ようこそ純愛過激派の教室へ 作:妄想癖のメアリー
テスト期間ですが投稿しちゃいます。今から徹夜すれば何とかなる…はず。
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「よし。占領完了っと。次は……夕方4時かな」
2日目の朝。点呼を終えた俺たちAクラスは、そのままの足でスポットを再占領した。
8時間後に再占領可能となるため、朝8時の点呼後に一度、夕方四時に一度、そして寝る前の12時に一度といったサイクルで占領する形となった。
「では各自自由行動に移る。龍園との契約のおかげで物資は潤沢にあるが、時間を持て余す理由にはならないからな」
先日散々爪痕を残していった龍園君の顔を思い出し、自然と眉間に皺が寄るのを感じた。
大胆な行動もそうだが、何よりスイカを持ってはしゃいでいたのを鼻で笑われたのが一番腹立つ。
別に良いじゃん。夏休み×スイカの組み合わせは王道だろ? みんな喜ぶだろ?
「自由行動だとよ。どうすんだ九条?」
特にやることもなく洞窟の中の岩に座っていると、先日仲良くなった橋本君が話しかけてきた。
最早お馴染みの面子となった神室さんと鬼頭君の姿も見える。
「昨日取ってきたスイカでも切って食べようかなって」
あの後男子総出でスイカをかっさらってきた俺たち。直射日光が当たらないように洞窟の奥に20個程積み込んである。
食べられる分だけ持ってきたつもりだったが、一個一個が想像以上にデカかったためか、正直食べ切れる気がしない。昨日来た龍園君に一個おすそ分けしようと思ったが、重いものを持って帰るのが嫌だったのか断られた。
「ふーん。じゃあ神室と切っといてくれよ。俺と鬼頭は探索行ってくるからさ」
「あ、神室さんは行かないんだ」
「ええ。別に積極的に外に出る理由も無くなったし、暑いし日焼けするし」
そう言って俺の隣に腰を下ろす神室さん。日焼け止め等は与えられているが、この天気は女子には厳しいだろうからな。
「じゃ、てことで俺たちの分残しとけよ?」
「そんなに急がなくても逃げないよ。あれだけあるんだから」
「はっ、違いないな」
洞窟を出ていく橋本君と鬼頭君に手を振る。
その姿が見えなくなった辺りで、神室さんが口を開いた。
「あんたも厄介な奴に目付けられたわね。龍園と交渉なんて死んでも嫌だわ」
「まあご指名されちゃったらしょうがないよ」
そう。昨日龍園君がわざわざこちらに足を運んだのは、俺と……正確には俺を代表としてAクラスと取引をするためだったのだ。
「ま、そのおかげで楽できるんだけどね」
彼が持ちかけて来た取引の内容は以下の契約書の通り、いつかの意趣返しの様に契約書まで用意していた。
1.甲は乙に、乙が指定した200ポイント分の物資を、試験1日目の夜点呼までに購入し譲渡する。
2.物資の譲渡が確認され次第、乙を含む現Aクラスの生徒は、卒業まで甲に200cpt150cpt分のプライベートポイント総額80万ppt60万pptを支払うものとする。
3.物資に不備があった場合のペナルティは、甲と乙それぞれが半分ずつ請け負うものとする。
元々は1項と2項のみだったが、そこに俺は3項を付け足した。理由としては単純、龍園君が渡してきた物資に何らかの不備があったら困るからだ。彼ならバレないようにこっそりテントに裂け目を入れたり、部品が足りていない状態で渡してきてもおかしくない。
そして第2項にも手を加えた。
「あんたが皆の前で値切った所はすっきりしたわ。龍園には散々絡まれてたし」
「まあ龍園君も想定してたっぽいけどね。200ポイントは贅沢過ぎるから。わざわざそれを全額買ってやる義理は無いし」
生活に必要なポイントをざっくり計算したのだが、その総額は飲食を採集して賄った場合で120ポイント程。賄わなくても180ポイントを使用すれば何とかなる。
全て採集で賄うのは現実的ではないため、その間を取って150というわけだ。
わざわざ試験を放棄する奴に全額渡す義理もないし、この取引は経済状況に余裕のあるAクラスしか持ち掛けることは出来ない。だから少しだけ足元を見せさせてもらった。
「龍園君はノーリスクで150cpt相当のプライベートポイントを貰えるし、俺たちはポイントを節約できる。一見滅茶苦茶だけど利害は一致している」
龍園君は有栖と似た頭の良さをしている。正攻法を望む堀北さんや葛城君とは真逆のタイプだ。
どちらが強いかと言われれば個人の力量次第としか言えないが、こういう試験においてどちらが有利かと言われれば前者になるだろう。
「CクラスはAクラスに上がるのを諦めたんじゃない? だから今後贅沢するために、私達からポイントを貰おうって算段」
冷たい洞窟の壁に背中を付けながら、そんな予想を立てる神室さん。
「……まあ、現状のポイント差を見ればあり得ない話じゃないね。別に俺もAクラスの特権目的でここ来てないし」
「は? あんたそれ本気で言ってるの?」
「うん。有栖に誘われたから来たってだけで」
正直、日本にある大学だったらどこでも行けるんだよな。希望の就職先斡旋してもらって高卒で就職するも悪くは無いが、特に勉強も苦じゃないし、わざわざそれを選ぶ理由が無い。
「……ムカつくわあんた。坂柳共々」
そう言って脇腹を軽くグーパンしてくる神室さん。
確かに、Aクラスを維持しようとする中、1人だけその特権を要らないなんて言われたら腹立つだろうな。これは反省。
「まあ、だからと言って下のクラスに下がるつもりもないけどね。仮にDクラスなんかになったら有栖がどうなるか分からない」
今は一番上という状態だから落ち着いて居るが、それでも裏でこそこそ力を貯めているっぽいし。
一番下まで下がった状態なんて想像もしたくない。
「……そこ心配する普通? やっぱり、あんたどこかズレてるわよ」
「失礼だな」
ポイントや特権が貰えなくなることより、有栖がブチギレる方が100倍怖いに決まってるだろ。
それから話すことも無くなったため、頑張って探索をしている2人の為に、頼まれていた作業を始めた俺たち。
「神室さん、そこのクーラーボックス取ってくれない?」
「ん……重いわね。何が入ってるの?」
余ったポイントでレンタルした、特大サイズのクーラーボックスを四苦八苦しながら引っ張ってくる神室さん。
キャスターが付いているとはいえ、外寸100㎝×50㎝×50㎝の、150Lという特大サイズのため仕方がない。
「ありがと。ここに食べる予定のスイカ入れて冷やしてたんだよね」
2つのロックを外して蓋を開ける。
中には横並びに入ったスイカ2つと、それが全て浸るように水が入っていた。
「あっ、冷たい」
水に手を入れて声を上げる神室さん。
「朝早く起きて近くにあった井戸から水を汲んできたんだ。一応スポット判定だったけど、どこにも占領されてなかったっぽいし」
「へぇ。井戸水ってこんなに冷たいんだ」
地下深くを流れる井戸水は、地上の温度の影響を受けにくい。どんな季節でも基本的には15度程度に維持される。
35度以上はあるこの環境で、この冷たい水は中々嬉しいはずだ。……ほら、神室さんも両手を入れて涼んでる。
「水質管理はしてると思うけど、飲むのにはちょっと怖いからこういう使い方が良いかなって。2時間くらい入れてるから多分いい感じに冷たいよ」
「後はこれを切るだけね」
切るための包丁ももちろんレンタル済みだ。龍園君のポイントでね。
とりあえず一個を取り出し、まな板代わりのクーラーボックスの上に置く。
横向きに一刀両断した後、米の字に8等分する。
「手慣れてるわね」
「昔有栖のお父さんたちに伊豆の別荘につれて行ってもらったんだけど、その時に切り方調べて覚えたんだよね」
「……別荘」
「うん。小2の時だから忘れてるかもって思ったけど、案外何とかなるもんだね」
格好いい所見せたくてわざわざ調べて自分で切ったんだよな。過去に遊んだ経験というのは意外と役に立つものだ。
そして、見慣れた三角錐のような形になったスイカを神室さんに渡す。
「はい。種少ない所選んだけど、最初に取りたい時はこっちの袋にお願いね」
ゴミ袋をガムテープでクーラーボックスに張り付ける。
神室さんは種を小指で取り、先端の一番甘い所におっかなびっくり口を付けた。
「……おいしい。冷たさもちょうどいい感じかも」
もぐもぐと無言で咀嚼した後、小さく呟く神室さん。
反応が新鮮で面白い。あんまりアウトドアとかの経験はなさそうだな。……何と言うか、親戚の都会っ子をキャンプに連れてきたらこんな感じになりそうだ。
「……何? 急に一人でニヤけて」
「ふふっ。いや、何でもない。じゃあ残りも切り分けて皆に渡してくるね」
思わず笑ってしまった俺を不機嫌そうに睨んでくる神室さん。そんな彼女の視線から逃げるように、俺は切り分けたスイカを皿に並べて外に持っていく。
落とさないように手を添え、洞窟の入り口まで到着する。
「何をしている。客人を呼んでいいと言った覚えは無いぞ」
そして、出入口を覆う様に被せられたブルーシートをくぐろうと手をかけたタイミングで、外から葛城君の声が聞こえてきた。
何事かと洞窟の外に出ると、目の前には前を向いた戸塚君と葛城君。彼らと向かい合う様にこちらを見ている、よく見知った生徒2人と目が合った。
「あれ、綾小路と堀北さんじゃん。どしたのこんな所で」
「おはよう九条君。他のクラスがどう生活してるのか気になって、少し中を見せて貰おうと思ったのよ。中に入れて貰えないかしら、九条君」
葛城君達が目の前にいるにもかかわらず、堀北さんは強気の姿勢を崩さない。
そして俺に言わないで欲しい。戸塚君が滅茶苦茶睨んできてるから。
「ごめんだけど俺からは何とも。葛城君に聞いて」
「いくら九条の友人とはいえ、今はクラス対抗の試験中だ。中を見るのは構わないが、指一本でも触れた瞬間妨害行為として学校側に通達するぞ」
堀北さんに対し、葛城君も引く気を見せない。まあこれに関しては葛城君が正論だ。
「そう。なら仕方ないわね」
元からダメ元で頼んだのか、堀北さんは大人しく引き下がった。
こんなに暑い中ご苦労様である。隣にいるやる気の無さそうな綾小路を見る限り、無理やり連れだされたと予想するのは容易だ。
何だかんだ言って堀北さんも綾小路と一緒に行動する事多いからな。
「あ、みんな食べる? さっき冷やしてたの切ったばっかの奴なんだけど。綾小路たちもどう?」
丁度4つ持っていたため、それを乗せた皿を4人の前に差し出して聞いてみる。
「お前! Dクラスに俺たちの食料を渡すのか!」
「良いじゃん別に。このままだと絶対食いきれないって」
理解できないと声を荒げるのは戸塚君。相変わらず、Dクラスを下に見る思想は抜けてない様子だ。
まだまだ畑には半分以上残ってるんだよね。別にそっからまた持ってきても良いし。
「良いのか! ぜひ貰いt「遠慮しておくわ」……堀北」
恐らく初めて食べるであろうスイカに目を輝かせ、こちらに一歩踏み出す綾小路。しかし、そんな綾小路のシャツを堀北さんがつまんで止めてしまった。
「そちらの彼が言った通り、私たちの個人的な関係を試験に持ってくるつもりは無いわ」
そう言って葛城君の方を見る堀北さん。……まあ、ある程度の線引きは必要だと思うけどさ。綾小路が可哀想だぞ。露骨に落ち込んじゃったし。
何て言おうか迷っていると、意外にもその言葉に返したのは葛城君だった。
「俺は別に構わないぞ。友人と外で食べる位なら何も言うつもりはない。俺はまだ作業が残っているからな。3人で食べてくるといい」
「葛城さん!?」
そう言って額の汗をぬぐい、作業に戻ろうと背を向ける葛城君。
まさか葛城君まで敵に回るとは思わなかったのか、戸塚君は驚きの声を上げた。
「そもそもそれは九条が見つけてきたものだからな。数が余っているなら特に気にする必要は無いだろう」
「意外ね。私たちと九条君を引き合わせても良いのかしら? 彼が情報を漏らす可能性もあるわよ?」
「いや漏らさねえよ」
真顔でとんでもないこと言うんじゃねえ。
「その点に関しては九条を信頼しているから問題ない」
そんな堀北さんの言葉に、背を向けたまま返す葛城君。イケメンすぎるな流石に。ちょっとキュンと来た。
「よし! じゃああっちで食べようぜ! こいつが温くなる前にね」
4つのうち1つを戸塚君に渡し、有無を言わさず洞窟の裏手に向かって歩く。
後ろでは堀北さんがため息を吐いたであろう音が聞こえてきた。
「来ないならオレが二つ食べるが良いのk「あなたははしゃぎ過ぎよ」……痛っ」
そんな堀北さんに声をかける綾小路だったが、その言葉は脇腹への手刀となって帰ってくることとなった。
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