ようこそ純愛過激派の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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 因みに真鍋によるいじめは事態が大きくなる前に綾小路が止めました。
 原作では軽井沢を依存させるためあえて見逃していましたが、ここではわざわざそれをする必要は無いので。



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第5章
始まり


 

 

 

「干支の動物の順番と割り振られた生徒たちの名字が、優待者を探し出す鍵だったんだね」

 

 場所は混雑するカフェ『パレット』の一番奥のテーブル席。

 夏休み明け、オレは平田と軽井沢、そして堀北という奇妙なメンバーで昼食のテーブルを囲んでいた。目的は夏休みの最中に行われた船上特別試験の復習。12の干支のグループに分けて行われた混合チームによる優待者探しの答え合わせが行われていた。

 

「そっか。あいうえお順であたしは4番目。だから優待者だったってわけね」

 

 感心したように軽井沢が頷く。

 

「でもさ、その法則ってもの凄くシンプルじゃん。誰でもわかるっていうかさ。堀北さんたちがいた竜グループは5番目の櫛田さんが優待者だったってことでしょ?」

 

「そうね。確かに答えを知ってみればシンプルよ。けれど試験中にその答えに辿り着くのは容易じゃない。自分たちのクラスに存在する3人の優待者だけじゃ優待者の法則の確証は得られないわ」

 

「まあ、だからこそ九条の策が上手いことハマったんだがな」

 

 堀北に続いて補足を述べる。

 オレの言葉を聞き、軽井沢は感心したように声を上げた。

 

「ねー。なんかビックリって感じ。九条君らしいって言えばらしいけどさ」

 

 ここに居るメンバーは、元々九条と交流がある生徒だ。

 というより、クラスの半数以上の生徒は、入学当初友人を作ろうと躍起になっていた九条と顔見知りになっている。クラス間闘争が始まってからは、疎遠になってしまう者が多かったらしいが。

 交友を続けていたのは、この場に居ない生徒だと須藤たち3バカ、櫛田くらいだろう。

 

「結果としては同率一位。今回ばかりは彼に感謝しなければいけないわね」

 

「そうそう! 私たちもやっとまともにポイント貰えるようになったんだしっ」

 

 上機嫌に平田の腕に抱き着く軽井沢。

 それを横目に、ポケットから端末を取り出し、自身の保有するプライベートポイントを確認する。54336pptと書かれた画面が映される。……思ったよりいっぱい溜まってるな。何に使うべきか……

 

「クラスポイントも0から488ポイント……今や僕たちはCクラスだ」

 

「クラスの名前が変わるのって、ちょっと慣れないかな。でも、このまま行けばAクラスも夢じゃないかもね」

 

 5月当初は夢物語だと思われていたAクラスへの道だが、クラスが上がったことにより現実味を帯びてきた。

 努力をすれば結果が実るという成功体験は、間違いなくCクラスの結束を強めつつあった。

 

「目下の目標はBクラスへ上がることね。もう一度特別試験を勝利すれば、上がれる可能性も見えてくるはずよ」

 

 Bクラスが現在保有するポイントは603cpt。先の特別試験の結果を考えると、Bクラスとの間にある200cptという数字は、極めて小さいと言っていい。

 

「あとはAクラスをどうするかだな。あそこまで圧倒的だと、他3クラスからヘイトを買いそうなものだが、トップを張るのが九条だからな。あまりそういう展開は期待しない方が良いかもしれない」

 

 夏休み明け、葛城と坂柳がAクラスのリーダーを降りたというニュースは、瞬く間に学年全体へと広がった。

 その後釜に座ったのは九条。両派閥合意の上での人選だったらしい。

 

「そうね。自然発生的な展開は期待しない方がよさそうだわ。行動するならこちらから行かないと」

 

 派閥争いを終わらせ、葛城と坂柳を下に付けた九条か……正直難敵だな。

 保守的な戦い方、攻撃的な戦い方のどちらも警戒しないといけないということだし、その2人にもない外交力を九条は持っている。もちろん各派閥に所属していた生徒が、すぐに協力できるとも思えないが、そこを突けるのも今の内だろう。

 リーダーの質、生徒の質共々抜けが無いと言っていい。

 

「その場合、交渉役は平田や櫛田に任せるのが良さそうだな。オレも堀北も他クラスとの繋がりはほとんどないし」

 

「うん。クラスの為に出来る事なら何でもするよ」

 

 平田がイケメンスマイルで答えてくれた。頼もしい限りである。

 細かい欠点を除けば、彼らの様な他クラスのリーダーを務められる人材が多数いるのも、Cクラスのアドバンテージと言えるだろう。

 これから起こるであろう戦いを想像していると、軽井沢がこちらを見ている事に気が付いた。

 

「……なんか、綾小路君ってそんなキャラだったっけ? 今まではこう、なんていうか……根暗だったよね」

 

 失礼な言い草である。大して交遊もないオレの何を知っているのだろうか。

 堀北もその無遠慮な言い方に固まっている。ほら、軽井沢にそれは違うと言ってくれ。

 

「良い観察眼ね。全く持ってその通りよ、軽井沢さん」

 

「えぇ……」

 

 一番交友が深い堀北に言われたら、オレは何も言い返せないぞ。

 

「でしょ! なんか積極的だよね。こういうのやる気出さなさそうなタイプなのに」

 

 そんな堀北の言葉に、軽井沢は嬉しそうにこちらに目を向けた。

 ……要は、試験に協力的なのが意外ということだろう。なら最初からそう言ってくれ。

 

「……そうかもな」

 

 カーストトップの女子に、そんなこと言えるはずもなく、オレは情けなく同意することしかできなかった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 九月も後半を迎え、うだるような暑さも鳴りを潜めてきた頃。俺たちAクラスは学校のグラウンドへと足を運んでいた。

 赤いゴムが敷き詰められ、白い線に挟まれたレーンの上に立ちながら適当にストレッチを行う。

 

「頑張ってくださーい!」

 

 スタート地点のすぐ横では、パイプ椅子に座った有栖が声援を送っている。

 それにサムズアップで返すと、隣に立つ橋本君に声をかけられた。

 

「大人気だな九条。陸上もいける口なのか?」

 

「まあまあかな。専門でやってはいなかったけど」

 

 あまりハードルを上げすぎないように注意して返す。

 現在行われているのは100m走の記録会。しっかり走るのは久しぶりな気がするがなんとかなるだろう。多分。

 半ズボンのひもを締め、陸上の試合で使われるスタブロという機械に足をかけた。

 左右に並ぶ生徒も同様に準備を終えたことを確認し、横に立ったスタート係がピストルを上へと向けた。

 

「じゃあ行くよー、位置について……よーい────ドン!」

 

 スタートの合図と共にタータンを駆け抜ける。

 トレーニングを行っていた成果もあり、そこまで疲労を感じることなくゴールできた。

 少し遅れて一緒に走っていた生徒もゴールする。

 

「はぁ……くっそ、お前なにがまあまあだよ……めちゃくちゃ早えじゃねえか」

 

「ふふーん。運動は割と自信あるからね。何秒だった? 鬼頭君」

 

 ゴール横でストップウォッチを持った鬼頭君に話しかける。今の感覚だと割といい感じのタイムが出てそうだ。

 

「11秒42だ。橋本は12秒56だな」

 

「お、自己ベストじゃん」

 

 大体スパイク履けば1秒くらい早くなることを考えると、ちょっと練習すれば全国上位も狙えそうだ。

 体育祭まであと1か月。それまでに0.2秒くらいなら縮められそうだ。

 

「こりゃリレーは九条で確定だな」

 

「いいね。学さんと一騎打ちしたいし」

 

 そんな談笑を交えつつスタート地点へと戻ると、有栖が興味津々と言った様子で話しかけてきた。

 

「どうでした?」

 

「11.42。陸上選手に転身するのもアリかも」

 

「いいですね。助っ人として出てポイント荒稼ぎしましょう。その記録ならいい所まで行けるでしょう?」

 

 冗談で言ったのだが、有栖は本気のようだ。勢い良く立ち上がると、ぐいぐいとこちらに詰め寄ってくる。

 

「リレーで活躍するところ、楽しみにしてますね」

 

 上目遣いで期待の眼差しを向けて来る有栖。そんなこと言われたらやるしかなるなるじゃん。

 

「おう! 任せとけって」

 

 そんな可愛い有栖の頭をくしゃくしゃと撫で、少し奥で記録を取っている葛城君に声をかけた。

 

「お疲れ葛城君。俺たちで最後かな?」

 

「ああ。記録を教えてくれ」

 

 最後の組の記録を書き終えると、葛城君が手に持ったバインダーを手渡してきた。

 

「ありがと。みんなー! 結果出たから集まってー!」

 

 それを受け取り、散り散りになったクラスメイトに声をかけた。集まった生徒に体育座りするように呼び掛け、その視線を浴びながら取りまとめを行う。

 皆が座ってこちらを見上げる中話すのは、どこか不思議な気分だ。体育教師とかになったらこんな感じなんだろうな。

 

「前に話した通り、記録が早い順で決めるね────」

 

 体育祭では、全員が出場する種目の他に、選抜種目がある。先ほど行っていた記録会は、その目玉である6×200mリレーの出場者を決めるために行っていたのだ。

 バインダーを見ると、ありがたいことに記録の速い順に数字が付けられている。流石葛城君。気配りが上手だ。

 

「────っとこんな感じかな。5人目以降はほとんど団子だし、他の選抜種目とかの様子も見てから決めた方が良いかもね」

 

 早い順で俺、鬼頭君、橋本君、神室さんといった並びで、他はほとんど似たり寄ったりといった様子だ。鬼頭君と橋本君は良いとして、神室さんがここまで早いのは意外だな。部活も文化部だった気がするし。

 というか、やっぱりAクラスは運動苦手な子が多めだな。学校側が学力高い子を選んで入れたのもあるだろうけど。

 有栖も欠場すると考えた場合、今回の体育祭はかなり厳しい戦いになりそうだ。

 

「今回は九条と鬼頭頼りになりそうだな」

 

 俺を除いて、唯一11秒台を出した鬼頭君にも注目が集まる。体育祭のシステム上、取れる場面で確実に順位をとらなければいけない。自クラスの出場順も考えないといけない。まだまだ課題は山積みだ。

 

「よし! じゃあ後は二人三脚と綱引きの選手を決めようか。二人三脚はいいとして、とりあえず握力だけ測っちゃおう」

 

 体力テストでよく見かける赤と青の握力計を配り、各々がやいのやいの言いながら握力を計る。

 良いよねこういう雰囲気。中学の時の体力テストもこんな感じだったわ。

 

「ほら、お前も測れよ」

 

 橋本君から握力計を渡される。よし、腕の見せ所だ。

 握力が強い人と言えば、皆筋肉隆々のゴリマッチョを想像しがちだろう。しかし、握力の強さは単純な腕の太さには比例しない。腕が細くとも、筋繊維の密度が高ければその記録は大幅に向上する。

 そして、格闘技において握力が強さは全てに影響してくる。幼少期から散々鍛えてきたため、かなり自信のある種目だ。さて、()()()()()()()()、今年はどうだろうか。

 

「……っ!」

 

 細く息を吐いて、最も力の入れやすい体制で思いっきり握り込む。

 

「……ふー」

 

 息を吐いてモニターを見ると、そこには『──.-』との表示。つまりエラーだ。

 

「何だよ。ちゃんと電源入れろって」

 

 記録が気になっていたのだろう、がっかりしたように息を吐く橋本君。しかし、これは電源を入れ忘れたことによるエラーではない。

 というより、その場合そもそも画面には何も表示されないはずだ。

 

「これ100キロ以上測れないんだよね。ここから……っ! ほらね」

 

 モニターを見ながら調整し、エラーにならない99.3キロでピタリと止め、もう一度握り込んでエラーを表示させる。

 いやー嬉しいな。去年は100キロ行かなかったから。成長を感じれた瞬間が一番テンション上がる。

 

「……いや、おかしいだろ」

 

 そんな橋本君の呟きを無視し、俺は記録用紙にドヤ顔で100という数字を記入するのであった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 それから、Aクラスは順調に選抜種目の出場選手を決め終わり、それぞれが下校の準備を進めています。

 リーダーが務まるか不安そうにしていた旭君でしたが、その手際は見事なものです。おかげで体育の時間は有意義なものとなりました。

 流石は私の彼氏です。今もこうやって、私の荷物を持ってエスコートしてくれています。出場順をまとめ、先生に提出し終えるまで待っていたため、時刻は遅くなってしまいましたが。

 

「あ、忘れ物した。ちょっと取ってくるから先行ってて」

 

「……分かりました」

 

 まるで狙ったかのようなタイミングに、思わず不満そうな態度で返してしまいました。しかし、旭君は気が付かなかったようで、そのまま教室へと戻って行きました。

 仕方ありません。どうせ5分もかからないでしょうし、少し座って待ちましょう。

 学校から寮へと続く通学路、その横を行くと公園に繋がるので。私はそこのベンチに腰かけることにしました。通常の下校より遅い時間帯だったからか、周りに生徒は全くいません。

 旭君に公園で待っているという旨のチャットを送ったその時、珍しく私に話しかけて来る生徒が居ました。

 

「あれ? 坂柳さん」

 

 久方ぶりに来た声ですが、印象に残る生徒だったため、名前を思い出すのは容易です。

 

「櫛田さん。お久しぶりです」

 

「うん! 久しぶり!」

 

 生徒の名は櫛田桔梗。所属するクラスは別ですが、彼女の持つコミュニケーション能力は類まれなるもの。恐らく学年で一番友人が多い生徒でしょう。

 

「何してるの? こんなところで。待ち合わせ?」

 

「ええ。旭君を待っています。櫛田さんは?」

 

()()()()()()()()()()()。そっか。坂柳さん九条君と付き合ったんだもんね」

 

 情報が伝わるのが早いですね。まだ付き合ってから1か月も経っていないはずですが。

 

「2人とも有名人だもんね。すぐ噂になってたよ? 九条君は女の子にも人気だし」

 

「ええ。自慢の彼氏ですよ。彼は」

 

 自然に口角が上がるのを抑えながら、私は胸を張って言いました。

 

「最近九条君がご飯食べに来ないのって、もしかして坂柳さんと一緒に食べてるからだったりする?」

 

「ええ。旭君手作りのお弁当を2人で」

 

「やっぱりー! 綾小路君と堀北さん、隠してたけど寂しそうでちょっと笑っちゃった」

 

 ……なるほど。2人に会ったのは謝罪をしたのが最後でしたね。許していただきましたが、やはり気まずさは少し残ります。

 

「じゃ、私そろそろ帰るね」

 

 そう言ってベンチから立ち上がる櫛田さんに、私は()()()()()()()()()()()()()()を聞きました。

 

「あら、()()()()()()()()、私に話しかけた訳ではないんですか?」

 

「……そんなことないよ? ただ普通に話しかけただけ」

 

「そうでしたか。失礼しました。……もし私とお話ししたいことがあるのでしたら、今日の19時までなら開けておきますよ」

 

 櫛田さんは先ほど、私と同じく帰りに偶然ここを通りかかったとおっしゃっていましたが、私は一度も『帰る際中』とは口にしていません。

 服装で判断されたと言われればそれまでですが、荷物も旭君が持って行ってしまった為、私は手ぶらの状態。どこからどう見ても、これから夕食を外で済ませる人間の恰好なのですが……なぜ彼女は帰る最中だと断言したのでしょうか? 

 

「うん! またね。久しぶりに話せて嬉しかったかも! バイバイ坂柳さん」

 

「ええ。さようなら」

 

 結局それに関する返答は無しですか。まあいいでしょう。

 小走りで立ち去る櫛田さんの背中を見つめていると、少し遅れて旭君が走って戻ってきました。

 

「ごめんごめん。別に待たなくて良かったのに……ってあれ、誰かと話してた?」

 

「いいえ。何でもありません。帰りましょうか」

 

 今回の体育祭もまたひと悶着ありそうです。

 そんな期待に胸を膨らませながら、私は隣を歩く旭君の腕に抱き着くのでした。

 

 

 





 櫛田(自慢げに語ってんじゃねえよリア充が。無い胸張りやがって)

 原作でも普通に負けていたので、Aクラスの身体能力については低く見積もらせていただきました。
 とは言っても、Dクラスと違い実力主義で出場順決めることに、反対の声は出ませんでした。

 書いていて悩んだんですが、身体能力って男女混ぜた評価、分けた評価のどっちなんですかね?
 天沢の身体能力が83なのを考えると、やっぱ男女混合なのかな?女子基準だと堀北の71は低すぎる気がするし。 
 でもだとすると美術部の神室が79(2年女子最高、平田と同じ)なのは大概化け物だし、A+(95以上)で須藤と並ぶ鬼龍院さんが最強すぎる気がする。



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