ようこそ純愛過激派の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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 テスト終わって最高の気分で投稿します。

 この辺からガラッと雰囲気変わっていきます。

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戦の幕開け

 

 

 

 無人島生活も既に4日目。試験も折り返しを迎えると少しずつ変化が起こり始める。

 開始直後はあれだけ纏まりが無かったDクラスも段々慣れてきたのか、今は試験を楽しむ余裕が生まれたほどだ。探索によって見つけたトウモロコシや、経験者である池が釣った魚などによって、思っていたよりも順調に試験を進められているのも大きい。

 

 そして余裕が生まれると、他者に対しても寛容になれるのが人間というもので、初日に保護したCクラスの生徒2人もぎこちなくはあるが馴染んできている。苦汁をなめさせられたCクラスの生徒を保護することに反対だった生徒もいたが、彼らを退けた(と思われている)張本人である堀北の進言もあり、受け入れることに問題は無かった。

 彼らが馴染めた理由としては、平田や櫛田といった生徒はもちろん、ムードメーカーの要素を持った池の働きも大きかっただろう。

 想定を下回るポイントの使用率、ライバルであるCクラスの崩壊によって、Dクラスは全員が前を向き始めたと言っても過言じゃない。

 

 しかし、3日間で把握した各クラスの状況や、龍園という不安要素がどうにもオレの脳裏に嫌な想像をさせてくる。

 そこで思い出されるのは一昨日のこと。堀北とAクラスの偵察に行き、九条に切り分けたスイカをおすそ分けしてもらったときのことだ。

 

「美味かったな……」

 

 そのときの記憶が掘り返され、無意識にそんな言葉と共に口の中が潤うのを感じた……いや違う。そうじゃない。

 確かに人生で初めて食べたスイカは美味しかったし、あの後3つほど追加で食べて堀北をドン引きさせたという恥ずかしい記憶があるが、オレが言いたいのは九条についてだ。

 

 ────()()()()()()()()()()()()()

 

 もちろん、堀北や葛城が話していたようにクラスの状況についてといった内容ではない。いくら友人とはいえこれは特別試験。あくまでも違うクラスに所属するオレたちが本当の意味で協力することは無い。それは3人とも理解していたし、自分のクラスが不利になるようなことは一切口に出さなかった。

 それでも無意識の反応なんて早々隠せるものではない。九条が大きく反応を見せたのは、C()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 あくまで自然を装ってはいたのだろう。実際堀北は気が付いていなかったからな。しかし、九条が龍園の動向を知っていたのは間違いない。

 

「まあ、だからといって何になるって話なんだがな……」

 

 龍園の動向を知っていた理由なんて考えればいくらでも出てくる。

 ただ単純に探索中に出くわす確率の方が大きいだろう。いくら無人島とはいえ、地形やスポットの分布から動ける範囲は自ずと狭まってくるだろうからな。だが()()()()()()()()()()()()()()()

 何気なく行った九条との会話や、Aクラスの生徒達の様子を思い出しながら立ち上がる。

 

「魚の焼き加減ってどのくらいがいいんだ? もう食っていいのかコレ」

「おいヤバいって須藤。まだ全然生じゃねえか! そんなん食ったら腹壊すぞ」

「はーっ。意外と時間かかるもんだな」

「ま、キャンプには忍耐力が必要だからな! 俺に任せろって!」

 

 少し奥の方では各々が自由に試験を進行している。彼らに見つからないようにこっそりその場を離れ森に入ると、その楽し気な声は瞬く間に消えていった。

『昼間と言えど行動する際は必ず二人以上で動くように』と平田が言っていたが、楽しいキャンプの時間を過ごしている友人を連れていく気にはなれなかった。一人の方が色々と都合が良いのももちろんあるが。

 こっそりくすねてきたメモ用紙とボールペンをポケットから取り出すと、把握しきれていない島の状況を細かく記していく。

 

 これはオレ個人の想像だが、この特別試験を内訳すると、8割はクラス内における協力関係の有無を確かめられている守りの試験。そして残りの2割は他クラスに対する偵察、情報収集能力を問われる攻めの試験になっている。

 しかし、この8対2というのは試験結果にそのまま反映されるものではない。むしろ2割の方にこそ、結果を大きく左右させるだけの要素が含まれていると考えられる。

 既に各クラスの方針は把握した。なら、やることは決まっている。他クラスへの攻撃だ。

 

 茶柱先生が堀北をスパイにしている理由として、堀北が現状オレを掌握できていると思っているからだろう。ならば、堀北の指示に従っているように思わせ、試験では目立ちすぎないそこそこの成績を上げ続ければいい。具体的な順位としては2番目辺りを目指すつもりだ。

 Aクラスは葛城を司令塔として保守的な動きを見せている。他クラスのリーダーを当てに行くことはまずないと言っていい。Bクラスも同様だ。

 生活に必要なポイントを同じと仮定すると、現状一番ポイントを残しているのはBクラスだ。Aクラスは坂柳、Dクラスは高円寺がリタイアした分30ポイント少ない状態だからな。

 

 つまり、Dクラスが上位に食い込むためには、他クラスのリーダーを当てる必要がある。正直正攻法で当てるのはかなり厳しいだろうが、島の状況を把握すればするほどその難易度は下がる。

 そこで、オレはAクラスのエリアへと移動を開始する。Dクラスが川辺を中心に行動しているように、Aクラスは洞窟周辺を活動範囲にしているだろう。葛城は意味もなく洞窟を押さえたわけじゃない。洞窟というスポットの真の魅力は、雨風を凌げることではなく、場所そのものに意味があった。

 

 暫く森の中を彷徨っていると波の音が微かに聞こえてきた。少しだけ足早になると、そのまま木々を掻き分け海岸へと出ることに成功した。

 

「おっと……」

 

 急遽ブレーキをかけ立ち止まる。この先は足場がなく崖になっているからだ。洞窟からほど近いこの場所には複数の施設が顔を覗かせている。

 どうにか迂回ルートがないものかと崖に沿って歩いていると、一見見逃してしまうであろう死角にハシゴが作られていることに気が付いた。

 ハシゴを掴み力を入れてみるが、しっかりと打ち付けてあるのか頑丈そうだった。ハシゴを使い崖の下へ。

 

 島に上陸する前に見つけておかなければ、まず辿り着けない場所だろう。そして程なくして小さな小屋を見つける。

 小屋の入り口にはスポットである証の装置が取り付けられていた。窓から室内を覗き込むと、そこには釣りに使うと思われる道具などが見て取れる。

 鍵は掛けられていないようなので、ゆっくりと扉を開け装置の画面を確認する。

 

 占有の有無を確認すると……読み通りAクラスの文字。残り時間は4時間ほど。葛城たちは、洞窟を押さえた後ここに辿り着き、占有を開始したと見て間違いない。

 

「やっぱりな」

 

「────何がやっぱりなんだ?」

 

 そう呟いた瞬間、小屋の扉が閉まる音と同時に後ろから声をかけられた。

 振り返ると、金髪の男子生徒が、オレと扉を遮るように立っている。

 

「お前は……」

 

 その姿にどこか見覚えがあったが、いまいち思い出せない。

 

「Aクラスの橋本だ。こうして話すのは初めてだな、綾小路」

 

 橋本と名乗った生徒は、後ろ手に小屋の鍵を閉めると、ヘラヘラと笑いながら握手を求めるように右手を差し出してきた。

 

「……名乗った覚えはないんだが。人違いじゃないか?」

 

 握手には応えることなく、ジッと橋本の目を見ながらそう返す。

 

「良い返答だな。ったく……カマかけてやろうかと思ったけど失敗したぜ。だが人違いじゃない。お前の名は()()()()()()()有名人だからな」

 

「有名人? 自慢じゃないが、オレのフルネームを答えられる生徒なんて、クラスメイトを含めても10人行かないぞ」

 

 会話の途中で思い出した。こいつは船内で九条と一緒に昼食を取っていた生徒の一人だ。

 九条の友人だろうか? となるとオレの名前を知っているのもまだ納得がいくが……有名人という所が少々気がかりだ。

 

「まあそう警戒しないでくれよ。お前のことは九条と姫様から聞いてるってだけだ」

 

 そんなオレの内心を読んだのか、橋本は肩をすくめながら話しかけてきた。

 

「姫様……坂柳か?」

 

「それで通じる辺り笑えるな」

 

 心底愉快だと腹を抱える橋本だが、Aクラスに姫様何て呼ばれそうな生徒は坂柳くらいしか居ないだろう。

 

「どうしてオレがここに居るって分かったんだ? 見張りでもしていたのか?」

 

 そして自己紹介が終われば、話題は自然とここに居る理由へと移る。

 

「ああ。昼間は2人一組で交代でな。お前の姿が見えた瞬間相方置いて走ってきた」

 

「大変だな、Aクラスの生徒も」

 

 あまりに良すぎるタイミングにそう皮肉るが、橋本は特に気にすることなく扉に寄りかかって話を続けた。

 

「いいや。これは自主的にやってることだ。キャンプ地は()()()にとっては居心地が悪いからな」

 

「……坂柳派か」

 

 九条と坂柳から話を聞いているなら、ここで無能をアピールするのはかえって逆効果だ。現に橋本はこちらを値踏みするような態度で接してきている。

 ここで目立たないようにするよりも、情報を集める方が有用だと判断した。そう割り切って話を進めると、橋本は愉快そうに喉を鳴らして返してきた。

 

「くっくっく……流石、あの二人が執着するだけある。ここを見つけたのもお前1人でか?」

 

「まあな。船から島を見ていたからある程度は覚えている」

 

「そうか。ならもっと耳寄りな情報を教えてやるよ」

 

 正直答えると、橋本は楽し気に笑いながらこちらに一歩踏み出してきた。

 

Aクラスのリーダーは九条だ。親切に教えてやったんだ、忘れんじゃねえぞ?」

 

「……意味が分からないな。ここでリーダー情報を明かすメリットがお前にあるのか?」

 

 あまりにも唐突な情報だ。到底信用できる情報ではない。

 

「葛城がAクラスの実権を握ってる状態が気に食わないんだよ。今回の試験結果が散々だったら、誰も葛城について行かなくなるだろ?」

 

 そんな恐ろしいことをサラッと言ってのける橋本。……なるほど。派閥同士の関係はここまで冷え切っているのか。

 九条からの話で聞いているのと、実際に目の当たりにするのでは結構な温度差があるな。九条がそこまで派閥争いの内情に詳しくないというのも大いにあると思うが。

 

「だとしても証拠が無いと信用できないな。せめてキーカードを見せて貰わないと」

 

「そう簡単に持ち出せたら苦労しねぇさ。あいつクラスの誰にもキーカードの保管場所教えてないんだよ」

 

 面倒な奴だとため息を吐く橋本。確かにこの4日間坂柳派の誰もキーカードを持ち出せていないとなると、どれだけ九条が周到に隠しているかがよく分かる。仮に嘘をついているとしたらかなり苦しい言い訳だ。

 

「お前たちを信用してないんじゃないか? 現にたった今お前がリーダーを打ち明けたんだしな」

 

 だが、先日見た葛城と九条の関係を考慮するに、九条がリーダーなのはあり得ない話ではない。

 

「これは坂柳の指示なのか?」

 

 九条がリーダーになった試験でボロ負けした場合、クラス内で九条に対する評判が落ちる可能性がある。つまり九条をリーダーにすることで、坂柳派が裏切ることに対する抑止力として働かせる効果もありそうだ。

 あのアナウンスの意味に気が付いて、即座に行動できる程優秀な葛城なら、ここまで考えていてもおかしくはない。……目の前の生徒を見る限り、それが有用かどうかは定かじゃないが。

 

「お前が何を考えているかは何となく分かる。それを踏まえて1つ言うが、姫様はそれで止まるような女じゃないってことだ。そして綾小路。お前にもその矛先が向いてることを忘れるなよ?」

 

「どうして急にオレの話が出てくる」

 

 指を指してくる橋本に聞き返すと、橋本はニヤニヤと浮かべていた笑みをスッと落とし、真面目な表情をこちらに向けてきた。

 

「今回の試験、俺たちの目的は葛城の影響力を落とすことだ。だが姫様にとってはそれはただの手段。目的はまた別の所にある」

 

 黙って話を聞くオレを見て、橋本は指を寄りかかった扉にトントンと叩きながら続ける。

 

「姫様の目的は九条を自分の所有物にすること。……物騒な言い方をしているが、要は葛城やお前らDクラスに九条を取られて嫉妬してんだよ。今まで九条に友人らしき友人はいなかったからな」

 

「……それが理由なのか?」

 

 物騒な行動に対して、その動機が単純すぎたため、呆れて聞き返すことしかできなかった。橋本はそんなオレ見て鼻を鳴らした。

 

「ふっ。呆れちまうよな? ただの幼馴染の痴話喧嘩に、学年全体が巻き込まれてるだけなんだからよ。姫様も九条関連になると途端に見た目相応の振る舞いになるし、九条に至ってはバカ過ぎで話にならねえ」

 

「それは同意」

 

 九条が頑なに坂柳からの好意を認めないのには、何か理由があるんだろう。だがそれでも、傍から見るとアニメに出て来る鈍感な主人公にしか見えない。

 クラス間闘争から一気に共通の友人の愚痴に話が移り、緊張感が少し緩むのを感じた。

 だがそう感じたのはオレだけだったようで。目の前に立つ橋本は苦い顔をしている。

 

「……綾小路。もう一つだけお前にアドバイスをしてやる」

 

 そんな橋本から出た言葉に疑問符を浮かべていると、彼は驚くべき言葉を発した。

 

龍園には気を付けろ。あいつ、今も島のどこかで物騒なことを企んでるぞ」

 

「龍園だと……?」

 

 ここでその名前が出て来るとは思わなかった。橋本が嘘をついている可能性もあったが、その表情を見る限りそうでもないらしい。

 だがそれにしても、あまりにも話が二転三転しすぎている。

 

「俺から言えるのはこれぐらいだ。せいぜい自分の身は自分で守れよ?」

 

 そう言って小屋を後にする橋本。その場に残ったオレは、その言葉が何を意味するのかを考える事しかできなかった。

 

 

 





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