ようこそ純愛過激派の教室へ 作:妄想癖のメアリー
綾小路視点。言及がない所は原作と同じです。
高評価、感想、ここすきをいただけると作者のモチベーションになります!ぜひよろしくお願いいたします!
試験が始まって2日目の朝。点呼を終え自由行動に移ったDクラスだが、特にやることが無いため日陰に腰を据える。正直立つことすら億劫になるほどの気温だ。
こんな陽が差し込む中、クラスメイトに対し積極的に指示を出す平田は、やはり奉仕精神が強いのだろう。
「暇そうね綾小路君」
そんなオレの元にやってきたのは堀北。相変わらずの無表情で、この暑さをものともせず立っている。
「暇というか、暑すぎてやる気が出ない」
「よく言うわ。暑くなくても積極的に動こうとしないくせに」
「ロジハラって知ってるか? 最近は正論もハラスメントになるんだぞ」
正論だということは認めるが、人には人の事情があるのだ。
「減らず口が利けるなら問題ないわね。ちょっといいかしら」
「……面倒ごとか?」
乗り気じゃない俺に、堀北はため息を吐いたのち、恐るべき言葉をオレの耳元で呟いた。
「
「……はい」
それを言われてしまったら何もできないな。仕方なく堀北について行く。
「どこに行くんだ?」
「Bクラスのキャンプ地よ。昨日の自由時間に探索して見つけたの」
昨日の自由時間というと、池がスポットを見つけた後の話だな。オレと佐倉と山内が、焚き火用の枝を探していたタイミングだ。
「まさか1人で捜索してたのか」
「ええ。日中なら迷うことは無いでしょうし、島の地形もある程度把握しておきたいから」
さも当然だといった様子で語る堀北。元から体力がある方だとは思っていたが、まさかここまでアグレッシブに動くとは。
「……熱中症には気を付けろよ」
そんなねぎらいの言葉を掛けるが、堀北はこちらを振り返ることなく腰に手を当てた。
「誰かと一緒にしないで頂戴。……まあ、先月まで体力が落ちていたのは事実だけど、あれだけ運動すれば元通りよ」
先月といえば空手部が活動を始めたタイミングだな。
週3回放課後2時間の練習に加え、朝のジョギングや夜のストレッチ。はたまた部活が無い日のトレーニングなど。九条が考えたメニューをこなしている。
堀北からも好評のようで、「ここまで丁度いいメニューを組まれると逆に気持ち悪いわ」なんて言って、九条を泣かせていたのを覚えている。
「あなたも、文句を言いつつもこなしてるんでしょう? どうしてそこまで暑さに弱いのかしら」
「いや、別に暑い中運動してないだろ。それに、俺はお前みたいに
稽古は適切な温度に設定されたジムで行うし、帰宅後のトレーニングもエアコンの利いた室内を使う。朝のジョギングも早い時間帯からやるからそこまで暑くないんだよ。
事実なのだが、堀北はどうにも信じていない様子だ。
「よく言うわ。九条君のふざけたメニューを一瞬で終わらせた癖に」
九条が考えたふざけたメニューというのは、腕立て伏せ100回、腹筋100回、スクワット100回、ランニング10㎞という、数字のキリの良さだけで組んだであろうメニューのことだ。
「ハゲになってくれれば有栖も諦めるかなって思って」なんて意味の分からないことを言っていたが、目の前でこなしてやったら口をあんぐり開けていた。ざまあみろ。
というよりそこまで難しいメニューでもない。九条も別にできるだろう。
「筋トレが趣味だったからな」
「特にトレーニングはしてないって、前は言ってたわよ」
「そうだったか?」
何と言うか、最近どんどん誤魔化しが利かなくなってきている気がする。外で運動したことは無いと言った時も、九条には可哀想な目で見られたし。
坂柳がホワイトルームのことを九条に教えたのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。普段の日常生活で薄々感づいているそうだ。……それに関してはオレにどうしろというんだ……
「別に、詮索する気は無いけど、嘘をつくならちゃんと設定を考えておくべきよ」
「そうだな……」
堀北からそんなご尤もなアドバイスを頂き、頭の中で設定を考える。もう隠す気すらないらしいが、どちらにせよ
先ほど『報告』がどうたらと堀北が言っていたが、今の俺が堀北に逆らえないのはこれが理由だったりする。
────夏休みに入ってすぐ、俺は堀北に呼び出され彼女の部屋へと向かった。
そこで堀北に言われたのは、茶柱先生がオレの行動を逐一報告させようとしてきたという内容。つまりオレの監視を頼まれたとのこと。
監視対象にそれを言っていいのかと思ったが、堀北はこの事実を明かした方が長い目で見て得策だと判断したようだ。表面上だけの協力関係より、共通の敵を作った方が良いだろうという、堀北らしからぬ考え。
話を聞く限り、茶柱先生はオレの行動を把握し、自身の担任しているクラスをAクラスへと上げるために利用したいらしい。わざわざ目立つような行動を取ってこなかったオレに狙いを定める辺り、彼女もまたオレの過去を知っているということだろう。
「今回の無人島試験、特に動向に目を張るように言われたわ。須藤君の時もそう。『あなたを掌握しないとクラスが崩壊する』だなんて」
直接オレに脅しをかけてこない辺り、茶柱先生も様子をうかがっているということだろう。
もしオレと堀北との関係が今より希薄だったら、退学を盾に直接脅された可能性もあっただろう。
「済まないな堀北。わざわざ教えてもらって」
しかし、茶柱先生は1つ大きなミスをした。
それは、俺と堀北は彼女が思ってるより仲がいいということだ。
「別にあなたの為じゃないわ。勘違いしないで頂戴」
そんなコテコテのツンデレセリフを言い放ち、堀北は歩く速度を上げた。
今までの堀北なら考えられなかった行動だろう。しかし、彼女の心を蝕んでいたコンプレックスという名の檻を、九条が兄との橋渡しを行うことで壊したのだ。
部活が無い日に、生徒会長と堀北が部室の使用許可を取りに来ると九条から聞いたが、きっと2人で積もる話でもしているのだろう。
だから余裕が生まれ、苦手だった他者に対する歩み寄りも、以前より多く見られるようになった。
「Bクラスのキャンプ地を見に行ったらAクラスも探そう。九条にお礼をし忘れていたことがあってな」
先日のレストランでのお礼が出来ていなかったのを思い出し、堀北に提案する。
「あなた本当に九条君を偏愛してるのね。
「……いや、そういう意味じゃないからな。マジで」
確かに九条は俺の初の友達で、いつも一緒に昼食を共にして、放課後は一緒に部活やって、部活が無い日は遊びに行って、休日は部屋でダラダラと過ごすような仲だが……凄いな。オレのプライベート全部に九条が居る気がする。
とにかく、オレは九条をそういう目で見たことは無い。決して。
というか、そんな目で見ていたらオレが坂柳に何されるか分からない。
謎にオレとの関係を匂わせているが、傍から見たら坂柳が九条のことを好いているのは間違いないだろうからな。
いい加減両想いなんだから早く付き合ってくれ。勝手に渦中に巻き込まれたり、リア充の恋愛相談をずっと受けていると胃が痛くなってくる。
「そう。ならそういうことにしておいてあげるわ」
「こ……こいつ」
対人関係が希薄なくせに、人を煽ることだけは一級品なんだから質が悪い。
そしてBクラスのキャンプ地を見終えたオレは、堀北の後ろを付いていく形で森の中を切り開いて行く。
「お前、もしかしてAクラスのキャンプ地の場所も分かってるのか?」
その迷いない足取りに思わずそう聞いてしまった。
「ええ。船が島を一周したときに目星の場所もつけたし、そこに沿って探したら見つけたわ」
……凄いな。メンタル面を改善しただけでここまで成長するものなのか。
あまりの有能さに舌を巻いていると、今度は堀北からこちらに話しかけてきた。
「Bクラスとの共闘、するべきだと思う?」
話題は先ほどキャンプ地を見学してきたBクラスについてだ。
「いいや。正直一之瀬達との関わりもそこまで深くないからな。あちらも提案してこなかったということはそう言うことなんじゃないか?」
そう。キャンプ地にお邪魔した際、一之瀬達は案内こそしてくれたが、お互いの協力関係を提案するようなことはしてこなかった。
そもそも一之瀬と堀北が交流した須藤の件に関しても、九条がスラスラと解決してしまったからな。もしそのまま一之瀬達と協力してたなら協力関係になってもおかしくないが、現時点ではそこまでの仲とは言えないだろう。
「そう。私も同じことを思っていたわ」
「まあ、だからと言ってリーダーを当てるなんてことも厳しいだろうがな」
一応オレも佐倉と一緒に当たりを付けていた場所を回ったりしたんだが、見つけることは叶わなかった。
スポットを抑える瞬間などを見れればよかったのだが、そう上手くは行かないな。
「……気がかりなのはCクラスね。伊吹さんたちの話によると、
伊吹……昨日佐倉と山内と枝を集めていた時に保護した生徒の内の一人だ。
「前に会った事があったんだろ? 龍園からポイントを貰いにいったときに」
「ええ。元から彼のやり方に反抗していたらしいけど、そこまで話がこじれるものなのかしら」
今までの語り口から分かると思うが、DクラスはバラバラになったらしいCクラスの生徒を
2人とも伊吹は龍園に叩かれたのか右頬を赤く染めており、吉田に至っては腹を一度殴られたらしい。
元から恐怖政治による不安定な纏まりだとは思っていたが、無人島というストレスのたまる環境でそれが爆発したのか、それともこれが
「さあな。今のところ何とも言えないだろ。話を聞く限りじゃ、見当たらない生徒は全員リタイアした可能性もある」
「仕方ないわね。暴力で人を纏める事なんて不可能よ。これで龍園君も懲りたんじゃないかしら」
「なら良いんだが」
どうにも、これが龍園のミスによる事故だとは到底思えなかった。
────────────────
オマケ:夏の思い出2
「旭君。来週伊豆にある別荘に行くことになったのですが、ぜひご一緒にどうですか?」
調子に乗った旭君にしっかり制裁を加えた後、私は彼の上に跨りながらそう提案しました。
「……はぁ、はぁ……それ、絶対今言うことじゃない……」
数分に渡るくすぐり攻撃は流石に堪えたのか、旭君は息を途切れ途切れにしながらそう返してきました。
何ならくすぐった私も少し疲れてるくらいです。仕方がないのでそのまま彼の胸板に倒れ込みましょう。
「おわっ。びっくりした」
「重いとか言ったらお仕置き再開ですからね」
「言ってないよ!? 一言も言ってない!」
やかましく叫ぶ旭君を無視し、私はドクドクと音を立てる彼の胸に耳を当てます。
それと同時に、見た目に反して意外とがっしりした体つき何だなぁという感想も抱きました。小学生がここまで筋肉を付けて、身長が伸びなくなっては大変です。
「で、行くんですか? 行かないんですか?」
「行く! 有栖と旅行するの初めてだし!」
……まあ、その時は仕方がないので私が貰ってあげましょう。
私はこれから成長する余地を残しています。旭君の身長を追い抜いて、悔しがる旭君を上から見下ろしてからかうのも、悪くないかもしれません。
「ん……ふあぁ」
そんなことを考えたら眠くなってきました。久しぶりに体を動かしたからでしょうか。
……仕方ありません。寝る子は育つと言いますし、このまま旭君の胸を借りて寝てしまいましょう。
「エアコンが効きすぎて肌寒いので、このまま私の湯たんぽになって下さい」
そう言ってぎゅっと抱きしめると、旭君はそれに答えるように私の背中に手を回しました。
「じゃあ俺も寝よー」
すると十秒程で、穏やかな寝息が聞こえてきました。
……寝るの早すぎじゃないですか? 普通、好きな異性と同衾するなんて、緊張して眠れないはずよね?
「すぅ……すぅー……zzz」
……これだから思春期も迎えていない小学生は。
少し腹は立ちますが、私は彼とは違って大人なので許してあげましょう。
「んっ……おやすみなさい。旭君」
────それから程なくして、私の意識も深く沈んでいくのでした。
「随分とばたばたしていたようだけど、2人とも大丈夫かい……って、おやおや」
「有栖? アップルパイ焼けたから旭君と食べて「お母さん。静かに」……ってまぁ! あなた、カメラ持ってきて!」
「そうだね。下からとってくるよ……それにしても、少し仲が良すぎじゃないかな?」
「あら、あなたはこの光景をみて、嫉妬が先に沸いてきちゃうんですか?」
「いや、だって……頬をぴったり付けて寝るなんて赤ん坊でも中々……「いいから! 早く持ってきてください!」……分かったよ」
どうでもいい豆知識
・小学一年生はまず夏休みまでにひらがなとカタカナを覚えて、そこから漢字を覚えるそうですが。九条が初めて覚えた漢字は『有』で、二番目が『栖』でした。
・九条の寝落ちのスピードは超高速です。
・小さい頃の坂柳と九条は、くっ付いて眠っていることが多かったらしいです。
高評価や感想等頂けると作者のモチベーションがぐんと上がります!
まだ評価していない方が居ましたらぜひよろしくお願いします!
来週からテストが始まるので、少しの期間更新頻度落ちます…すみません。