ようこそ純愛過激派の教室へ 作:妄想癖のメアリー
ざっくりと優待者試験について語ります。
ルール説明等はしないので、忘れた方は調べ直してくれると助かります。
無事に有栖と付き合えたとはいえ、俺たちにはまだまだやるべきことが残っている。
わざわざ夏休み中に呼びつけるのも良くないため、事前にアポを取ってから部屋へと向かう。
今、俺と有栖は葛城君の部屋の前に居る。
「……許していただけるのでしょうか」
不安そうに上目遣いを見せてくる有栖。可愛いけど甘やかすつもりは無い。
「そもそも、謝罪の目的は許してもらうことじゃないぞ。気持ちが大事なんだ気持ちが」
まあ、聖人を極めている葛城君なら別に許してくれるだろう。実際に手を出されたのはクラスの食料だけなんだからな。
綾小路と堀北さんも、優待者試験中に話した感じだと怒ってなさそうだったし、怖いのは橋本君たちかな。
……だとしても結構微妙な構図だな。俺が謝りに行った場合、それは身内が迷惑をおかけしました的な流れになるんだろうが、一応俺も被害者筆頭ではあるんだよね。
因みにぶっちゃけもう気にしてない。大体ムカついてても、良い事があったら忘れるからね。まあ、対立を煽るこの学校のシステムも、原因だったよねってことで。
ただし龍園、お前は駄目だ。有栖に手を出さないと誓えるのなら許してやらんこともない。菓子折り持って頭下げにこいバーカ。
そんなことを考えていると、部屋の扉が音を立てて開いた。
「おはよう葛城君」
「……おはようございます」
スッと片手を上げて軽く挨拶する俺と、気まずそうな有栖。こらっ、気持ちは分かるがしっかり挨拶せんかい。
「おはよう二人とも。……まあ、立ち話もなんだ。飲み物を出すから中に入れ」
まじか。事前の連絡ってそういう意味じゃなかったんだけどな。まあ彼とは積もる話もあるだろうし、ここはお言葉に甘えよう。
何気に葛城君の部屋ん入るのは初めてだ。リビングに繋がるドアをくぐると、整然として落ち着いた雰囲気の部屋が目に入った。
「おお、イメージ通り」
思わずそう呟くと葛城君は苦笑いをしながらコップに麦茶を入れてきた。
「弥彦たちが来ると散々散らかしていくからな。普段はちゃんと片づけを心がけている」
「うわ……そっちもイメージ通り」
戸塚君からは池と似たような雰囲気を感じるからな。多分性癖で話が盛り上がらなかったら毛嫌いされてただろうから。あいつイケメン嫌いだし
自分でイケメンとか言ってて恥ずかしくないのかって? いや、流石に人前じゃ言わないけど自覚はあるよ。有栖ほどじゃないけど結構告白されたし。
……ごめん。やっぱちょっと恥ずかしいわ。多分俺今有栖と付き合えて調子乗ってる。
「それで、話とはなんだ? 坂柳も来ると言っていた時点で、ある程度想像はつくがな」
「あ、そうなの?」
「ああ。特に説教するつもりはないけどな」
だって有栖だぜ? 謝罪しに来るとは思わなくない普通?
「お前と坂柳が仲違いした話は有名だったからな。船の中だということもあり、一瞬で学年全員まで広まってたぞ」
「うわ、恥ずかし」
夏休み明けたらいちゃついた状態を見られるんだろ? 絶対ただの痴話げんかだって扱いになるじゃん。
どうせしばらく引っ付き虫になるのは確定してるんだし、俺も別に嫌じゃないからな。むしろウェルカムだ。
「仲の良い女子生徒からは、九条の好きなタイプを教えてくれと聞かれたぞ。それも数人にだ。……お前の目的を知っていた身としては気まずいにも程がある」
「初耳なんだけど!?」
「普通言わないだろう。あれだけ気がかりにしていて、特別試験までお前が主導でやってたんだ。悩みの種は増やしたくない」
ああ……イケメン過ぎるだろ。俺が女だったら間違いなく惚れてた。
「そ、それで……その、葛城君は、なんて答えたんですか……?」
「あのなぁ……」
遠慮がちに質問を投げかける有栖。
どうしてそこ気にするかね。今更浮気なんてするわけないだろ。
そんな有栖の若干失礼な態度を気にすることなく、葛城君は小さく笑って答えた。
「ふっ、その様子だと、仲直りは上手く行ったそうだな」
「おかげさまでね」
「なら良かった。ちなみに俺は『九条のタイプは坂柳だ』としか言っていない。そもそも、俺とお前が話すようになったのは無人島試験の後。好きなタイプ何て知ってるわけないだろう」
「確かにね」
これまた意外。入学から5月までを除くと、俺と葛城君が個人的な話をしたことはほとんどないのだ。
試験中ずっと一緒に行動してたら仲いいとも思われるよね。実際俺は仲いいと思ってるけど。
「……そ、そうですか」
頬に手を当てながら、こちらをチラチラと見てくる有栖。おーい、本題忘れてるぞー。
そんな俺の意志が伝わったのか、有栖は緩んだ表情筋を引き締め、葛城君の方を見て頭を下げる。
「……その、葛城君。今回の試験の件ですが……「謝罪はいい。頭を上げろ」えっ……」
有栖の言葉を遮り、緊張が抜けたように姿勢を崩し語る葛城君。
「お前の謝罪の意志はよく伝わった。わざわざ俺の部屋に来て、こうして頭を下げている時点でな」
「で、ですが!」
「先ほども言ったが、言われたところで何も返す言葉が無い。正直な所、俺とお前の関係性はただのクラスメイトだろう?」
意外と手厳しい言葉を向ける葛城君だが、これも彼なりの優しさなのだろう。
「だとすると、お前が謝罪するべき相手は、もっと他に居るんじゃないのか?」
「……そう、ですね」
「不満か? ……なら、俺たちへの謝意は行動で示せ。支えてくれる人なら、お前の隣に居るだろう?」
そう言って俺を見る葛城君。その瞳にあるのは怒りではなく、目の前の子供に対する慈悲だった。
「まあ、そういう意味では運がいい。俺も仲間たちに手を出されたら、穏やかではいられないだろうからな。一番被害を被った九条が許しているんだ。俺からは何も言わない」
「……! ありがとうございます。葛城君」
「九条には世話になったからな。それに免じてだ」
どうやら、和解とまでは行かずとも許してはもらえたようだ。
有栖は驚いているが、ちゃんと誠心誠意謝罪すれば、許してもらえることだってあるんだよ。
この経験が、彼女にとって良い方向に働いてくれることは間違いないはずだ。
「ありがとう葛城君。馬鹿な奴だけど、これからちゃんとさせるから、見ていてやってくれると嬉しいな」
立ち上がって感謝を伝えると、葛城君は笑いながら答えてくれた。
「ああ。……そうだ、1つ聞きたいことがあったんだ」
「ん? 聞きたいこと?」
長居するのもあれなので帰ろうとしていたのだが、葛城君が俺と有栖を呼び止めた。
「これから坂柳がどういうスタンスで居るのかが気になってな。今まで通り、クラスを引っ張って行くつもりなのか?」
……そうじゃん。そこらへん話し合うの忘れてたわ。確かに、有栖とクラスを二分していた葛城君にとっては気になるところだろう。
「……いえ。私はしばらくは辞めておきます。この状態で上に立っても誰も付いて来ないでしょうし」
少し迷う様なそぶりを見せた後、有栖はそう呟いた。
「……そうか。賢明な判断だと思う」
腕を組んで目を瞑りながら頷いた葛城君だが、次の瞬間驚きの発言を投げかけてきた。
「ならばその座は九条に譲るべきだな。そうするなら、
……えっ?
「先日の優待者試験で、俺がこの学校のシステムに向いていないことがはっきり分かったからな。九条に任せるべきだと判断した」
「いや、俺に任せるって、大したことしてないじゃん。Dクラスと手組んだだけだって」
────優待者試験について少し振り返ってみる。
試験当初はもちろん葛城君が指揮を取っていたのだが、思っていたよりも他クラスからの攻勢が激しく難航していたのだ。現時点で圧倒的なポイント数を誇るAクラスが、無人島試験で400ポイント近く獲得したんだ。無理はないだろう。
龍園君が身を引いたCクラスでは、俺が投げ飛ばした金田という生徒が指揮を取っていたらしい。正直独裁が無くなったCクラスなんて脅威ではないから無視をしていい。
そこで警戒すべき相手をBクラスとDクラスに絞り込んだ俺は、葛城君にとある提案をしたのだ。
「
この試験、まあルールがごちゃごちゃしていて頭を使うものだったが、その実他クラスと手を組みさえすれば、容易に勝利へと導くことが出来る。
先ほど葛城君が話した通り、俺が提案した案はDクラスと共闘すること、それぞれの優待者を教え合い、その法則性を見破ることだった。
葛城派の生徒の優待者は葛城君が全部知っていたし、坂柳派に関しては橋本君が全部教えてくれた。
12人いる内の半分が分かれば後は簡単で、その法則性を発見した俺たちは速攻試験を終わらせた。結果としては以下の通り。
Aクラス……150cpt +150万ppt
Bクラス……-150cpt +0ppt
Cクラス……-150cpt +0ppt
Dクラス……150cpt +150万ppt
指名によって獲得したプライベートポイントは全員で均等に分配した。
そして最終的なクラスポイントを、夏休み前と比べてみると以下の通りとなる。
Aクラス:1050→1606cpt
Bクラス: 663→603cpt
Cクラス: 492→342cpt
Dクラス: 83→488cpt
……こうして考えると凄まじいな。Dクラスも二学期からはCクラスに上がることが確定したし、Aクラスに至っては下位のクラスにほぼトリプルスコアだ。
「無人島試験、優待者試験でここまで大きな結果を残したのは九条、お前のおかげだ。それはクラスの皆も重々承知している」
因みに無人島試験では、龍園による妨害を俺が頑張って防いだと、クラスメイトには説明されている。いや、別に間違いではないんだけど、俺一人の力ではない為、なんだかなぁなんてもやもやもある。
「龍園に支払うポイントを含めても、それでも毎月4万が収入に上乗せされるんだ。俺たちの中でも、お前に感謝している生徒は大勢いるぞ」
『俺たち』というのは葛城派の子たちのことだろう。確かに嫌だよね、自分の派閥のことそう言うの。
「いや、だからって葛城君が止めるのはちょっと変じゃない? 俺だって助けてもらったんだしさ」
「今の俺がクラスの上に立ったとして、坂柳派の生徒がついて来るわけがない。仮に付いてきたとして、その中で争いが起こるのは避けられないだろう。その点お前ならどうだ。坂柳がトップを降りた時点で、次そこに立てるのは九条しかいない。そして俺たちもお前を支持すれば、もうAクラスは統合したも同然だ」
確かに、他クラスからヘイトが溜まっている状況で、派閥争いなんてしている暇じゃないだろう。
葛城君の言うことは正論ではあるのだが、今までの彼の努力を見て来た立場からすると、ただ功績をかすめ取っただけの人間が上に立つことに、違和感を感じて仕方が無かった。
「……そもそも、有栖の考え方が気に入らないから対立してたんでしょ? 次は俺が同じことするかもしれないよ?」
「そこまで目が曇ったつもりはないさ。お前がそういう人種じゃないことくらい、分かっているつもりだ」
言葉通り曇りなき瞳を向けて来る葛城君。……おかしいなぁ、ここまで好感度上げたつもりなかったんだけど。
「……分かった。やってみるよ」
……まあ、確かにこのまま葛城君がリーダーをして、坂柳派の子たちが制御不能になるよりかはマシか。
橋本君や鬼頭君、神室さんはまだしも、他の子たちはどう思ってるか知らないからな。そもそも交友が無いし。
「俺も出来る限りのサポートはするつもりだ。お前の努力が、クラスの皆に認められたということだ。そこまで気負う必要はない」
……うわぁ……卑怯な事言うなぁ葛城君。そんなこと言われたらやる気出ちゃうじゃん。
「……しゃーあない! 頑張るか―! ちゃんとアシストしてよ? 葛城君」
「ああ。もちろんだ」
そんな葛城君の声援を受けながら、俺は上機嫌で部屋を後にするのだった。
「……おめでとうございます」
部屋に帰ってくると、有栖はそう言ってソファに勢いよく座った。
言葉とは裏腹に、どこか不機嫌そうにも見えるその様子に、どんな心境で言ったのかはある程度予想がつく。
隣に座って有栖のお腹に手を回し、ひょいと持ち上げて膝の上に置く。
「なにー? 嫉妬してんの?」
「……別に、そういう訳じゃありませんっ。第一、そう思ってたとして、私が言える立場じゃないでしょう」
そう言いつつも、その声色は明らかに不機嫌だ。
うんうん。そりゃそうだ。元はと言えば有栖が暴走したからこうなってるんだ、確かに言える立場じゃない。
しかし、そう思って自分の気持ちを抑えているだけ、こいつにとっては大きな成長だ。
「ひゃあ!? 急に何するんですか!」
もう一度持ち上げて抱きかかえると、そのままベッドに飛び込む。
俺の上に跨るようにして横たわった有栖が、乱れた髪を頬に垂らしながら抗議してきた。
「可愛いなぁお前! そんな分かりやすく嫉妬しやがってこのこのっ!」
「上機嫌過ぎて鬱陶しいです! そんなに葛城君に応援されたのが嬉しかったんですか!」
「そりゃそうだろ! 誰のせいでクラスでぼっちになったと思ってんだよ!」
「そ、それは……」
そう言うと、有栖はバツの悪そうな顔をして、俺の胸に頬をくっつけた。
一応派閥争いが原因だという自覚はあるらしい。……まあ、俺の立ち回りも完璧じゃなかったからな。もうちょっとやりようはあったはずだ。
すっかり大人しくなってしまった有栖を励ますべく声をかける。
「お前にもちゃんと手助けしてもらうから拗ねんなって。Aクラス一の頭脳を持ってんだから腐らせんなよ」
そう言って頭を撫でる。すると先ほどの寂しそうな様子は何処へ行ったのか、有栖は勢いよく起き上がって俺の肩に手を置いた。
まるで俺が有栖に押し倒されているかのような光景である。
「そうですか、やっぱりそうですよねっ!」
喜びを満面に浮かべる有栖。本当に機嫌がコロコロ変わる奴だ。
「私、貴方とならどんなことも出来ちゃう気がします。……今度は、私がお手伝いさせていただきますね」
そしてもう一度抱き着くように手を回すが、先ほどの様に背中ではなく、俺の首元に腕を回してきた。
「だから応援してますよ、旭君っ」
────その瞬間、唇に温かい感触がし、シャンプー特有のふんわりとした髪の匂いが漂った。
「おまっ……それ」
「ふふっ、ファーストキス。私から奪っちゃいました」
唇に指を当てながら、百戦錬磨の娼婦の様に妖艶に微笑む有栖。
そんな彼女に、俺はただ顔を赤くすることしかできなかった。
「あら? もっと欲しくなっちゃいました? 」
「……いや、別にそんなんじゃ」
「んー、どうしましょう? ……じゃあもっと可愛くお願いしてください。そうすれば、考えてあげない事もないですよ?」
そんな俺を見て調子に乗ったのか、互いの息が暖かく伝わる距離まで顔を落とし、俺の耳元で囁いた。
……ちょっと色々とイライラしてきたな。
「じゃあ俺から行ってやるよ」
「────えっ? きゃっ!?」
上下逆になるように体を動かし、俺が有栖の上に跨るように移動する。
「そ、そんな乱暴に」
左手で腰を、右手で有栖の後頭部をガッチリ抑えると、そのまま俺は有栖の小さな唇に貪るように口付けをした。
「ん゛っ、ま、待ってくださひ……♡ 息が、いきがしゅえな、んんっ♡」
抵抗する有栖を体重をかけ過ぎないように抑えながら、迸る衝動に任せて舌を動かす。
数十秒程続けると、突然有栖の抵抗がすっと弱まった。
「あっ、やべ」
「はぁ……はっ、んんっ……♡」
どうやら気絶してしまったようで、服も髪も乱れてあられもない姿になっている。
「やっちまった……」
とりあえずそっと布団をかけ、絶対不機嫌になるであろう有栖の対応を考えるのであった。
本編でも載せましたが、一応現時点でのクラスポイントです。
Aクラス:1606cpt
Bクラス:603cpt
Cクラス:342cpt
Dクラス:488cpt
うーん化け物。やっぱり分裂してないとちょっとヌルゲー過ぎるんだよなぁ…
原作と変わった点をまとめておきます。卑怯とは言うまいな。一人称視点だと原作との違いは説明しにくいんですよ。
後は僕が今後の展開を考える時に参考にします。『ここも変わってるんじゃないの?』ってのがあったら感想で追加してくれると超助かります。
☆綾小路が機械化してない
・綾小路と堀北が信用し合っている
・堀北が既に兄と和解している
・クラスでの堀北の影響力がかなり強まっている
・軽井沢が綾小路の寄生虫になっていない
☆龍園のやる気スイッチがオフになってる
・坂柳の綾小路に対する興味が薄れている(無くなったわけではない)
・葛城の影響力が低下していないが、その分九条の影響力が上がっている
・坂柳の影響力が地の底まで落ちている。
・Aクラスが『表面上』統合している。
・Bクラスで一之瀬の影響力が低下している。
・Cクラスが空中分解状態になっている。
・Dクラスの団結力が平田、櫛田に加えた堀北を中心として上がっている。
・↑の影響で櫛田が原作よりキレている。
☆の所は大分影響してきそうですね。
例えば、龍園のやる気が無いと、7巻の内容がほとんど無くなるし。
ちなみに原作では自分が優待者だとバラさなかった櫛田ですが、今作では龍園が萎えている影響で大人しくしています。
まあ葛城の言う通り、『大部分の』生徒はもう九条に対して悪い感情は抱いていま せん。
しかし、葛城君についてきたのに、いきなりその座を譲るって言われてたのです。納得できる生徒もいるし、そうじゃない生徒ももちろんいます。
葛城がそこを想定できていないわけないだろうと突っ込まれそうですが、葛城って身内に対しての評価を高くしがちな節があるので、こういう展開もあるかなって思いました。
原作の同時期に比べると、両者が認めるリーダーが出てきた分まだマシですが…このわだかまりが、後の展開に大きく影響してきたりしてこなかったり。