日は両者同意の上設定し、以下の空欄に記載する。
2.契約を締結してから甲を含む現Dクラスの生徒は、石崎大地、小宮叶吾、近藤玲音、須藤健が関与した今回の暴力事件(以下暴力事件)において、今後一切の訴えを起こさないこととする。また、乙を含む現Cクラスの生徒も同様とする。
3. 1の条件を満たさなかった場合、甲を含む現Dクラスの生徒は、暴力事件で虚偽の証言をしたとして、石崎大地、小宮叶吾、近藤玲音の3人を生徒会に提訴することとする。
「なっ!? 龍園さんの出した条件と全く一緒じゃないっすか!」
状況を理解できない石崎が喚いているが、これは仕組まれた流れだ。
そんな石崎に対して、九条は指を立てながら得意げに説明した。
「3か月というのは、
「テメェの想定した状況通りなのは気に食わねえがな。だが目論見が外れたな? 俺が気が付かなかったらお前らは大金を手にしてただろうに」
挑発を込めてそう言い放ったが、九条は気に留める事すらしなかった。
「いいや。そのおかげでよーくわかったことがある。1つは龍園君が想定以上に切れ者だってこと。そしてもう1つは、君がクラスを完璧に掌握し切っているということ。普通の人なら3か月の受理期間なんて気に留めないだろうし、90万ポイントをすぐに一括で払えるのは、クラスメイトからポイントを毟り取ってなきゃ出来ない芸当だ」
「ククク……人聞き悪いこと言わないでくれよ。俺は親切なクラスメイトに協力してもらってるだけだ。なあ伊吹」
「……チッ」
俺の問いかけに舌打ちで答える伊吹。
それを横目に、九条はもう1枚同じ紙を渡してきた。
「これ契約書の控えね。明日茶柱先生に持ってくから、一応保管よろしくね。それで、振り込みの期限はいつまでにする?」
「鈴音、アドレスを教えろ」
九条の質問には答えず、俺は後ろで事の成り行きを見守っている鈴音に声をかけた。
突然の名前呼びに眉をひそめる鈴音だったが、九条が促すことで仕方なくアドレスをこちらへ渡してくる。
そのアドレスを登録し、ポイント送信画面を開いて操作を行うと、鈴音の端末の通知音が響きわたった。
「期限は今だ。すでに振り込んである、確認しろ」
「あーあ。確認も取らず送っちゃって。知らないよ俺、クラスの皆に怒られても」
「そんな些細な事でキレる程、軟な調教はしてないさ」
「うわ。最低だコイツ」
そんな会話をしながらお互いの契約書を確認し、不備が無いかを入念に調べる。……チッ、特に穴はなさそうだな。食えない奴だ。
「てことで、確認も終わったし俺たちは帰るよ。あんまり君達と一緒に居たくないし」
「同意ね。品の無さが移るわ」
そう言って背中を向け、土の地面を踏みしめ歩き出す九条。
「待てよ。お前、どうしてわざわざここを集合場所に指定した。こんな場所に呼び出して、俺たちが手を出さないとでも思ってたのか?」
後ろに控えた3人に目線で指示を出し、ジリジリと距離を詰める。
「やめといた方が良いんじゃない? どこで人が見てるかも分かんないし、同じ轍を踏む気は無いよ」
「だろうな。どうせこのやり取りも録音してんだろ?」
「さあ、どうだろうね。……ってことで、バイバイ龍園君。せいぜい君の求心力が下がってくれることを祈ってるよ」
そんな皮肉を残しながら、九条と堀北はその場を後にする。
想定以上だ。Aクラスで警戒すべきは坂柳だけだと思っていたが、まさかこんな伏兵がいるとはな。
その時、俺は自分の口角が無意識に上がっていることに気が付いた。
「────九条旭……名前は覚えた。せいぜい楽しませてくれよ?」
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Cクラスの生徒が発端となった騒動が終わって数週間が経った頃、カラオケルームにAクラスの生徒10数人……正確には、全ての坂柳派の生徒が集まっていた。
その統領である坂柳有栖は、皆が固唾をのんで見守る中、とある生徒と電話をしている様子。
「ごきげんよう────君」
『────。────、──────?』
電話口から距離があるため、坂柳派の生徒達は、相手がどのような会話をしているか知る術はなかった。
「ああ。そんなに警戒なさらないでください。貴方にとっても、悪い話じゃないと思いますよ?」
『──────。────、──────。────────』
「ええ、はい。そうです。理解が早くて助かります。こと次に行われるであろう試験では、私は何の役にも立たないでしょうし。……ありがとうございます。詳しい内容は後程話しましょう。では。良い取引になることを願います。失礼します」
「……話は済んだの?」
電話を切った坂柳に、皆を代表して神室が問いかける。
「ええ。喜んで受け入れてもらいましたよ。私が出れないのが非常に残念ですが、こればかりは仕方ありませんね」
「それで、どうするんですか姫様。九条を放し飼いにするの、もうそろそろやめた方が良いと思いますけど」
上機嫌に語る坂柳に対し、橋本が意見を述べた。
基本坂柳の指示に従っている橋本がここまで強く意見を表明するのは珍しいが、誰もそれに文句を付ける生徒は居ない。何故なら橋本の意見は、何より坂柳が常日頃言い続けていた事だったからだ。
「……正直九条が葛城のとこに行くとは思えないけどね」
「いえ、案外彼の思想は葛城君寄りですよ。昔からずっと衝突してきましたから。その度私が無理やり矯正してきたんですけど。結局馬鹿正直なところは治らないままでした」
さも当たり前かのように語る坂柳に、戦慄を覚えるクラスメイト達。
「もう猶予はないでしょうね。今後双方のスタンスが完全に別れるってなったとき、あちらに行かれるのは脅威です」
九条は知る由もないが、坂柳は九条が葛城派に行くことを危惧しているようだ。
それは、坂柳から九条への評価が高いことを証明しているようなものだった。
「じゃ、私たちも忙しくなるのね。……はあ。九条も面倒くさいわねホント」
「ふふっ……それが彼の美点でもありますから。今回でケリをつけるつもりです。そうすれば、葛城派も脅威ではありません。────邪魔者は排除しちゃいましょう」
龍園口調の地の文むっず…違和感あったら感想お願いします。
あと3か月云々は捏造です。大体こんなもんかなってノリで書きました。
次回無人島編です。気合入れて書くので高評価や感想等頂けると作者のモチベーションがぐんと上がります!
まだ評価していない方が居ましたらぜひよろしくお願いします!