ようこそ純愛過激派の教室へ 作:妄想癖のメアリー
個人的に、葛城君の評価は結構高めです。
Aクラスの試験内容は完全に創作ですが、こんな感じなのかなって思って書いてます。
高評価、感想、ここすきをいただけると作者のモチベーションになります!ぜひよろしくお願いいたします!
結局戸塚君が折れる形となり、Aクラスのリーダーは俺に決まった。
葛城君の案内でとある場所へと向かい荷物を下ろした後、俺と葛城君はキーカードを貰うため、教員用テントに向かってる最中だ。
「にしても凄いね葛城君。まさかスポットの場所を記録してたなんて」
道中、俺は隣を歩く葛城君に小声で話しかけた。誰がどこで聞き耳を立てているか分からない。
そんな俺に、葛城君は小さく笑ってメモ用紙を取り出した。
「あそこまで強調されたら気が付くさ。それに、九条の情報が確信に至らせた」
俺の情報というのは、夏休みに何らかの試験が行われる可能性があるという情報だろう。葛城君の役に立ったようで何よりだ。
取り出したメモを俺に渡してくる葛城君。そこには、島の大まかな外形図と、特徴的な地形のポイントが注釈で書かれていた。
「島の全景はある程度メモを取っている。後はめぼしい場所に調査隊を向かわせれば、この島の情報もある程度は把握できるはずだ」
「おー。他のスポットの場所も分かるかもね。流石葛城君」
「お前はメモを取らなかったのか?」
情報の詳細さと分かりやすさに感嘆の声を上げると、葛城君が不思議そうに質問してきた。
「あー……いや、ちょっと色々あって。ちゃんとは見れなかったんだよね」
うん。本当のことなんて口が裂けても言えない。別に怒られたりはしないだろうが、これは俺のプライドの問題だ。
「珍しいこともあるものだな。もし体調を崩しそうになったのならすぐ報告してくれ。リーダーのお前がリタイアすると、試験続行が怪しまれるからな」
誤魔化しながら答えた俺に、そんな労いの言葉がかけられる。その優しさと信頼が身に染みると同時に、ただボーっとしていただけという情けなさに恥ずかしさを覚えた。
────しかし、
もしリーダーが存在しない状態になるのなら、他クラスにリーダーを晒したふりをして、その後リタイアして全員間違えさせるなんてことも出来そうだ。後ほど確認してみよう。
「にしても、どうして俺をリーダーに?」
そして、話題は何故クラスの反対を押し切ってまで、俺をリーダーに推薦したのかへという疑問へと移る。
俺の質問に、葛城君は少し悩むそぶりを見せ、一度当たりを見渡して小さく答えた。
「……仮に俺や弥彦がリーダーを務めたとして、Aクラスが結束するとは思えなくてな。恥ずかしい話だが、俺はあまり
『彼女たち』というのは、恐らく坂柳派の生徒のことだろう。
「まあ、言いたいことは分かるよ。でもそれは葛城君のせいじゃないだろ。有栖のやり方が過激なだけだ」
クラスメイトを信用出来ていないことに申し訳なさを感じているらしいが、それは仕方がない事だろう。
「ふっ……そうか。お前から見てもやはりそう思うのか」
「まあね。だからあいつの派閥には入ってないんだ。俺の方針は葛城君寄りだよ」
そっち行ったら何されるか分からないから、曖昧な状態で誤魔化してるんだけど。
「お前がリーダーなら、坂柳派も派手な動きは見せないと思ってな。もちろん、信頼に値する人物だということもあるが」
苦笑いを浮かべる俺に対し、葛城君は穏やかな口調で語った。どうだろうなぁ…正直そこら辺の良心を彼女に期待してはいけないし、この前有栖からの提案断っちゃったし。
どちらにせよ、葛城派の筆頭として担ぎ上げられている手前、今みたいな愚痴は誰にもできないだろう。唯一中立の立場にいる俺だからこそ、話せることもあるということだ。
「嬉しいこと言ってくれるね。じゃ、今回の試験頑張りますか! 有栖が無茶苦茶しなくても勝てるってとこ、見せてやろうぜ!」
「そうだな。よろしく頼む」
隣を歩く葛城君の背中を、激励の意味を込めてパンと叩く。
普段個人的に関わることは少なかった葛城君だが、今回の試験で親交を深められるかもしれない。葛城君めっちゃいい人だし。
そんなことを期待しながら、俺は森を抜けるべく速足で歩くのだった。
森を歩き続けること10分。最初に皆が集められた砂浜へと向かい、教員用テントの設営を行っている真嶋先生に話しかける。
そして俺がリーダーを務めると伝えると、既に設営されてあったテントへと案内された。
「では、リーダーは九条旭で登録する。特別な理由が無い限り変更は不可能だが、問題は無いな?」
「はい。問題ありません。よろしくお願いします」
確認を取ると、真嶋先生はテントの奥の方にある機械を操作し、程なくして機械からキーカードが出てきた。
キーカードを受け取ると、名前の欄にはしっかり『九条 旭』と記載されている。誰かに見られたり、落としたりしたら最悪だ。
「登録できたみたいだな。他クラスの生徒に見られる前にスポットに戻るぞ」
「はーい」
そしてAクラスの集合場所へと戻ってきた俺は、スポットの占領を済ませるため、洞窟の中へと足を踏み入れる。
奥に設置されていたのは、人の胸ほどの高さがある特殊な機械。上下2画面がくっつくような構造となっており、上の画面には『未占領』の文字が書かれている。
そして、手元のパネルには指紋とキーカードを読み取るセンサーがそれぞれ埋め込まれていた。
「なるほどね。ここでリーダーの指紋とキーカードを登録する感じか」
中々凝った仕掛けだ。見た所防水性能もしっかりしてるし、スポットは屋外にもあるだろう。
「リーダー以外の占領を防ぐためだな。皆、外からの視線を遮るようにこちらに来てくれ」
葛城君の呼びかけに従うように、スポットと洞窟の入り口の間に入るように人が集まってきた。これならこっそり誰かが見ていてもバレることは無いだろう。
『こちらのスポットを占領しますか?』という問いにYESを選択すると、画面が切り替わった。
「『Aクラス占領済。残り7時間59分』……っと。どのクラスが何時間前に占領したかまで分かるのか」
開けた場所を占領する場合はさらに注意しなければならないだろう。
「よし、ではここで使用する物資について方針を纏めたいと思う。皆こちらに集まってくれ」
占領が終わり、葛城君の呼びかけに従って皆が洞窟の奥へと集まった。
洞窟と言っても中々の広さで、全員が床に座ってもある程度のスペースは確保されている。よく見たら崩落を防ぐための補強もされているため、ここは学校が人工的に広げた洞窟なのだろう。
「とりあえず、ここをAクラスの拠点として試験を乗り越えようと思うが、異論のある生徒は居るか?」
その問いに手を上げる生徒は居ない。
洞窟の奥まった位置にあるこのスポットは、その立地だけで大きな恩恵を与えてくれる。
1つは気温。日が当たらない為か、外よりもかなり涼しくなっている。熱中症のリスクも減らせるだろうし、これ以上リタイアを増やしたくないAクラスにとっては打ってつけと言っていいだろう。
もう1つは、他クラスからの偵察を防げることだ。入口を適当にブルーシートかなんなりで塞いで、交代で見張りを置けば物資の使用状況等を、他クラスに見られる心配がない。
「よし。では購入する物資を考える。マニュアルはあるか?」
「はい! ここにあります!」
戸塚君が持っていたマニュアルを葛城君に渡す。葛城君に対する忠誠は本物だ。
これで俺にはガブガブ噛みついてくるあたり、本当に忠犬って感じだな。
「ふむ……雨風を凌げる場所を見つけたのは大きいな。追加でテントを買う必要が無くなる」
となるとテント2つで20ポイントの節約か……渋いな。有栖が居ない分の30ポイントは埋まらない。他クラスもスポットによる恩恵は間違いなく受けているだろうし、ここで節約ばかりするのはあまり得策には感じることが出来ない。
しかし、今回の試験を取り仕切るのは葛城君。リーダーという役職を貰ったとはいえ、そこをはき違えるのは良くないことだ。
「衛生面から仮設トイレ、シャワー室を借りるのは当然として、後は食料をどうするかだな」
葛城君が指を指したのは飲料水や食料の欄。
肉や魚などの豪華な食料はポイントが高いから置いておくとして、最低限栄養を取るなら大体120ポイントを使用する計算だ。
「思ったけど、食料に関しては今すぐ決めなくてもいいかもね。食えそうなものとか島にありそうだし」
先ほどざっと植生を見た限り、学校側がこの島の手入れを欠かさず行っているのは間違いない。
「確かにな。他のスポットを探すのも含めて、日が落ちるまでは探索に出るのも有効だろう」
そんな俺の意見が受け入れられたのか、葛城君は一度洞窟を出て辺りを見渡した。
「では人手を半分に分けよう。20人5班でそれぞれ分かれ、島にあるであろう食料、スポット、地形などを把握することを目的として探索隊を作る。残りの生徒はここに残って設営と作戦会議だ。探索に出てくれる人は挙手してくれ」
中学で生徒会に所属していた経験もあってか、流れるような指示を出す葛城君。坂柳派の子たちは葛城君のことを低く評価している節があるけど、正直俺はそうは思わない。というか、有栖自身も彼の能力の高さは認めている。『部長とかやらせたら最高の人材でしょう』的な事言ってたし。
こういう場面で集団を纏める能力というのは、龍園君や有栖みたいな、悪知恵を働かせるのが得意な人より有用だからな。後者は政治とかの業界では役に立つかもしれないが、普通に社会人をやる上では使うことはほぼ無い。というか来てほしくない。
葛城君の手腕に感心していると、突然肩をトントンと叩かれた。
見ると、いつの間にか隣に来ていた橋本君が耳打ちをしてくる。
「なあ九条。ここに居ても退屈だし探索しに行こうぜ」
何と一緒に行かないかという打診だった。5月からはこういう誘いを受ける機会がごっそり減ったので、正直言って滅茶苦茶嬉しい。
「いいね。行こっか」
そう言って橋本君と手を上げる。現在手を挙げている生徒は10人ほどだったが、そこからぽつぽつと手が上がり、最終的には20人ピッタリになった。
手を挙げた生徒が外に集められる。そこで気が付いたが、その面子ほぼ全員が坂柳派の生徒だった。ちなみにほぼと言っているが、当てはまっていない生徒は俺だけである。気まずすぎる。
「……よし。人数丁度だな。では好きなように班を組んでくれ」
葛城君もその顔触れを見て何か言いたげだったが、こればっかりは仕方がない。葛城派ばかりの話し合いの場に残っていても、何もできずに話を聞くしかないからな。
有栖にどんな入れ知恵をされているか分からないが、探索班と待機班をそれぞれで分けるのは、葛城君にとっても悪くないはずだ。話し合いがこじれる心配もないし。
って思ったけど、これ俺あぶれないか? 戸塚君ほど露骨に嫌ってる子は居ないが、それでも腫れ物なのは間違いないし。
「よし、じゃあ鬼頭と神室入れて4人で行くか」
そう言って俺の背中を軽くたたいた後、目の前の鬼頭君と神室さんに話しかける橋本君。
うん、君最高だよ橋本君。今君が橋本派を作ったら俺喜んで所属する。いやマジで。
無表情の鬼頭君と、何か言いたげな表情の神室さんを連れ、俺たちは4人で固まった。他の子たちも同様だが、何故かチラチラと見られている気がする。
武道やってる奴は視線に敏感なんだぞ! これはきっと「いや何でお前がここに居んねん」っていう視線だ……うん。泣きたくなってきた。
脳内で勝手に被害妄想を作り出し自爆していると、葛城君がメモ用紙に何かを書いているようだ。
それを班に1つずつ配ると、腕時計で時間を確認した後指示を出した。
「そのメモは島の外形と地形の特徴をまとめたものだ。大雑把な内容で済まないが、有効に使ってくれ。書き写しても構わないが、その場合落とさないようにだけ気を付けてくれ。ゴミを放棄した判定になるかもしれないし、何より他クラスに拾われたら面倒だ」
クッソ有能やん。マジで何で坂柳派は毛嫌いしてんだろ。
有栖がトップで、その下に葛城君がつく体制だったら最強無敵のAクラスになれるのに。そしたら俺はクラス間闘争には関与せず、一生空手だけに専念できるだろう。
「では1時間で一旦戻ってきてくれ。脱水症状が怖いからな」
その言葉を聞き、班ごとに別方向へと別れた。
「ありがと葛城君! 探索行ってくるね」
「ああ。気を付けて行けよ、九条」
俺の言葉を聞き、手を上げて見送ってくれた葛城君。ここまで考えてもらったんだ。何かしらの成果は持って帰らないとな。
ちなみに、葛城君にありがとうと言ったのは20人中俺だけである。
……もう嫌だこのクラス。DクラスかBクラス行きたい……。
葛城君結構好きです。二次創作でボコボコにされがちだけど、今作だとどうなるのでしょうか?
高評価や感想等頂けると作者のモチベーションがぐんと上がります!
まだ評価していない方が居ましたらぜひよろしくお願いします!